トレンドフォローの実践手順:個人投資家が相場の波に乗るための具体的ステップ

トレード戦略

「相場の流れに逆らうな」というフレーズを耳にしたことがある方は多いと思います。これを具体的な売買ルールに落とし込んだものが「トレンドフォロー戦略」です。高くなったら不安になって売ってしまう、安くなったら慌ててナンピンして傷を広げてしまう――こうした行動とは真逆の発想で、上昇しているものは素直に買い、下落しているものは売る、というシンプルな戦略です。

一方で、トレンドフォローは「何となく雰囲気でトレンドについていく」だけではうまくいきません。トレンドの定義、エントリーとイグジットの条件、損切りとポジションサイズの決め方などを数値で明確にしておかないと、相場の揺れに合わせて感情がブレてしまい、結局裁量トレードと変わらない結果になります。

この記事では、個人投資家が今日から実際に使えるレベルまで、トレンドフォローの考え方と手順を具体的に整理します。FX、株、暗号資産など銘柄を問わず応用できるよう、チャートの基本指標だけで構成し、特別なインジケーターや高価なツールがなくても実践できる形に落とし込んでいきます。

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トレンドフォローとは何か:価格の「流れ」に賭ける発想

トレンドフォローは一言でいえば「値動きの方向性がしばらく続く」という前提に賭ける戦略です。完璧に未来を当てるのではなく、「完全に出遅れず、致命的に乗り遅れずに、真ん中の利益帯を取る」ことを狙います。

例えば、ドル円が長期間にわたって右肩上がりで推移している局面を考えてみましょう。多くの人は「さすがに高すぎる」「そろそろ天井だ」と感じて買えなくなります。しかしトレンドフォローでは、「すでに上がっていても、まだ上昇が続く確率が高いなら買う」「上昇が終わったと判断したら機械的に撤退する」というルールで淡々と動きます。

この発想は逆張り思考とは真逆です。逆張りは「行き過ぎた値動きは元に戻る」に賭け、トレンドフォローは「動き始めた流れはしばらく続く」に賭けます。どちらが正しいという話ではなく、自分の性格と時間軸に合うかどうかが重要です。本記事では、時間軸としては「数日~数か月」のスイング~スイング長期寄りを想定し、日足チャートを中心に解説します。

トレンドをどう定義するか:移動平均線ベースのシンプルな基準

トレンドフォローで最初に決めるべきは「トレンドの定義」です。ここが曖昧だと、チャートを見るたびに判断が変わり、ルールも守れなくなります。おすすめは、移動平均線を使ったシンプルな定義です。

移動平均線で上昇トレンドを定義する例

日足チャートで、20日移動平均線と60日移動平均線を表示するとします。このとき、次の3条件を満たしたら「上昇トレンド」とみなす、というルールを用意します。

1. 終値が60日移動平均線より上にあること
2. 20日移動平均線が60日移動平均線より上にあること
3. 60日移動平均線の傾きが上向き(直近20営業日で上昇)になっていること

この3条件を満たしていれば、「短期的にも中期的にも上向きであり、全体の流れとして上昇トレンド」と定義できます。逆に、これらの条件を満たさなくなったら「上昇トレンドではない」と判定し、ポジションを軽くしたり、イグジットを検討するシグナルとなります。

下降トレンドの定義

下降トレンドは上記の逆です。

1. 終値が60日移動平均線より下にあること
2. 20日移動平均線が60日移動平均線より下にあること
3. 60日移動平均線の傾きが下向きになっていること

FXであれば、「上昇トレンド=買い目線で押し目を狙う」「下降トレンド=売り目線で戻り売りを狙う」といったように、そもそもの売買方向をこのトレンド定義で決めてしまうのがポイントです。これにより、「上昇トレンドなのに天井を当てようとして売ってしまう」といったミスを減らせます。

エントリー手順:ブレイクアウト型と押し目買い型

次に、トレンドフォローで代表的なエントリー方法を2つ紹介します。どちらもシンプルですが、再現性のあるルールに落とし込みやすく、初心者でも取り組みやすいパターンです。

1. ブレイクアウト型エントリー

ブレイクアウトとは、「一定期間の高値(または安値)を抜けたタイミング」でエントリーする方法です。例えば、「過去20営業日の高値を上に抜けたら買い」というルールです。

具体例として、ドル円の日足チャートを想定します。

・20日高値が150円
・現在の終値が150.20円で、20日高値を明確に上抜けた
・その時点で、先ほどの上昇トレンド条件(終値>60MA、20MA>60MA、60MA上向き)も満たしている

このような状況であれば、「トレンドも上向きで、直近レンジを上方向にブレイクした」と判断でき、価格の上昇が加速する局面に乗りに行くイメージです。

ブレイクアウトのメリットは、「トレンドの勢いが強いときにだけ乗る」ことができる点です。一方、ダマシも多く、ブレイクした直後にすぐ反落して損切りになることもよくあります。損切りを小さく、かつ期待値がプラスになるよう全体の設計をすることが重要です。

2. 押し目買い・戻り売り型エントリー

もう一つの王道パターンが「押し目買い・戻り売り」です。上昇トレンドで一時的に下がったところを買い、下降トレンドで一時的に上がったところを売る手法です。

例えば、上昇トレンドの中で次のようなルールを設けます。

・トレンド判定は先ほどの3条件で「上昇トレンド」であること
・価格が20日移動平均線まで下がってきたら買いを検討
・ローソク足が20日移動平均線の少し上で陽線をつけて反発したら終値でエントリー

このパターンでは、「高値ブレイクまで待つのではなく、トレンド中の調整を拾う」イメージになります。エントリー価格が比較的有利になりやすい一方で、「どこまで押し目が続くのか」が分からないため、損切りラインを事前に明確に決めておく必要があります。

損切りとポジションサイズ:1回のトレードで失ってよい額を先に決める

トレンドフォローで長く生き残るためには、エントリーよりも損切りとポジションサイズが重要です。どんな優れたルールでも、すべてのトレードが勝つことはありません。勝率50%前後でも、損小利大の形になっていれば十分にトータルで利益を残せます。そのためには、「1回の負けでどれだけ失うのか」を先に決めておく必要があります。

1トレードあたりの許容損失を決める

具体的には、「口座残高の何%を1回のトレードでリスクにさらすか」を決めます。代表的なのが1~2%ルールです。

・口座残高100万円の場合
・1回のトレードで最大1%=1万円までの損失を許容
・損切り幅が1ドル=1円(100pips)なら、1万通貨ポジションで損失1万円
・損切り幅が0.5円(50pips)なら、2万通貨までポジションを増やせる

このように、「損切り幅 × ロット量 = 最大許容損失額」を超えないようにロットを調整します。相場が荒れて損切り幅が広くなるときは、ロットを下げてリスクを一定に保つのがポイントです。これを徹底するだけで、連敗しても口座が一気に飛ぶことを防げます。

損切りラインの置き方

トレンドフォローでは、「トレンドが否定されたと判断できる価格」に損切りラインを置きます。単に「〇円下がったら損切り」という金額ベースではなく、チャート構造に意味のあるラインを使います。

上昇トレンドでの一例は次の通りです。

・直近の押し安値の少し下に損切り
・20日移動平均線の少し下に損切り
・サポートライン(過去の高値が支持線に変わった価格)の下に損切り

例えば、ドル円が150円→152円→151円→153円と推移しているとします。このとき、「151円が直近の押し安値」となります。152.50円でエントリーするなら、損切りは150.80円~150.90円など、「押し安値を明確に割り込んだ」と判断できる位置に置きます。

こうすることで、「押し目の範囲内のブレで機械的に振り落とされないようにしつつ、トレンドが本格的に崩れたら速やかに撤退する」というバランスを取ることができます。

利確戦略:トレーリングストップでトレンドを追いかける

トレンドフォローの強みは「大きなトレンドに乗れたときに、一気に利益を伸ばせる」点です。そのためには、利確を早くしてしまいすぎないことが重要です。一方で、欲張りすぎると含み益が消えてしまうこともあります。そこで有効なのが、トレーリングストップ(追随型ストップ)です。

移動平均線を使ったトレーリングストップ

シンプルで再現性が高い方法として、「移動平均線割れで一部または全て利確」というルールがあります。

・上昇トレンド中のロングポジション
・終値が20日移動平均線を明確に下に抜けたら半分利確
・終値が60日移動平均線を明確に下に抜けたら残りも利確

このように2段階で決済することで、「短期的な調整には耐えつつ、トレンド本体が崩れたところで撤退する」動きができます。もちろん20日と60日でなく、10日と30日など、自分の時間軸に合わせてパラメータは調整可能です。

高値更新に合わせたストップ切り上げ

もう一つの方法は、「直近の押し安値にストップを移動していく」やり方です。

・新しい高値をつけるたびに、その直前の押し安値を確認
・その押し安値の少し下にストップを切り上げる
・これを繰り返すことで、「含み益の一部をロックしながらトレンドを追う」形になる

こうしたトレーリングストップを使うと、「どこが天井になるか」を当てにいく必要がなくなります。結果として、たまたま想定以上の大相場になったときに、しっかりと利益を伸ばし切ることができます。

実践例:ドル円日足でのトレンドフォローシナリオ

ここからは、ドル円の日足チャートを例に、具体的なトレンドフォローのシナリオをイメージしてみます(価格や日付はイメージです)。

1. ドル円が140円から上昇を続け、60日移動平均線が右肩上がりに転じる
2. 終値が60日移動平均線より上で推移し、20日移動平均線も60日移動平均線の上に位置する
3. この時点で「上昇トレンド」と判定する
4. 過去20日高値が150円だとすると、151円で20日高値を上抜けしたタイミングでブレイクアウト買い
5. 損切りは、直近押し安値147円の少し下、146.50円に設定
6. 口座残高100万円、1トレードあたり許容損失1万円とする
7. 146.50円までのリスクは4.50円(450pips)なので、1万通貨だと4.5万円の損失になってしまう
8. よって、リスクを1万円に抑えるため、ポジションサイズは約2,000通貨に抑える(1pipsあたり20円程度)

ここで、相場が順調に上昇し、155円、160円と高値更新していったとします。その過程で、押し目が入るたびに新しい押し安値が形成され、それに合わせてストップを切り上げていくことで、「含み益を守りながらトレンドに乗り続ける」ことができます。

最終的に、トレンドが弱まり、終値が60日移動平均線を明確に下回ったところで全決済したとしましょう。たとえ途中で何度か大きな押し目が入って精神的につらい局面があったとしても、ルールに従ってストップを動かし続けた結果として、トータルでは大きな利益が残る、というイメージです。

トレンドフォローの心理的な難しさと向き合い方

トレンドフォローは理論的にはシンプルですが、実際にやってみると心理的な負担が大きい戦略でもあります。

・すでに高くなってから買うので、「今さら買っても遅いのでは」と感じる
・ブレイクアウト直後に騙しで下がり、連続で損切りになることがある
・含み益が増えてくると、「ここで利確しないと全部消えてしまうのでは」と不安になる

こうした心理的な揺れを抑えるためには、事前に「期待できる勝率と損益比率」を想定しておくことが有効です。例えば、次のように考えます。

・ブレイクアウト型は、勝率40%程度と割り切る
・ただし、1回の負けは-1R(リスク1単位)とし、勝ちトレードは+2~3Rを狙う
・トータルでは「何十回も繰り返したときに、期待値がプラス」になることを目標にする

このように、各トレードの結果ではなく、「シリーズ全体の統計」として捉えることで、目先の連敗に振り回されにくくなります。また、検証ツールや過去チャートを使って、ルール通りに運用した場合の結果を事前にシミュレーションしておくことも有効です。

銘柄選定:トレンドが出やすい市場に絞る

トレンドフォローは、そもそもトレンドが出にくい銘柄や市場で行っても機能しにくくなります。レンジ相場が長く続く銘柄では、ブレイクアウトのたびにダマシに遭いやすく、損切りばかり増えてしまいがちです。

そこで、次のような特徴を持つ銘柄・市場を優先するのがおすすめです。

・世界的に注目されている主要通貨ペア(ドル円、ユーロドルなど)
・指数連動ETF(S&P500連動ETF、NASDAQ関連ETFなど)
・出来高が多く、ニュースやファンダメンタルズでトレンドが出やすい大型株
・ボラティリティが高すぎない、異常な値動きが頻発しない銘柄

暗号資産はトレンドが出やすい一方で、急落も激しいため、ポジションサイズを小さくするなどリスク管理を一段厳しく運用することが重要です。

トレンドフォロー戦略の設計チェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、実際に自分のトレンドフォロー戦略を設計するときに確認したい項目を整理します。

1. 時間軸:日足ベースか、4時間足か、週足か
2. トレンド判定:どの移動平均線を使い、どの条件で「上昇トレンド」「下降トレンド」とみなすか
3. エントリー条件:ブレイクアウト型か押し目買い型か、その組み合わせか
4. 損切りライン:どの安値(高値)や移動平均線を基準に置くか
5. ポジションサイズ:1トレードあたり口座残高の何%をリスクにさらすか
6. 利確・トレーリング:どの移動平均線割れ、どの押し安値割れで利確・ストップ移動を行うか
7. 銘柄・市場:どの市場・銘柄群に絞って運用するか
8. 検証方法:過去チャートでどの程度の勝率・損益比率になりそうか

これらを文章ではなく、実際に箇条書きのルールとして自分用の「トレーディングルールシート」にまとめておくと、感情に流されずに淡々と運用しやすくなります。

まとめ:小さく始め、ルールを検証しながら育てる

トレンドフォローは、理屈としては非常にシンプルです。「上昇トレンドでは買いだけを考え、下降トレンドでは売りだけを考える」「トレンドが続く限りポジションを維持し、崩れたら機械的に撤退する」。これだけでも、何となくの裁量トレードと比べれば大きな差が出ます。

しかし、実際に利益を安定して残していくためには、自分の資金量やメンタルに合ったルール設計と、地道な検証・改善が不可欠です。最初から大きなロットで挑むのではなく、ごく小さなポジションで数十回単位のトレードを経験し、「このルールなら自分は続けられる」と実感できるまで試行錯誤することをおすすめします。

相場の世界では、「どの戦略が最強か」よりも、「自分がストレスなく続けられる戦略かどうか」のほうが圧倒的に重要です。トレンドフォローは、その意味で個人投資家にとって非常に相性の良い戦略になり得ます。この記事の内容をベースに、自分なりのトレンドフォロールールを組み立て、相場の大きな波に無理なく乗っていくための一歩を踏み出してみてください。

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