通常の債券は市場金利の影響で価格が変動し、含み損が発生するリスクがあります。しかし、個人向け国債(変動10年・固定5年・3年)は、中途換金しても元本割れしない制度が組み込まれています。本記事ではその仕組みを図解付きで解説します。
通常の債券が値下がりする理由
市場金利が上がると、新発債の利率が魅力的になり、既発債は価格が下落します。

- 購入額面:100万円
- 市場金利上昇 → 債券価格が90万円に下落
- 市場で売却すると10万円の含み損
個人向け国債が元本割れしない理由
個人向け国債は、国が中途換金価格(額面 – 直近2回分利子)で買い取る制度を持つため、市場価格に関係なく元本相当額が保証されます。

- 購入額面:100万円
- 金利上昇でも換金価格:約98,0000円
- 損失リスクはゼロに近い
では、誰がその損失を負担しているのか?
本来なら市場価格が90万円に落ちている債券を98万円で買い取る。差額8万円の損失は、財務省(=国)が吸収しています。

- 損失の原資:税収または借換え資金(=国債)
- 最終的には国民が間接的に負担
なぜ国は損失を負担してまで制度を維持するのか?
- 個人マネーの国債市場への誘導
- 元本保証による販売促進効果
- 安全資産としての国債イメージ維持
まとめ
個人向け国債の「元本割れしない」設計は、制度上の特例であり、その安心の裏には国(≒納税者)のコスト負担があります。金融政策的にはそれでも「必要なコスト」として位置付けられているのが実態です。
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