中古車を「移動手段」としてだけではなく、「資産」として考える視点が注目されています。株や不動産と同様に、購入価格と売却価格の差から実質的なコストを計算することで、本当に得な買い物だったのかが見えてきます。本稿では、2018年式の日産ノート・メダリストを題材に、資産価値の観点から中古車購入を評価してみます。
車両概要と購入条件
対象となるのは2018年式の日産ノート e-POWER メダリストです。走行距離はわずか3万km、車両状態も非常に良好でした。車両本体価格は80万円、車検・登録・整備・税金などの諸費用込みで総額95万円という条件でした。ディーラー販売で保証も付帯しています。
市場相場との比較
2025年8月時点における同車種の買取相場は概ね60万円前後です。つまり、業者が仕入れる際の実勢値はこのあたりとなります。一方で、販売相場は90万〜100万円程度が一般的で、保証や整備が付くディーラー物件では総額100万円前後になるのが標準です。今回の購入額95万円は、このレンジ内に収まる妥当な水準と言えます。
ディーラー販売価格の仕組み
中古車は、買取価格に整備費用・保証料・ディーラー利益を加えたうえで販売されます。買取60万円に対し、販売80万円(本体価格)はプラス20万円。さらに諸費用を含めて総額95万円。これは業界的に標準的な利益幅に過ぎず、過剰な上乗せではありません。むしろ、車検込みで95万円なら良心的と言えるでしょう。
資産価値としての評価
中古車を資産価値で評価するには、「購入額」と「将来の売却額」の差額が重要です。2018年式のノート メダリストが、さらに5年経過すれば10年落ちになります。その時点での残価は10〜20万円台にまで下がる可能性が高く、資産としてのリセール効率は決して高くありません。特にノートはトヨタ・ホンダ車に比べリセールが弱い傾向にあります。
しかし、今回のケースでは走行距離が少なく状態も極めて良好な個体です。資産としての「リターン」を求めるよりも、長期使用に耐える品質を享受する方向で評価すべきでしょう。つまり、投資としては不利でも、消費財としての効用は高い。実際、95万円で購入し、10年落ちまで安心して使えれば、1年あたりの実質コストは10万円未満に抑えられます。これは資産性とは別の意味で非常に合理的です。
他車種との比較
資産価値を重視するなら、同クラスのトヨタ アクアやホンダ フィットの方が優位です。これらは中古輸出需要が強く、リセールバリューが比較的安定しています。一方でノート メダリストは、国内需給に依存する分、下落幅が大きくなります。つまり「売却時の資産価値」を最優先するなら別車種が選択肢に入りますが、「購入価格に対して安心して乗れる期間」を重視するなら今回の選択は十分に合理的と言えます。
結論
2018年式ノート メダリストを総額95万円で購入した事例は、資産としての回収力には限界があるものの、整備済み・車検付き・保証込みという条件を踏まえると、生活車として非常にバランスの良い買い物です。資産価値という尺度で見れば「売却時の期待は薄い」が、利用価値という尺度では「割安な投資」として成立します。車を金融資産のように評価する視点を持つことで、購入後の納得感や使い方の戦略が変わってくるのです。
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