ビットコイン・ハルビングを収益機会に変える:サプライショック前後の戦術プレイブック

ビットコイン

この記事では、ビットコインのハルビング(半減期)を「価格予測」ではなく「実行可能なトレード戦術」として分解し、個人投資家が再現性のある形で収益機会に転換する方法を体系化します。バックテストが困難なイベントドリブン相場においても、需給・資金フロー・建玉動向・派生市場(先物・パーペチュアル・オプション)を用いた“条件付きの意思決定”に落とし込むのが狙いです。

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ハルビングの本質:価格ではなくキャッシュフローの再配分

ハルビングは新規発行量が半減する供給ショックです。これは「長期的なインフレ率低下」を意味する一方、短期的にはマイナーのキャッシュフロー構造を大きく変えます。報酬(BTCベース)が半減するため、売り圧(法定通貨建ての固定費を賄うための換金フロー)が構造的に縮小しやすくなります。ただし、価格が十分に上昇していれば売却数量は必ずしも減りません。よって、ハルビングは単体で強気/弱気シグナルではなく、「マイナーの損益分岐点」「先物プレミアム」「資金調達率」「オプションIV(含みボラ)」と組み合わせて判定するのが合理的です。

相場の4フェーズと狙いどころ

① 期待先行フェーズ(T-6〜T-1か月)

ニュースとオンチェーン指標が活発化。先物の年率化プレミアム(いわゆるベーシス)が過熱しやすく、パーペチュアルの資金調達率(Funding)がプラスに傾きがち。狙いは過熱の売りではなく、キャッシュ&キャリー(現物買い+先物売り)で“ベータを抑えつつプレミアムを取りに行く”ことです。日次で年率換算が10〜20%に乗る局面は、リスク調整後リターンが魅力的になりやすい。

② 直前・直後フェーズ(T-2週間〜T+2週間)

イベントドリブンのボラ拡大。裁定系のポジションが積み上がっていると、「ショートスクイズ→先物ベーシスの急拡大→裁定資金の流入」の連鎖が起こることも。ここではデルタ中立のままボラを取りに行く戦術(例:短期のIVディスロケーションを利用したカレンダー/ダイアゴナル)や、裁定ポジションのロールオーバーでスリッページ/手数料を最小化する運用が中心です。

③ 需給転換フェーズ(T+1〜3か月)

ハルビング後、マイナーの売却圧が低下し、ネット供給がタイト化。ここで現物押し目買い+先物の控えめなショートヘッジ(ネットでややロング)にシフトし、「強い上昇が出たらヘッジを外す、弱ければ維持」の条件分岐を事前に決めておきます。Fundingが過熱しないまま価格が上がる局面は、需給主導の素直な上げと評価しやすい。

④ 循環ピーク〜反動フェーズ(T+3〜12か月)

循環の後半では、先物ベーシスの急拡大、Fundingの高止まり、オプションIVスキューの極端化が同時に見られることが多い。ここでは段階的な利益確定+オプションでのプロテクティブ戦略(例:コール売りでプレミアム回収しつつ、急落時はプット買いで尾リスクに備える)を機械的に実施します。

再現性を上げる3つのコア戦術

戦術A:キャッシュ&キャリー(現物+先物ショート)

手順はシンプルです。①CEX/DEXで現物を購入、②同等数量の期先先物を売り、③満期まで保有してベーシスを回収。パーペチュアルを使う場合は、Fundingの支払い/受取りが発生するため、Funding受取りが見込める取引所を選ぶか、受け取り>支払いになるようにペアを組みます。留意点は、資金調達率の反転ベーシスの急収縮。損切りではなくヘッジ縮小/拡大のルールで対応するのがコツです。

戦術B:イベント・ボラティリティの捕捉(IVディスロケーション)

ハルビング前後はIVが過剰に上振れ/下振れしやすい。ここではカレンダースプレッド(近い満期を売り、遠い満期を買う)やリバース・アイアンコンドル(狭いストライク間でボラ上昇に賭ける)などで、方向性ではなく“ボラの歪み”を取りに行きます。価格変動が読めなくても、IVの平常化からリターン源泉を作れるのが利点です。

戦術C:需給主導のトレンド追随+ヘッジ

オンチェーンのマイナーフロー(売却強度の低下)や取引所の準備金の減少が確認でき、Fundingが落ち着いたまま上げる場合は、ネットロングに傾ける価値があります。先物の控えめヘッジ(例:デルタ0.2〜0.4相当)でドローダウンを抑制しながら、上げ相場はヘッジ解除、揉み合い/下げ相場はヘッジ維持のルールを事前に明文化しておきます。

監視すべき5つのシグナル

1) 先物ベーシス(年率換算):平常時5〜10%程度、過熱は15〜25%超。キャッシュ&キャリーの妙味と警戒タイミングの両方を示す指標です。

2) パーペチュアルの資金調達率(Funding):プラス高止まりはロング過多、マイナス持続はショート過多。反転の兆候はポジション解消のトリガーになりやすい。

3) OIと清算データ:建玉の急膨張+片側偏りは、スクイズ/フラッシュムーブの予兆。OI減少を伴う上昇は“現物主導”の可能性が高まります。

4) オプションIVとスキュー:イベント前のIV急騰→イベント通過後のボラクラッシュは典型。スキュー極端化は保険需要の歪みの表れ。

5) マイナーフロー/ハッシュレートのトレンド:直後の一時的な低下・再調整をどう価格が吸収するか。需給のタイト化が価格に出ているかを確認。

実装テンプレート(チェックリストと条件分岐)

取引所分散:現物・先物・オプションは最低2社ずつ確保。入出金・相対の遅延リスクを分散。

想定ボラの前提:直近30〜90日の実現ボラとIVを比較。IVが極端に上振れ→売り、下振れ→買いの基本線。

執行:指値優先。流動性の深い板・時間帯(ロンドン/NYクロス)を活用。スプレッド/手数料を集計して「実効ベーシス」で判断。

リスク:ステーブルコインの発行体/チェーン分散、清算連鎖・回線障害に備えた余裕担保、追証回避のための低レバ運用。

条件分岐の例

・年率ベーシス≥15%かつFundingが中立〜プラス小 → 現物買い+期先先物売り(キャッシュ&キャリー)。

・イベント5営業日前にIVが平常比+50% → 近月IV売り×遠月IV買い(カレンダー)。

・ハルビング後1か月、Fundingが中立で価格が高値更新 → ヘッジ0.2→0.0に逓減(ネットロング強化)。

・Fundingが急反転(プラス→マイナス)+OI縮小 → ロングの利確・ヘッジ復帰。

実例シミュレーション(数値は仮定)

前提:価格7,000,000円、期先3か月先物の年率ベーシス18%、パーペチュアルFunding年率+4%相当。

実行:現物1BTC買い+3か月先物1BTC売り。満期まで保有でベーシス18%を狙う。実効コスト(手数料/スプレッド/借入)は年率3%と仮定。

期待値:ネット年率+15%。ボラに晒されないデルタ中立。Fundingが急にマイナス化し、キャリーが毀損する場合は、パーペチュアル→期先先物への乗り換え、もしくは枚数調整で対応。

リスク:清算連鎖時の先物乖離、ステーブルコインのデペッグ、取引所障害。回避策は、枚数分散・証拠金の過剰化・複数通貨での担保運用。

よくある失敗と対策

① 方向を当てに行く:イベント時の方向当ては難度が高い。ベータを潰してキャリー/ボラを取ることに集中。

② Fundingの反転を軽視:プラス→マイナスはポジション偏りの崩壊サイン。アラート必須。

③ ベーシスの“見かけ値”で判断:手数料・スプレッド・借入金利を差し引いた実効ベーシスで見る。

④ 取引所リスクの集中:同一チェーン/同一発行体のステーブル偏重は危険。USDT/USDC/FDUSD等に分散。

運用ルールの雛形(そのまま使える)

・キャッシュ&キャリーは、年率実効ベーシス10%未満なら新規見送り。15%超で新規、20%超はサイズ拡大。ただしFundingが−年率2%以下で相殺される場合は枚数半減。

・イベント3営業日前にIVが平常比+70%を超えたら、近月売り/遠月買いを25%サイズで試し、通過直後にIVが20%低下したら半分利確。

・需給主導の上昇局面では、先物ヘッジを週次でデルタ0.4→0.2→0.0へ逓減。Fundingが再過熱したら0.2へ戻す。

まとめ:予測よりもプロセス

ハルビングは「上がる/下がる」の二択ではありません。ベーシス、Funding、IV、OI、マイナーフローといった観測可能な数量変数をもとに、ベータを抑え、キャリーとボラディスロケーションを取りに行くプロセスに落とし込むことが、再現性のあるリターンに繋がります。価格予測をやめ、条件が揃ったら自動的に手が出る仕組みを作る――それがハルビング相場での最短距離です。

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