債券ETFのデュレーション管理:金利変動を味方にするポートフォリオ設計

債券・金利

債券ETFは「株より安全」というイメージで買われがちですが、実際には金利の変動に強烈に左右されます。特に長期債ETFは、株並みに値動きが荒れる局面があります。

そこで鍵になるのがデュレーション管理です。これは難しい数式遊びではなく、「金利が1%動いたら、だいたい価格が何%動くか」を把握して、ポートフォリオ全体のリスクを設計する技術です。

この記事は、投資経験が浅くても実務に落とし込めるように、考え方→計算→ETF選び→運用ルールまで、具体例ベースで徹底的に解説します。

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  1. デュレーションとは何か:1%で何%動くかの「感度」
  2. なぜETFでデュレーション管理が重要になるのか
  3. まず押さえる3つの金利:政策金利・短期金利・長期金利
  4. 「デュレーションの長短」でETFを分類する:地図を作る
  5. 具体例:デュレーション7年と17年、何が違うか
  6. 初心者がやりがちな失敗:利回りだけ見て長期債ETFを買う
  7. デュレーション管理の目的を3つに分ける
  8. 実践ルール1:まず「許容損失」から逆算してデュレーションを決める
  9. 実践ルール2:債券ETFを「コア」と「サテライト」に分ける
  10. 実践ルール3:デュレーションを“組み合わせ”で作る(ラダー/バーベル)
  11. ラダー(はしご)構造:中間を厚くして再投資を平準化
  12. バーベル構造:短期で守り、長期でヘッジ/リターンを狙う
  13. ETF選びの見方:デュレーション以外にチェックする5項目
  14. 金利局面別のデュレーション運用:4つの代表シナリオ
  15. シナリオA:インフレ再燃で長期金利が上がる
  16. シナリオB:景気後退で長期金利が下がる
  17. シナリオC:政策金利は下がるが長期金利は下がらない(ベア・スティープ化)
  18. シナリオD:金利が横ばいでレンジ相場
  19. 「金利1%」は本当に1%か:ストレステストの設計
  20. 「デュレーションを短くすれば安全」は半分正しいが半分危険
  21. 個人投資家向け:デュレーション管理の具体的な運用テンプレ
  22. テンプレ1:保守型(債券を“安定枠”として使う)
  23. テンプレ2:標準型(分散の一部として債券を使う)
  24. テンプレ3:攻守両立(景気後退ヘッジを明確に取りに行く)
  25. “デュレーションを動かすトリガー”を決める:裁量を減らす
  26. 社債ETFを使うときの注意:デュレーション以外の爆発がある
  27. 日本の債券ETFで考える場合:金利が低くてもデュレーションは効く
  28. 為替ヘッジ有無とデュレーション:混ぜるなら役割を分ける
  29. よくある質問:デュレーションは毎日変わる?どれを信じる?
  30. まとめ:デュレーション管理は“債券ETFを危険物にしない”ための設計図

デュレーションとは何か:1%で何%動くかの「感度」

デュレーション(duration)は、ざっくり言うと金利変化に対する債券価格の感度です。厳密には複数定義がありますが、ETF運用で使うのは「修正デュレーション」に近いイメージで十分です。

基本の近似はこれです。

価格変化率(%) ≒ − デュレーション × 金利変化(%)

たとえば、デュレーション7年の債券ETFがあり、長期金利が+1.0%上がると、価格は概ね−7%下がる、という見立てになります(近似なのでズレます)。逆に金利が−1.0%下がれば、概ね+7%上がる方向です。

ここで重要なのは「債券は安全」というより、デュレーションの長短がリスク量そのものだという点です。株式のボラティリティを銘柄で選ぶのと同じで、債券ETFはデュレーションで選びます。

なぜETFでデュレーション管理が重要になるのか

個別債券なら「満期まで持てば額面で戻る」という直感があります。しかしETFは常に組み入れ債券を入れ替えるため、満期が来て終わる商品ではありません。つまり、金利上昇局面で値下がりしても「いつか満期で戻る」という救済は薄く、代わりにクーポン(利回り)上昇が時間をかけて回収します。

このため、ETF運用は「保有期間」を前提にした設計が必要です。短期で売買するなら価格変動が直撃しますし、中長期で持つなら「利回り上昇の恩恵」も加味した評価が必要です。

まず押さえる3つの金利:政策金利・短期金利・長期金利

初心者が最初に混乱するのが「金利ってどれ?」問題です。ETFに効くのは主に市場金利で、特にイールドカーブ(利回り曲線)のどの部分が動くかで損益が変わります。

ざっくり分けると次の3つです。

1) 政策金利:中央銀行が決める短期の基準。
2) 短期金利:1年〜3年程度の国債利回り。政策金利の影響が大きい。
3) 長期金利:10年〜30年程度の国債利回り。景気・インフレ期待・財政・需給で動く。

長期債ETF(例:20年超国債)を持っているのに、政策金利だけ見ていると判断を誤ります。ETFの「効く金利」を把握するのが、デュレーション管理の第一歩です。

「デュレーションの長短」でETFを分類する:地図を作る

実務では、債券ETFを「デュレーション帯」で棚卸しすると一気に理解が進みます。目安は以下です(厳密な年数は商品ごとに異なるため、目論見書やFactsheetのデュレーションを確認します)。

短期(0〜3年):価格変動が小さい。キャッシュ代替に近い。
中期(3〜7年):バランス型。金利感応度はそこそこ。
長期(7〜15年):金利局面で値動きが大きい。
超長期(15年〜):金利の方向性次第で株並みに暴れる。

ここで「債券=守り」のイメージが崩れます。超長期債ETFは守りではなく、金利に賭けるレバレッジに近い性質があります。

具体例:デュレーション7年と17年、何が違うか

同じ「国債ETF」でも、デュレーションが違えば別商品です。イメージが湧くように数値で見ます。

ケースA:デュレーション7年のETF(中期〜長期)
ケースB:デュレーション17年のETF(超長期)

長期金利が+0.5%上昇した場合:

ケースA:価格変化率 ≒ −7 × 0.5% = −3.5%
ケースB:価格変化率 ≒ −17 × 0.5% = −8.5%

この差は致命的です。株のポジションサイズを2倍にするのと同じくらい、リスクが跳ねます。しかも債券ETFは「分散されているから安全」と錯覚しやすい。だからこそ、デュレーションが管理指標になります。

初心者がやりがちな失敗:利回りだけ見て長期債ETFを買う

金利が上がる局面では、長期債ETFの分配利回り(または利回り表示)が魅力的に見えます。しかし、その利回りは「今後の金利水準」を反映した結果であり、金利上昇の途中で買うと、まず価格下落を食らうことが多いです。

ここで重要なのは「どの損益を許容して、何を狙うか」です。短期〜中期債ETFでボラティリティを抑え、長期債は金利低下局面(あるいは景気後退リスクヘッジ)として位置づける、という設計が現実的です。

デュレーション管理の目的を3つに分ける

「デュレーションを短くする/長くする」は手段です。目的を言語化すると、判断がブレません。目的は大きく3つです。

目的1:金利上昇局面でのドローダウン抑制
→長期債を減らし、短期債やキャッシュに寄せる。

目的2:景気後退・リスクオフ時のクッション
→株が落ちる局面で長期金利が低下しやすいなら、長期債を持つ意味がある。

目的3:ポートフォリオの「金利ベット」を明確化
→長期債ETFを持つなら「金利低下に賭けている」ことを自覚する。

実践ルール1:まず「許容損失」から逆算してデュレーションを決める

投資は結局、リスク許容度のゲームです。債券ETFも同じで、まず「金利が急変したら、どのくらいの損失が出ると困るか」を決めます。

例えば「債券部分だけで最大−5%まで」を許容するとします。ストレスとして「金利+1%」を置くなら、近似式から許容デュレーションは5年程度です(−5% ≒ −D×1% → D≒5)。

つまり、債券部分を超長期債ETF中心にすると、許容損失を簡単に超えます。初心者はここを数値で縛ったほうが、事故りにくいです。

実践ルール2:債券ETFを「コア」と「サテライト」に分ける

デュレーション管理は、株式のコア・サテライトと同じ発想が有効です。

コア:短期〜中期債ETFで安定性を確保(デュレーション短め)。
サテライト:長期債ETFを必要なときだけ上乗せ(景気後退ヘッジ、リスクオフ対応)。

これにより「常に長期債を握って金利上昇に焼かれる」という構造を避けられます。サテライトは「いつでも外せる」設計にするのがコツです。

実践ルール3:デュレーションを“組み合わせ”で作る(ラダー/バーベル)

ETFは1本で完結させる必要はありません。複数ETFで目的のデュレーション帯を作れます。ここが個人投資家の強みです。

ラダー(はしご)構造:中間を厚くして再投資を平準化

ラダーは満期(あるいはデュレーション帯)を分散し、金利変動の影響を平均化する考え方です。ETFでやるなら、短期・中期・長期を一定比率で持ち、定期的にリバランスします。

例:短期40%+中期40%+長期20%
これで平均デュレーションを中庸にしつつ、リスクオフ時のクッションも残します。

バーベル構造:短期で守り、長期でヘッジ/リターンを狙う

バーベルは短期と長期を両極端に置き、中期を薄くする設計です。短期は金利上昇耐性、長期は景気後退ヘッジを担います。

例:短期70%+長期30%
このとき長期の比率は「株式の下落耐性をどれだけ作りたいか」で調整します。

ETF選びの見方:デュレーション以外にチェックする5項目

デュレーションが主役ですが、他の項目も無視できません。

1) 組み入れ債券の種類:国債か社債か。信用リスクを取るか。
2) 平均格付け:社債ETFなら投資適格かハイイールドかで別物。
3) 経費率:長期保有で効く。
4) 流動性(出来高・スプレッド):売買コストが増えると戦略が崩れる。
5) 分配方針:分配型か、内部留保型(再投資効率)か。

「長期債=国債で安全」ではなく、国債でもデュレーションが長いほど価格リスクが増える点に注意してください。

金利局面別のデュレーション運用:4つの代表シナリオ

ここからは「どう運用するか」を、局面別に設計します。未来は読めないので、シナリオで準備します。

シナリオA:インフレ再燃で長期金利が上がる

この局面では長期債ETFの値下がりが痛いので、基本は短期〜中期に寄せるのが安全です。具体的には、平均デュレーションを短くし、余力を残すイメージです。

ただし、利回り上昇は将来のリターン源泉でもあります。焦って全売りすると、金利ピークアウト後の反発を取り逃がします。ここで有効なのが「段階的にデュレーションを伸ばす」運用です。例えば、長期金利が一定の水準を超えたら長期債比率を少しずつ増やす、といったルール化です。

シナリオB:景気後退で長期金利が下がる

株が下がりやすい局面で、長期債は上がりやすい(絶対ではない)ため、ポートフォリオのクッションとして機能する可能性があります。株式比率が高い人ほど、長期債を一定持つ意味が出ます。

ただし「長期債が上がる前提」に賭けすぎると、リスクオフ局面でクレジット(社債)スプレッドが拡大して社債ETFが下がるなど、想定外の組み合わせが起きます。初心者のヘッジ用途なら、まず国債系で考えるのが無難です。

シナリオC:政策金利は下がるが長期金利は下がらない(ベア・スティープ化)

ここが落とし穴です。「利下げ=債券上昇」と決めつけると、長期債ETFで痛い目を見る典型です。財政懸念やインフレ期待が残ると、短期は下がっても長期は下がりにくく、カーブが立つことがあります。

この局面では、短期〜中期が相対的に有利です。長期債で取りに行くより、中期までのデュレーションで利下げ恩恵を取り、長期は慎重にという発想が現実的です。

シナリオD:金利が横ばいでレンジ相場

金利が方向感なく、上下を繰り返す局面では「当てに行く」より「取りこぼさない」設計が勝ちます。平均デュレーションを中庸にし、定期リバランスで価格変動を収益化します。

債券ETFは株ほど話題になりませんが、レンジ相場ではリバランスが効きやすい資産です。上下に振れるほど、機械的なリバランスが仕事をします。

「金利1%」は本当に1%か:ストレステストの設計

デュレーション管理の実務は、ストレス幅をどう置くかで難易度が変わります。現実の金利は、短期に0.5%〜1.5%動くことがあります。自分の投資期間が短いほど、ストレス幅は大きめに置くべきです。

おすすめは次の2段階です。

軽ストレス:金利±0.5%(通常変動)
重ストレス:金利±1.5%(イベント・急変)

この2つで、債券部分の想定損益を計算しておくと、暴落時にパニックになりにくいです。

「デュレーションを短くすれば安全」は半分正しいが半分危険

短期債ETFは価格変動が小さい反面、利回りが低くなりやすい、または利回り上昇の恩恵が薄いことがあります。短期に寄せすぎると、インフレ局面で実質リターンが厳しくなり、結果的に資産が目減りするリスクもあります。

だからデュレーション管理は「短くする」だけではなく、状況に応じて最適化するのが本質です。守るために短くし、取りに行くために伸ばす。その境界をルール化します。

個人投資家向け:デュレーション管理の具体的な運用テンプレ

ここからは、実際に回せるテンプレを提示します。銘柄名は例示で、同等のETFで置き換えて構いません(デュレーション帯を揃えるのが条件)。

テンプレ1:保守型(債券を“安定枠”として使う)

狙い:金利ショックに強く、キャッシュ代替に近い安定運用。

設計:短期80%+中期20%(平均デュレーションを低く保つ)

運用ルール:月1回、比率が±5%ずれたらリバランス。長期債は原則持たない。株が大きく下げたときだけ、例外的に長期債を10%まで追加してヘッジする(条件付き)。

テンプレ2:標準型(分散の一部として債券を使う)

狙い:金利局面を当てに行かず、ポートフォリオの変動を抑える。

設計:短期40%+中期40%+長期20%

運用ルール:四半期ごとにリバランス。長期金利が急上昇した局面では長期比率を一時的に10%まで下げ、価格が落ち着いたら戻す。これだけでもドローダウンが改善しやすい。

テンプレ3:攻守両立(景気後退ヘッジを明確に取りに行く)

狙い:株が崩れる局面で、債券が“本当に効く”可能性を最大化する。

設計:短期60%+長期40%(バーベル)

運用ルール:長期債比率は固定しない。株のバリュエーションと景気指標が悪化し始めたら長期比率を増やし、インフレ再燃・財政懸念が強い局面では削る。大事なのは「長期は常時コアにしない」ことです。

“デュレーションを動かすトリガー”を決める:裁量を減らす

個人投資家が負ける原因の多くは、情報過多による売買です。デュレーション管理でも同じなので、トリガーを決めて裁量を減らします。実務で使いやすいトリガー例は次です。

トリガー例1:長期金利が過去12か月レンジの上限付近 → 長期債比率を段階的に増やす準備。
トリガー例2:長期金利が急騰(例:1か月で+0.7%など) → まずデュレーション短縮で守る。
トリガー例3:株のボラ上昇+景気悪化シグナル → 長期債をヘッジとして追加。

重要なのは「正確に当てる」より「大外しを避ける」ことです。デュレーションは、当てに行く武器にも、事故を減らす保険にもなります。

社債ETFを使うときの注意:デュレーション以外の爆発がある

社債ETFは利回りが魅力ですが、リスクは金利だけではありません。景気後退局面では、国債金利が下がっても、信用スプレッドが拡大して社債価格が下がることがあります。つまり、「金利低下=上がる」が崩れやすいのが社債です。

社債ETFを組み込むなら、デュレーション管理に加えて「信用リスク(景気)」の管理も必要です。初心者は、まず国債ETFでデュレーションの感覚を掴んでからのほうが良いです。

日本の債券ETFで考える場合:金利が低くてもデュレーションは効く

日本の金利は長らく低位でしたが、それでもデュレーションの概念は有効です。むしろ金利が低いほど、わずかな上昇が価格に効きます。さらに、為替をまたぐ(米国債ETFを円で持つ)場合は、為替ヘッジの有無が損益の主役になることもあります。

この場合、管理すべきリスクは二段です。金利リスク(デュレーション)為替リスク。どちらが主因かを切り分けられないと、運用が崩れます。

為替ヘッジ有無とデュレーション:混ぜるなら役割を分ける

米国債ETFを円投資家が買うと、ドル円の変動が効きます。為替ヘッジ付きは金利変動を純粋に取りやすい一方、ヘッジコストが利回りを削ることがあります。ヘッジなしは為替が収益源にも損失源にもなります。

現実的な折衷は、「ヘッジあり=金利リスク管理用」「ヘッジなし=外貨資産分散用」と役割を分けることです。1本のETFに全部を背負わせると、判断が曖昧になります。

よくある質問:デュレーションは毎日変わる?どれを信じる?

ETFのデュレーションは、組み入れ債券の入れ替えや金利水準の変化で動きます。とはいえ、日々の微差を追いかける必要はありません。実務では「短期・中期・長期のどこにいるか」が重要で、厳密な小数点以下は誤差です。

確認先は、運用会社のFactsheetや公式ページの数値が基本です。証券会社の表示は遅れたり簡略化されることがあります。

まとめ:デュレーション管理は“債券ETFを危険物にしない”ための設計図

債券ETFは、使い方次第で「安定資産」にも「金利ベットの武器」にもなります。その分かれ目がデュレーションです。

最後に、実務の要点を文章で整理します。まず、債券ETFは金利変動に反応し、デュレーションが長いほど値動きが大きい。次に、目的(守り・ヘッジ・金利ベット)を明確にし、許容損失からデュレーションを逆算する。さらに、コア(短期〜中期)とサテライト(長期)に分け、ラダーやバーベルで平均デュレーションを設計する。最後に、トリガーとリバランスルールで裁量を減らす。これが、個人投資家が債券ETFを“武器”として使うための現実的な方法です。

ここまでできれば、債券ETFは「よく分からないけど安全そう」から、「リスク量を設計して使う」へ変わります。そこから先は、あなたの投資期間と目標リターンに合わせて、最適なデュレーション帯をチューニングしてください。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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