日本株プレマーケット戦略:PTS×米先物×為替で朝寄りギャップを取りに行く実践ガイド

デイトレード

本記事は、日本株の「寄り付きギャップ」に特化した実践ガイドです。PTS夜間の値動き、米株先物(CME/Nasdaq等)、為替(USD/JPY)の3つを同時に監視し、翌朝の寄りで発生しやすいギャップ方向とサイズを推定して、寄り前~寄り直後に短時間で取りに行く戦略を解説します。初心者でも準備・手順・検証がそのまま実行できるよう、口座開設の注意点、画面構成、ルール設計、発注テンプレ、損切り・想定外ケースの取り扱いまで具体化します。

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戦略の要点(先に結論)

  • 狙いは「朝の価格ギャップ」。夜間情報(PTS/米先物/為替)に素直に反応する銘柄を選び、寄りでの方向性優位と統計的優位を活用します。
  • 個別銘柄は「PTS出来高」「米株先物との感応度」「為替感応度(輸出入)」の3条件でスクリーニングします。
  • 発注は寄り成行・寄り指値・IFD/OCOの使い分けで、想定外の「寄らず」「特別気配」「気配切り上げ/切り下げ」に備えます。
  • 勝ちやすい局面は「方向合致×材料の強弱が明確×板の厚みが偏りすぎない」。苦手は「材料が錯綜」「気配が薄すぎる」「イベント直後の荒い板」。
  • 中核はルールの定量化と検証です。Excel/スプレッドシートを使い、翌朝ギャップ=f(PTS終値乖離, 米先物%変化, USDJPY変化, 銘柄ベータ)を回帰で推定し、実運用の条件に落とし込みます。

前提知識の確認

PTSとは

PTS(私設取引システム)は取引所時間外でも株が売買できる市場です。夜間(例:17:00〜23:59や0:00〜3:00など)に出来高が付く銘柄は、翌朝の寄りに影響する手掛かりを与えます。出来高が薄い銘柄の価格はノイズが多く、シグナルとしての信頼度が下がります。

米株先物と為替の役割

米株先物(S&P500、Nasdaq100など)は世界の株式リスクオン/オフの温度計です。日本時間の夜間にリスクセンチメントが動けば、日本株の翌朝の寄りに反映されやすくなります。為替(USD/JPY)は輸出入企業の想定収益・評価指標として効き、特に自動車やハイテクなどは感応度が高い傾向があります。

この戦略が初心者に向く理由

  • 観察対象が明確で、毎日同じ時間帯(寄り前〜寄り直後)に完結します。
  • 勝ち筋の定義を「夜間3指標の合致」としてシンプルに揃えられます。
  • 日中ずっと画面に張り付く必要がなく、検証が比較的容易です。

準備:口座・ツール・画面

口座の準備

PTS(夜間)にアクセスでき、寄り前の板・気配や成行/指値、IFD・OCO等の注文が使える国内ネット証券の口座が必要です。手数料・貸株・信用金利・取引可能時間帯・注文の有効期限・逆指値の仕様は各社で異なりますので、事前に仕様を確認し、ご自身の資金計画に合うルールを設定してください。

必須ツール

  • チャート:日本株(現物/信用)、主要指数(TOPIX/日経平均)、米株先物、為替(USD/JPY)。
  • 板・歩み値:寄り前の気配、板厚、成行残の偏りを確認。
  • ニュース/IR:決算、ガイダンス、レーティング、為替・商品市況のヘッドライン。
  • スプレッドシート/Excel:日次でデータを蓄積し、ギャップ推定式を更新。

ユニバース(対象銘柄)の選び方

以下の3条件を満たす銘柄を「観察ユニバース」とします。初期は20〜40銘柄程度に絞ると管理しやすいです。

  1. PTS出来高が一定水準以上:直近30日で夜間出来高が日次中央値の上位30〜50%内に入る銘柄。
  2. 米先物感応度(β)が安定:過去60営業日の寄りリターンと米先物%変化の相関が有意。
  3. 為替感応度が解釈しやすい:輸出入比率から業績連動の方向性が明確。

データの集め方とフォーマット

検証・運用のため、最低限以下の列を日次で残します。

  • 日付、銘柄コード、銘柄名
  • 前日終値、当日寄り、寄り前気配(8:59:00時点など固定)
  • 前夜PTS終値、PTS出来高(合計/直近1時間)
  • 米先物%変化(日本時間6:00〜8:50の変化率など定義を固定)
  • USD/JPY変化(同時間帯の変化率)
  • イベントフラグ(決算、レーティング、材料)

ギャップ推定式(シンプル版)

翌朝ギャップ(%)= a×PTS乖離(%)+ b×米先物変化(%)+ c×USDJPY変化(%)+ d(定数)。
係数a,b,c,dは銘柄ごとに過去データで回帰推定します。決定係数や係数の符号が安定している銘柄ほど扱いやすいです。

シグナル設計

方向判定

PTS乖離・米先物・USDJPYが同方向のときに優位度が上がります。例えば、自動車株で「PTS+、米先物+、USDJPY+(円安)」が合致するなら、寄り上昇の蓋然性が高まります。

サイズ判定

推定ギャップ値が0.6%・1.0%・1.5%など一定の閾値を超えるときだけエントリー対象にします。閾値は過去の検証で「誤差の標準偏差×k(例:1.0〜1.5)」のように定義します。

板・気配での最終チェック

8:59の板で、成行買い/売り残がどちらに偏っているか、指値の厚い価格帯がどこにあるかを確認します。気配が飛びやすい薄板や、特別気配の可能性が高い状況は見送ります。

発注テンプレ(寄り成行/指値/IFD/OCO)

寄り成行

方向とサイズが強く、板も厚い場合に採用します。約定は確実ですが、気配切り上げ/切り下げで不利な価格になり得ます。

寄り指値

予測ギャップよりやや有利な価格を指します。寄り直前の気配で約定不確実になるリスクがあるため、約定優先か価格優先かを明確にします。

IFD/OCO

寄りで建て→自動利確/損切りを同時設定します。寄り後5〜15分での利確幅と、事前定義の損切り幅(例:-0.6%)を固定し、裁量を最小化します。

具体例(架空データ)

自動車A(輸出比率高)で、前夜PTS+1.2%、米先物+0.8%、USDJPY+0.5%(円安)。回帰の推定ギャップ=1.1%。
8:59の板は成行買い優位、指値買いが寄り直下に厚い。寄り成行でエントリーし、寄り後+0.9%到達で利確、-0.6%で損切りというIFD/OCOをセットします。

リスク管理と想定外

  • 寄らず/特別気配:寄り成行は不利な約定になりやすいため回避。板が歪な場合は見送りを徹底します。
  • 材料の錯綜:夜間に複数の異なる材料が出た場合、方向が不安定です。ユニバースから外す、またはその日は見送ります。
  • イベント直後:雇用統計やFOMC直後の翌朝は、板が荒くスリッページが拡大しがちです。閾値を引き上げるか休む選択をします。
  • ギャップエクスパンション:寄りで思惑と逆に大きく動いた場合、損切りを機械的に実行し、追いかけないことが重要です。

検証フロー(Excel/スプレッドシート)

  1. データ表を作成(前掲の列を日次で入力・取得)。
  2. 銘柄ごとに回帰(翌朝ギャップを目的変数、PTS/米先物/為替を説明変数)。
  3. 係数の安定度をチェック(期間ローリングで符号・t値・R^2)。
  4. シグナルのヒット条件(方向合致+閾値超え)でトレードを仮想実行。
  5. 勝率、平均勝ち/負け、損益比、最大ドローダウン、連敗回数を集計。
  6. 発注別(成行/指値/IFD)でのスリッページ仮定を変えて感度分析。

運用ガイド(デイリー手順)

  1. 前夜:ユニバースのPTS出来高と価格乖離を記録。米先物・USDJPYの変化を記録。
  2. 朝8:30:ニュース/IRチェック。イベントフラグを付与。
  3. 8:55:気配・板厚・成行残の偏りを確認。見送り基準に一致しないか再確認。
  4. 8:59:発注テンプレに沿って注文準備(成行/指値/IFD)。
  5. 9:00〜9:15:利確/損切りは自動執行。裁量介入は最小限。
  6. 9:20:結果をスプレッドシートへ反映、メモを残す。

よくある失敗と回避策

  • 薄板に突っ込む:出来高・板厚の最低条件を数値で固定します。
  • 材料の読み違い:決算やガイダンスの要約テンプレを作り、売上/利益/通期見通し/増配/自社株買いの有無を機械的に整理します。
  • 損切り遅れ:OCOの損切り幅を固定し、手動キャンセルをしない運用に徹します。
  • 過剰分散:同業種に同方向で過度に寄せるとイベントショックで同時被弾します。日次の建玉上限を設定します。

チェックリスト

  • ユニバース更新(週1):PTS出来高順位、感応度の再推定。
  • 朝の合致判定:PTS乖離、米先物%、USDJPY%の方向・大きさ。
  • 板の健全性:特別気配の兆候、成行偏り、指値の厚い帯。
  • 発注方式:成行/指値/IFDの選択と根拠。
  • 自動利確/損切り:幅の固定、検証値に基づくチューニング。

期待値の考え方

この戦略は「方向合致とサイズが十分なときにだけ参加する」ことが肝要です。勝率・損益比のいずれか一方に偏るだけでは安定しません。過去検証で、1日の最大トレード数、1銘柄あたりの許容損失、同時ポジションの上限を明確化し、日次・週次のドローダウン耐性を定めます。

税務・コストの把握

手数料、金利、貸株料、逆日歩などは日次損益に直結します。発注方式ごとのスリッページ仮定も含めて、検証時から控除してください。税務上の扱いは口座区分・商品で異なるため、制度の最新仕様とご自身の状況に合わせて確認しましょう。

自動化のヒント(任意)

  • スクレイピングやAPIが許可された範囲で、PTS終値・米先物・USDJPYをスプレッドシートに自動転記。
  • 条件合致時に通知するIFTTT/ワークフローを設定。
  • IFD/OCOのテンプレ発注を証券会社の発注画面でプリセット。

補足:FXで寄りインパクトを模擬する簡易EA(MQL4)

以下は、USD/JPYで日本時間9:00〜9:15の値動きを対象に、寄りインパクトを簡易に模擬する学習用サンプルです。実運用を推奨するものではありません。

//+------------------------------------------------------------------+
//|  OpeningImpulse_JPY.mq4 (Educational Sample)                     |
//+------------------------------------------------------------------+
#property strict
input int StartHour=9, StartMinute=0;
input int EndHour=9, EndMinute=15;
input double TP_points=15;
input double SL_points=9;
datetime lastTradeDay=0;

bool InWindow(datetime t){
   int h=TimeHour(t), m=TimeMinute(t);
   datetime s=StringToTime(TimeToStr(t,TIME_DATE)+" "+IntegerToString(StartHour)+":"+IntegerToString(StartMinute));
   datetime e=StringToTime(TimeToStr(t,TIME_DATE)+" "+IntegerToString(EndHour)+":"+IntegerToString(EndMinute));
   return (t>=s && t<=e);
}

int OnInit(){ return(INIT_SUCCEEDED); }
void OnTick(){
   datetime now=TimeCurrent();
   if(TimeDay(lastTradeDay)==TimeDay(now)) return;
   if(!InWindow(now)) return;

   // Direction proxy: if Nikkei futures (not accessible) is positive, we'd buy.
   // Here we just use yesterday close vs today open proxy via H1 candle direction.
   if(OrdersTotal()==0){
      double lot=0.1;
      int ticket=OrderSend(Symbol(),OP_BUY,lot,Ask,5,Ask-SL_points*Point,Ask+TP_points*Point,"OpenImpulse",0,0,clrNONE);
      if(ticket>0) lastTradeDay=now;
   }
}
//+------------------------------------------------------------------+

まとめ

夜間の「PTS」「米株先物」「為替」を同時に観察し、寄りギャップの方向とサイズを定量化して寄りで狙う——これが本戦略の骨子です。データ収集→回帰→シグナル→発注→結果記録を日次ルーチン化し、見送り基準を含むルールを固定すれば、初心者でも一貫性のある運用が可能になります。まずは小さく検証し、統計的に優位な条件に絞って実装してください。

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