サポートラインは「割れたら終わり、守られたら反発」という単純な話に見えて、実戦では勝てません。なぜなら、サポートは“価格”ではなく“参加者の損益と注文の層”で成立しており、反発する時と簡単に貫通する時が混在するからです。
本記事は、サポート付近の反発確認を起点に、損切りを浅く固定しながら、勝率ではなく期待値(平均損益)を積み上げるための設計図を提示します。株・FX・暗号資産のいずれにも転用できるよう、ルールを抽象化しつつ、具体例と数値例で落とし込みます。
- サポートラインの正体:線ではなく「ゾーン」と「未決済の痛み」
- まず引くべきサポートの種類:強い順に3つだけ
- 「反発確認」って何を確認するのか:チェック項目を固定する
- エントリーは3パターンに絞る:損切りを浅くする入口設計
- 損切りを浅くする具体策:ストップ位置は「線」ではなく「無効化点」
- 利確は“天井当て”を捨てる:R(リスクリワード)基準で機械化
- 具体例1:日本株(デイトレ)— 寄り付き後の押しで浅い損切りを作る
- 具体例2:FX(15分足)— ロンドン時間の押し目で“無効化点”を作る
- 具体例3:暗号資産(1時間足)— “清算の投げ”を利用して反発を取る
- 勝率より期待値:損切りが浅い戦略の「負け方」を設計する
- ダマシを減らすフィルター:3つだけ追加する
- エントリーの“型”を検証する:手書きログで十分勝てる
- よくある失敗と修正:初心者がハマる3つの罠
- まとめ:サポート反発は「浅い損切り」ではなく「浅い無効化点」が鍵
- 上級者が見ている「サポートの質」:強弱を数値で見積もる
- 「浅い損切り」と相性が悪い局面:触らない勇気が期待値を守る
- ストップ狩りへの対処:狙われる場所に置かない、置くなら“前提”を変える
- 資金管理の実装例:初心者向けの計算式を固定する
- 「伸びる反発」の見分け方:反発後の“押しの浅さ”だけ見る
- ミスを減らすチェックリスト:エントリー直前の5項目
サポートラインの正体:線ではなく「ゾーン」と「未決済の痛み」
チャートに引いた一本線を“神聖視”すると、損切りが深くなり、負けが肥大化します。サポートは多くの場合、次の2要素の合成です。
① 価格帯(ゾーン):過去に反転した水準は、ピンポイントではなく数ティック〜数十pipsの幅を持ちます。出来高の厚い価格帯、約定が集中した価格帯は、再来時にも注文が集まりやすい。
② 損益の集中(痛み):同じ価格帯で買った参加者が多いほど、その水準を割ると含み損が増え、投げ(損切り)が出ます。逆に、守られると安心買いが増えやすい。
重要なのは「ゾーンの下端を明確に割ったら撤退できる設計」にすることです。これが“損切りを浅くする”の本質です。
まず引くべきサポートの種類:強い順に3つだけ
サポートは無限に引けますが、実戦で機能しやすいものは限られます。優先順位を決めます。
(1)日足〜週足の直近安値ゾーン:多くの参加者が見ており、注文が集まりやすい。スイングの基礎。
(2)出来高の山(ボリューム・ノード):同価格帯での約定が厚い=建玉やポジションの“重心”。ここを割ると損切り連鎖が起きやすい反面、反発すれば買いが乗りやすい。
(3)節目(キリ番)+直近の押し安値:例:日経の○○円、ドル円の150.00、BTCの50,000など。心理的注文が入りやすい。
これらが重なる“コンフルエンス(合流)”を狙うと、損切り幅を浅くしつつ反発確率を上げられます。
「反発確認」って何を確認するのか:チェック項目を固定する
サポート到達=買い、ではありません。反発確認の定義を固定しないと、都合の良い解釈で入ってしまい再現性が崩れます。ここでは、反発確認を次の3点セットに定義します。
A. 下ヒゲ(拒否):サポートゾーンを一度割り込み、すぐ戻して終値(または分足終値)で戻る。売りが吸収されている兆候。
B. 出来高の変化:下落局面で出来高が増える(投げ・清算)→その直後に下げ止まり、戻りの足で出来高が保たれる。反発の燃料が入った可能性。
C. 価格の「戻り方」:戻りが弱い(ヨコヨコでじわ上げ)より、短時間でVWAPや短期MAを奪回する方が“踏み”を誘発しやすい。
この3点のうち、最低2つを満たしたら「反発確認」とみなす、のようにルール化します。
エントリーは3パターンに絞る:損切りを浅くする入口設計
サポート反発は入口が命です。損切りを浅く保つため、エントリーを3つに限定します。
パターン1:初回タッチのリバウンド(速攻型)
サポート初回接触で、下ヒゲ+即座の反転が出たら入る。利点は反発が速い時に取り切れること。欠点はダマシが多い。
パターン2:反発確認後の押し目(本命型)
一度反発して短期MAやVWAPを上抜け→その後の押しでサポート上端付近を再テストして止まったら入る。勝率と損切り幅のバランスが良い。
パターン3:ブレイクダウン失敗(フェイク抜け型)
サポートを明確に割ったのに続落せず、すぐ戻して“割れが否定”された瞬間に入る。損切りは割れた安値の数ティック下に置けるため非常に浅い。
損切りを浅くする具体策:ストップ位置は「線」ではなく「無効化点」
損切り幅が広い人の多くは、ストップを「サポートより少し下」など曖昧に置きます。正しくは、あなたの仮説が崩れる地点=無効化点に置きます。
例:日足サポートゾーンの下端が10,000円、直近安値が9,980円なら、「9,980円を明確に割ったら反発仮説は崩れる」と定義できます。ストップは9,970円〜9,975円のように、“明確に割れた”と判定できる水準に置きます。
FXなら「直近安値−スプレッド×α」、暗号資産なら「板の厚い買い壁の下」など、商品特性に合わせて微調整します。
利確は“天井当て”を捨てる:R(リスクリワード)基準で機械化
損切りを浅くして優位性を作るなら、利確も機械化しないと手残りが消えます。おすすめは、次の2段階です。
① まず1Rで半分利確:損切り幅を1とした時、利益が1になったら半分利確。これで心理的に楽になり、残りを伸ばせる。
② 残りは“次の抵抗帯”まで:直近戻り高値、日足の戻り売りゾーン、VWAP乖離が大きい地点など。到達前に失速したら撤退。
「2R以上を取りに行くが、まず1Rは必ず確保する」設計にすると、勝率が多少低くても期待値が残りやすい。
具体例1:日本株(デイトレ)— 寄り付き後の押しで浅い損切りを作る
想定シナリオ:前日高値ブレイクでGUした銘柄が、寄り付き後に利確売りで下げ、前日終値〜前日高値の間にサポートが形成されるケース。
手順はこうです。
① 監視:寄り後に下げた時、出来高が増えたか(投げ・利確が出たか)を確認。VWAPを下回る下落は警戒。
② サポート候補:前日高値、寄り付き直後の安値、出来高が膨らんだ価格帯の3点をゾーン化。
③ 反発確認:そのゾーンで下ヒゲが出て、次の足でVWAPに近づく(または短期MAを上抜く)。
④ エントリー:反発後の押しで、ゾーン上端付近で止まったら買い。ストップは直近安値の数ティック下。
⑤ 1R利確:直近戻り高値の手前で一部利確。残りはVWAP上に居続ける限りホールドし、VWAP割れで撤退。
この形は、損切り幅が「直近安値まで」と明確になり、ダメならすぐ切れます。勝つ時はVWAP回復からの加速で伸びやすい。
具体例2:FX(15分足)— ロンドン時間の押し目で“無効化点”を作る
想定シナリオ:東京時間に下落した後、ロンドン寄りで急落→日足サポート(前日安値付近)で下げ止まり、戻りが始まるケース。
① サポート設定:前日安値±数pipsをゾーン化。ここは多くの参加者が見ている。
② フェイク抜け狙い:ロンドン寄りのボラで一瞬割るが、15分足終値がゾーン内に戻る(割れ否定)。
③ エントリー:割れ否定の足の高値を上抜けたら入る(安全重視)。
④ ストップ:フェイクで付けた最安値−スプレッド×α。ここを割るなら“否定”が否定されるので撤退。
⑤ 利確:直近戻り高値までで1Rを取り、残りは欧州勢が作るトレンドに乗せる。勢いが落ちたら、直近押し安値割れで撤退。
ロンドンはボラが出るので、損切りを浅くできる一方、滑り(スリッページ)も起きやすい。指値・逆指値の置き方は必ず検証してください。
具体例3:暗号資産(1時間足)— “清算の投げ”を利用して反発を取る
暗号資産はレバレッジ清算が絡むため、サポート到達時に出来高が急増しやすい。ここを「投げが終わったかどうか」で判断します。
① 目印:直近のスイング安値、キリ番、出来高の山(レンジ中央)をゾーン化。
② 投げの判定:急落足で出来高が跳ね、次の足で下げが続かず下ヒゲが出る(セリングクライマックス寄り)。
③ エントリー:反発確認後、短期的にVWAPや20EMAを奪回したタイミングで小さく入る。さらに押しで追加。
④ ストップ:最安値割れ。暗号資産は値が飛ぶので、ストップは必須で、サイズを落としてでも守る。
⑤ 利確:まず1R、次に前回戻り高値、最後は急騰後の伸び切り(ボラ拡大)で分割利確。
暗号資産は“当たれば大きい”が、当たらない時の下げも速い。損切りが浅い戦略ほど、枚数(ポジションサイズ)管理が生命線です。
勝率より期待値:損切りが浅い戦略の「負け方」を設計する
浅い損切り戦略は、負けが小さい代わりに「小さな負けが連続する」時期があります。そこで重要なのが、負け方の設計です。
・1回あたりの許容損失を固定:資金の0.5%や1%など。これを超えるロットは持たない。
・同一テーマの連敗上限:例:同じ銘柄・同じ通貨ペアで2連敗したら、その日は触らない。相場が“抜け局面”の可能性がある。
・取り返し禁止:浅い損切りは回転が上がるので、感情的に回数を増やすと手数料とスリッページで負ける。
ダマシを減らすフィルター:3つだけ追加する
サポート反発はダマシが宿命です。完全に消すのではなく、費用対効果の高いフィルターを3つだけ入れます。
フィルター1:上位足のトレンド方向に限定
日足が上昇トレンドなら、下位足のサポート反発を買う。日足が下落トレンドなら、反発は短命と想定して利確を早める。
フィルター2:直前の下落角度が急すぎる場合は見送る
急落は反発もあるが、続落もある。急落の第一波は触らず、フェイク抜け(割れ否定)まで待つ方が浅い損切りと相性が良い。
フィルター3:リワードの“空間”があるか
サポートの上にすぐ強いレジスタンスがあるなら、1Rすら取れない。入る前に「最低でも1Rの空間」を確認する。
エントリーの“型”を検証する:手書きログで十分勝てる
初心者が最短で上達する方法は、派手な指標追加ではなく、型の検証です。難しいツールは不要で、次のログで十分です。
・どのサポートか(日足安値、出来高帯、キリ番…)
・反発確認は何が出たか(下ヒゲ、出来高、VWAP奪回…)
・損切り幅(円/pips/%)と想定利幅(次の抵抗まで)
・結果(Rで記録):+1.2R、-0.7Rなど。金額ではなくRで残すと戦略の良し悪しが見える。
20〜30トレード分を同じ型で集めれば、勝率と平均Rが見えてきます。そこで初めて改善(フィルター追加や利確調整)に入るのが効率的です。
よくある失敗と修正:初心者がハマる3つの罠
罠1:サポートに触れた瞬間に買う
→ 修正:最低2条件の反発確認が出るまで待つ。触れた瞬間は“割る力”が強いことが多い。
罠2:ストップを動かして深くする
→ 修正:無効化点は最初に決めて固定。ストップを深くするのは、戦略の前提を壊す行為。
罠3:利確が遅すぎて建値に戻る
→ 修正:まず1Rで一部利確。残りを伸ばすのは、その後。最初から全部を伸ばそうとすると“取れた利益”が消える。
まとめ:サポート反発は「浅い損切り」ではなく「浅い無効化点」が鍵
サポート反発の優位性は、当て物ではなく設計です。ゾーンと無効化点を決め、反発確認の定義を固定し、1Rの確保と分割利確で期待値を積み上げます。
一度この型が身につくと、レジスタンスのブレイクや押し目買い、逆張りの乖離狙いなど、他の戦略にも共通の“設計思考”として転用できます。最初は小さく、同じ型を繰り返し、Rで記録し、改善してください。
上級者が見ている「サポートの質」:強弱を数値で見積もる
同じサポートでも、反発しやすいものと脆いものがあります。感覚で決めるのではなく、判断材料を増やします。ここでは初心者でも扱える“定量っぽい”見積もりを紹介します。
① 反転回数:同じゾーンでの反転回数が多いほど注目されます。ただし多すぎると注文が“消耗”して最後は抜けやすい。目安は2〜3回が最も扱いやすい。
② 反転までの距離:前回の高値から大きく下げて到達したサポートは、投げ・清算が溜まりやすく反発も鋭くなりやすい。一方、ジリ下げで到達した場合は買いが弱く、反発が鈍いことが多い。
③ 時間の圧縮:サポート直前で長時間揉む(価格が収束する)と、上下どちらかに走りやすい。揉み合い後の“抜け”に備え、反発確認が弱いなら見送る。
④ 市場全体の地合い:個別株でも指数先物の流れに逆らうと反発が弱い。FXならドルインデックスや金利、暗号資産ならBTCの方向を必ず確認します。
「浅い損切り」と相性が悪い局面:触らない勇気が期待値を守る
この戦略は万能ではありません。むしろ“入らない局面”を明確にした方が、長期の成績が安定します。
・ニュース直撃(決算、要人発言、急変材料):サポートが機能する前にギャップで飛ぶ。ストップが想定通りに約定しないリスクが上がります。
・強いトレンドが崩れた直後:例えば上昇トレンドが日足で明確に壊れた直後は、過去のサポートが次々割れやすい。反発はあっても短命になりがち。
・出来高が枯れている時間帯:板が薄いと、少ない注文で上下し、下ヒゲや反発確認が“見かけ上”出やすい。再現性が落ちます。
・サポート直下に大きな真空地帯がある:過去に出来高が少ない価格帯は、一度割れると滑り落ちやすい。浅い損切りでも連敗しやすいので避ける。
ストップ狩りへの対処:狙われる場所に置かない、置くなら“前提”を変える
「サポートの少し下」は多くの人が置くため、短期的にそこを刈ってから戻る動きが起きます。これを恐れてストップを深くすると、本末転倒です。対処は2つだけです。
対処1:パターンを“フェイク抜け型”に寄せる
最初の割れは触らず、「割れたのに戻った」時だけ入る。これなら刈りに行く動き自体が、あなたのエントリー条件になります。
対処2:ストップ位置を“時間”で補強する
価格だけでなく、例えば「5分足終値で割れたら撤退」のように、終値判定を使う。瞬間的なヒゲで刈られにくい。ただし、急落時の損切りが遅れるのでロットを落とす必要があります。
資金管理の実装例:初心者向けの計算式を固定する
損切りを浅くする戦略は、ロット計算を固定すると急に安定します。考え方は単純で「許容損失 ÷ 損切り幅 = 数量」です。
例(株):資金100万円、1回の許容損失0.7%=7,000円。損切り幅が30円なら、7,000÷30=233株。端数を切って200株。
例(FX):口座50万円、許容損失0.5%=2,500円。損切り幅が12pips、1万通貨の1pipsが約100円なら、12pipsで1万通貨は約1,200円。2,500円までなら2万通貨でも許容(約2,400円)。
例(暗号資産):資金30万円、許容損失1%=3,000円。損切り幅が0.8%なら、ポジション額は3,000÷0.008=375,000円相当。ただし急変があるため、初心者はさらに半分程度から始める。
この計算を毎回やるのが面倒なら、損切り幅ごとの早見表を作れば良い。重要なのは、感情で枚数を増減しないことです。
「伸びる反発」の見分け方:反発後の“押しの浅さ”だけ見る
反発が伸びるかどうかを当てに行くと破綻します。見るべきは、反発後の押しの浅さです。
・強い反発:反発後に押しても、サポート上端やVWAP付近で止まりやすい。押しが浅い=買いが継続している。
・弱い反発:反発後に戻りが鈍く、すぐVWAPを割る。押しが深い=買いが弱い。
この判定を使うと「弱い反発は1Rで終わり、強い反発だけ伸ばす」という運用がしやすくなります。
ミスを減らすチェックリスト:エントリー直前の5項目
最後に、エントリー直前のチェックリストを固定します。これを満たさないなら入らない。それだけで無駄なトレードが減ります。
1)サポートは上位足で説明できるか(日足安値・出来高帯・節目のいずれか)
2)反発確認が2条件以上あるか(下ヒゲ・出来高・VWAP奪回など)
3)無効化点が明確か(ここを割ったら終わり、が言語化できる)
4)最低1Rの空間があるか(上に抵抗が詰まっていない)
5)ロットは許容損失から逆算したか(気分で増やしていない)
この5つを守るだけで「勝とうとして負ける」回数が減り、結果として勝ちに近づきます。


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