「インフレなのに景気が悪い!?」スタグフレーション時代の需給ギャップを読み解く

金融

「景気が悪いのに物価が上がっている…」こんな経済状況をニュースで耳にしたことはありませんか?これはまさに「スタグフレーション」と呼ばれる現象で、日本でも歴史的に何度か経験されています。

通常、物価が上昇するインフレ局面では経済成長も伴います。しかしスタグフレーションはその逆。景気が停滞、もしくは後退しているのに物価だけが上がっていくという、非常にやっかいな状況です。

この記事では、このスタグフレーション時に「需給ギャップ」はどのような動きをするのかについて解説していきます。

そもそも需給ギャップとは?

需給ギャップとは「実際のGDP(国内総生産)」と「潜在GDP(本来発揮できる経済力)」の差を指します。

  • プラスの需給ギャップ:需要が供給を上回っている=景気が過熱気味。インフレのリスクが高まる。
  • マイナスの需給ギャップ:供給が需要を上回っている=不況気味。デフレ圧力がかかる。

このギャップは経済政策を考える上で重要な指標です。たとえば日本銀行は、マイナスの需給ギャップを埋めるために金融緩和を行ったりします。

スタグフレーション時の需給ギャップの動き

では、本題です。スタグフレーションのように景気が悪いのに物価が上がるという矛盾した状況下で、需給ギャップはどうなるのでしょうか?

一般的には「プラス」になりやすい

インフレが進んでいるということは、供給に対して需要が多い、つまり「需給ギャップがプラス」であると解釈されることが多いです。とくにスタグフレーションの多くは「コストプッシュ型インフレ(供給側コストの上昇が原因)」が中心です。

  • エネルギーや原材料の価格が急騰する(例:オイルショック)
  • 生産コストが上がり、企業が価格を上げる
  • 物価が上昇するが、実質所得が減って購買力は低下

このように、供給側の制約が原因で価格が上がるため、結果的に「需要>供給」となり、需給ギャップはプラス圏にあると考えられます。

ただし「マイナス」になることもある

スタグフレーションが長引くと、消費者の購買力がさらに落ち込み、需要が冷え込んでしまいます。そうなると、実際のGDPが潜在GDPを下回り、需給ギャップはマイナスに転じる可能性があります。

  • インフレにより生活コストが上昇
  • 家計が節約志向になり、消費が減る
  • 企業も投資を控え、経済がさらに停滞

さらに、政府や中央銀行が金利を引き上げるなどの引き締め策を行った場合、一時的に需要が急減してマイナスの需給ギャップが生じることもあります。

歴史的事例:1970年代のオイルショック

スタグフレーションの代表例が1970年代のオイルショックです。原油価格の急騰により、生産コストが跳ね上がり、世界的にインフレが進行しました。

同時に、多くの国で景気が悪化。日本でも企業倒産や失業率の上昇が相次ぎましたが、物価は上がり続け、中央銀行の政策は難航しました。この時期、日本では需給ギャップが一時的にプラスだったとされますが、長期的にはマイナスに転じていきました。

現代の日本とスタグフレーション

最近では「賃金が上がらないのに物価は上がる」という状況が続いており、事実上の「ミニ・スタグフレーション」と言える局面が到来しています。

たとえば、エネルギー価格や食品価格の高騰、円安による輸入コストの上昇が背景にあります。一方で、国内需要は回復しきっておらず、潜在GDPを下回っている状態が続いているため、現在の需給ギャップはマイナス圏にあるとされています。

結論:スタグフレーション時の需給ギャップは一筋縄ではない

スタグフレーションは経済学的にも非常にやっかいな現象で、通常の「景気と物価の関係」の常識が通用しません。

需給ギャップも、「インフレ=プラス」「不況=マイナス」と単純には割り切れないため、その都度、原因を精査する必要があります。

まとめ

  • スタグフレーションとは「景気停滞+インフレ」の状態
  • 初期はコストプッシュ型インフレにより、需給ギャップがプラスになりやすい
  • 長期化や引き締め政策により、最終的にマイナスに転じることも
  • 現代の日本ではマイナスの需給ギャップ下でインフレが続いている

今後も世界的な地政学リスクやサプライチェーン問題など、スタグフレーションを引き起こすリスクは消えていません。経済指標を注視しながら、複雑な経済現象を見極める目を養っていくことが大切です。

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