VWAP徹底解説:個人投資家がプロの執行に近づく実践ガイド

テクニカル分析

本記事では、出来高加重平均価格(Volume Weighted Average Price:VWAP)を、投資初心者でも今日から実践できるレベルまで徹底的に解説します。VWAPは「市場参加者の平均的な約定価格」を表し、機関投資家の執行指標・評価指標として常用されます。個人投資家にとっても、”どこで買えば公平か、どこで売れば無理がないか”の判断軸になり、無駄なナンピンや高値掴みを抑制する強力なルールになります。

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1. VWAPの定義と直感

VWAPは、一定の計測区間(通常は当日開始から現在まで)における価格を出来高で重み付けして平均した値です。式で書くと以下です。

VWAP = (Σ{各取引の価格 × 出来高}) / (Σ{各取引の出来高})

直感的には、たくさん約定があった価格ほど影響力が大きくなる平均値です。出来高が伴わないヒゲや一瞬のスパイクの影響は薄まり、フェアバリュー(公正価格)に近い水準が抽出されます。

2. 手作業で理解する:超具体例

次の5本の約定データ(価格・出来高)が連続したとします。

1本目: 価格 1,000 / 出来高 300
2本目: 価格 1,002 / 出来高 150
3本目: 価格 998  / 出来高 120
4本目: 価格 1,001 / 出来高 430
5本目: 価格 1,003 / 出来高 200

分子は (1000×300 + 1002×150 + 998×120 + 1001×430 + 1003×200) = 1,001,? のように計算し、分母は出来高合計 (300 + 150 + 120 + 430 + 200) = 1,200 です。これを割った値がVWAPで、概ね1,001円前後に落ち着きます。「平均的に市場が受け入れた約定価格」として扱える水準です。

3. 使い方の基本:VWAPを“軸”にする

VWAPは単なるラインではなく、意思決定のです。初心者は次の3ルールから始めると効果的です。

3-1. 買いの基本

強いトレンドが出ているときは、価格がVWAPのやや上で推移し、VWAPまでの押し目で反発しやすくなります。VWAP付近までの押し目待ち→VWAPの上で反転確認→少量でエントリーとし、損切りはVWAPのやや下(例:0.3〜0.5%)に置きます。

3-2. 売りの基本

下降トレンドでは、価格がVWAPの下で推移し、VWAPまでの戻りで叩かれやすいです。VWAP戻り売り→VWAP上抜けで損切りのシンプルな逆張りが有効です。

3-3. 触らない局面

価格がVWAPを挟んでヨコヨコのときはノイズが多く、ダマシが連発します。VWAPと価格の距離(乖離率)が極小かつ出来高が痩せているときは休むのも戦略です。

4. 実務での落とし穴:この3点でつまずきます

4-1. セッションの区切りを誤る

株式は通常「当日始値から終値まで」でVWAPを計算します。先物や暗号資産など24時間市場では、区切り時間(ロールオーバー)を自分の戦略に合わせて固定する必要があります。区切りがズレるとVWAPが再計算され、シグナルが変わります。

4-2. アンカードVWAPを混同する

特定のイベント(ギャップ開始、指標発表、決算、年初来高値など)に基点を“固定”して計算するのがアンカードVWAP(AVWAP)です。通常VWAPと混同してルールが崩れるケースが多いので、「デイVWAP」と「AVWAP」を別ラインとして区別して使います。

4-3. “VWAPタッチ=即逆張り”の誤解

VWAPは磁石のように価格を引き寄せる傾向がありますが、トレンドが強い場面ではVWAPに届かず加速します。必ず価格アクション(小さなレンジ上抜け/下抜け、出来高の増加、直近高安値のブレイク/否定)で裏取りをします。

5. 注文フローとの合わせ技:個人でも再現できる根拠強化

VWAP単体より、注文フロー(テープリーディングや約定フロー)を重ねると精度が一段上がります。板情報(DOM)が見られない環境でも、約定の連続性・サイズ・スピードに注目するだけで優位性が出ます。

5-1. シンプルな観察法

価格がVWAP上で推移中に、買い約定(成行買い起点)の連続・サイズ拡大・約定間隔の短縮が見られる場合、押し目が浅くなる=強いトレンド継続の可能性が高まります。逆に、VWAP上でも売りの大口連打が出れば、一旦の巻き戻しを疑います。

5-2. 簡易的な定量化

インディケータがなくても、1分足で「陽線の出来高合計」−「陰線の出来高合計」(いわゆるCVD的な観点)を手計算して、直近5〜10本のバランスを追うだけでトレンドの息切れが見えます。VWAPに向かう戻しでこの差が縮小→反転の合図になりやすいです。

6. エントリー/エグジットの完全手順(デイVWAP)

6-1. 強気トレンドの押し目買い

条件:価格が開場後にVWAP上へ乗せ、乖離が1.0〜1.5%発生。
シナリオ:VWAPへの押し目待ち → VWAP±0.1〜0.2%で小反発を確認 → 1/2サイズでエントリー → 直近スイング安値の下に損切り。
利確:直近高値手前で1/2利確、残りはトレーリング(直近レンジ下限割れ or VWAP割れでクローズ)。

6-2. 弱気トレンドの戻り売り

条件:価格がVWAPの下で推移し続け、戻りで出来高が萎む。
シナリオ:VWAP接近で小陰線連続 → 1/2サイズでショート → 直近スイング高値上に損切り。
利確:直近安値で1/2利確、残りはVWAP乖離の拡大が止まるまで保有。

6-3. 触らない判断

イベント直前(雇用統計、CPIなど)でVWAP近辺に価格が収束してきた場合は、ノーカウントにします。イベント後の初動と押し戻しを見てからで十分です。

7. 乖離の見方とサイズ調整

乖離率(=(価格−VWAP)/VWAP)が小さいときはダマシが多く、ポジションは小さめにします。逆に、乖離が大きすぎると押し戻しが入りやすいので、乖離が縮小→反転の瞬間に小さく入るのが基本です。日中のボラティリティ(ATRやVIX水準)に応じて、損切り幅とポジションサイズを機械的に調整します。

8. リスク管理:損切り・トレーリング・最大ドローダウン

VWAPは精度の高い“軸”ですが、損切りのない戦略は存在しません。実務では次の3点を固定ルールにします。

  1. 初期ストップ:エントリー根拠(VWAP反発/戻り)を否定する位置に置く(例:VWAP±0.3〜0.8%、または直近スイングを基準)。
  2. 部分利確:直近高値/安値手前、またはRR比1.0達成で1/2利確し、残りはトレーリング。
  3. 日次損失の上限:口座残高の−1%(初心者は−0.5%)で当日は終了。

9. 先物・FX・暗号資産での応用

24時間系の市場では、セッション区切りとアンカーの扱いが勝負所です。東京9:00、ロンドン16:00、NY9:30/17:00などに合わせて複数のデイVWAPを並置し、どのタイムゾーンの参加者が主導しているかを判定します。暗号資産では年初来/週初/月初のAVWAPが機能しやすく、節目の攻防に使えます。

10. よくある誤解と対処

「VWAPは逆張り指標」:トレンドの方向に順張りのほうが勝ちやすい相場が多いです。
「VWAPはどの足でも同じ」:VWAPは基本的に“当日”積み上げ。足種は表示だけで、中身は同じ累積です。
「出来高ゼロ市場でも完璧」:出来高が薄いと精度は落ちます。補助としてATRやレンジ構造を重ねます。

11. 実装例:MQL4(MT4)でのVWAP表示

以下はデイVWAPの単純実装例です。ブローカー仕様により当日判定や出来高の扱いが異なる点に注意してください。

//+------------------------------------------------------------------+
//| Simple Daily VWAP for MT4                                        |
//+------------------------------------------------------------------+
#property indicator_chart_window
#property indicator_buffers 1
double vwap[];
int OnInit(){ SetIndexBuffer(0, vwap); IndicatorShortName("Daily VWAP"); return(INIT_SUCCEEDED); }
int OnCalculate(const int rates_total, const int prev_calculated, const datetime &time[],
                const double &open[], const double &high[], const double &low[],
                const double &close[], const long &tick_volume[], const long &volume[],
                const int &spread[]){
    double pv_sum=0, vol_sum=0; datetime d0 = iTime(NULL, PERIOD_D1, 0);
    for(int i=rates_total-1; i>=0; i--){
        if(time[i] < d0) { pv_sum=0; vol_sum=0; d0 = iTime(NULL, PERIOD_D1, iTime(NULL, PERIOD_M1, i)/86400*86400); }
        double price = (high[i]+low[i]+close[i])/3.0;
        double vol   = (double)tick_volume[i];
        pv_sum += price * vol; vol_sum += vol;
        vwap[i] = (vol_sum>0) ? (pv_sum/vol_sum) : price;
    }
    return(rates_total);
}

MT4では実出来高が提供されないことが多いため、tick_volumeを代用します。FXではこれで十分な相関が出るケースが多いです。

12. 実装例:TradingView Pine(アンカードVWAP)

//@version=5
indicator("Anchored VWAP (Simple)", overlay=true)
var anchor = input.time(timestamp("2025-01-01T00:00:00"), "Anchor Time")
var float pv = na
var float vv = na
reset = time >= anchor and (time[1] < anchor)
price = hlc3
vol = volume
pv := reset ? price*vol : nz(pv[1]) + price*vol
vv := reset ? vol       : nz(vv[1]) + vol
plot(vv>0 ? pv/vv : na, title="AVWAP")

重要イベントのローソク足時刻をアンカーに設定すれば、イベント以降のフェアバリューが一目でわかります。

13. 具体的ケーススタディ

ケースA:上昇トレンドの押し目

寄り付き後に急騰し、VWAP乖離が1.4%まで拡大。出来高が一巡し、戻しでVWAP±0.15%の小反発+陽線連続を確認。半分のサイズで買い、直近押し安値下にストップ。直近高値手前で半利確、残りはVWAP割れで決済。RR比はおよそ1.8。

ケースB:弱気トレンドの戻り売り

前場にVWAPの下へ沈み、戻しで出来高が細る。VWAP接触で小陰線→陰線→上髭陰線の連続。1/2サイズでショート、直近戻り高値上にストップ。安値更新で半利確、VWAP回復でクローズ。RR比1.5程度。

14. チェックリスト(印刷推奨)

  • セッション区切りは固定したか(株:当日、24h:自分のルール)
  • デイVWAPとAVWAPを混同していないか
  • VWAP単体でなく、出来高・約定の連続性で裏取りしたか
  • 初期ストップと日次損失上限を先に決めたか
  • イベント直前は“ノーカウント”にしているか

15. まとめ:VWAPは「公平さ」を売買規律に変える道具です

VWAPは、価格の偶然やノイズをならし、市場の合意点を示します。トレンド方向に素直に従い、VWAPを軸に押し目/戻りを待つだけで、エントリーの質が大きく改善します。重要なのは、毎回同じ手順で、同じ損切り基準を適用することです。今日から「VWAPを軸にする」ことを売買日誌に明文化し、3週間はルールを崩さず検証してください。結果は自然に数字に現れます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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