オンチェーン分析で組み立てる短期トレード戦略:BTC/ETHに効く実用KPIと運用手順

オンチェーン分析
本稿では、オンチェーンデータを活用してBTC/ETHの短期トレードに再現性を持たせる方法を、初歩から運用レベルまで段階的に解説します。価格チャート単体では拾い切れない「フロー(資金の流れ)」と「保有者のコスト構造」を定量化し、エントリーと手仕舞いの判断精度を高めます。実際の指標値は例示で説明しますので、ツール依存にならず概念から理解できるよう構成しています。

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1. オンチェーン分析の射程:短期でも有利性が出る理由

オンチェーンは本来、中長期の循環把握に向いていると言われます。しかし短期でも優位性は出ます。理由は二つあります。第一に、取引所入出金・ステーブルコイン供給などのフローは短期価格に直結しやすいこと。第二に、SOPRや短期MVRVなどの「含み損益比率」は反転点で鋭敏に動くからです。テクニカル指標と違い、オンチェーン指標は参加者の原価や実現損益に基づくため、ダマシが比較的少ないのが利点です。

2. 使う指標の全体像(KPIマップ)

短期トレードで使うKPIは、次の三層で考えます。

  • フロー層:取引所へのネット流入(Exchange Netflow)、ステーブルコインの新規発行/供給伸び、クジラの大口移動。短期の需給インパクトを把握します。
  • コスト構造層:SOPR(Spent Output Profit Ratio)、短期MVRV(MVRV 7D〜30D)、Realized Priceとの乖離。参加者の含み益・含み損の偏りを測ります。
  • 行動層:アクティブアドレス、取引件数、平均保有期間の短縮/延長、HODL Wavesの若年化。反転局面での参加者行動変化を捉えます。

この三層を同時に見ることで、単一指標の誤判定を抑え、シグナルの質を担保します。

3. 指標の定義と読み方(要点だけ覚える)

SOPR:売却時の実現損益比率です。1.0を上回れば利食い優勢、下回れば損切り優勢です。短期の反転は「SOPRが1.0を割れないで切り返す(利食いの失速)」か「1.0超を維持できず再度割り込む(戻り売り強)」局面で起きやすいです。

短期MVRV:短期保有者の時価総額/取得原価の比です。例えばMVRV(30D)が1.05→1.20へ急伸なら短期勢の含み益拡大=利確圧力の台頭を示唆します。1.0近辺は「損益分岐の攻防」と覚えてください。

Realized Price:ネットワークの平均取得単価です。これを価格が上回れば「広義の含み益状態」で、下回ると広義の含み損状態です。短期ではタッチ&反発、明確な回復/割れの確認が有効です。

取引所ネットフロー:取引所への入金が増えると売り圧が増えがち、出金が増えると長期保有モードの可能性が高まります。絶対値だけでなく「変化率」を見てください。

ステーブルコイン供給:USDT/USDC等の発行残高増は新規火力の準備と解釈できます。価格上昇前に先行するケースが多いです。

4. 具体的な短期戦略(BTC/ETH共通)

4-1. 反発狙い:SOPRピボット + Realized Price回復

条件例:SOPRが0.99〜1.00で滞留後に1.00上抜け、同時に現物価格がRealized Priceを明確に回復。ここで小さく試し玉を入れ、直近安値の少し下にストップを置きます。利確は短期MVRV(30D)が1.15〜1.25に達したら段階的に。

4-2. 戻り売り:短期MVRV過熱 + 取引所流入加速

条件例:短期MVRVが1.20超かつ、取引所ネット流入が前週比+30%の加速。デリバティブ建玉の偏りが観測される場合は、反落の初動でスモールから売り増します。ストップは直近戻り高値の上。

4-3. ブレイク追随:ステーブル供給伸び + SOPR>1の定着

条件例:ステーブル供給が数週間で+3〜5%増、SOPRが1.0上で安定推移、Realized Priceとの乖離が拡大。押し目で現物を積み増し、先物は短いトレールで追いかけます。

5. 実践手順(毎日15分のルーティン)

  1. ネットフローの確認:前日比・週次比の両方をメモします。売り圧/買い圧の方向性をまず掴みます。
  2. 短期MVRVとSOPRの位置:1.0近辺か、過熱域か、どちらに向かっているかをチェックします。
  3. Realized Priceとの位置関係:価格が上/下どちらにいるか、タッチの有無を確認します。
  4. ステーブル供給:増勢か横ばいか。伸びているなら上方向の続伸を前提に押し目待ちを検討します。
  5. テクニカルと重ねる:4時間足のトレンド/ボラと合わせ、エントリーのタイミングを微調整します。

6. シグナルの組み合わせ例(ケーススタディ)

ケースA:急落後のリバウンド狙い

想定状況:価格が急落し、SOPRが0.97まで低下後に0.99〜1.00へ戻り、取引所流入がピークアウト。Realized Priceの下で揉み合うものの出来高減。

戦術:0.99→1.00の再突破と同時に試し買い。損切りは直近安値-0.7%程度。短期MVRV(30D)が1.12で一部利確、1.18で半分利確、残りはブレイク継続なら伸ばします。

ケースB:過熱からの反落捕捉

想定状況:短期MVRVが1.25、SOPRは1.02だが取引所ネット流入が週次で+40%。ステーブル供給は横ばい。

戦術:戻り売り前提で、4時間足の上昇トレンドが崩れる初動で小さくショート。ストップは直近高値+0.8%。目標は短期MVRVが1.10台へ低下する手前で段階利確。

7. リスク管理:必ず数値で縛る

  • 1回の損失は口座残高の1%以内に抑えます。ストップ幅から逆算してポジションサイズを決めます。
  • 同時ポジションは最大3つまで。相関の高い銘柄には同時にフルリスクを取らないようにします。
  • イベント日(ハルビング、主要経済指標発表など)はボラ拡大を前提にサイズを半分に落とします。
  • デリバティブ利用時は資金調達率(ファンディング)も確認し、極端な偏りがある場合は回避またはヘッジを併用します。

8. 実装TIPS:ツールとルールのミニマム設計

ツールは1〜2種類に絞り、導入障壁を下げます。ダッシュボードは「SOPR・短期MVRV・Netflow・Realized Price・ステーブル供給」の5枚だけ。各指標の閾値は次のように暫定設定し、運用しながら自分のリスク許容度に合わせて調整します。

  • SOPR:0.99〜1.00を境にピボット観察、1.00定着で順張り検討。
  • 短期MVRV(30D):1.10超は利確意識、1.20超は逆張り候補。
  • 取引所ネットフロー:週次+25%超の流入加速は警戒、出金加速は押し目待ち。
  • Realized Price:回復の明確化を待ってから追随。割れたら素直に降ります。
  • ステーブル供給:数週間で+3%超の増勢なら押し目買い前提。

9. よくある失敗と回避策

  • 単一指標の過信:必ずフロー・コスト・行動の三層でクロスチェックします。
  • 反転の先取りし過ぎ:SOPRの1.0回復やRealized Price回復など「確認」を1つ待ちます。
  • 過熱への逆張りで粘る:短期MVRVの過熱は伸びやすいです。ストップ必須、サイズは小さく。
  • イベント日のレバレッジ過多:サイズ半減ルールで生存率を高めます。

10. まとめ:オンチェーンKPIは「意思決定の骨組み」

オンチェーン指標は、相場参加者の損益構造と資金フローを可視化します。フロー(ネットフロー・ステーブル供給)、コスト構造(SOPR・短期MVRV・Realized Price)、行動(アクティブ率や保有期間)を三位一体で点検するだけで、無駄なトレードが減り、損失は小さく利益は大きく取りやすくなります。まずはルーティン化し、指標と自分の売買ルールをリンクさせてください。

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