現在、日本では「減税」を主張する候補者に支持が集まっています。しかし、この現象を冷静に分析すると、単なる『国民の声』ではなく、背後には日本の税構造に起因する深刻な問題が潜んでいます。
総人口に対する所得税納税者の割合
日本の総人口は約1億2350万人。しかし所得税を実際に支払っているのは、わずか5300万人程度。これは全体の半分以下です。言い換えれば、日本国民の過半数は所得税をほとんど負担していないということです。
所得税負担の実態
さらに詳細を見ると、所得税を払っている5300万人のうち、
- 60%(約2900万人) は限界税率5%しか課されていない。
- 80%(約4100万人) は限界税率10%以下に収まっている。
一方で、
- 限界税率33%以上を負担している人はわずか130万人に過ぎません。所得税納税者全体のたった3%、総人口のわずか1%強にあたります。
つまり、所得税という国家財政の柱は、ほんの一握りの高所得層に依存している構造です。
消費税が最大負担となっている現実
所得税を負担している層ですら、その多くは極めて低い税率しか適用されていない以上、多くの国民にとって最大の税負担は”所得税”ではなく”消費税”です。
このため、”消費税減税”を主張する候補者が支持を集めるのは当然の帰結に見えます。しかし、それは**「国からの公共サービスは享受したいが、財政的な義務は果たしたくない」**という態度に等しいとも言えます。
国の持続可能性を脅かす構造
税収の大部分を支えている高所得者層に過剰な負担を求め続ければ、当然ながら彼らは次の行動を取ります。
- 海外移住(例:シンガポール、ドバイなどの低税率国)
- 資産の国外逃避
- そもそもの経済活動の縮小
結果として、日本国内の生産性は低下し、国際競争力も著しく損なわれます。生産性の高い人間を冷遇し、負担ばかりを強いる国家が”繁栄”することなど、歴史上ただの一例も存在しません。
本質的な問題
- 人口の大多数が実質的な税負担者ではない
- 財政を支えているのはごく少数の高所得者層
- 減税支持は短期的な利益を求めるポピュリズムにすぎない
- 生産性ある人材の国外流出リスクが高まっている
ではどうすべきか?
- 消費税は社会全体で広く薄く負担する「共助」税として維持、あるいは強化すべき
- 所得税は高額所得者に過度な負担を強いず、むしろインセンティブ設計を行うべき
- 給付を拡大するなら、それに見合った負担論議を同時に行うべき
- 税負担の実態について国民に対する啓蒙活動を徹底すべき
結論
減税を叫ぶことは簡単です。しかし、国の持続可能性を考えれば、短絡的な減税支持は結果的に国民全体の生活水準低下を招くことになります。いま必要なのは、現実を直視した上で、痛みを伴うが持続可能な財政構造を選び取る冷静な判断です。
日本という国を支えているのは、たった1%強の高所得層であることを忘れてはいけません。彼らを潰すことは、自らの未来を潰すことに直結するのです。
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