初心者でも利益に直結:PER・PBR・EPS・ROEと配当利回りの実践ガイド【テンプレ&売買ルール付き】

株式投資
Valuation Playbook | PER PBR EPS ROE
Valuation Playbook — PER / PBR / EPS / ROE & Dividend Yield

本記事では、株価の「安い・高い」を判断するために不可欠なPER・PBR・EPS・ROE・配当利回りを、初心者の方でも今日から使えるレベルまで具体的に解説します。定義の丸暗記ではなく、損益と資本の結び付きを直感で掴み、数字から売買ルールに落とし込むところまでを一気通貫で学べます。

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本記事のゴールと結論

ゴールは明確です。①主要指標の意味と計算式を自力で説明できる、②実例の数字から「割安/割高」「良い/悪い」を素早く判定できる、③シンプルなスクリーニングと売買ルールに落とし込める——この3点を満たします。結論として、初心者が最初に磨くべきは、EPS成長率×ROEの持続性と、PER/PBRの“理由ある割安”を見極める目線です。単純な低PER狙いはしばしばバリュートラップになります。

用語の定義(最短距離)

EPS(1株当たり利益):当期純利益 ÷ 発行株式数。会社が1株あたりどれだけ稼いだかを示します。
PER(株価収益率):株価 ÷ EPS。市場が「1年あたりの利益の何倍の価格を払っているか」の倍率です。
PBR(株価純資産倍率):株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)。企業の簿価(自己資本)に対して何倍の評価か。
ROE(自己資本利益率):当期純利益 ÷ 自己資本。株主のお金を使ってどれだけ効率よく利益を上げたか。
配当利回り:1株配当金 ÷ 株価。もらえる現金利回り。

数式と直感:なぜこの5指標で十分なのか

株価は将来の利益(EPS)の割引現在価値の集合です。PERは「その利益に何倍払うか」の温度計、PBRは「実態の自己資本に対する評価倍率」です。ROEは利益効率、配当利回りは現金回収速度。EPSの成長力ROEの持続性が長期リターンの源泉で、PER/PBRの再評価が短中期の上昇ドライバーになります。

まずは手を動かす:超具体例で理解する

仮に株価1,000円、発行株式数1億株、当期純利益100億円、自己資本1,000億円、年間配当20円の企業Aを考えます。

  • EPS=100億 ÷ 1億=100円
  • PER=1,000 ÷ 100=10倍
  • BPS=1,000億 ÷ 1億=1,000円 ⇒ PBR=1,000 ÷ 1,000=1.0倍
  • ROE=100億 ÷ 1,000億=10%
  • 配当利回り=20 ÷ 1,000=2.0%

この企業Aは「PER10倍、PBR1倍、ROE10%」。ここから何を読み取るべきでしょうか。結論は、「期待に対して中立」です。EPSが今後安定成長し、ROE10%が持続可能なら、PER10倍は十分に評価余地があります。一方で、EPSが横ばい・ROE低下なら再評価は起きにくいです。

比較例:企業BとC

企業B:株価2,000円、EPS80円、BPS800円、ROE8%、配当40円 ⇒ PER25倍、PBR2.5倍、配当2%。
企業C:株価700円、EPS100円、BPS1,400円、ROE7%、配当21円 ⇒ PER7倍、PBR0.5倍、配当3%。

Bは成長期待をすでに織り込む高PER・高PBR。Cは超割安ですが、ROE7%で資本効率が低く、なぜ安いかの理由(構造課題、景気敏感、ガバナンス等)を精査する必要があります。「割安には理由がある」のが実務です。

落とし穴を避ける:バリュートラップ早見表

以下に当てはまる銘柄は、単純な低PER・低PBRだけで飛びつかないほうが安全です。

  1. EPSが過去3年で減少傾向(一時的でなく構造的な下り坂)
  2. ROEが8%未満で停滞(自己資本の使い方が非効率)
  3. フリーキャッシュフローが赤字続き(会計利益は出るが現金が増えない)
  4. 配当性向が高すぎる(投資余力がなくなる=成長鈍化)
  5. 一過性の特損/利益で数値が歪む(ノーマライズが必要)
  6. 事業の再現性が低い(景況次第で振れ幅が極端)

無料データでできるスクリーニング手順

有料端末がなくても、主要な指標は無料サイトの決算データから揃えられます。初回は以下の手順で十分です。

  1. 主要銘柄群を用意:TOPIX Core30や主要業種の代表銘柄を10〜30社ピックアップします。
  2. 各社のEPS、BPS、ROE、配当金を最新期と過去3〜5年で控えます。
  3. 簡易基準:ROE≧10%EPS成長率(3年CAGR)≧5%有利子負債/自己資本≦1.0フリーCFプラス
  4. バリュエーション閾値:PBR≦1.2倍またはPER≦市場平均×0.8を「再評価余地あり」と仮置き。
  5. 目視で事業の持続性(参入障壁、価格決定力、撤退障壁)をメモします。

ミニ戦略①:配当×ROE×割安の3因子ミックス

初心者でも運用しやすい定量ルールです。

  • 対象:時価総額500億円以上の国内株。
  • スコア:
    ①配当利回り(高いほど良い・上位30%に1点)、②ROE水準(≧12%で1点、≧8%で0.5点)、③PBR(≦1.2倍で1点、≦1.5倍で0.5点)。
  • 合計2点以上を採用候補。業種分散5〜10銘柄に等金額配分。
  • リバランス:四半期に一度。配当落ち後の押し目で追加。
  • エグジット:PBR≧1.8倍またはROEが8%未満に低下で売却検討。

この戦略の肝は、配当で「待てる」間に、ROEの持続性が市場から再評価され、PBRが是正される期待に賭けることです。

ミニ戦略②:成長割安(EPS成長×PER順位)

グロース寄りですが暴落耐性を高めたルールです。

  • 対象:時価総額1,000億円以上。
  • フィルター:過去3年のEPS CAGR≧10%、有利子負債/自己資本≦0.8、フリーCFプラス。
  • バリュエーション:セクター内PER順位が下位40%(=相対的に割安)。
  • 構築:5銘柄を等金額。
  • 損切り:-12%固定または50日移動平均割れ+出来高増の組み合わせ。

「よく稼ぐのに、まだ高く買われていない」企業を拾う狙いです。セクター内相対比較がポイントになります。

売買ルール:いつ買い、いつ売るか

買い:四半期決算でEPSと売上がともに増、かつ通期ガイダンスが据え置き〜上方修正のとき。出来高を伴う陽線でエントリーし、直近スイング安値に逆指値を置きます。
売り:PBRやPERが自分の閾値を大きく超え、ROEやCAGRが鈍化し始めたとき。もしくは決算でガイダンス下方修正が出たら部分利確を検討します。

リスク管理:数字だけでは守れない3つの壁

  1. セクター偏重リスク:同じ論理で選ぶと同業種に偏りがちです。最低でも5業種に分散します。
  2. 流動性リスク:小型株はスプレッドが広く清算が難しい場合があります。出来高の平均を確認します。
  3. 情報の非対称性:一過性の特損・特益、会計方針変更、希薄化リスク(増資・SO)に注意します。

FAQ:初心者が最初にぶつかる疑問

Q1. PERの「適正」は何倍ですか?
A. 業種と金利で大きく変わります。成長率g、自己資本コストrとすると、簡易DCFの直感では「適正PER≒1/(r−g)」。gが上がるほど(またはrが下がるほど)許容PERは上がります。

Q2. PBR1倍割れは全部買いですか?
A. いいえ。ROEが低く資本が遊んでいるだけのケースや、将来の収益性が毀損している場合は割安ではありません。ROEとCAGRを必ずセットで見ます。

Q3. 配当利回りが高い銘柄は安全?
A. 高すぎる利回りは減配のサインであることが多いです。配当性向(配当/EPS)とフリーCFで持続性を確認します。

デュポン分解でROEを“直視”する

ROE=利益率(純利益/売上)×回転率(売上/総資産)×レバレッジ(総資産/自己資本)。利益率だけでなく、資産の回転とレバレッジのバランスでROEは作られます。たとえば小売は回転率が高く、製造業は利益率寄与が大きい傾向があります。

今日からの実行テンプレ

1) 監視リストを30銘柄用意(主要業種から3〜5社ずつ)
2) EPS CAGR(3y)・ROE・PBR・配当利回りを表にする
3) ルールA(配当×ROE×割安)またはルールB(成長割安)を選ぶ
4) 等金額で5〜10銘柄構築、逆指値を必ず置く
5) 四半期ごとに見直し(ROE低下・ガイダンス下方は要警戒)

最後に:数字は“武器”、使い方がすべて

PERやPBRは過去の宿題、EPSとROEは現在地、そして期待成長は未来地図です。5つの指標を同じキャンバスで眺め、「なぜ安い(高い)のか」の物語を言語化できるようになれば、初心者でも腰の据わった投資ができるようになります。ぜひ、本記事のテンプレを使い、自分なりの基準値を少しずつアップデートしていってください。

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