寄り付き職人入門:夜間PTSと寄り前気配で組み立てる日本株トレードの超実践ガイド

トレード戦略

本記事では、夜間PTS(私設取引システム)の価格と出来高、寄り前の気配情報を組み合わせて、翌朝の寄り付きで短時間だけ戦うシンプルな日本株トレード手法を解説します。初心者でも実行可能なように、準備から銘柄選定、エントリーとイグジットの具体ルール、検証方法、よくある失敗の回避策までを段階的に説明します。余計な専門用語は可能な限り避け、使う場合は必ず平易な言葉で補足します。

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この戦略の要点(まず全体像)

狙いは、夜間PTSで既に動き出した需給の「続き」を、翌朝の寄り付き直後に短く取りに行くことです。板寄せ前の気配値(売買の注文バランスから算出された仮の価格)と、夜間PTSの価格変化・出来高を手掛かりに、寄りの方向性と勢いを推定します。
この手法は長時間の保有を前提とせず、寄り付きから5〜30分程度の短期で完結させるのが基本です。利益は小さく、損切りも小さく、回転数と再現性で勝負します。

前提知識(超簡潔)

PTSとは

証券取引所(東証)とは別に、証券会社のシステムを通じて売買できる市場です。東証の取引時間外でも約定できるのが特徴で、夜間PTS(夕方〜夜)では決算・材料・海外市況の影響が先に反映されることがあります。

板寄せと寄り前気配

東証の寄り付きは「板寄せ方式」で決定します。寄り前には売り・買いの注文が積み上がり、需給の差から寄り前気配値が計算され、一定間隔で更新されます。これが前日終値と大きく乖離していれば、寄りでギャップ(窓)が開く可能性が高いです。

準備(アカウント・ツール・画面)

  1. 証券口座の用意:国内大手の総合証券・ネット証券で、PTS取引の申込と取引ツールのログインを完了します。口座開設は本人確認とマイナンバー提出、取引ルールの確認を順に行うだけです。夜間PTSの手数料や取引時間は各社で異なるので、事前に手数料体系と取引可能時間帯を確認しておきます。
  2. 取引画面の整備
    • 夜間PTSの価格・出来高リスト(上昇率・出来高の並べ替え)
    • 翌朝の寄り前気配(気配値・特別気配の有無・更新回数)
    • 1分足チャート(VWAP表示、出来高下段)
    • 板(最良気配・板厚・成行残)

    以上が同時に見られると判断が速くなります。

  3. 監視リストの作成:主に決算発表直後・材料発表銘柄・夜間PTSで出来高急増の銘柄を登録します。時価総額が小さすぎるとスプレッドが広がりやすいので、流動性が十分な銘柄を中心にします。

戦略A:方向追従(トレンドフォロー型)

夜間PTSで価格上昇+出来高増が確認でき、さらに寄り前気配が前日終値比で同じ方向に動いているとき、寄り直後の「続き」を小さく取りに行く戦略です。

エントリー条件

数式は不要です。以下の3点を満たすケースを狙います。

  • 条件1:夜間PTSの価格変化…前日終値に対して+2%超(買い狙い)または-2%超(売り狙い)の方向で動いている。
  • 条件2:夜間PTSの出来高増…通常の夜間と比べて出来高が明確に増えている(目安:普段比3倍以上、もしくは浮動株比での回転が観察できる)。
  • 条件3:寄り前気配の整合…8:59時点の寄り前気配が前日終値比で同方向に1.5%超乖離。特別気配(買い・売り)の張り付きは加点要素。

寄り成行で突入するのではなく、最初の1〜3分間の足の高値(または安値)ブレイクでエントリーします。こうすることで、寄り天・寄り底の初動フェイクを一定程度回避できます。

ポジションサイズと損益管理

  • 損切り:エントリー直後の直近安値(買い)/直近高値(売り)の少し下/上に逆指値。目安は0.6%〜1.0%
  • 利確目標1.2%〜2.0%の固定幅、あるいはVWAP到達・乖離の縮小で利益確定。
  • 時間切れ:原則9:30までにクローズ。伸びていても部分利確を行い、建玉を軽くして残りはトレイリングストップに切り替えます。

なぜ機能するのか(直感的説明)

夜間PTSは情報感応度が高く、材料の一次反応が出やすい一方、参加者は少なく価格歪みも混在します。寄り前の板寄せは、より幅広い参加者がオーダーを出し、方向のコンセンサスが可視化されます。
夜間の動き(先行シグナル)寄り前気配(確度の確認)が合致したとき、寄り付き直後に同方向に推進する確率が相対的に高まるので、短時間だけ同乗するのがこの戦略の思想です。

戦略B:ギャップ・フィル(窓埋め型)

夜間PTSで極端な行き過ぎが起き、寄り前気配もそれを追認して大きなギャップが示唆される場合、寄り付き後に過熱が一巡して半値〜全戻し方向へ揺り戻すことがあります。これを狙うのがギャップ・フィル戦略です。

エントリー条件

  • 条件1:ギャップ倍率…寄り前気配が±3.5%超(中型以上)、または±5%超(小型)。
  • 条件2:乖離の根拠が弱い…材料が観測されない、または先物・セクター指数が逆方向で整合しない。
  • 条件3:寄り後のVWAP割れ/超え…寄り付き直後に1〜3分足でVWAPを跨ぐ動きが出たら逆方向へ少量で試す。

こちらは逆張り要素が強いので、ポジションサイズを小さく、損切りはタイトに設定します。初動で逆行する場合はすぐ切るのが原則です。

銘柄選定の具体ロジック

  • 流動性:東証での平均売買代金が5億円/日以上を目安。スプレッドが狭く、板が厚い銘柄が望ましいです。
  • イベント性:決算速報・材料開示・指数入替など、需給が動くトリガーがある。
  • 過去のギャップ反応:同銘柄の過去3〜6ヶ月で、ギャップ後の推移(続伸かフィルか)にパターンがあるか確認します。
  • セクターの地合い:同業他社や先物・為替の方向と整合しているかをチェックします。

実行手順(当日の朝のチェックリスト)

  1. 夜間PTSランキングで価格変化率と出来高を確認し、候補を3〜10銘柄選定。
  2. 8:20〜8:59に寄り前気配の乖離率・更新回数・特別気配の有無を観察。
  3. 9:00の寄りで飛びつかず、1〜3分足で初動の高値/安値ブレイクを待つ。
  4. エントリー後は損切り逆指値を即設定し、VWAPや固定幅で利確を段階的に実施。
  5. 9:30までに原則クローズ。持ち越しはしない(本戦略の外)。

ケーススタディ(架空の例で数値感覚を掴む)

前日終値1,000円のA社株。夜間PTSで1,030円(+3.0%)まで上昇、出来高は通常の4倍。翌朝8:59の寄り前気配は1,045円(+4.5%)。
9:00に1,044円で寄り付き、1分足で高値1,048円、安値1,038円を形成。
戦略Aなら、1,048円ブレイクで成行買い、損切りは1,038円の少し下(1,032円、-1.5%)、利確は1,060〜1,070円(+1.1%〜+2.0%)を目安に段階的に実施。
戦略Bなら、寄り直後に1分足でVWAP割れを確認して少量ショート、損切りは直近高値上、利確は1,020〜1,030円のギャップ半値戻し付近。

リスク管理とルール固定化

  • 1トレードのリスクは口座残高の0.5%〜1.0%に限定します。
  • 同時エントリーは最大2銘柄まで。監視と執行の負荷を抑えます。
  • スリッページ前提で逆指値を置く位置を調整します。
  • 連敗時はロット半減+売買停止ラインを事前に決めておきます。

検証のやり方(TradingViewでの簡易バックテスト)

PTSデータ自体はTradingView標準では扱いにくい場合があります。そこで、「ギャップ」と「寄り直後のブレイク」に絞った近似ルールで検証します。以下のスクリプトは1分足で、前日終値に対して当日寄りが±1.5%以上ギャップした銘柄に限定し、寄り後の1〜3分の高値/安値ブレイクで仕掛け、固定幅の損切り・利確を行います。

//@version=5
strategy("Yoritsuki Gap Follow (JP Stocks)", overlay=true, initial_capital=1000000, commission_type=strategy.commission.cash_per_order, commission_value=0)
tf_ok = timeframe.isseconds or timeframe.isintraday
if not tf_ok
    runtime.error("Use 1-minute (or intraday) timeframe")

// Inputs
gapPct     = input.float(1.5, "Gap Threshold (%)", minval=0.5, step=0.1)
slPct      = input.float(1.0, "Stop Loss (%)", minval=0.2, step=0.1)
tpPct      = input.float(1.5, "Take Profit (%)", minval=0.5, step=0.1)
lookBars   = input.int(3, "Lookback Bars for Breakout", minval=1, maxval=5)

// Previous close and today's open
newSession = ta.change(time("D"))
var float prevClose = na
if newSession
    prevClose := close[1]

todayOpen = open
gapUp  = not na(prevClose) and (todayOpen/prevClose - 1) * 100 >= gapPct
gapDn  = not na(prevClose) and (prevClose/todayOpen - 1) * 100 >= gapPct

// Highest/Lowest of first N bars (including current)
hh = ta.highest(high, lookBars)
ll = ta.lowest(low, lookBars)

longCond  = gapUp and close >= hh[1]
shortCond = gapDn and close <= ll[1]

// Exits
longSL  = strategy.position_avg_price * (1 - slPct/100)
longTP  = strategy.position_avg_price * (1 + tpPct/100)
shortSL = strategy.position_avg_price * (1 + slPct/100)
shortTP = strategy.position_avg_price * (1 - tpPct/100)

if (longCond and strategy.position_size == 0)
    strategy.entry("L", strategy.long)
if (shortCond and strategy.position_size == 0)
    strategy.entry("S", strategy.short)

strategy.exit("L-EXIT", "L", stop=longSL, limit=longTP)
strategy.exit("S-EXIT", "S", stop=shortSL, limit=shortTP)

plot(strategy.position_avg_price, title="Entry Price")

この近似検証で良好なプロファイルが出ても、実運用ではスリッページ・板厚・気配更新の挙動により結果が変わります。必ず紙上トレードや少額から始め、執行品質を体で覚えましょう。

よくある失敗と対処

  • 寄り成行で飛びつく:初動の反転で即損切りになりやすいです。最初の1〜3分の高値/安値ブレイクを待つだけで成績が安定します。
  • 薄い板への大きすぎるロット:スプレッド損で期待値が崩れます。平均売買代金で足切りし、板厚を確認してからサイズを決めます。
  • ニュースの中身を見ない:数字のサプライズの方向と、会社のガイダンスや定性的コメントが逆のとき、寄り後の反転が起きがちです。ヘッドラインだけでなく要旨に目を通します。
  • 引っ張りすぎ:本戦略は寄り付近専用です。9:30を越えても保有するなら、それは別戦略です。

実装を安定させるコツ

  • 固定の朝ルーティンを決め、同じ順序でチェックします。
  • 記録テンプレート(銘柄・条件達成状況・約定・損益・反省点)を用意し、必ず書き残します。
  • 週次で閾値の見直し:地合いで最適な閾値(ギャップ幅、SL/TP)が変わります。過去2〜4週間の実績で更新します。

Q&A(初心者が悩みがちなポイント)

Q1:どの証券会社を使えばいいですか?
A:取引コスト、PTS対応、ツールの使いやすさで比較します。夜間PTSの時間帯・手数料が自分の生活リズムと合うかが重要です。

Q2:材料の強弱はどう判断しますか?
A:サプライズの方向(売上・利益・ガイダンス)と、セクターや先物との整合を見ます。強材料でもガイダンスが弱い場合は寄り天リスクが上がります。

Q3:逆指値を置くとヒゲで刈られます。
A:直近足の安値/高値の少し外に置き、板厚が薄い時間帯はサイズを減らします。ヒゲに強い段階利確+建値ストップも有効です。

まとめ

夜間PTSと寄り前気配は、翌朝の方向性を推定するための高解像度のナウキャスト情報です。条件の整合(夜間の方向と寄り前気配の一致)を重視し、寄り直後の短い波だけを小さく取りに行く。損切りと時間切れの徹底、ロットの抑制、そして継続的な検証が成果を左右します。まずは監視と練習から、少額・短時間で始めましょう。

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