キャッシュセキュアドプット売りで現物を割安に取りに行く──BTC/ETHに応用できる実用フレームワーク

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【DMM FX】入金

戦略の要旨

キャッシュセキュアドプット(Cash-Secured Put, 以下CSP)は、十分な現金(またはステーブルコイン)を証拠金として確保したうえでプットオプションを売るシンプルな戦略です。狙いは二つ。第一に、プレミアム(受取保険料)を安定的に獲得すること。第二に、万一アサイン(権利行使)された場合でも、希望価格以下で現物(BTC/ETHなど)を取得できることです。価格が行使価格を上回って満期を迎えればプレミアムを丸取り、下回れば想定より安い実効購入単価(行使価格−受取プレミアム)で現物化します。

なぜ暗号資産で有効か

暗号資産市場は歴史的にボラティリティが高いため、同じ満期・同じデルタでも株式に比べ受取プレミアムが厚くなりがちです。CSPはボラの高さを収益源に変える代表格で、トレンド相場でもレンジ相場でも機能します。特にイベント(CPI・FOMC、半減期、アップグレードなど)前後はインプライド・ボラ(IV)が上がりやすく、IVが高い局面で新規ショートを仕掛けるとプレミアム効率が改善します。

基本設計(銘柄・満期・行使価格)

銘柄選定

板厚・出来高・清算基盤が相対的に安定しているBTC/ETHを起点にします。アルトに拡張するのは運用が馴染んでからで構いません。

満期(DTE)の目安

  • 7–10日:プレミアム回転が速く、ガンマ・ベガ影響が大きい。イベント跨ぎ注意。
  • 14–21日:プレミアムと時間分散のバランスが良い、管理しやすい。
  • 30–45日:単位期間の収益率は低下しやすいが、年率換算では見劣りしないことも多い。ロール(建て替え)余地が広い。

行使価格(ストライク)

OTM(原資産価格より下の行使価格)を基本に、デルタ10–30帯での設計が扱いやすい。経験則として、「欲張らずに守る」=低デルタ・短DTEから始めると破綻しにくいです。

必要資金と損益構造

CSPは「現金(ステーブル)で100%担保」する前提が核です。理論上の最大損は、行使価格 × 契約数量 − 受取プレミアム(=満額アサインされた場合の取得コスト)です。プレミアムは即時に受け取り、満期までの時間価値減少(セータ)を味方にします。

年率換算利回り(単純化)は、(受取プレミアム ÷ 必要担保) × (365 ÷ DTE)。過去のボラ環境にもよりますが、デルタ15前後・DTE14程度で年率一桁台後半〜二桁台前半が現実的レンジになることが多いです(市況次第)。

執行と板読みの基礎

売り建ては指値が基本。板の深さ・IVの勾配(スキュー)・出来高の集中帯を見て、中値+αに置くと約定しやすく、不要なスリッページを抑制できます。ボラ急騰直後は気配が荒れやすいので、数分〜数十分のクールダウンを挟んでからの設置も有効です。

ロール・クローズ・アサイン対応

  • クローズ(買い戻し):受取プレミアムの50–75%を確保できたら、残存価値を切り捨てて再建てする「早仕舞い」で回転率を高める。
  • ロール:価格が行使価格に接近したら、期限を先延ばししつつ同等デルタのOTMへ移す。クレジット(受取超)を確保できる条件を優先。
  • アサイン:満期でITMになった場合、割安な実効単価で現物化。以降はカバードコールに切り替えて「ホイール戦略」へ移行。

イベント・ニュース耐性

CPI/FOMCや大型アップグレード、主要ETFフローが集中するタイミングは、IV尖りギャップが起きやすい。原則として、イベント前はサイズを落とす/DTEを短くする/ストライクを遠ざけるのいずれかでリスク緩和。イベント明けのIV低下(クラッシュ)を狙って新規ショートするのも手堅い定跡です。

リスク管理:数字で決める

サイズ決定(ボラターゲティング × ケリーの控えめ運用)

ポートフォリオの年率目標ボラ(例:10%)を決め、想定ドローダウンから単発のCSPに割けるリスク予算を逆算。さらにケリーの1/2〜1/4を上限に据えると過剰リスクを避けやすい。

分散と相関

満期の分散(例:7D/14D/21Dの階段構築)、ストライク分散、銘柄分散(BTC/ETH)で相関ショックをならす。アカウント分離・取引先分散もオペレーショナルリスク抑制に効きます。

シナリオ別の損益イメージ

シナリオ 終値 結果 損益 次の一手
穏やかな上昇 行使価格より十分上 満期消滅 受取プレミアムが確定益 同等デルタで再建て
小幅下落 行使価格付近 時間価値が残る 早仕舞い or 期限延長ロール 新DTEで再建て
急落 行使価格を大きく下 アサイン 実効取得単価=行使価格−受取プレミアム カバードコールへ移行

数値テンプレート(コピペ運用)

前提:口座残高=10,000USDT、銘柄=BTC、スポット価格=60,000、DTE=14、目標デルタ=15、IV=年率55%

  • 候補ストライク(デルタ15相当のOTM)を板で確認
  • 必要担保 ≒ 行使価格 × 0.001BTC × 契約数
  • 受取プレミアム/担保 × (365/14) = 年率期待(市況依存)
  • 早仕舞い条件:受取の60%確定、または残存3日で時間価値極小化
  • アサイン後:即時でCC(カバードコール)に切替、DTE7–14、デルタ20前後

よくある失敗と回避策

  • 欲張りストライク(近すぎ):短期勝率は上がっても、数回の急落で全利益を吐き出す。OTMを維持。
  • サイズ過多:一度のイベントで口座が硬直。ポジションは分割/階段化。
  • ロールの遅れ:価格接近に気付くのが遅いと不利な約定に。価格アラートとOIクラスター監視でプロアクティブに。

拡張:ホイール戦略

CSPで現物を得たら、同数量のコールをOTMで売るカバードコールへ接続。プレミアム回収を継続しつつ、価格がさらに下がれば再びCSP、上がれば保有現物を段階的に利確するフローを作れます。

チェックリスト(発注前)

  • イベントカレンダー確認(CPI/FOMC・大型アップグレード)
  • IVレベルとスキューを確認(できれば高IVで売る)
  • 板厚・出来高・建玉(OI)とクラスター
  • DTEとロール余地、アラート設定
  • 最大損と担保、想定DD、許容リスク比率

まとめ

CSPは、割安な現物取得とプレミアム収入を両立させる、初心者にも取り組みやすい規律型キャッシュフロー戦略です。ボラが高い暗号資産市場では特に有効で、サイズ・ストライク・DTEの三点管理を徹底すれば、長期的な期待値の積み上げが狙えます。

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