清算ヒートマップ逆張り:BTC/ETHパーペチュアルで狙う『踏み上げ直後の反転』設計ガイド

暗号資産

本稿では、清算ヒートマップ(Liquidation Heatmap)を活用した逆張りエントリー手法を、個人トレーダーが再現可能なレベルまで分解して解説します。対象は主にBTC/ETHのパーペチュアル先物(永続先物)です。清算クラスターに価格が突入し、強制決済(ロスカット)の連鎖で短期的にオーバーシュートが起きた直後の「吸い込み(exhaustion)」と「戻り(mean reversion)」を統計と執行で捉えます。投資助言ではなく情報提供です。実運用は自己責任でお願いします。

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清算ヒートマップとは何か

清算ヒートマップは、強制決済が発生しやすい価格帯(レバレッジポジションの清算トリガー付近)を可視化したものです。多くのトレーダーが同じ価格帯に損切りや清算ラインを持っていると、その帯は「クラスター(塊)」として強く表示されます。価格がその帯に触れると、連鎖的に清算注文(マーケット成行)が発動し、短時間で流動性が喰われ、価格が過度に拡大することがあります。その直後は、需要・供給のバランスが一時的に空洞化し、反転が生じやすいという経験則があります。

なぜ反転が起きやすいのか(マイクロストラクチャ)

清算が走る局面では、成行の一方向フローが一気に約定して板の薄さが露呈します。清算完了後は、直前の一方向フローが止まり、短期参加者の利確・逆張り・裁定が同時に入るため、数分から数十分の「戻し」が統計的に観測されることが多いです。これを狙うのが本手法です。

戦略の全体像

本戦略は「強い清算クラスターへの突入→スパイク(オーバーシュート)→反転の初動を押し目/戻りで拾う」という設計です。反転の初動で飛びつくのではなく、初動確認→浅い押し(もしくは戻り)で指値を基本とします。指値が刺さらない場合は成行で追いかけず撤退します。

データ要素と判定ロジック

  • 清算クラスター強度(LQ):可視化指標の濃さと帯の厚み(価格幅)をスコア化します。帯が厚く、濃いほど強度は高いと判定します。
  • 直前の足の拡大率:5分足または15分足で、終値−始値の絶対値を直近N本のATRと比較し、≥1.5×ATRを「スパイク」と定義します。
  • OI変化:突入直前から直後のオープンインタレストの減少(ロング清算ならOI減)が顕著かを確認します。
  • 資金調達率(FR)傾き:スパイク方向と同方向の過熱(例:上方向スパイク時に正のFR拡大)を過熱要因として加点。
  • 出来高の偏り:スパイク足の出来高が直近平均の2σ超なら過熱フローとみなし加点。

これらを0〜100の合成スコア=LQ-Scoreに集約し、70点以上でトレード検討、85点以上で「Aセットアップ」と分類します。

ベースライン売買ルール

時間軸

執行は5分足を主軸、確認に1分足と15分足を併用します。デイトレ〜数時間のスイングを想定し、翌日持ち越しは原則行いません。

エントリー条件(ロング逆張りの例)

  1. 価格が下方向の清算クラスター帯に突入し、1本の5分足で1.5×ATR以上の陰線を形成。
  2. 足の終盤で長い下ヒゲが出現、または次足で戻し始める(1分足で高値・安値切り上げ)。
  3. OIが同時に減少し、出来高が直近平均の2σ超。FRがマイルドに正方向(ロング側の過熱)なら加点。
  4. LQ-Scoreが70以上。

執行:戻しの初動確定後、直近スイング安値+数ドル下に逆指値の損切りを置き、押し目指値で1〜3分待機。刺さらなければ見送ります。

利確・手仕舞い

  • 第一利確:エントリー価格から0.8〜1.2×ATRでポジションの50%を利確。
  • 第二利確:清算突入前のレンジ中心やVWAP、もしくは直近のヒートマップ薄帯まで。
  • トレーリング:第一利確以降、残ポジのストップを直近1分足の押し安値/戻り高値の数ドル下/上へ段階移動。

ポジションサイズ(ボラターゲティング)

直近20本の5分足ATRを用いて、許容損失額 / (ストップ距離)で数量を計算します。口座全体では1トレードの損失を口座資産の0.5〜1.0%に制限し、日次ドローダウンが2〜3%に達したら取引停止ルールを自動適用します。

LQ-Score(合成スコア)の設計

例として、以下の配点を用います(合計100点):

  • 清算帯の濃さ・厚み:0〜35点
  • スパイクのATR倍率:0〜20点
  • OI減少率:0〜15点
  • 出来高シグマ:0〜15点
  • FRの過熱傾き:0〜10点
  • 直前のトレンド過熱(ADX>25で減点):-10〜0点

70点以上を「合格」。85点以上はAセットアップとして優先します。過熱トレンド中(ADXが高い)の逆張りは期待値が落ちやすいので、減点で抑制します。

具体例(数値シミュレーション)

BTCUSDパーペチュアル、5分足。清算帯の厚みが100ドル幅で濃度最大、スパイクが1.8×ATR、OIが-2.1%、出来高が平均の+2.5σ、FRが+0.01%/8hから+0.03%/8hに拡大とします。配点は、清算帯30、ATR18、OI13、出来高14、FR8、ADX減点0=合計83点。A未満だが合格。足終盤で下ヒゲ確認、次足で高値切り上げを確認後、押し目指値でエントリー。ストップは直近安値-15ドル。第一利確は+1.0×ATRで半分、VWAP付近で全決済という流れです。

売りの逆張り(ショート)の相違点

  • 上方向の清算帯に突入し、長い上ヒゲ+出来高膨張+OI減少(ショート清算でなくロング清算なら減点)。
  • FRが負から正に急変するような過熱を加点。
  • 戻り売りは特にトレンド再開リスクが高いので、ADXが25以上なら半サイズに抑制。

フィルターと地合い判定

強トレンド相場では逆張りの期待値が低下します。以下のフィルターを併用します。

  1. ADX(14)≥25で減点、≥35なら見送り。
  2. 1時間足の200EMAからの乖離が±3%を超える場合は半サイズ以下。
  3. マクロイベント(CPI、FOMC)直前30分と直後30分は原則回避。

執行最適化(スリッページと手数料)

短期逆張りでは、スリッページと手数料が損益に直結します。Post-Only指値でメーカー手数料を取りに行きつつ、刺さらない場合の追いかけ禁止を徹底します。どうしても入りたいAセットアップのみ、TWAPで数十秒に分割して侵入幅を限定します。スプレッドが広がる瞬間(清算連鎖の最中)は見送る勇気が重要です。

リスク管理と停止ルール

  • 1トレード損失上限:口座の0.5〜1.0%。
  • 日次DD停止:−2〜3%でその日は終了。
  • 連敗停止:3連敗で翌セッションまで取引停止。
  • イベント回避:主要指標発表(CPI/FOMC)前後は原則取引しない。

検証(バックテスト)の進め方

ヒートマップの生データを完全取得できない場合でも、代替検証は可能です。方法は、スパイク定義(ATR倍率)と出来高シグマ、OI変化、FR傾きを用いて擬似的に「清算相当の過熱局面」を抽出し、そこからの一定時間後(例:5分/15分/60分)のリターン分布を集計します。LQ-Score70以上のみを抽出して勝率、平均損益、PF、最大DDを比較します。さらにADXフィルターの有無でグループ比較すると、過熱トレンド相場の逆張りが不利である事実が可視化されます。

ログと税務の基本

全トレードのエントリー/エグジット、理由、スクリーンショット、当時のFR/OIの値を記録します。日次で損益集計し、税務計算に備えます。取引所の履歴エクスポートとスプレッドシートを併用し、通貨換算(円建て/ドル建て評価)を一貫させます。

DEXでの応用(注意点)

オンチェーンのパーペチュアルDEXでは、MEVやスリッページ、手数料構造がCEXと異なります。サンドイッチ耐性の高い保護手数料やバンドル(例:バンドル送信・ブロックビルダー経由)を活用し、ガス代と失効リスクを加味してサイズを調整します。集中流動性AMMでは、レンジ外流出やインパーマネントロス(IL)に注意し、先物やオプションでデルタヘッジする設計が有効です。

チェックリスト

  • LQ-Scoreが70以上か? Aなら最優先か?
  • 5分足で1.5×ATR以上のスパイクか? ヒゲ確認済みか?
  • OI減少と出来高2σ超は確認できたか?
  • ADXが高すぎないか? マクロイベントは近くないか?
  • 指値優先(Post-Only)、追いかけ成行禁止を守れるか?
  • 損切りは直近スイングの外側に厳格に置いたか?
  • 第一利確・第二利確・トレーリングの手順は事前に固定したか?
  • 1トレード損失上限と日次DDルールは守れるか?

よくある失敗と対策

  1. 飛びつき成行:初動確認後の押し目/戻り待ちを徹底。入れないなら諦めます。
  2. ストップの甘さ:スイング外側+αに固定。微調整で近づけない。
  3. サイズ過大:ATR基準で自動算出。口座の1%超は原則禁止。
  4. イベント跨ぎ:CPI/FOMCは原則回避。期待値は下がります。
  5. トレンド逆行の粘り:ADXが高い時は見送り。ポジポジ病を防ぐ。

拡張アイデア

  • 清算帯とオプションのガンマ/スキューを重ね、反転の滞留ポイントを特定。
  • 資金調達率の曲面(時間×銘柄)を併用し、全体の過熱を評価。
  • 複数銘柄の相関ブレイクを監視し、片側ヘッジでテールを抑制。
  • ダークプール/隠し注文のフロー推定を加えて、戻しの失速点を抽出。

まとめ

清算ヒートマップ逆張りは「過熱→空洞化→戻し」という短期の構造を、定量ルールと執行規律で獲りにいく設計です。LQ-Score、ATR、OI、出来高、FR、ADXを組み合わせ、入らない勇気サイズ管理を徹底すれば、裁量過多にならずに統計的エッジを運用できます。必ず小さく始め、記録と検証を継続して自分の期待値曲線を実測しながら最適化してください。

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