米国覇権の終焉とS&P500・オルカン投資の終わりの始まりを分かりやすく解説

金融

はじめに

長年にわたり、米国株は世界経済の中心的存在として、多くの投資家から信頼を集めてきました。S&P500やオルカン(全世界株式)に連動するインデックス投資は、「放っておけば勝てる投資法」として定着し、老若男女問わず支持されてきました。

しかし、近年の地政学的変化や経済政策の転換、特にトランプ政権以降の米国孤立主義によって、この構図が揺らぎ始めています。世界の資金が米国に集中する仕組みが崩れ始め、米国覇権の終焉とともに、米国株最強神話にも陰りが見えています。

本記事では、その構造変化の本質を掘り下げ、インデックス投資戦略の再考を促します。


米国はなぜ資金を集められたのか?

まず、米国が長年にわたって世界中の資金を集めることができたのは、以下の構造があったからです。

  • ドルの基軸通貨性(ペトロダラー体制):世界中のエネルギーや商品の決済がドルで行われるため、ドル需要は常に高く、米国は永続的な資金流入が可能だった。
  • 米国債という安全資産:金融危機のたびに資金が米国債へ避難し、金利が下がり株が上がるというサイクルが繰り返された。
  • 圧倒的な軍事力と国際政治支配:米国の政治的安定性と軍事的優位が、ドルと米国資産の信認を支えていた。
  • イノベーションと巨大企業群(GAFAなど):米国発のテクノロジー企業が世界市場を席巻し、世界の成長を米国に取り込んだ。

このような構造により、世界は米国にドルを供給し、米国はそのドルで商品・サービスを輸入し、資本市場に還流させる「資金の永久機関」が成立していました。


トランプ以降の米国が壊した構造

トランプ政権下で強まった「米国第一主義」は、長年機能していたこの資本循環構造にヒビを入れました。

  • 関税引き上げによる貿易摩擦:中国やEU、日本との関係悪化。世界がドルを稼ぐ手段(対米貿易黒字)が細り、米国資産への再投資も停滞。
  • 制裁国家の拡大と金融排除:ロシア、中国、イランなどをSWIFTから排除する動きにより、「ドルに依存するリスク」が顕在化。
  • 米国資産の信頼性低下:債務上限問題や政治分断、利上げによる債務コスト増など、米国債自体への信頼が揺らぐ。

この結果、BRICS諸国を中心とした「脱ドル化」の流れが加速し、エネルギー取引でも人民元やディルハム、金を使う動きが始まりました。


S&P500とオルカン投資の盲点

S&P500やオルカン(全世界株式)を盲信的に積み立てる投資家が多い一方で、そこに潜む偏重リスクは見逃されがちです。

  • S&P500の構成偏重:時価総額加重の性質により、上位10社(ほぼテック)で指数の7割を占める。過去の成功企業に資金が集まりすぎており、逆回転が始まった場合の下落リスクは極めて高い。
  • オルカンの実態は米国偏重:全世界に分散投資しているように見えて、実際は米国比率が約60%。米国覇権が崩れれば、オルカンも道連れになる。
  • 新興国や非ドル圏の比率が極めて低い:インド、ASEAN、中南米など今後の成長源が過小評価されている。

今後の資金フロー:新しい投資先はどこか?

1. 非米国圏(特にBRICS+)

  • 中国、インド、サウジなどの金融市場が徐々に自由化・資本流入を受け入れつつある。
  • 人口成長、都市化、エネルギー需要による長期的な成長が期待される。

2. コモディティ・BTCなどの価値保存資産

  • インフレと通貨信用不安に対するリスクヘッジとして金や銀。
  • 政治中立的な資産として、ビットコイン(特に非米国居住者の間で)への評価が高まっている。

3. 地政学的安定国への投資

  • メキシコ、ベトナム、インドネシアなど、製造業の脱中国シフトの受け皿として期待。
  • 通貨安定性、労働力、資源など複合的に魅力を持つ。

結論:インデックス投資神話の終焉と分散の再定義

過去20年、S&P500やオルカンへの積立は合理的な投資行動でした。しかし今後10~20年も同じ構造が維持される保証はどこにもありません。

むしろ、地政学・金融覇権・通貨制度が構造的に変わろうとしている今、投資戦略も見直すべき局面に来ています。

  • 「分散」の意味を再定義せよ:国別、通貨別、資産クラス別の真の分散へ。
  • S&P500やオルカンをコアに据えるなら、サテライトとして非米国資産コモディティ、暗号資産の組み入れを検討すべき。

インデックス投資は、過去の成功体験に基づいた「神話」に過ぎません。構造が変わったなら、投資戦略も変わるべきなのです。

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