『寄り×出来高×ギャップフィル』だけで組むデイトレ入門:初心者でも再現できる実践マニュアル

デイトレード

本稿は、「寄り(オープニング)」「出来高急増」「ギャップフィル」の3要素だけで組み上げるシンプルなデイトレード戦略を、初心者でも再現できる水準まで具体化した実務マニュアルです。裁量の余地を最小限に抑え、事前準備→寄り前チェック→エントリー→イグジット→記録という流れを定義し、チェックリスト化しています。銘柄抽出、板・歩み値の見方、IFD/OCO注文の設定、バックテスト(TradingViewと表計算の二通り)、資金管理(1R法)まで通貫で扱います。

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戦略の骨子:3要素の連携

当戦略の中核は次の3要素です。

  1. 寄り(Opening):価格発見が最も活発になる時間帯。前日までの情報と寄り前の気配が交錯し、短時間に方向性が定まりやすい。
  2. 出来高急増(Volume Surge):価格だけではなく出来高の伴走を条件化することで、ダマシの確率を下げる。
  3. ギャップフィル(Gap Fill):ギャップ(前日終値と当日の寄付き価格の窓)が埋まりやすい統計的傾向を活用。利確の客観目標として使う。

「寄りで方向が出る」「出来高がそれを裏付ける」「利確はギャップの埋め」で一本化することで、判断の曖昧さを排除します。勝率が突出して高い戦略ではありませんが、損小利大と手数の最適化で期待値を積み上げる設計です。

前提:必要な口座・ツール・環境

証券口座の準備(要点のみ)

口座は以下の観点で選定します。具体的な銘柄の可否や手数料体系は各社で異なるため、最新情報は公式サイトで確認してください。

  • 手数料・スプレッド:小さな違いが期待値に直結。約定代金帯ごとの実効コストを比較。
  • 注文機能:IFD・OCO・IFD-OCOが使えるか。逆指値(トレーリング含む)の有無。
  • 板・歩み値の視認性:寄り前気配、出来高、VWAP表示の有無。
  • API/自動化(任意):将来の半自動化を見据えるならAPI対応を検討。

チャートとスクリーナー

  • 時間足:1分足(寄り直後の判断)+5分足(ノイズ除去)。
  • 指標:VWAP/出来高/前日高安・終値ライン。移動平均は任意。
  • スクリーナー条件(例):前日出来高上位、当日寄りのギャップ率(±1%〜3%など)、寄り後5分の出来高が過去20日平均の同時間帯比で2倍以上。

PCはデュアルモニター推奨。左にスクリーナーと板、右にチャート(1分/5分/日足)という配置で視認性を確保します。

用語のミニ辞典(最小限で実戦向け)

ギャップ
前日終値と当日寄付きの価格差。上に空く場合をアップギャップ、下に空く場合をダウングャップ。
ギャップフィル
当日中に価格が前日終値へ戻り、「窓」を埋める動き。利確ターゲットとして明確。
VWAP
出来高加重平均価格。寄りからの参加者の平均コストと解釈できる基準線。
板・歩み値
板は気配と数量、歩み値は約定履歴。寄り直後は気配の厚みと成行の通過量を見る。
1R(リスク1単位)
損切り幅×数量で定義される1トレードあたりの許容損失。資金管理の基準。

戦略ルール(完成版)

対象銘柄の抽出

  • 前日出来高が市場中央値以上(流動性確保)。
  • 当日寄りのギャップ率が±1%〜3%(過度なギャップは除外)。
  • 寄り後5分の出来高が過去20営業日の同時間帯平均の2倍以上

エントリー条件(買いの基本形)

  1. ダウングャップで寄る。
  2. 寄り後3〜7分の間に、出来高を伴うVWAP回復が発生。
  3. VWAP回復した足の高値+数ティックで指値(または逆指値成行)を置く。
  4. 初期ストップは直近スイング安値の少し下。距離=損切り幅=1R。

利確・分割利確

  • 第一目標:前日終値(ギャップの起点)で半分利確。
  • 第二目標:前日高値の手前、または当日の直近リジスタンス。
  • 残りはVWAPを明確に割れるまでトレーリング。

売り(ショート)の対称形

アップギャップで寄り、VWAP割れ(出来高同伴)でエントリー。第一目標は前日終値。ルールは買いと対称に設計します。

時間的制約(タイムストップ)

寄り後30〜60分を勝負時間と定義。そこまでに第一目標へ届かない場合は半分をクローズし、残りは建値ストップへ引き上げます。

資金管理:1R法とロット計算

1トレードの許容損失を総資金の0.5%〜1.0%に固定(これを1R)。損切り幅が0.8%であれば、ロットは「1R ÷ 0.8%」で計算します。こうすることで、どの銘柄でも損失額を一定化でき、メンタルのブレを抑えられます。

例:資金300万円、1R=0.8%(24,000円)。損切り幅が0.6%なら建玉は「24,000 ÷ 0.006 ≒ 4,000株(約定代金に応じて調整)」。

実例シミュレーション(架空データ)

ケースA:ダウングャップからのVWAP回復

前日終値1,000円 → 当日寄り980円(-2%ギャップ)。寄り後3分で出来高急増、VWAPが982円に回復。回復足の高値984円+2ティックで買い、初期ストップは978円(損切り幅0.6%)。第一目標は1,000円(ギャップフィル)。1,000円で半分利確、残りは当日高値手前で利確またはVWAP割れで手仕舞い。R換算で+1.5R〜2.3Rが狙える典型。

ケースB:アップギャップの反落(ショート)

前日終値2,400円 → 当日寄り2,448円(+2%ギャップ)。寄り後5分で出来高伴うVWAP割れ(2,442円)。割れ足の安値2,440円−2ティックでショート、初期ストップは2,448円上(0.35%)。第一目標は2,400円。到達で半分、残りは直近安値の手前で利確。短いストップと大きめのリワードでRが伸びやすい場面。

スクリーナーとチェックリスト(貼り付け用テンプレ)

スクリーナー条件テンプレ

・前日出来高:市場中央値以上
・当日ギャップ率:+1%〜+3% または -1%〜-3%
・寄り後5分出来高:過去20日平均の2倍以上
・株価:東証プライム等の主要市場、価格帯500〜3,000円(板の密度確保)
・信用/貸借:どちらでも可(空売りの可否は別途確認)
    

寄り前〜寄り直後チェックリスト

  1. 寄り前の板:厚みの偏り(買い板/売り板の傾き)を確認。
  2. 寄り直後5分の出来高:基準を上回っているか。
  3. VWAP:回復(または割れ)が出来高同伴で発生したか。
  4. 初期ストップの位置:直近スイングの外側へ。
  5. IFD-OCO:エントリー・利確・損切りを同時設定。

執行の実務:IFD/OCOの使い方

エントリーを逆指値成行、利確を前日終値に指値、損切りを初期ストップに逆指値で設定したIFD-OCOを用います。約定後に手動操作を減らし、計画通りの退出を担保します。ヒゲで踏み上げられた場合は、建値にストップを引き上げて損益ゼロ化を優先。分割利確はOCOの片側を部分約定で運用します。

バックテスト:TradingViewと表計算での二刀流

TradingView(手動リプレイ)

  1. 対象銘柄を日足→5分足→1分足の順に確認。
  2. ギャップ率と出来高を記録し、VWAP回復/割れの有無とタイミングをメモ。
  3. 利確到達の有無(前日終値到達)、所要時間、最大含み益/損をR換算で記録。

表計算(シート)

行に日付、列に「ギャップ率」「寄り5分出来高倍率」「VWAP回復/割れ」「第一目標到達」「最大R」「結果R」「メモ」。20〜30営業日分を埋めると傾向が見えます。勝率×損益比=期待値がプラスになれば実弾へ。

リスク管理とメンタル運用

  • 1Rの固定化:連敗時でもダメージを限定。
  • 手数の制御:1日2〜3トレードに絞る。疲労=判断誤りの母。
  • ニュースイベント:決算発表日や重要指標の直前直後は見送りも選択肢。
  • 週次レビュー:勝ち負けよりルール遵守率を自己採点。

よくあるNGパターン

  1. ギャップが大きすぎる(±5%超)銘柄への突撃。
  2. 出来高の裏付けなしにVWAPだけで判断。
  3. ストップを広げる(ナンピン)ことで1Rを超過。
  4. 第一目標を前に欲張って未達→反転で利益を失う。

口座開設〜最初の取引まで(最短ロードマップ)

  1. オンライン申込 → 本人確認(eKYC) → 口座開設完了のメールを待つ。
  2. 入金(即時振込対応だと当日の寄りに間に合う)。
  3. チャート設定(1分・5分、VWAP、前日高安終値ライン)。
  4. スクリーナー保存(ギャップ率と出来高倍率)。
  5. デモと小ロットで10営業日検証 → 実弾移行。

発展:応用とカスタマイズ

  • ボラティリティフィルター:ATR基準でギャップ率とストップ幅を連動。
  • 時間帯フィルター:寄りから30分のみ、または前場だけに限定。
  • 出来高プロファイル:当日の節(ノード)で部分利確。
  • 複数銘柄の同時監視:相関が低いセクターを組み合わせる。

1日の運用ルーチン(テンプレ)

【前日夜】注目ニュースのピックアップ、明日の決算銘柄の確認
【当日寄り前】スクリーナー実行、板の厚みと気配の偏りをメモ
【寄り〜30分】ルール通りの執行(IFD-OCO)、約定後は記録を開始
【後場】復習・記録の整理、翌日のウォッチリスト作成
【週末】20〜30トレード単位で期待値の再評価
    

まとめ:小さく、速く、同じことを繰り返す

本戦略は、寄りの初動+出来高の裏付け+明確な利確目標という、初心者にも扱いやすい三点セットで構成されています。重要なのは、同じ条件で繰り返し1Rを厳守し、手数を絞ること。これがブレの少ない損益曲線を作ります。まずは小ロットで20〜30トレード連続の検証から始めてください。

付録:Q&A

Q. ギャップが埋まらない日は?
A. タイムストップと建値ストップ引き上げで損失ゼロ〜小利に切り替えます。無理に粘らないこと。

Q. 指標や決算で急騰・急落した場合?
A. 出来高の裏付けがあってもボラが過剰なら見送り。翌日のギャップ狙いに回します。

Q. FXや暗号資産でも使える?
A. 24時間市場はギャップが限定的。代わりに「前日高安回帰×出来高(ティック)×VWAP」を目標化すると近似運用が可能です。

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