- 本記事の狙い
- 損失に至る共通構造
- やってはいけない行動20選(代替戦略つき)
- 1. 根拠のないニュース飛びつき買い
- 2. ナンピンで平均取得単価を下げ続ける
- 3. 塩漬けで評価損を放置
- 4. 一点集中で全資金を賭ける
- 5. レバレッジ常用
- 6. 人気テーマの高値掴み
- 7. 配当利回りだけで銘柄を選ぶ
- 8. 信託報酬・手数料を軽視
- 9. NISA枠の戦略なき消化
- 10. 為替リスクの理解不足(ドル建て資産)
- 11. 一括ドン買いで時間分散を捨てる
- 12. 逆指値(損切り)未設定
- 13. SNS発の噂に過度依存
- 14. 税・確定申告の軽視
- 15. 配当目当ての高コスト毎月分配型の短絡買い
- 16. FXでロスカット水準の未設計
- 17. 暗号資産でのカストディ軽視
- 18. コスト・スリッページ無視の回転売買
- 19. 指数に勝とうとしてコアを外す
- 20. ルールを文章化せず、毎回“その場判断”
- 代替戦略の実務フロー(テンプレ)
- 資金配分のひな型(例)
- 売買ルール雛形(現物・ETF)
- ケーススタディ:高配当ETFの使いどころ
- 計算例:ポジションサイズの決め方
- チェックリスト(発注前30秒)
- FAQ
- まとめ
本記事の狙い
勝ち方の前に「負けない型」を作るのが先です。市場の上振れは運に左右されますが、下振れの深さは多くが自分でコントロール可能です。負け方を整える=最大ドローダウンを抑えることが、継続投資の前提になります。
損失に至る共通構造
多くの失敗は以下の構造に収斂します。
- 無計画エントリー(根拠が曖昧、なぜ今かが不明)
- 損切り・撤退条件の欠如(出口がない)
- 資金管理の欠如(一撃で退場するサイズ)
- 分散・時間分散の不足(一点・一時点に集中)
- 制度・コスト理解の浅さ(税・為替・手数料・信託報酬の影響)
以下の「NG20項」はこの構造にひもづけて解きほぐします。
やってはいけない行動20選(代替戦略つき)
1. 根拠のないニュース飛びつき買い
なぜ危険か:短期フローで価格が過剰反応しやすく、情報が可視化された時点で優位性は薄い。出来高急増直後はリスク・リワードが劣化しやすい。
代替戦略:「材料→収益影響→評価差」の三段階で因果を検証。決算・ガイダンス・KPIなど一次データの変化を待ち、事実の更新で入る。
2. ナンピンで平均取得単価を下げ続ける
危険:下落トレンドに対する資金投下は期待値の悪化を招く。資金管理の破綻リスクが跳ね上がる。
代替:下落理由がファンダ更新かノイズかを切り分け。規律ある撤退ライン(後述)を先に決める。
3. 塩漬けで評価損を放置
危険:機会費用が雪だるま式に拡大。損失回避バイアスが判断を歪める。
代替:「仮説が崩れたら売る」ルールを事前明文化。決算2期連続の悪化・指標割れなど客観トリガーを設定。
4. 一点集中で全資金を賭ける
危険:個別固有リスク(決算、規制、事故)で大破の確率が高い。
代替:資産クラス(株・債券・金・現金)と地域(日本・米国・先進国・新興)で二軸分散。ETF活用で低コスト化。
5. レバレッジ常用
危険:ボラティリティ・デケイ(複利での劣化)とロスカットの非線形リスク。
代替:レバは短期の戦術枠に限定し、現物の長期コアは非レバで組む。
6. 人気テーマの高値掴み
危険:物語が価格に先行し、PER/PSR拡張の反動が大きい。
代替:売上成長率やフリーCFの改善を待つ。バリュエーションに安全域を持たせる。
7. 配当利回りだけで銘柄を選ぶ
危険:減配・業績悪化の“利回りトラップ”。
代替:配当性向、フリーCF、自己資本比率、過去の増配継続性を併読。高配当ETFの分散も検討。
8. 信託報酬・手数料を軽視
危険:長期複利でコスト差が効き、実質利回りを侵食。
代替:同指数の低コスト投信(例:広範囲インデックス、低コストシリーズ)をベンチマーク比較。
9. NISA枠の戦略なき消化
危険:短期売買で非課税の恩恵が薄い。枠不足で本来の長期保有候補を課税口座で買うことに。
代替:コア資産(国内外の広範囲インデックス、分配再投資)を優先。制度の上限や要件は最新の公式情報を確認しつつ、長期複利に適した商品で埋める。
10. 為替リスクの理解不足(ドル建て資産)
危険:円安・円高の往来で評価が大きく振れる。
代替:投資目的別にヘッジの有無を定義。長期の株式コアは無ヘッジ、債券はヘッジ有など、資産クラス別ポリシーを決める。
11. 一括ドン買いで時間分散を捨てる
危険:購入タイミングの一発勝負化。
代替:時間分散(積立)と価格分散(押し目拾いの追加発注)を併用。
12. 逆指値(損切り)未設定
危険:想定外のギャップダウンで致命傷。
代替:テクニカル支持線やボラ指標から事前に損失許容幅を定義。
13. SNS発の噂に過度依存
危険:エコーチェンバーでリスク過小評価。
代替:一次資料(決算短信、IR、目論見書、オンチェーンデータなど)を最優先。
14. 税・確定申告の軽視
危険:税コストを無視した回転売買は実効リターンを押し下げる。
代替:保有期間と課税の関係を把握。特定口座の源泉徴収、非課税枠の優先配分、分配再投資の活用。
15. 配当目当ての高コスト毎月分配型の短絡買い
危険:タコ足分配や基準価額の毀損。
代替:分配再投資型・低コスト指数連動を基本とし、インカムは必要額を期ごとに計画的に取り崩す。
16. FXでロスカット水準の未設計
危険:レバ×ボラで一点退場の確率が高い。
代替:証拠金→許容損失(口座残高の1%など)→ストップ幅→ポジションサイズ算出の順で逆算。
17. 暗号資産でのカストディ軽視
危険:取引所リスク、ステーブルコインのペッグ外れ、ブリッジ/スマコン脆弱性。
代替:分散カストディ、オンチェーン確認、運用資金と日常資金の分離。
18. コスト・スリッページ無視の回転売買
危険:約定コストの累積で期待値がマイナスに。
代替:売買回数の削減、成行・指値の使い分け、板厚の薄い時間帯を避ける。
19. 指数に勝とうとしてコアを外す
危険:分散の土台がないままアクティブに偏る。
代替:全世界株や広範囲指数をコアに据え、サテライトでテーマや高配当を薄く添える。
20. ルールを文章化せず、毎回“その場判断”
危険:意思決定が感情に飲まれる。
代替:売買・資金管理・税/為替の運用ポリシー文書を作り、四半期ごとに棚卸し。
代替戦略の実務フロー(テンプレ)
- 目標の定義:年率目標と許容ドローダウン。例えば「想定年率はインフレ超過、最大DDは-20%以内」。
- コア/サテライト設計:コアは広範囲インデックス・低コスト投信、サテライトは高配当/テーマ/戦術。
- 時間分散:毎月同額の積立。相場急落時は追加積立の「裁量枠」を小さく設定。
- ポジションサイズ:1回の取引で口座の1%を上限損失に。
数量 = 口座残高×0.01 ÷ 損切り幅。 - 撤退ルール:決算悪化、目論見との差分拡大、支持線割れなど事前規定で部分/全返済。
- 税・為替:非課税枠はコア資産を優先。為替は資産クラス別ポリシーを固定。
- レビュー:月次で実績/計画の差分、四半期でポリシー見直し。
資金配分のひな型(例)
一例としての考え方です。実際の比率は各自の目的・期間・リスク許容度に応じて調整してください。
- コア:全世界株/先進国株の低コスト投信 60–80%
- サテライト:高配当ETF/テーマ株/戦術 10–30%
- 安定資産:債券・短期金利連動・現金 10–20%
- オルタナ:金・一部の暗号資産 0–10%
売買ルール雛形(現物・ETF)
買い:積立日(時間分散)+急落時の裁量枠(最大月予算の×%まで)。
売り:仮説崩れ・決算悪化・基準線割れで部分売却。利益確定は比率調整(リバランス)を基本にして感情的全利確を避ける。
ケーススタディ:高配当ETFの使いどころ
高配当はインカム源として有効ですが、減配・業種偏重リスクがあります。コアは広範囲指数、サテライトに高配当ETFを10–20%で添えると、配当の安定度と成長性のバランスが取りやすくなります。
計算例:ポジションサイズの決め方
口座残高100万円、許容損失1%=1万円、損切り幅が5%なら、許容数量=1万円÷5%=20万円相当。これ以上の発注をしないルールにしておけば、一回の誤りが致命傷になりません。
チェックリスト(発注前30秒)
- なぜ今買う/売る?一次データに更新はあるか?
- 撤退ラインはどこか?(価格・決算・ファンダ)
- 1回の想定損失は口座の1%以内か?
- 銘柄・地域・通貨の分散は保たれているか?
- コスト(信託報酬・手数料・為替スプレッド)は妥当か?
- 税・非課税枠の使い方は最適か?
- メモに理由と数字を書いたか?(後で検証可能に)
FAQ
Q. 積立はいつ止めるべき?
生活防衛資金が不足、ポートフォリオのリスクが許容超過、仮説崩れのときのみ一時停止/見直し。相場観だけで止めない。
Q. 暴落時はどうする?
コアは継続積立。裁量枠の範囲で追加し、事前に決めた現金比率は維持。
まとめ
勝ちを増やす前に、負けを減らす設計を。NG行動を一つずつ潰し、コア/サテライト×時間分散×資金管理の三点セットを日課化すれば、長期でのブレは小さくなります。今日からチェックリストと実務フローを運用に組み込んでください。


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