IVスキュー/スマイル裁定で狙う暗号資産オプションの歪み収益化

暗号資産
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【DMM FX】入金

イントロダクション:なぜ「IVスキュー/スマイル裁定」なのか

オプションのインプライド・ボラティリティ(IV)は、同じ期限でも行使価格(ストライク)ごとに異なります。特に暗号資産(BTC/ETH)では、25ΔのプットとコールのIV差(リスク・リバーサル:RR)や、中央付近に比べ端のIVが高くなる“スマイル/スマーク”(バタフライ:BF)が顕著です。市場の恐怖やヘッジ需要、需給の偏りでIVカーブが歪むため、構造的に“過剰に買われたIV”と“過剰に売られたIV”が同時に生じます。これを相対価値(レラティブバリュー)として組み合わせ、方向(デルタ)を極力抑えつつIVの歪みに賭けるのが本稿の主題です。

前提整理:用語と計測

主要用語

IV(Implied Volatility):市場が織り込む将来変動率。
スキュー(Skew):同期限でOTMプットとOTMコールのIV差。一般にプット>コールが多い。
スマイル/スマーク(Smile/Smirk):中央(ATM)より端(OTM)のIVが高い/非対称に傾く形状。
25Δ RR:25デルタ・コールIV − 25デルタ・プットIV。負ならプット優位(プットIVが高い)。
25Δ BF:0.5×(25ΔコールIV + 25ΔプットIV) − ATM IV。正なら端が高い“スマイル”。

観測の基本

まずは同一満期でATMと±25ΔのIVを収集し、RRとBFを計算します。
例:ATM IV=55%、25ΔコールIV=48%、25ΔプットIV=64% → RR=−16%、BF=+1.0%。この場合、プットIVが顕著に高く、スマイルもやや強いと解釈できます。

戦術1:リスク・リバーサル(RR)の相対価値

スキューが強い(プットIV≫コールIV)局面では、高IVを売り、低IVを買うのが基本方針。具体的には「25Δプット売り+25Δコール買い」のショートRRでプットの過剰IVを売り、同時にコールの割安IVを保有します。デルタは概ね中立に調整し、方向に賭けない設計にします。

実装手順(例:満期30日)

  1. 対象:BTCまたはETHの同一満期。
  2. 計測:ATM、25Δコール/プットのIV。RRが大幅マイナスであることを確認。
  3. 建て玉:25Δプットショート1枚+25Δコールロング1枚。
  4. デルタ調整:初期デルタを現物/先物で微調整(±0.10以内目安)。
  5. リスク管理:証拠金・最大許容損失・ロスカ水準を事前に固定。

利確と損切り

RRが平均回帰(スキュー緩和)した時が主な利確機会。逆にスキュー拡大(プットIVさらに上昇)で想定以上の含み損が生じる前に、時間で区切る(例:建て後3〜5営業日で見直し)またはRR閾値で機械的に切るのが有効です。

戦術2:スマイル(BF)に乗るバタフライ

端のIVが過剰に高い場合(BF>0)、中央付近(ATM近傍)のIVに対して両端のIVを売る構成がワークします。例として、OTMコール1売+ATMコール2買+ITMコール1売のようなコール・バタフライ(あるいはプット側)で、端の高IVを売り、真ん中を買うことでスマイルに賭けます。デルタ中立に近づけるため、左右対称のストライクを選ぶのがコツです。

戦術3:スキュー × 期限差(カレンダー/ダイアゴナル)

同じスキューでも、短期ほど極端、長期ほど穏やかになりやすい特徴があります。そこで、短期の高IVを売り、長期の低IVを買うカレンダー構成(ATM/±25Δ)や、デルタをやや傾けるダイアゴナルで歪みを取りに行きます。期限差から生まれるロールダウン(IVの平準化)が追い風になります。

初心者が踏む典型的な罠

  • 方向リスク過多:「IV裁定」と言いながらデルタが偏っている。建て時Δを計算し、±0.10以内を目安に。
  • ベガ・ガンマの想定不足:IVショック局面でショート側が急膨張。サイズは「一撃で耐える額」の1/2。
  • 期限ミスマッチ:RRとBFは期限で性質が異なる。同じ期限で比較・発注する。
  • 流動性薄:板スプレッドが広いストライクは避け、板気配/出来高/約定履歴を確認。

発注・執行の実務:滑らないための手順

板と注文種類

IV裁定では成行は厳禁。基本は指値、サイズは細かく分割、約定ごとに反対サイドをすぐ埋めてレッグリスクを短縮します。TWAP/VWAP/POV風に時間分散し、スリッページを最小化しましょう。

チェックリスト

  1. 対象満期・ストライク・数量を紙(またはノート)に明示。
  2. RR/BFの現在値と直近1週間の分布。
  3. 板スプレッド・出来高・清算価格・必要証拠金。
  4. ヘッジ先(現物/先物)と手数料水準。
  5. 利確/損切りの数値ルール(RR閾値・時間・PnL)。

リスク管理:数値で固定する

資金管理:一戦略あたりのリスク予算は総資金の1〜2%に制限。
最大ドローダウン制約:累積損失が3〜5%超で一時停止。
ボラターゲティング:建玉時点の想定ボラでサイズを逆数配分。
テールヘッジ:イベント週(CPI/FOMC等)はショート側を薄く、もしくはOTMプットの買いで保険。

簡易バックテストの考え方

厳密なオプション時系列がなくても、以下で簡易再現が可能です。

  1. 毎日(または毎時間)ATM/25ΔのIVと価格を記録。
  2. RR/BFが閾値を超えたらシグナル点灯。
  3. スプレッド×数量×ラウンドトリップで手数料・滑りを控除。
  4. デルタは先物で都度中立化(±0.10を超えたらヘッジ)。
  5. PnLを集計し、最大DD・勝率・平均損益/損失比・シャープを算出。

ケーススタディ(数値例)

例:満期21日、BTC価格=100、ATM IV=60%、25ΔC=50%、25ΔP=70%、RR=−20%、BF=+2%。
建て:25ΔPショート1、25ΔCロング1、現物/先物でΔ中立化。プレミアム差=(P受取−C支払)。
想定:RRが−10%近辺へ回帰すれば、プットIV縮小コールIV拡大の両面でポジティブ。
終了条件:RR回帰 or 残存日数7日を切ったらクローズ。

運用フロー(テンプレ)

  1. 観測:対象銘柄・満期のRR/BFを取得(±25ΔとATM)。
  2. 評価:過去分布と比較し、極端ならシグナル。
  3. 設計:RR/バタフライ/カレンダーのどれで取るか決定。
  4. サイズ:リスク予算からロット計算(手数料/スリッページ込み)。
  5. 執行:指値・分割・ヘッジ同時執行。
  6. 管理:Δ・Γ・Vegaの閾値管理、イベント前後は縮小。
  7. 出口:RR/BFの回帰、または時間・PnLルールで機械的に。

Q&A

Q:方向性を完全にゼロにできますか?
A:理論上は可能ですが現実には価格変動やIVの非線形性でズレます。±0.10以内を許容帯として運用するのが現実的です。

Q:どの満期が最適?
A:流動性と実務のバランスから、7〜45日が扱いやすい範囲です。イベントが近い場合は短期の歪みが強くなる傾向があります。

Q:先に“IVが下がり続ける”ときは?
A:ショートVega偏重にならないよう、ロングVegaのレッグ(例:カレンダー長期買い)を意識し、総合Vegaのバランスを取ってください。

まとめ

暗号資産オプションのIVスキュー/スマイルは、投資家心理と需給が作る“歪み”です。RR・バタフライ・カレンダーを用い、デルタを抑え、IV相対価値に集中する——これが初心者でも取り組みやすい王道の収益化アプローチです。数値で決めたルールに従い、サイズを守り、粛々と積み上げてください。

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