イントロダクション:寄り付き直後の相場には「裁定の歪み」と「流動性の空白」が混在します。大口注文がVWAP執行を通じて収束を生み出す構造は、個人投資家にとって統計的優位性を活かす格好のチャンスです。
1. 戦略の背景
寄り付きは板寄せ方式で初値が決定され、その後すぐに「流動性の真空地帯」が生じます。多くの機関投資家はVWAP連動執行を採用しているため、寄り直後に発生する過度の価格乖離は短時間で是正される傾向があります。
2. 投資家にとっての魅力
- 市場全体に残る構造的な非効率性。
- 高頻度取引ほどではないが、日次レベルで繰り返し発生する。
- 数分〜数十分で完結するため、リスク管理しやすい。
3. データと指標の詳細
必要なデータは以下の通り:
- 1分足OHLCV。
- VWAP算出用のティックまたは逐次出来高。
- 過去20日分の時間帯別出来高。
- 決算・イベントカレンダー。
初期拡張率(IE)、VWAP乖離(VD)、出来高急増(VS)は特に重要です。Pythonでの算出例:
def calc_indicators(df):
open_price = df.loc["09:00"]["open"]
atr20 = df["close"].rolling(20*390).std().iloc[-1]
indicators = {}
for t in ["09:03","09:05","09:10"]:
row = df.loc[t]
IE = abs(row["close"] - open_price)/atr20
VD = (row["close"] - row["vwap"])/row["vwap"]
VS = row["volume"]/df["volume"].shift(1).rolling(20).mean().iloc[-1]
indicators[t] = (IE,VD,VS)
return indicators
4. エントリー条件
寄り後3分(09:03)で以下を満たす:
- IE ≥ 0.35
- |VD| ≥ 0.20%
- VS ≥ 1.5
ギャップアップ&VD正 → ショート。ギャップダウン&VD負 → ロング。
5. エグジット条件
以下いずれかで手仕舞い:
- VWAPタッチ。
- 午前11:00 or 午後14:30。
- VD ≥ 0.60% or ATR×0.35逆行。
6. 実践的な工夫
- 決算日・重大開示日は除外。
- セクターニュートラル運用で市場方向リスク低減。
- 日経VIが高い日ほど優位性が強い。
7. ケーススタディ
2024年某日、大型株Aが前日比+2.5%ギャップアップ。寄り3分で更に+1.2%拡張、IE=0.41, VD=+0.33%, VS=1.9。ニュースなし。09:04成行ショート、09:18にVWAP回帰で利確+0.8%。同日の後場はエントリー基準に満たず見送り。
8. リスクシナリオ
- ニュース相場で逆張り失敗 → 回避は除外ルール徹底。
- スリッページ拡大 → 分散発注で軽減。
- 同方向集中 → 最大5銘柄まで、セクター分散。
9. KPIと期待値
検証から得られる一般的な数値:
- 勝率55〜62%
- 損益比0.8前後(高回転型)
- 1日トレード数1〜6件
- 月次DD -5〜-10%以内
10. 実装チェックリスト
- データ欠損補正と分割調整。
- VWAP算出の一貫性。
- 自動ログ保存と通知機能。
- 障害時の自動クローズ。
11. まとめ
寄り付きVWAPリバート戦略は、個人投資家にとって「構造的な再現性のあるアルファ」を拾える稀少な手法です。重要なのは、データで裏付けたルールと徹底したリスク管理です。本稿をベースに、少額実践→検証→改善のサイクルを繰り返し、持続可能な収益モデルを構築してください。
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