建玉OIクラスター狩り回避:清算・ストップ狩りを避けるための実践ガイド(BTC/ETH)

暗号資産

本稿では、暗号資産のパーペチュアル先物(BTC/ETH)で頻発する建玉(Open Interest; OI)クラスター狩り—いわゆるストップ狩り・清算誘発の動き—を避けることにフォーカスします。価格予想の巧拙ではなく、負けにくいオペレーション(ポジション設計・執行・サイズ・ヘッジ)を標準化するのが目的です。

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前提と用語

本稿で扱う主語は主にBTC/ETHのパーペチュアル先物です。基本用語は次のとおりです。

  • OI(Open Interest):未決済建玉。価格帯別に集中(クラスター)することが多い。
  • Liquidation Levels:強制清算の閾値が推定される価格帯。
  • Funding:資金調達率。ポジション偏りの熱量を映す。
  • Basis / Term Structure:期近・期先の先物カーブ。過度なコンタンゴ/バックワーデーションは過熱/恐怖を示唆。
  • Orderbook/Heatmap:板の厚み・成行の通過路。流動性トラップの位置特定に活用。

なぜ「OIクラスター狩り」が起きるのか

OIは「誰かのエントリーとストップの集合」です。価格が集中的に並ぶストップ群清算ラインの手前に一時的に流動性が薄いゾーンが生まれると、比較的小さなフローでも雪崩的に価格が伸び、連鎖清算で一方向に引き延ばされます。狩りは方向性そのものよりも、“踏ませるほどの在庫”があるかで決まります。

勝ち筋:避ける設計は「3段構え」

  1. 環境判定:過熱(Funding、OI増減、期近ベーシス)/ 収縮(IV、出来高、板流動性)を点検。
  2. 危険価格帯の特定:ストップ/清算の密集(Heatmap、清算マップ、直近高安±0.3〜0.7%帯)。
  3. 執行・サイズ・ヘッジ:指値/成行/逆指値の配置、TWAP/VWAP/POVで分割、必要に応じOPでテール保険。

データの確認フロー(5分テンプレ)

① ポジション偏り

資金調達率(Funding)とOIの増減で「どちらの在庫が重いか」を把握。高い正のFunding+OI急増なら上を踏ませるシナリオ、負のFunding+OI急増なら下を踏ませるシナリオが優勢。

② 清算・ストップ密集

清算ヒートマップ/ストップ推定マップで、直近高値/安値の外側に密集がないかを確認。最も近い密集が価格の最短目標になりやすい。

③ 板の厚みと通過路

板ヒートマップで薄い帯があれば、その方向は通り道。厚い帯(アイスバーグ)は一時停止候補。

④ 期近カーブ

期近の先物ベーシスの急拡大/縮小はフローの異常。SQ/ロール期は特に顕著。

エントリー設計:狩られにくい位置と順序

ケースA:上抜け狩りの最中

直近高値の外(+0.2〜0.6%)に清算密集が見えるとき、上で追いかけない。代わりに押し目待ち指値を、ブレイク起点の板厚ゾーンに分散配置(例:0.25%刻み×4)。成行は最小限に。

ケースB:下抜け狩りの最中

直近安値の外(-0.2〜-0.6%)に密集なら戻り売りを基本に。ナンピンは板厚い帯の手前で止める。

ストップ配置の原則

  • 直近高安の外ではなく内側に置き、密集ラインから距離を取る(例:内側0.25〜0.4%)。
  • 時間分散:同一価格でも執行タイミングを分散(POV 10〜20%)。
  • 数量分散:たとえ方向が合っても、最初は総量の30〜40%のみ。

執行:スリッページ最小化とスマートルーティング

OIクラスター狩り局面は板が薄くなりやすい。TWAP/VWAP/POVなど分割執行を使い、複数CEX/DEXを横断するアグリゲータで最良気配に当てる。成行は“薄い帯を抜けるための最小弾”だけに限定。

サイズ設計:ボラターゲティング+ケリー下方修正

日次実現ボラ(例:20D)から逆算したリスク予算(例:1日あたりPortfolio σの0.5〜0.8倍)を上限にし、ケリー×0.25〜0.5で抑える。フローで一気に引き伸ばされる局面に備えて、最大DD制約でハードストップ(例:-6%)を持つ。

ヘッジ:テールとベーシスの二段構え

  • テール保険:OTMプット(例:デルタ10〜20)を薄く常備。0DTEイベント(CPI/FOMC)前は厚めに。
  • ベーシス吸収:現物×先物のキャッシュ&キャリーでFunding逆風を軽減。

具体シナリオ3例(数値つき)

シナリオ1:上方向の踏み上げ

Funding +0.03%、OI +7%、直近高値上+0.4%に清算密集。追い買い成行は0。押し目指値をブレイク起点-0.35/-0.60/-0.85/-1.10%に25%ずつ。ストップは起点-1.6%。部分利確は+0.6/+1.1/+1.6%。残りはトレーリング0.8%。

シナリオ2:下方向の投げ

Funding -0.02%、OI +5%、直近安値下-0.5%に密集。戻り売りを-0.3%リトレースで30%、-0.6%で30%、-0.9%で40%。ストップは-0.3%の上に0.4%。利確は-0.6/-1.2/-1.8%。

シナリオ3:イベント前後の乱高下

CPI直前:IV上昇、板薄。ポジションは半分に減らし、0DTEプットを1〜2枚追加。発表後の初動は追わず、最初のスパイクからの38.2%戻しで逆方向を検討。

検証:半手動バックテストの作り方

  1. 過去のイベント週を抽出(CPI/FOMC/SQ)。
  2. 金曜引け〜翌月曜寄りまでのOI・Funding・価格・板厚のスナップショットを保存。
  3. 清算密集の最短目標到達率、到達までの平均時間、到達後の反転幅を計測。
  4. 上記に従い、押し/戻りの指値間隔・分割比率・ストップ幅を最適化。

よくある失敗と対策

  • 追い成行の多用:薄い帯で一気に高コスト化。→ 分割指値とPOVの併用で平均有利約定に。
  • ストップの“外置き”:密集に同化して狩りの餌。→ 直近高安の内側に置き、時間分散。
  • サイズ過多:DDからの回復に時間。→ ボラ連動で自動縮小。最大DDにハードストップ。
  • イベント同時多発:相関崩壊の被弾。→ 相関ブレイク時はヘッジ優先、方向観は縮小。

実運用チェックリスト(印刷可)

  1. Funding・OIの方向と増減を確認(偏りのサマリーを1行で記録)。
  2. 最も近い清算密集の位置(±%)をメモ。
  3. 板の薄い通過路/厚い停止帯をマーキング。
  4. 指値4分割、成行は最小弾、ストップは内側時間分散。
  5. テール保険(OP)・ベーシス吸収(現物×先物)の有無をチェック。
  6. サイズはボラ基準、最大DDストップを入れる。
  7. 約定後はトレーリングの距離を更新。

まとめ

OIクラスター狩りは読めない動きではありません。狩られるルート(薄い帯と清算密集)を避け、押し/戻りの分割指値+内側ストップ+小さな成行を徹底するだけで、負け方は大きく改善します。方向観の当否より、生存率を最優先に設計してください。

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