本記事は、日本株の「季節性」と「需給イベント」を組み合わせたシンプルなカレンダー戦略を、投資初心者でも実装できるレベルまで具体化した実務ガイドです。派手なテクニカル指標や難解なモデルは不要です。日付とイベントに基づくルールを事前に決め、迷いなく実行するだけに落とし込みます。
- 1. なぜカレンダー戦略なのか
- 2. 前提・守備範囲・想定ユニバース
- 3. 口座開設(一般的な流れ)
- 4. 戦略全体像(3本柱の役割分担)
- 5. ルールA:月末・月初効果
- 6. ルールB:権利落ちリバウンド(配当落ち翌日の短期)
- 7. ルールC:指数入替(組入・除外)の需給
- 8. 売買ルールの定式化
- 9. 具体例:数値シナリオ(イメージ)
- 10. リスクと回避策
- 11. 実務オペレーション(テンプレ)
- 12. 検証の仕方(TradingView/Pythonの入口)
- 13. よくある失敗と対策
- 14. まとめ:初心者の最短ルート
- 付録A:用語ミニ辞典
- 付録B:チェックリスト(コピーして使える)
- 付録C:実践Q&A(拡張)
- 付録C:実践Q&A(拡張)
- 付録C:実践Q&A(拡張)
- 付録C:実践Q&A(拡張)
1. なぜカレンダー戦略なのか
市場には、月末・月初、配当の権利取り・権利落ち、指数(TOPIX等)の入替など、カレンダーに紐づく需給の偏りが存在します。これらは「いつ起こるかが前もって分かる」ため、初心者でも準備しやすいのが最大の利点です。裁量判断よりも事前ルールに寄せられるので、心理的負担も小さく、学習コストに対する再現性が高いのが特徴です。
ここでは、次の3本柱で構成します。
- 月末・月初効果(ルールA):機関のリバランス・資金フローに連動しやすいタイミングを狙う。
- 権利落ちリバウンド(ルールB):配当落ちで機械的に下げやすい銘柄の短期的な戻りを狙う。
- 指数入替の需給(ルールC):インデックス組入・除外に伴う売買需給の歪みを活用する。
2. 前提・守備範囲・想定ユニバース
対象は東証上場の大型〜中型株を中心とします。理由はシンプルで、流動性・スプレッド・約定の確実性が高いからです。目安として、以下いずれも満たす銘柄を推奨します。
- 1日の売買代金:5億円以上(理想は10億円以上)
- 気配スプレッド:0.1%〜0.3%程度以内が多い
- 信用規制・増担保等の特異要因がない
指数売買の代替にはETFも有効です。例として、日経平均連動ETFやTOPIX連動ETFなど、出来高が厚い銘柄を使います。
3. 口座開設(一般的な流れ)
本戦略の実行には、国内ネット証券の一般的な現物口座で十分です。信用取引口座があれば柔軟性が増しますが、初心者は現物のみからで構いません。一般的な開設フローは次の通りです。
- web申込み:氏名・住所・連絡先・マイナンバー等を入力。
- 本人確認:スマホで本人確認書類を撮影・送信。
- 審査・口座開設完了:ログイン情報が発行される。
- 入金:即時入金サービスや振込で買付余力を用意。
- 取引ツール設定:ウォッチリスト、アラート、約定通知を整備。
手数料体系はシンプルな定額制か、約定代金に応じた従量制を選択。少額・高回転が多い場合は定額、単発の約定金額が大きい場合は従量制が有利になりやすいです。
4. 戦略全体像(3本柱の役割分担)
3つのルールはそれぞれ独立に機能しますが、同時運用することで相関を下げ、収益のブレを平滑化できます。ポートフォリオの基本配分の例:
- ルールA(月末・月初):ポートの40%
- ルールB(権利落ち):ポートの30%
- ルールC(指数入替):ポートの30%
月間でエントリー機会が偏るため、「資金は待機→機会集中」の考え方を徹底します。常時フルインベストは不要です。
5. ルールA:月末・月初効果
コンセプトは「月末の受け渡し・評価・資金フローが価格に与える影響」を素直に捉えることです。実装はETFでも個別でも可能ですが、初心者はETF推奨です。
5.1 エントリー条件(ETF想定)
- 対象:TOPIX連動ETFまたは日経平均連動ETF。
- タイミング:月末営業日の引け成行で買い、翌月第2営業日の寄付で売り(保有日数の目安:1〜2営業日)。
- 除外:前日までに大きな指数イベントや地政学ショックが発生している場合は見送り。
5.2 期待根拠(初心者向けの考え方)
投資信託や機関投資家は月末リバランスや評価に合わせて売買することがあり、月末〜月初にかけて需給が一方向に偏りやすくなります。私たちはその「端」を小さく拾いにいきます。
5.3 イグジット・リスク管理
- イグジット:翌月第2営業日の寄付成行(予定通り手仕舞い)。
- 損切り:ギャップダウンが大きく、寄付で-1.0%を超える不利が出た場合は寄付でクローズ。
- サイズ:1回あたり総資金の10〜15%を上限に。最大でも40%以内。
6. ルールB:権利落ちリバウンド(配当落ち翌日の短期)
配当の権利落ち日に理論上の配当分だけ価格が下落するのは周知の通りです。実務上は、配当取りの解消売りや裁定解消などが重なり、過剰に売り込まれるケースがあります。そこで、「落ち過ぎの翌日寄付〜当日引けまでの自律反発」を取りに行くのが本ルールです。
6.1 銘柄選定
- 高配当・大型株(売買代金10億円以上が目安)。
- 権利落ち日に終値が理論配当落ち分+0.5%超の下落。
- 決算や大型材料の発表予定が近い場合は除外。
6.2 エントリー/イグジット
- エントリー:権利落ち翌日の寄付で買い。
- イグジット:同日の大引けで売り(デイホールド)。
- リスク:寄付からさらに下に走る相場日和は見送り、または-1.5%で機械的ロスカット。
6.3 実務のコツ
- 前日に「配当落ち候補」をリスト化し、落ち幅を速報でチェック。
- 約定は寄付成行に統一し、ルール逸脱を避ける。
- 日中のニュースフローで悪材料が出た場合は裁量で中止。
7. ルールC:指数入替(組入・除外)の需給
インデックスファンドは指数の構成変更に伴い、ほぼ機械的に売買します。組入決定で買い需要、除外決定で売り需要が発生しやすく、発表から実施までの間に価格が「織り込み過ぎる」ことがあります。本ルールは、「織り込み過ぎの逆行」を短期で狙う考え方です。
7.1 実務フロー
- 入替発表のニュース・適時開示を確認(組入候補・除外候補を抽出)。
- 発表翌日〜実施日の間に、過度に一方向へ走った銘柄を監視。
- 実施直前・直後の「需給解消の反動」を短期で取りに行く。
7.2 典型パターンと対応
- 除外で過剰下落 → 反発狙い:実施日の大引け〜翌営業日にかけて需給が一巡しやすい。
- 組入で過剰上昇 → 利食い狙い:実施後に押し目を作りやすい。
銘柄ごとの材料・業績トレンドに大きく逆行する場合は見送り、需給だけに依存しすぎないことが重要です。
8. 売買ルールの定式化
初心者でも迷わないよう、売買ルールを明文化します。例として:
ルールA(ETF)
月末営業日 引け成行で買い
翌月第2営業日 寄付成行で全て売り
保有中は追加売買なし、ニュースで緊急事態のみ寄付でクローズ
サイズ:総資金の10〜15%、最大40%
ルールB(権利落ちリバウンド)
権利落ち日に終値で理論値+0.5%以上の下落を確認
翌営業日 寄付成行で買い、同日 大引け成行で売り
-1.5%で損切り、約定はすべて成行
サイズ:銘柄ごとに総資金の5〜10%
ルールC(指数入替)
発表から実施までの期間、過度の一方向推移を監視
実施直前〜直後に反動狙いの短期ポジション
最大2営業日以内にクローズ
サイズ:イベント単位で総資金の5〜10%
9. 具体例:数値シナリオ(イメージ)
9.1 ルールA(ETF)
月末引けでTOPIX連動ETFを1,800円で100口買い(約18万円)。翌月第2営業日、寄付で1,818円で売却した場合、粗利は約1,800円(+1.0%)。手数料・税引き前の概算です。
9.2 ルールB(配当落ち)
理論配当落ち1.2%に対して、当日終値が2.0%下落した大型株を翌日寄付で買い、当日引けで+0.8%戻したケース。100万円の建てで概算+8,000円。想定外の続落に備え-1.5%の裁量ロスカットを設定。
9.3 ルールC(指数入替)
除外決定後に累計-7%まで売られた銘柄を、実施日の引け成行で買い、翌営業日の引けで+2.0%の反発を利確。ニュース・出来高・板の厚みを必ず確認し、業績悪化トレンド銘柄は避ける。
10. リスクと回避策
- ギャップリスク:寄付の大幅ギャップで不利約定。成行を前提としつつ、異常ニュース時は見送り。
- イベントの重複:決算・材料とカレンダー要因が重なると読みにくい。決算前後はルールB・Cを縮小。
- 資金集中の偏り:同一日に案件が集中し、サイズが過大に。ルールごと上限を厳守。
- スプレッド・コスト:薄い銘柄は避ける。取引所立会時間内の成行を基本に。
- 過剰最適化:過去データに合わせすぎない。閾値は丸め(例:0.5%、1.5%)で運用。
11. 実務オペレーション(テンプレ)
週次(毎週金曜)
- 翌週の権利落ち・指数イベント予定をカレンダー化。
- ユニバース(売買代金・出来高・スプレッド)の更新。
- 資金配分の再確認(A40/B30/C30)。
日次(寄付前・引け前)
- 寄付前:当日のイベント確認、見送り条件の再確認。
- 引け前:月末の場合はルールAの発注、イベント前後の成行発注を準備。
- 約定後:記録(価格・出来高・ニュース)を残す。
12. 検証の仕方(TradingView/Pythonの入口)
厳密なバックテストは将来の成績を保証しませんが、ルールの理解と一貫性向上には有用です。
12.1 TradingView(Pine Scriptの概念)
// 疑似コード(概念)
// 月末引け→翌月第2営業日寄付でクローズ
// ETFの終値ベースで評価する簡易モデル
// 実運用前にスプレッド・配当・費用を手動で控除
12.2 Python(考え方)
# pandasで営業日カレンダーを作成
# 月末・月初フラグ、権利落ち日フラグ、入替発表〜実施フラグを付与
# 条件に合致した日の翌営業日寄付/引けでPFリターンを集計
初心者はまず少額で紙上検証→実弾の順序を守り、取引記録を積み上げてください。
13. よくある失敗と対策
- 例外対応の連発:裁量で例外を増やすと再現性が崩壊。ルール文書を事前に固定。
- ニュース未チェック:決算・材料の重複は致命傷。寄付前のニュース確認を習慣化。
- サイズ過大:勝率の高い日でも資金全投入はしない。1回の想定損失が総資金の1%以内に収まるよう設計。
- 取引記録なし:改善不能になる。エントリー理由・数値・結果を定型で残す。
14. まとめ:初心者の最短ルート
カレンダー戦略は、「前もって分かるタイミング」を資金集中で取りに行く手法です。テクニックよりも準備・ルール化・サイズ管理の徹底がカギ。まずはETFで小さく始め、配当落ち・指数入替へと段階的に範囲を広げる。この順序が最短です。
付録A:用語ミニ辞典
- 月末・月初効果
- 月末〜月初の資金フローによって生じる価格歪み。
- 権利落ち日
- 配当・株主優待の権利が確定した翌日。理論上、配当分だけ株価が下がる。
- 指数入替
- 指数構成銘柄の見直し。組入・除外が発表されると需給が大きく動く。
- 寄付/引け
- その日の最初/最後の取引価格。
- 成行
- 価格指定をせずに即時約定を優先する注文方法。
付録B:チェックリスト(コピーして使える)
- 今週のイベントは?(月末/権利落ち/指数入替)
- 流動性フィルターはOK?(売買代金・出来高・スプレッド)
- ニュース衝突なし?(決算・大型材料)
- ポジションサイズは上限内?(A40/B30/C30)
- 約定は成行で統一?(寄付・引けのどちらか)
- 取引記録テンプレは更新済み?
付録C:実践Q&A(拡張)
Q1. 少額から始めるなら?
A. まずはETF1銘柄で1回あたり2万円程度の建てから。値動きへの耐性をつけ、手数料とスプレッドの影響を体感してください。
Q2. ボラが高い日への対応は?
A. ルール通りに寄付・引け成行を基本とし、前夜に地政学ショック等があれば見送りに切り替えます。
Q3. 税金の扱いは?
A. 国内株の譲渡損益は特定口座(源泉徴収あり)が一般的で、損益通算・繰越控除の概念を理解しておくと管理が容易です。
Q4. 手仕舞いを遅らせたくなる心理の対処は?
A. 事前に決めた手仕舞いタイミング(寄付/引け)を厳守。感情での例外は成績を不安定化させます。
Q5. 銘柄分散は?
A. ルールB・Cでは同日に2〜3銘柄まで。相関が高い業種に偏らないよう注意してください。
Q6. 監視の省力化は?
A. 価格アラートとカレンダーの定型化、スプレッド/出来高フィルタをスクリーナーで事前設定します。
付録C:実践Q&A(拡張)
Q1. 少額から始めるなら?
A. まずはETF1銘柄で1回あたり2万円程度の建てから。値動きへの耐性をつけ、手数料とスプレッドの影響を体感してください。
Q2. ボラが高い日への対応は?
A. ルール通りに寄付・引け成行を基本とし、前夜に地政学ショック等があれば見送りに切り替えます。
Q3. 税金の扱いは?
A. 国内株の譲渡損益は特定口座(源泉徴収あり)が一般的で、損益通算・繰越控除の概念を理解しておくと管理が容易です。
Q4. 手仕舞いを遅らせたくなる心理の対処は?
A. 事前に決めた手仕舞いタイミング(寄付/引け)を厳守。感情での例外は成績を不安定化させます。
Q5. 銘柄分散は?
A. ルールB・Cでは同日に2〜3銘柄まで。相関が高い業種に偏らないよう注意してください。
Q6. 監視の省力化は?
A. 価格アラートとカレンダーの定型化、スプレッド/出来高フィルタをスクリーナーで事前設定します。
付録C:実践Q&A(拡張)
Q1. 少額から始めるなら?
A. まずはETF1銘柄で1回あたり2万円程度の建てから。値動きへの耐性をつけ、手数料とスプレッドの影響を体感してください。
Q2. ボラが高い日への対応は?
A. ルール通りに寄付・引け成行を基本とし、前夜に地政学ショック等があれば見送りに切り替えます。
Q3. 税金の扱いは?
A. 国内株の譲渡損益は特定口座(源泉徴収あり)が一般的で、損益通算・繰越控除の概念を理解しておくと管理が容易です。
Q4. 手仕舞いを遅らせたくなる心理の対処は?
A. 事前に決めた手仕舞いタイミング(寄付/引け)を厳守。感情での例外は成績を不安定化させます。
Q5. 銘柄分散は?
A. ルールB・Cでは同日に2〜3銘柄まで。相関が高い業種に偏らないよう注意してください。
Q6. 監視の省力化は?
A. 価格アラートとカレンダーの定型化、スプレッド/出来高フィルタをスクリーナーで事前設定します。
付録C:実践Q&A(拡張)
Q1. 少額から始めるなら?
A. まずはETF1銘柄で1回あたり2万円程度の建てから。値動きへの耐性をつけ、手数料とスプレッドの影響を体感してください。
Q2. ボラが高い日への対応は?
A. ルール通りに寄付・引け成行を基本とし、前夜に地政学ショック等があれば見送りに切り替えます。
Q3. 税金の扱いは?
A. 国内株の譲渡損益は特定口座(源泉徴収あり)が一般的で、損益通算・繰越控除の概念を理解しておくと管理が容易です。
Q4. 手仕舞いを遅らせたくなる心理の対処は?
A. 事前に決めた手仕舞いタイミング(寄付/引け)を厳守。感情での例外は成績を不安定化させます。
Q5. 銘柄分散は?
A. ルールB・Cでは同日に2〜3銘柄まで。相関が高い業種に偏らないよう注意してください。
Q6. 監視の省力化は?
A. 価格アラートとカレンダーの定型化、スプレッド/出来高フィルタをスクリーナーで事前設定します。
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