REIT配当利回り差で読む「賃料上昇×金利上昇」相殺ゲーム:買うべき銘柄の見分け方

不動産投資

REIT(不動産投資信託)は「不動産の家賃収入を配当として受け取る商品」として語られがちですが、実際の値動きは“金利商品”としての性格も強く、賃料(NOI)と金利(割引率)の綱引きで決まります。

この記事では、投資初心者でも再現できる形で、REIT同士の配当利回り差(スプレッド)を使って「今、買うべきREIT/避けるべきREIT」を絞り込む実践手順を解説します。一般論で終わらせず、賃料上昇が金利上昇を打ち消す局面と、逆に打ち消せない局面を具体例で整理します。

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REITのリターンは「分配金+価格変動」:価格変動を支配する2つの変数

REITの短期の成績は、分配金そのものよりも価格変動の寄与が大きくなりやすいです。価格変動を支配する変数はシンプルに2つです。

①賃料・稼働率(NOIの伸び):テナント賃料の改定、空室率、更新時の賃料上昇、インバウンド需要などが効きます。

②金利(割引率・資本コスト):国債利回り、社債スプレッド、借入金利、増資コストが効きます。

この2つが同時に動くのが厄介です。金利が上がるとREITは下がりやすい一方、賃料が上がるとREITは上がりやすい。つまり市場は常に「賃料上昇が金利上昇に勝てるか?」を値付けしています。

配当利回り差(スプレッド)とは何か:見るべきは“絶対利回り”ではない

初心者がやりがちな失敗は「利回りが高いから買う」です。利回りが高いのは、将来の減配・空室・資産価値の毀損が疑われているから、ということが普通にあります。

そこで使えるのが配当利回り差(スプレッド)です。実務で扱いやすい定義を2つ持っておきます。

A:REIT利回り − 国債利回り(同一通貨):金利に対して“どれだけ上乗せがあるか”。いわゆるリスクプレミアム。

B:同業種REITの利回り差:例えば物流REIT同士、オフィスREIT同士で比べる。市場が「どちらにリスクを見ているか」が見える。

重要なのは「利回りが高い/低い」ではなく、利回り差が“どの理由で”広がったかを分解することです。

最重要の分解:利回り差が広がる理由は2種類しかない

利回り差(スプレッド)が急に広がるとき、理由は大きく2つです。

①金利上昇で、REIT全体が下がって利回りが上がった(業種の問題ではない)

②そのREIT固有(または業種固有)の不安で価格が下がった(減配懸念、資産劣化、資金調達難など)

①なら、賃料が伸びる業種を選べばリバウンド余地が出ます。②なら、単なる“高利回り罠”の可能性が高い。

初心者向けの実戦手順:まず「賃料が上がる業種」を先に決める

最初に銘柄を探すのではなく、賃料の上がりやすさで業種を仕分けします。金利上昇期でも賃料が上がりやすい業種は「相殺に成功しやすい」からです。

賃料上昇に強い(相殺しやすい)

物流:賃料改定が比較的進みやすい。需給がタイトな局面では賃料上昇が明確に出る。

住宅:景気変動の影響を受けにくい。入替で賃料をじわじわ上げやすい。

ホテル:需要が戻る局面で賃料(実質はADR・RevPAR)が跳ねやすい。逆に景気後退に弱いので景気読みが必要。

賃料上昇に弱い(相殺しづらい)

オフィス:空室率が上がる局面だと賃料交渉が厳しい。大型テナントは契約期間が長く、賃料改定が遅い。

商業:立地とテナント構成で二極化。固定賃料中心だと上がりにくい。

具体例:同じ「利回り4%」でも意味が違う

ここで、ありがちな誤解を具体例で壊します。仮にAとB、どちらも分配金利回り4%だとします。

A:物流REIT、稼働率が高く賃料改定が進んでいる。将来の分配金が伸びる期待があり、4%は“妥当な水準”。金利が少し下がれば価格は戻りやすい。

B:オフィスREIT、空室率が悪化、テナント退去が続く。将来の分配金が下がる可能性があり、4%は“安い”のではなく“疑われている”。

同じ利回りでも、賃料の方向性が逆なら中身は別物です。利回りは“結果”でしかありません。

金利上昇が効くメカニズム:借入の金利より「増資コスト」の方が痛い

金利上昇は、既存の借入金利がすぐに全部上がるわけではありません。REITの借入は固定化されていたり、期限が分散されているからです。初心者が見落としやすいのは資金調達の詰まりです。

REITは成長のために物件を買い増すことがあります。そのとき、

・借入金利が上がる(負債コスト増)

・株価が下がると増資の希薄化が大きくなる(自己資本コスト増)

この自己資本コストの上昇が、将来の成長を止め、結果的に分配金の伸びも止めます。よって、金利上昇局面では「借入期限が長い」「固定金利比率が高い」だけでなく、増資しても成立しやすい評価(P/NAVが極端に低くない)の方が重要になります。

スプレッドで見る“買い場”の作り方:2段階で絞る

ここからが実践です。スプレッドを使った絞り込みは2段階でやると失敗が減ります。

第1段階:REIT利回り−国債利回り(スプレッドA)で「市場全体の割安度」を測る

まずはREIT全体が金利ショックで売られているのか、それとも個別要因なのかを見ます。スプレッドAが短期間で広がった場合、全体要因が強い可能性が高いです。

この局面でやるべきことは「一番弱いものを買う」ではなく、賃料が伸びる可能性が高い業種の中で、財務が強い銘柄を拾うことです。リバウンド局面で“戻る銘柄”は、往々にして財務が健全です。

第2段階:同業種内の利回り差(スプレッドB)で「罠」を避ける

次に、同業種内で利回り差が大きい銘柄を見ます。ここで重要なのは、差が広がった理由を“文章で説明できるか”です。

説明できない高利回りは、だいたい危険です。理由が「物件が古い」「スポンサーが弱い」「含み損が大きい」「増資で希薄化しやすい」など、構造的な問題なら、スプレッドは縮まりにくいからです。

初心者が見るべきKPI:5つだけでいい

REITの資料には指標が山ほど出ますが、初心者は5つだけで十分です。これを“毎回”同じ順序で見てください。

①稼働率:落ち始めたら赤信号。賃料より先に崩れる。

②賃料改定(更新時の増減):物流・住宅ならここが最重要。上がっているか、上がる余地があるか。

③LTV(負債比率):高すぎると金利上昇で身動きが取れない。低すぎても効率は悪いので“業種平均との差”を見る。

④借入の平均残存年数と固定比率:金利ショック耐性。短いほど悪い。

⑤P/NAV(またはNAV倍率):増資しやすさの proxy。極端に低いと成長が止まる。

“賃料上昇×金利上昇”の相殺を数式でイメージする

難しく見える話も、イメージは単純です。

・分配金(NOI)が年+3%で伸びる

・一方で割引率(期待利回り)が年+0.5%上がる

このとき、価格は「伸びる分配金」と「上がる利回り要求」の綱引きになります。賃料上昇(NOI成長)が市場の要求利回り上昇に勝てば価格は保たれ、負ければ価格は下がります。

この綱引きに勝てるのは、短期で賃料が動く業種、もしくは需要が強く価格転嫁しやすい物件タイプです。だからこそ、金利局面で全体が売られても、物流や住宅は“戻りが早い”ことが多いのです。

タイミング論:買い増しは「利回りが高い時」ではなく「利回り差の拡大が止まった時」

買いのタイミングを「利回りが高くなったから」とすると、底値を掴めません。現実的には、

・スプレッドAの拡大が止まり、横ばいになった

・そのうえで、賃料指標(稼働率・改定賃料)が悪化していない

この2条件が揃ったときが、初心者にとって再現性の高い買い場です。相場は“悪化が止まった”だけで反転します。

ポートフォリオの組み方:REITは「1銘柄集中」が一番危ない

REITは個別要因(火災、災害、スポンサー問題、特定テナントの退去)で崩れます。よって初心者の基本は分散です。

実践的には、

・業種分散(物流・住宅・ホテルなど性格の違うもの)

・調達分散(固定金利比率や残存年数が異なるもの)

・スポンサー分散(同じスポンサー系列に寄り過ぎない)

この3点で事故が減ります。分散しても、スプレッドが広がった局面では“同時に安く”なるため、結果的に買い増しチャンスを拾いやすいです。

注意点:高利回りの裏にある「構造的な減配要因」

最後に、利回り差が縮まらないパターンを明確にしておきます。以下が複数当てはまる銘柄は、スプレッドが広がったままになりがちです。

・物件の競争力が落ちており、稼働率が戻りにくい

・更新時の賃料が下がり続けている

・LTVが高く、借換えで金利負担が増えやすい

・P/NAVが低く、増資による成長が成立しにくい

・含み損が大きく、売却損で分配金が削られやすい

高利回りは“ご褒美”ではなく、市場からの警告であることが多いです。警告が誤りだと判断できる材料がないなら、触らないのが正解です。

まとめ:REITは「利回り差」を見れば、初心者でも失敗率が下がる

REIT投資で勝率を上げるコツは、利回りそのものではなく利回り差(スプレッド)を使って、価格変動の理由を分解することです。

・まずスプレッドAで“全体要因かどうか”を確認

・次にスプレッドBで“高利回り罠”を排除

・賃料が上がりやすい業種を優先し、財務KPIを5つでチェック

この手順を守るだけで、金利上昇局面でも「賃料上昇が金利上昇を相殺できる」銘柄に寄せられます。相場は完璧な正解を求めるゲームではありません。避けるべき地雷を踏まないだけで、長期の成績は大きく改善します。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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