トランプ関税時代に「米国株一強」が崩れる?資金フロー逆回転のメカニズムと個人投資家の対策

金融

ポイント先取り
💡 トランプ前大統領は平均27%という戦後最高水準の関税案を掲げ、グローバル資本の「米国一極集中モデル」に亀裂を入れようとしています。
💡 米国株は世界平均より約50%高いPERで取引され、リターンの源泉が「テック10社」へ過度に集中。
💡 今後はドル高→ドル安の反転、高金利維持、貿易ブロック化が重なり、資金がメキシコ・インド・東南アジアなどへシフトする可能性が高い。
💡 S&P500 やオルカンの「放置積立」だけではリスクに偏りが生じるため、地域・通貨・資源への分散モニタリング指標の導入が必須。


1 | これまで米国にお金が集まった3つの理由

  1. ドル基軸通貨—世界の貿易決済・外貨準備の60%弱がドル建て。ドルを保有するだけで流動性が確保できる。
  2. 高収益企業群—GAFA+半導体大手など、売上・利益が世界トップ級。「買っておけば伸びる」という信仰が根付いた。
  3. 深い資本市場—米国債市場は世界最大。リスクが出ても「最終的に資金を逃がせる場所」になっていた。

2 | トランプ関税の衝撃:何が変わるのか

トランプ氏は2025年の公約で「対中60%関税」「対米貿易赤字国に一律10%関税」を掲げています。仮に実行されれば、米国の平均関税率は戦後平均(約2.5%)から約27%へ跳ね上がります。

(図1:米国の実効関税率の推移—戦後〜2025年予想)

  • WTO・IMFは既に2025年世界貿易成長率を▲0.2%へ下方修正。
  • 中国は「関税同盟を組む国も報復対象」と警告。貿易ブロック化が現実味。
  • 資金は「関税の壁が低い国」へ逃避するインセンティブが働く。

3 | 資金フローが逆回転するメカニズム

① 報復関税 ⇒ 米国債需要の減少
 輸出国が米国債を買わずに自国経済へ投資回帰 ➜ 米金利が上がりやすくなる。

② サプライチェーン再編
 メーカーは関税を避けてメキシコ・インド・ASEANへ工場新設 ➜ 当該国の株式・通貨が上昇しやすい。

③ ドル基軸の希薄化
 資源輸出で人民元・ルーブル建て決済が増える ➜ 外貨準備の多様化が進行。

④ 米国財政赤字&高金利の長期化
 需要減+供給増で米国債は「買い手の質」が落ち、リスクプレミアム拡大へ。

4 | 「S&P500 一本積立」は本当に安全なのか?

リスク具体例
バリュエーション米国PER 20.9倍 vs 世界平均 13.9倍。期待成長を裏切ると下方修正幅が大きい。
銘柄集中上位10社で指数の33%。AI熱が冷めると指数全体が揺らぐ。
為替ドル高恩恵期(2012〜23)が一巡。ドル安になると円換算リターンが圧縮。
政策リスク関税・独禁法・規制強化は米国に集中するカントリーリスク

5 | 対策

  • 地域分散—EAFE Value、小型株、新興国ETF(メキシコ・インド・ASEAN)を組み込む。
  • 資源&コモディティ株—エネルギー、メタル・マイニングでインフレをヘッジ。
  • 通貨分散—米ドル一辺倒を避け、外貨MMFや外債ETFでローカル通貨エクスポージャ。
  • 実物資産—金・BTC を資産全体の5〜10%に。通貨ブロック化ヘッジ。
  • 米国株コア縮小—全株ポートフォリオに占めるS&Pウェイトを40〜50%へ見直し。

6 | チェックすべき重要指標

  1. TICデータ—外国人による米国債の買い越し・売り越し
  2. ドル指数(DXY)10年実質金利
  3. WTO・IMF の最新予測
  4. 関税発動スケジュール—自動車・半導体など、業種別に注視

まとめ

米国株が長年トップリターンを維持できたのは、自由貿易 × ドル基軸 × 資本開放の三位一体モデルがあったからです。トランプの高関税政策はこの基盤を揺るがし、「資金の逆回転」を誘発する導火線になり得ます。

よって、「S&P500さえ買っておけばOK」という投資常識はアップデートが必要です。
地域・通貨・資源への分散と定点観測を取り入れ、「もし米国がコケても資産全体は倒れない」設計に切り替えましょう。

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