取引所残高の減少トレンドに乗る:オンチェーン需給で狙うシンプル戦略

暗号資産
価格は「需要と供給」で動きます。暗号資産では、コインが取引所(CEX)に置かれているか、自己保管ウォレットに退避されているかが需給に直結します。一般に、取引所の保有残高が減っているときは売りに出せる在庫が減る=売り圧力が低下し、需給がタイト化しやすいと解釈できます。本稿では、オンチェーンで観測できる取引所残高のトレンドに素直に乗るシンプルな戦略を、初めての方でも運用できるレベルまで分解して解説します。

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戦略の要約

対象はビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)です。各資産の主要CEXにおける保有残高の時系列から傾き(勾配)を計算し、十分な低下トレンドが続く局面だけロングで追随します。過剰な楽観や急落に備え、出来高・ボラティリティ条件とトレーリングストップを併用し、小さく負け、大きく勝つ設計にします。

  • エントリー:残高の短期傾きが負(減少)、かつ中期傾きも負。出来高が直近平均以上。
  • エグジット:残高の短期傾きがゼロ超え、またはATR×kのトレーリングストップヒット、または重大イベント前のポジション縮小。
  • 資金管理:1トレードのリスクは口座資金の1–2%以内。複数銘柄同時保有時は相関を考慮して総リスク上限を設定。

なぜ「取引所残高」なのか

残高が減る=コインが取引所から流出しているということです。自己保管へ移す動きは、短期売却の意思が弱い行動と一致しやすく、需給のタイト化を示します。一方で、残高が増える=取引所へ持ち込まれている局面は、売り準備の強化として解釈されやすく、下押し圧力のシグナルになり得ます。

重要なのは絶対水準ではなく変化率(傾き)です。横ばいならシグナルは弱く、明確に減少トレンドが続くほど優位性が出やすくなります。

必要なデータと入手の考え方

取引所別の残高推定、総残高、出来高、日次の高値・安値・終値(OHLC)、ボラティリティ(ATR)を用います。データは有料・無料のオンチェーン分析サービスや取引所の公開情報を活用できます。初心者の方は、まず無料の範囲で総残高トレンドと価格・出来高を取得し、慣れてきたら取引所別など粒度を上げると良いです。

指標設計(最小構成)

以下は初回導入に十分な最小構成です。数式はわからなくても、ツールで計算できれば大丈夫です。

  1. 残高の短期傾き:直近14日間の単回帰で傾きβ14を算出。β14<0で「減少トレンド」。
  2. 残高の中期傾き:直近30日間のβ30。β30<0で中期も減少。
  3. 出来高フィルター:当日出来高 > 直近20日平均出来高。
  4. ATRによるストップ幅:ATR14×k(k=2.5など)。

より精緻にするなら、流出入の純フロー(Δ残高)を平滑化し、ボラや出来高で重み付けしたフロー・モメンタムを作るのも有効です。

売買ルール(シンプル版)

エントリー条件

  • β14<0 かつ β30<0
  • 出来高が20日平均超え
  • 価格が20日移動平均線(MA20)以上

エグジット条件

  • β14が0を上回る(減少が止まる)
  • 終値がトレーリングストップ(終値の直近高値からATR×k)に達する
  • 重要イベント(CPI・FOMC・半減期・大型アップグレードなど)の前営業日にポジションの50–100%を一時的に縮小

裁量を入れないのがコツです。機械的に条件判定し、当日の終値または翌営業日の窓口価格で執行します。

ポジションサイジングとリスク管理

損切り幅はATR基準とし、1トレードのリスク(損切りに当たった場合の損失額)を口座資金の1–2%以内に制限します。ロングのみの戦略でも、回避不能な急落(ギャップダウン)は発生します。最大ドローダウン(MaxDD)の目安をあらかじめ想定し、総リスクが口座資金の6–8%を超えないように同時ポジション数を調整します。

同時にBTCとETHを保有する場合は相関が高いため、合算リスクで管理します。例えば、BTC1%リスク+ETH1%リスク=総リスク2%としてカウントします。

執行の実務ポイント

  • 板厚を確認:薄い時間帯はスリッページが拡大しやすいです。流動性の厚い時間を選びます。
  • 指値と成行の使い分け:急騰時は成行を使いすぎない、ルールにTWAP/VWAPの簡易実装を入れるのも有効です。
  • 手数料最適化:VIPティアや手数料割引トークンの活用でコストを下げます。
  • ステーブル建ての評価:円建ての方は為替も損益に効きます。円安局面ではヘッジの要否を検討します。

パラメータの考え方

βの期間や出来高フィルター、ATR係数kは資産の性質や相場環境で最適が変わります。原則は「過学習を避ける」ことです。期間は14・30・60程度のラフな値から始め、アウトオブサンプル検証で確認します。過去チャートに最適化しすぎると、将来うまく機能しません。

検証(バックテスト)の最低限

  1. 日次で条件判定し、翌日の始値で約定させる(保守的)。
  2. スリッページと手数料を現実的に控えめ・普通・厳しめの3水準で入れる。
  3. 勝率・平均損益・期待値・PF(損益率)・MaxDD・シャープを記録。
  4. BTC/ETH個別と合成ポートフォリオの双方で評価。
  5. 極端な期間(強気一辺倒/弱気一辺倒)だけでなく、レンジ期間での挙動も確認。

テストは「勝率を上げる」のではなく「想定外に弱い局面を見つけて対策する」ために行います。

弱点と回避策

  • データ遅延:オンチェーン推計には遅延や改定があります。確定データだけで判定し、速報値には過度に依存しません。
  • 偽シグナル:残高が減っても価格が伸びない局面があります。価格と出来高の条件を重ねてフィルタリングします。
  • イベントリスク:規制・ハッキング・大型清算などは残高シグナルを一時的に無効化します。重要イベント前の縮小ルールを徹底します。
  • 相関集中:暗号資産全体が同方向に動く局面では分散が効きません。総リスク上限で管理します。

運用フロー(チェックリスト)

  1. データ更新:残高・価格・出来高・ATRを前日分まで更新。
  2. 条件判定:β14, β30, MA20, 出来高を算出。
  3. ポジション決定:許容リスクからサイズを計算。
  4. 執行:指値/成行の使い分け、または簡易TWAP。
  5. 記録:エントリー理由・サイズ・ストップ水準・想定シナリオをログ化。
  6. 監視:トレーリング更新、イベント前の縮小。
  7. 振り返り:損益とルール遵守度を週次でレビュー。

初心者のつまずきどころと対処

  • 「傾き」の感覚が掴めない:グラフに回帰直線を重ねて視覚的に確認します。
  • 損切りが遅れる:ATRベースの機械的ストップを設定し、発注時に同時に入れます。
  • 指標を増やしすぎる:最小構成から始め、効果のあるものだけを段階的に追加します。

応用:銘柄横断と時間分解(発展)

BTCとETHでシグナルのタイミングがズレることがあります。両者の残高傾きの拡散(スプレッド)が広がるとき、先行のシグナルが後行に伝播するケースもあります。また、時間足を日次と週次で組み合わせ、週次で減少・日次で減速のような相対条件を使うと、エグジットの遅延を減らせます。

税金・損益計算の基本的な配慮

売買差益は税務上の取り扱いが発生します。居住国のルールに従い、約定履歴や為替レートを含めた損益計算・確定申告に備えて記録を整えましょう。口座やウォレットをまたぐ場合は、一貫した記帳が重要です。

まとめ

取引所残高の減少は、短期の「売り在庫の減少」を示す需給シグナルです。価格・出来高・ボラの基本条件と組み合わせ、損失を小さく管理しながら伸びるトレンドだけを取ることで、シンプルでも戦える戦略になります。まずは小さなサイズで運用を開始し、ルールと記録の徹底で精度を高めていきましょう。

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