初心者向けシンパシームーブ戦略:ニュース連鎖で取る最短手順ガイド

トレード戦略

本稿では、ニュースで急騰・急落した「主役」に引きずられて動く関連銘柄の値動き、いわゆる「シンパシームーブ(連想上昇・連想下落)」を、初心者の方でも手順通りに再現しやすい形で解説します。単なる思いつきではなく、事前に用意した“連想辞書”と約定代金フィルタVWAP中心の執行ルール時間制約の明確化の3点でルーチン化します。株式(日本・米国)を主戦場にしつつ、FXと暗号資産にも応用できるようクロスマーケットの考え方も提示します。

1. シンパシームーブとは何か(初心者向けの核心)

ある企業・資産に関するニュースが出たとき、同業他社、サプライチェーン、代替品、競合、指数構成銘柄、関連テーマETF、さらには為替や商品市況までが同方向に動くことがあります。これがシンパシームーブです。主役の材料を消化する過程で、「情報の伝播」「ポジション調整」が連鎖的に起き、派生的な値動きが観測されます。個人トレーダーはこの二次反応を素早く捉えることで、主役よりもリスクを抑えた参加や、出遅れの妙味を狙えます。

重要なのは「事前準備>当日の判断」です。ニュースが出てから関連銘柄を探し始めると間に合いません。前日までに連想辞書を仕込み、当日はアラートとフィルタで機械的に選ぶ、これが初心者にとって最も再現性が高い進め方です。

2. まず覚えるべき用語と概念

約定代金:出来高×価格。瞬間的な「資金の流れ」を示します。シンパシー狙いでは、急増する約定代金の捕捉が生命線です。

VWAP(出来高加重平均価格):売買の重心価格。短期の売買判断における「水準認識」に使います。主に「上抜け」「リテスト」「再上抜け」の3パターンを使います。

テーマ辞書:ニュースとティッカー(銘柄コード)を結び付けた自作辞書。例:「生成AI→GPU関連・データセンター・電力」「原油高→石油・海運・航空燃料コスト」「円安→輸出・インバウンド・価格転嫁が進む内需」。

主役/脇役:主役はニュースの当事者。脇役は波及で動く関連銘柄。脇役を狙うのが基本です。

時間の優位性:ニュースから数分〜数時間に集中するエッジ(優位性)。遅れるほど優位は薄れます。

3. 取引対象の整理(株・FX・暗号資産)

日本株:適時開示や国内ニュースの波及が早く、PTSや寄り付きでの初動確認が有効です。板が薄い小型株は値動きが激しい反面、スリッページが大きいので約定代金フィルタで足切りします。

米国株:決算やガイダンス、規制ニュースからの同業連鎖が強く、ETF経由での波及も見られます。流動性が高く、VWAPやオープンレンジ・ブレイクアウトとの相性が良いです。

FX:株式ニュースが為替に波及するパターン(リスクオン・オフ、貿易収支、金利観測)があり、株と反対方向にヘッジしたり、株のシグナル確認に使えます。

暗号資産:規制・ETF承認・ハッキング・半減期・ハッシュレート・マイニング難易度などがトリガーです。関連上場企業(マイニング・半導体・取引所)への波及を狙います。

4. 連想辞書の作り方(初心者でもできる反復手順)

テーマ軸の棚卸し:マクロ(インフレ、金利、為替、原油)、産業(半導体、電力、ゲーム、医薬)、イベント(決算、政府方針、災害、規制、提携・受注)に分け、各テーマに「連想キーワード」を箇条書きで作ります。

ティッカーの紐付け:各キーワードに3〜10銘柄程度を紐付けます。主役(一次)と脇役(二次)を分け、二次の方に星マークを付けます。ETFや先物、CFDも入れておくと逃げ場が増えます。

強弱の格付け:関連度をA(直撃)B(やや関連)C(遠い)で格付けし、過去に本当に動いた履歴をメモします。

実運用フォーマット:スプレッドシートに「テーマ/キーワード/主役候補/脇役候補/関連度/過去反応日/メモ」を列で用意します。朝の点検で“今日の注目テーマ3つ”に絞り込みます。

更新習慣:週末に1時間、1週間のニュースと値動きを振り返り、辞書を更新します。使うほど精度が上がります。

5. アラート設計(スピードを仕組み化)

ニュースを読んでから考えるのではなく、価格・出来高・キーワードの三重アラートで半自動化します。

・価格:前日高値の突破、寄り付きギャップの維持、VWAP上抜け時などに通知。

・出来高/約定代金:前日平均の2倍・5倍・10倍など閾値通知。小型株のノイズを減らせます。

・キーワード:生成AI、受注、規制緩和、提携、リコール、サイバー攻撃、電力逼迫、為替介入などテーマ語を監視します。

6. 当日の銘柄選定フロー(最短手順)

ステップ1:朝の段階で「今日の注目テーマ」を3つに絞ります。

ステップ2:テーマごとに連想辞書から脇役Aランクを3〜5銘柄抽出。約定代金の最低ライン(例:日本株なら5億円、米株なら500万USDなど)を設定します。

ステップ3:寄り直後は手を出さず、VWAPを形成する最初の10〜15分を待ちます。VWAP上の推移を確認できた銘柄だけに集中します。

ステップ4:エントリーの型(次章)に当てはめ、発注は成行ではなく指値優先。板の厚さと乖離に注意します。

7. エントリー3型とエグジット3型(覚えるのはこれだけ)

エントリーA:VWAP初回上抜け→出来高伴う足で1/2。戻りでVWAPリテストが入れば残り1/2。

エントリーB:オープンレンジ上抜け→直近高値更新の足で1/2。上抜け失敗で即撤退。

エントリーC:主役急騰後の脇役初動→前日高値の明確ブレイクで1/2。出来高急増が伴うこと。

エグジットA:時間切れ(例:前場引け、米株はパワーアワー前)。シンパシーは時間勝負です。

エグジットB:VWAP割れ(終値ベースではなく、明確な割れで撤退)。

エグジットC:ATR×1.5の利確。直近平均の1.5倍動いたら利益確定の候補。

損切りは「想定損失=口座残高×1%以内」を原則に、ポジションサイズを逆算します。

8. ダマシを減らす3つのフィルタ

約定代金の絶対額:小型株の一時的な噴き上げを避けます。目安を超えない銘柄は触らない勇気を持ちます。

主役との相関履歴:過去に同テーマで一緒に動いたかをメモで確認。履歴が無ければ見送ります。

ニュースの質:噂・観測記事・ツイートだけの初動は避け、公式発表や一次ソースに重みを置きます。

9. シナリオ別の具体例(文章で時系列を追う)

9-1. 半導体:GPU供給ひっ迫→データセンター→電力

午前8時、主役企業の供給計画強化が報じられ、先物が上昇。寄り付き後10分で関連銘柄の約定代金が急増。まず半導体製造装置が動き、次にデータセンター投資関連、最後に電力・送配電の負荷増加思惑が波及します。辞書でAランクの脇役に絞り、VWAP初回上抜けで1/2、リテストで1/2。上昇が鈍ったら時間で利確します。

9-2. 原油:供給懸念→海運→航空・化学のコスト圧力

夜間に原油が急伸。先物と関連ETFが先に反応し、海運が続く一方、航空・化学はコスト増で逆方向へ。方向の異なるシンパシーも辞書に記録し、ロングとショート(現物を持たない場合はインバースETFやCFD等)でバランスを取ります。初心者は片側だけに絞るのが無難です。

9-3. サイバーセキュリティ:大規模障害→セキュリティ関連→クラウド再評価

深夜に障害報告。翌朝、セキュリティ関連が資金を集め、クラウド基盤銘柄に連想が波及。ニュース一次ソースの確認と約定代金の加速を同時に満たした銘柄のみ、VWAP基準で参加します。

9-4. 為替:急激な円安→輸出・インバウンド→小売価格転嫁

指標で円安が進行。輸出や訪日関連が先に動き、遅れて小売の価格転嫁期待がテーマ化。FXではUSD/JPYの押し目を短時間で拾い、株の脇役銘柄で追随する二段構えが可能です。

9-5. 暗号資産:ETF資金流入→マイニング・半導体→決済関連

暗号資産ETFの流入増加データが出ると、まずビットコイン現物が反応し、次にマイニング関連上場企業や半導体、続いて決済・カストディへ連鎖。出来高の急増とVWAP上の推移を条件に、短期で抜きます。

10. 実行面のディテール(板・指値・滑り)

・板の厚みと価格帯の「空白」を確認し、薄い価格帯での成行は避けます。

・指値は「VWAP−スプレッド半分」など、再テストを想定した位置に置きます。

・同時に複数銘柄を追わないでください。初心者は「テーマ×2銘柄」までが適量です。

11. バックテストと検証(シンプルで良い)

完璧な数量化は不要です。出来高急増+VWAP上の推移+主役の方向一致という3条件の出現回数と、その後の最大順行幅/最大逆行幅を、シートに手で記録します。10〜20サンプルで充分にヒントが得られます。

勝率だけでなく、平均益>平均損になっているかを重視します。勝率は下がっても損小利大であれば期待値はプラスになります。

12. 資金管理とメンタル(初心者の落とし穴を避ける)

・1トレードの最大損失を口座残高の1%に固定。

・同テーマに同方向で複数銘柄を持たない(集中的なテーマリスクを避けます)。

・含み益を「失いたくない」心理は強烈です。時間利確ルールを先に決め、感情を排します。

13. 1週間練習プラン(行動に落とす)

Day1:テーマ辞書の骨組みを作る(3テーマ×各5銘柄)。

Day2:過去1か月のニュースと値動きを遡って「動いた実例」を10件メモ。

Day3:アラート(価格・出来高・キーワード)を設定。

Day4:寄り付き後15分は観察のみ。VWAPの意味を体で覚えます。

Day5:小さなサイズで1トレードだけ実行し、ルール通りに撤退・利確。

Day6:トレードログをシートに記録(理由・数字・感情)。

Day7:辞書を更新、翌週の注目テーマを3つ選定。

14. 初心者向け:口座とツールの基本手順(要点のみ)

・証券口座:本人確認→入金→銘柄検索→指値・成行・逆指値の練習→板読み→約定通知の設定。

・FX:通貨ペアのスプレッドと約定力を確認。ロットと証拠金の関係をシミュレータで把握します。

・暗号資産:二段階認証を有効化。送金テストは少額から。レバレッジ取引は最初は避けます。

15. よくある失敗と対策

・ニュース元の確認不足→一次ソース優先。噂で飛び乗らない。

・小型株の出来高頼み→約定代金の最低ラインを守る。

・利確の引き伸ばし→時間利確とATR目安の併用。

・辞書の陳腐化→週次で更新。動かない関連は削除。

16. 仕上げ:チェックリスト

□ 今日の注目テーマは3つに絞ったか。□ 連想辞書の脇役Aランクは用意済みか。□ 約定代金の基準を満たしているか。□ VWAP上で推移しているか。□ エントリー3型/エグジット3型のどれかに当てはまるか。□ 1%ルールを守るサイズか。□ ログは残したか。

17. まとめ

シンパシームーブは「ニュース→資金移動→関連の連鎖」という単純な構造でありながら、事前準備と当日のルール運用で初心者にも再現性が出せます。辞書・アラート・VWAP・時間管理・資金管理の5点を固定化して、少額から試し、毎週の更新で精度を高めていきましょう。

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