債券を使った安全志向の投資手法──値動きに振り回されないポートフォリオの考え方

債券投資

株式や暗号資産は大きく値上がりする一方で、暴落するときのスピードも速く、メンタル的にきついと感じる方は多いです。そんなときにポートフォリオ全体のブレーキ役になってくれるのが「債券」です。

とはいえ、「債券=安全」ではありません。銘柄の選び方や組み合わせ方を間違えると、株式に近いレベルで価格が動いてしまうこともあります。本記事では、投資初心者でも理解しやすい形で、債券を使った安全志向の投資手法を具体的に解説していきます。

スポンサーリンク
【DMM FX】入金
  1. 1. 債券を使った「安全な投資手法」とは何か
  2. 2. 株と債券のリスクの違いをざっくり整理
    1. 2-1. 株式:成長の取り分を持つが、値動きが大きい
    2. 2-2. 債券:あらかじめ決められた利息と償還がベース
    3. 2-3. それでも債券価格が動く理由
  3. 3. 個人投資家が押さえるべき債券の基本4ポイント
    1. 3-1. 満期とデュレーション:金利変動への感度
    2. 3-2. クレジットリスク:誰にお金を貸すのか
    3. 3-3. 通貨と為替リスク:生活通貨と合わせるかどうか
    4. 3-4. インフレリスク:名目の利回りだけ見ない
  4. 4. 安全性を高める債券の選び方
    1. 4-1. 基本ラインは「短期~中期の高格付け債」
    2. 4-2. 生活通貨と合わせた「自国通貨建て債券」
    3. 4-3. 外貨建て債券は「利回り」と「為替」を分けて考える
  5. 5. 債券を使った安全志向ポートフォリオの具体例
    1. 5-1. ケース1:株式インデックス+国内債券で値動きをマイルドに
    2. 5-2. ケース2:外貨建て債券で利回りを取りつつ、比率を絞って使う
    3. 5-3. ケース3:退職が近い人向けに「満期」と生活費を合わせる
  6. 6. 安全性を高める3つのテクニック
    1. 6-1. 債券ラダー:満期をずらして分散する
    2. 6-2. バーベル戦略:短期債+リスク資産の二極構造
    3. 6-3. 待機資金=短期債で運用するという発想
  7. 7. 個人投資家がやりがちなNG債券投資
    1. 7-1. 利回りだけを見て長期・低格付け債に集中する
    2. 7-2. 通貨リスクを意識せず、外貨建てに偏りすぎる
    3. 7-3. 「元本確保っぽい」構造の商品を、仕組みを理解せずに購入する
  8. 8. シンプルに使える債券チェックリスト
  9. 9. まとめ:債券は「増やす」より「守る」役割として使う

1. 債券を使った「安全な投資手法」とは何か

まず本記事でいう「安全」とは、「絶対に損をしない」という意味ではありません。ここでは次のように定義します。

・価格のブレを株式より小さく抑えやすい
・暴落時にポートフォリオ全体のダメージを和らげる役割を持つ
・将来受け取るキャッシュフロー(利息・償還)がある程度読みやすい

この3つを満たすように債券を選び、ポートフォリオに組み込むことで、「短期的な価格の上下に振り回されにくい投資」を目指すのが、本記事で扱う債券活用の考え方です。

2. 株と債券のリスクの違いをざっくり整理

債券を使った手法を理解するには、株と債券の性質の違いを押さえておくことが重要です。

2-1. 株式:成長の取り分を持つが、値動きが大きい

株式は企業の将来の成長を取りに行く資産です。業績が伸びれば株価は上がりますが、景気悪化や決算の失望で株価が大きく下がることもあります。配当金はあくまで「企業が出すかどうかを決めるもの」であり、約束されたキャッシュフローではありません。

2-2. 債券:あらかじめ決められた利息と償還がベース

債券は「お金を貸す側」になる投資です。基本的には、発行体(国や企業など)が決めた利率で利息が支払われ、満期日に元本が返ってくることを前提に設計されています。約束されたキャッシュフローがベースにあるため、理屈の上では株式より値動きが落ち着きやすくなっています。

2-3. それでも債券価格が動く理由

安全なイメージのある債券ですが、価格は次のような要因で日々変動します。

・市場金利の変化(今の金利が上がると、昔の低金利債券の価格は下がる)
・発行体の信用力の変化(業績悪化や格下げで価格が下がる)
・為替レートの変動(外貨建て債券の場合)

つまり、「債券だから安全」ではなく、「どんな債券を、どう組み合わせるか」で安全性が変わるという点を最初に押さえておきましょう。

3. 個人投資家が押さえるべき債券の基本4ポイント

債券に詳しくなくても、次の4つを押さえておけば、かなり実践的な判断ができるようになります。

3-1. 満期とデュレーション:金利変動への感度

債券には「満期」があります。例えば5年債なら、5年後に元本が返ってくる前提の商品です。ただし、実務的には「デュレーション」という指標で金利変化への感度を見ます。

・デュレーションが長い=金利が少し動くだけで価格が大きく動きやすい
・デュレーションが短い=価格変動は比較的小さく、金利変化の影響も抑えられる

安全志向であれば、基本的にはデュレーションが短めの債券やファンドを中心に考えると、価格のブレを抑えやすくなります。

3-2. クレジットリスク:誰にお金を貸すのか

債券は「貸し付け」なので、相手が返せなくなれば元本割れのリスクが高まります。これがクレジットリスクです。一般的には次の順に安全性が高いと考えられます。

・国債(特に自国通貨建ての国債)
・高格付けの社債(投資適格と呼ばれるランク)
・高利回りだが信用力の低い社債(ハイイールド債など)

「利回りが高い=お得」ではなく、「リスクが高いから利回りが高く設定されている」ことが多い点に注意が必要です。

3-3. 通貨と為替リスク:生活通貨と合わせるかどうか

日本で生活費を円で支払っている場合、最終的に使うお金は円です。外貨建て債券や外貨建て債券ファンドに投資するときは、利回りだけでなく為替レートの影響も受けます。

・円安が進めば、外貨建て資産の円換算価値は増える
・円高が進めば、外貨建て資産の円換算価値は減る

安全志向であれば、「どの通貨で生活しているか」「いつ使うお金か」を意識し、生活通貨とあまりにズレた通貨ばかりに集中しないよう注意することが大切です。

3-4. インフレリスク:名目の利回りだけ見ない

債券は「利回り〇%」と表示されるため、数字だけ見ると魅力的に感じますが、物価が上がれば実質的な価値は目減りします。

・債券利回りが1%で、物価が2%上がる → 実質的にはマイナス1%のイメージ
・債券利回りが3%で、物価が1%上がる → 実質的にはプラス2%のイメージ

安全志向であっても、インフレ率を大きく下回る利回りの債券だけに偏ると、長期的には資産価値が目減りしてしまいます。「元本のブレを抑えること」と「購買力を守ること」のバランスを意識する必要があります。

4. 安全性を高める債券の選び方

ここからは、実際に商品を選ぶときの考え方を整理します。具体的な銘柄名というより、「こういう条件の債券・ファンドを候補にする」という観点で見ていきます。

4-1. 基本ラインは「短期~中期の高格付け債」

安全志向の債券投資の中心になりやすいのは、次のような特徴を持つ商品です。

・残存期間が短め~中程度(例:1~5年程度)
・信用力が高い発行体(国債・政府機関債・投資適格社債など)
・分散されたポートフォリオを組んでいる投資信託・ETF

個別債券を1本ずつ買うよりも、分散されたファンドを使うと、1社のデフォルトリスクに集中しにくくなります。

4-2. 生活通貨と合わせた「自国通貨建て債券」

日常生活の支出が円である場合、円建ての債券・債券ファンドは、為替リスクを気にせずに使える安全資産の候補になります。例えば、

・国内の公社債ファンド
・円建ての中短期債券インデックスファンド

などは、「株式インデックス+債券ファンド」というシンプルな組み合わせで使いやすいタイプです。

4-3. 外貨建て債券は「利回り」と「為替」を分けて考える

外貨建て債券は、円建てより利回りが高いことが多く、魅力的に見えます。ただし、為替レートの変動が加わるので、価格の振れ幅は大きくなりがちです。

・外貨建て債券そのものの価格変動
・為替レートの変動

この2つが掛け算されるイメージになるため、「利回りが高いから安全に増える」という感覚で持つのではなく、株式ほどではないが、ある程度の値動きはある資産として位置づけるほうが現実的です。

5. 債券を使った安全志向ポートフォリオの具体例

ここからは、あくまでイメージを掴むための例として、債券を使ったポートフォリオの組み方をいくつか紹介します。実際に投資するときは、自分の年齢、収入、資産状況、リスク許容度などを踏まえて検討することが重要です。

5-1. ケース1:株式インデックス+国内債券で値動きをマイルドに

「株式インデックスで増やしたいが、暴落時のドローダウンを少しでも和らげたい」というケースでは、次のような組み合わせが考えられます。

・全世界株式や米国株式のインデックスファンドをポートフォリオの中核にする
・残りの一部を、円建ての短期~中期債券ファンドに配分する

例えば、株式70%、債券30%といった比率にすることで、株100%よりも値動きを抑えつつ、長期的な成長も狙うイメージです。債券部分は、生活通貨と同じ円建てで、残存期間の長すぎないファンドを候補にすると、より安全志向に近づきます。

5-2. ケース2:外貨建て債券で利回りを取りつつ、比率を絞って使う

「多少の為替リスクは許容しても、預金よりは高い利回りを狙いたい」という考え方もあります。この場合、

・株式インデックス
・自国通貨建て債券ファンド
・外貨建て債券ファンド

という3つに分け、外貨建て債券の比率を全体の一部(例えば10~20%)に留める方法が考えられます。こうすることで、外貨の利回りや分散効果を取り込みつつ、為替が大きく動いたときの影響を限定的にしやすくなります。

5-3. ケース3:退職が近い人向けに「満期」と生活費を合わせる

退職後の数年間の生活費をある程度見通しておきたい場合は、「いつ、いくら必要になるか」と「債券の満期」を意識して組み立てる考え方があります。

・1年後に必要な生活費 → 1年以内に満期を迎える債券や短期債ファンド
・3年後に必要な生活費 → 残存3年前後の債券や中期債ファンド

といった具合に、必要なタイミングと債券の満期をざっくり揃えておくことで、「暴落しても、直近で必要なお金の部分は比較的値動きが小さい資産で持っている」という状態を目指すことができます。

6. 安全性を高める3つのテクニック

次に、債券そのものの選び方に加えて、安全性を高めるテクニックを3つ紹介します。

6-1. 債券ラダー:満期をずらして分散する

「債券ラダー」とは、満期の異なる債券を階段状に並べるように保有する方法です。

・1年後に満期を迎える債券
・2年後に満期を迎える債券
・3年後に満期を迎える債券

といった具合に、毎年どれかが満期を迎えるようにしておけば、

・満期になった元本を生活費に回す
・その時点の金利水準を見ながら新しい債券に乗り換える

といった柔軟な対応がしやすくなります。金利が上がる局面でも、徐々に高い金利の債券に切り替えていけるため、金利変動リスクをならす効果が期待できます。

6-2. バーベル戦略:短期債+リスク資産の二極構造

「バーベル戦略」は、

・片側に、期限の短い安全な債券や現金同等資産
・もう片側に、株式などのリスク資産

を置くイメージの構成です。中途半端なリスクの資産を減らし、「とても安全な部分」と「リスクを取る部分」をはっきり分ける考え方です。

安全な短期債や現金部分が十分にあれば、相場が大きく下落しても精神的な余裕を持ちやすく、「安いところで少し買い増す」といった選択肢も取りやすくなります。

6-3. 待機資金=短期債で運用するという発想

「近いうちに投資するつもりの資金だけれど、しばらくは待機」というお金を、普通預金に置いたままにするのではなく、短期債券ファンドやマネーマーケットファンド(MMF)のような商品で運用する考え方もあります。

もちろん元本が完全に保証されるわけではありませんが、長期のリスク資産に比べて値動きが小さい範囲で、ある程度の利回りを狙えるケースもあります。「いつ使うお金か」「どれくらいの値動きなら許容できるか」を踏まえて、普通預金との使い分けを考えるとよいでしょう。

7. 個人投資家がやりがちなNG債券投資

安全志向で債券を使うつもりでも、選び方を間違えるとリスクが大きくなってしまうことがあります。代表的なNGパターンを整理しておきます。

7-1. 利回りだけを見て長期・低格付け債に集中する

高い利回りを提示している債券の中には、

・満期までの期間が長い(=金利変動リスクが大きい)
・発行体の信用力が低い(=デフォルトリスクが高い)

という特徴を持つものが少なくありません。表面的な利回りだけで判断すると、「安全に増やしたいつもりが、株並みに値動きするポートフォリオ」になってしまうこともあります。

7-2. 通貨リスクを意識せず、外貨建てに偏りすぎる

外貨建て債券は、利回りやキャンペーンなどが魅力的に見えることがありますが、生活通貨と違う通貨に大きく偏ると、為替の影響がポートフォリオ全体に強く出てしまいます。

例えば、円で生活しているにもかかわらず、ほとんどを外貨建て債券で持つと、為替の上下で資産額が大きく変わり、想定よりもストレスの大きい運用になる可能性があります。

7-3. 「元本確保っぽい」構造の商品を、仕組みを理解せずに購入する

金融商品には、「一定条件を満たせば元本確保」といった説明がされることもありますが、多くの場合は複雑な条件や仕組みが付いています。

・特定の指数や為替レートが一定範囲に収まれば
・途中解約時には元本を下回る可能性がある

など、商品ごとに細かい条件があります。安全志向であれば、まずはシンプルな債券や債券ファンドから始め、構造の複雑な商品は仕組みを十分理解してから検討するスタンスが現実的です。

8. シンプルに使える債券チェックリスト

最後に、債券や債券ファンドを検討するときに確認したいポイントを、実務的なチェックリストとしてまとめます。

・どの通貨建てか(自分の生活通貨と合っているか)
・満期(もしくは平均残存期間、デュレーション)はどれくらいか
・発行体や投資対象の信用力はどうか(国債中心か、社債中心か)
・インフレ率と比較して、利回りはどの程度か
・ポートフォリオ全体の中で、債券は何%くらいに位置づけるか
・外貨建ての場合、為替の変動でどれくらいのブレがありそうか

これらを一つずつ確認していくことで、「なんとなく利回りが高いから買う」のではなく、「自分の目的に合った債券かどうか」を判断しやすくなります。

9. まとめ:債券は「増やす」より「守る」役割として使う

債券を使った安全志向の投資手法をまとめると、次のようなイメージになります。

・株式やリスク資産の値動きを、債券でマイルドにする
・自国通貨建ての短期~中期債を中心に、安全資産として位置づける
・外貨建て債券は、利回りと為替リスクを分けて考え、比率を絞って使う
・債券ラダーやバーベル戦略を活用して、金利変動や生活資金のタイミングに対応する

「安全=何もリスクがない」ではありませんが、債券の性質を理解してうまく組み合わせることで、ポートフォリオ全体のブレを抑え、長く付き合える運用を目指しやすくなります。値動きに疲れてしまったときこそ、「どの部分を債券で守るか」という視点を持ってポートフォリオを見直してみるとよいでしょう。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

p-nutsをフォローする
債券投資
スポンサーリンク
【DMM FX】入金
シェアする
p-nutsをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました