通信費見直しと格安SIM乗り換えでインフレに負けない家計をつくる

家計管理

インフレであらゆるものの値段がじわじわと上がるなか、多くの人が「食費や電気代は意識して節約しているけれど、スマホ代やインターネット代はなんとなく払い続けている」という状態になっていると思います。しかし、実は通信費こそインフレ局面で真っ先に見直すべき固定費です。金額が大きく、かつ一度下げれば毎月自動的にキャッシュフローを改善してくれるからです。

この記事では、通信費の構造を整理しつつ、格安SIMへの乗り換えやプラン見直しを通じて「インフレに負けない家計」をつくるための具体的なステップを、投資初心者の方にもわかりやすく解説します。

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  1. なぜ通信費がインフレ局面の「隠れリスク」になるのか
  2. 現状把握:自分の通信コストを数値化する
    1. ① 通信関連の支出項目を洗い出す
    2. ② 月額・年額ベースで集計する
  3. 格安SIMの基本構造を理解する
    1. ① MNOとMVNOの違い
    2. ② サブブランド・オンライン専用ブランド
    3. ③ データ容量と速度のトレードオフ
  4. 通信費削減シミュレーション:どこまで下げられるか
    1. ケース1:4人家族で大手キャリアを利用している場合
    2. ケース2:一人暮らし+自宅回線の見直し
  5. 乗り換え前に確認すべき5つのポイント
    1. ① 自分の実際のデータ使用量
    2. ② 通話スタイル(通話時間・頻度)
    3. ③ 通信エリアと品質
    4. ④ 支払い方法・家族割・セット割の影響
    5. ⑤ MNP手数料・違約金・端末分割残債
  6. 初心者向けステップバイステップ格安SIM乗り換え手順
    1. ステップ1:乗り換え先のプランを選ぶ
    2. ステップ2:現在の契約状況を確認する
    3. ステップ3:MNP予約番号を取得する
    4. ステップ4:乗り換え先に申し込む
    5. ステップ5:SIMの受け取り・開通手続き
    6. ステップ6:旧回線の解約を確認する
  7. デュアル回線・eSIMを使った「安全な」乗り換え戦略
    1. ① デュアルSIMで試してから本格移行
    2. ② eSIMで即日切り替え・併用
  8. 通信費削減を投資リターンに変える発想
  9. 通信費見直しの落とし穴とリスク管理
    1. ① 通信速度・品質の不満
    2. ② サポート体制・トラブル時の対応
    3. ③ SMS認証・二段階認証の問題
    4. ④ 緊急速報や災害情報
  10. 実例ストーリー:通信費見直しで月1万円を生み出したケース
  11. まとめ:通信費見直しは最も取り組みやすいインフレ対策

なぜ通信費がインフレ局面の「隠れリスク」になるのか

インフレが進むと、食料・エネルギー・家賃・サービス料金など、生活のあらゆる項目が少しずつ高くなります。このとき、家計の中でじわじわ効いてくるのが「固定費」です。とくにスマホ代・自宅回線などの通信費は、一度契約すると見直す機会が少なく、気づいたら毎月かなりの金額を払い続けているケースが多いです。

例えば、1人あたり月8,000円のスマホ代を払っている4人家族の場合、通信費だけで月32,000円、年間384,000円になります。インフレで食費が月5,000円上がるよりも、通信費を月10,000〜20,000円削減するほうがインパクトは大きく、かつ一度見直せば「努力を続けなくても」効果が積み上がります。

また、インフレ局面では賃金上昇が物価に追いつかず、実質所得が目減りしがちです。可処分所得を守るためには、収入を増やすだけでなく、支出の構造そのものを調整することが重要であり、その中核が通信費などの固定費削減です。

現状把握:自分の通信コストを数値化する

通信費を本気で見直す第一歩は、「現状を正確に数値化すること」です。感覚ではなく、実際の請求書ベースで金額を確認していきます。

① 通信関連の支出項目を洗い出す

以下のような項目をすべて書き出します。

  • スマホ回線(本人・配偶者・子どもなど人数分)
  • 自宅インターネット回線(光回線・ケーブルなど)
  • ポケットWi-Fiやモバイルルーター
  • 動画・音楽サブスク(通信費とセットになっているものも含む)
  • オプション料金(かけ放題・端末保証・クラウドサービス など)

クレジットカード明細や銀行引き落とし履歴を1〜3か月分確認し、「通信関連」と思われる項目をすべてピックアップします。

② 月額・年額ベースで集計する

各項目について、「月額いくらか」「年間いくらか」を計算します。たとえば、スマホ代が月8,000円、自宅回線が月5,000円であれば、合計月13,000円、年間156,000円です。家族分を含めると、想像以上の金額になっていることに気づくはずです。

さらに、年額を「手取り月収換算」してみると、インパクトがより実感できます。例えば年間150,000円の通信費削減は、手取り月25万円の人にとって「1か月分の給料の6割」に相当します。これは、投資で年率数%のリターンを積み上げるよりも、遥かに早く確実に達成できる家計改善効果です。

格安SIMの基本構造を理解する

通信費見直しの中心になるのが「格安SIM」への乗り換えです。まずは仕組みを簡単に整理しておきます。

① MNOとMVNOの違い

通信事業者は大きく分けて以下の2種類があります。

  • MNO:自社で基地局や通信設備を持つ大手キャリア
  • MVNO:大手キャリアから回線を借りてサービスを提供する事業者(いわゆる格安SIM)

MVNOは設備投資が不要な分、料金を安く設定できます。一方で、混雑時間帯の速度低下や、店舗サポートの少なさなど、大手キャリアに比べて制約がある場合もあります。

② サブブランド・オンライン専用ブランド

近年は、大手キャリアが自社の「サブブランド」や「オンライン専用ブランド」として、比較的安価な料金プランを出しています。これらは大手キャリアのネットワーク品質を保ちつつ、店舗サポートを削ることで料金を下げているケースが多く、完全な格安SIMに抵抗がある人にとって中間的な選択肢になります。

③ データ容量と速度のトレードオフ

格安SIMの料金は主に「月のデータ容量」で決まります。一般的には、3GB・10GB・20GB・無制限といったプランが用意されており、容量が増えるほど料金が高くなります。同じ容量・同じ回線でも、時間帯により速度が変動することがある点も理解しておきましょう。

通信費削減シミュレーション:どこまで下げられるか

ここでは、具体的な数字を使って通信費削減のイメージをつかみます。

ケース1:4人家族で大手キャリアを利用している場合

前提を以下のように置きます。

  • 父:月8,000円(20GB+かけ放題)
  • 母:月7,000円(20GB+5分かけ放題)
  • 高校生:月6,000円(10GB)
  • 中学生:月5,000円(5GB)

合計で月26,000円、年間312,000円です。ここで、使用実態を見直した結果、以下のような格安SIMプランに切り替えるとします。

  • 父:月3,000円(20GB+通話オプションなし)
  • 母:月2,500円(10GB+5分かけ放題)
  • 高校生:月2,000円(10GB)
  • 中学生:月1,500円(5GB)

この場合、合計は月9,000円、年間108,000円となります。もともと年間312,000円だった通信費が108,000円に下がり、年間204,000円の削減です。月あたりにすると17,000円のキャッシュフロー改善になります。

ケース2:一人暮らし+自宅回線の見直し

次に、一人暮らしの例を見てみましょう。

  • スマホ:月8,000円(大手キャリア20GB)
  • 自宅光回線:月5,000円

合計13,000円、年間156,000円です。ここで、スマホを月3,000円の格安SIM(20GB)に変更し、自宅でのネット利用が主にスマホテザリングでも足りると判断して光回線を解約したとします。この場合、通信費は月3,000円、年間36,000円となり、年間120,000円の削減です。

もちろん、テレワーク頻度やオンライン会議の有無、動画視聴の量によって適切な判断は変わりますが、「自宅回線は本当に必要か?」を一度ゼロベースで検討する価値があります。

乗り換え前に確認すべき5つのポイント

格安SIMに乗り換える前には、以下のポイントを必ず確認しておく必要があります。これを怠ると、安くなったもののストレスが増えたり、逆にコストが膨らんだりすることがあります。

① 自分の実際のデータ使用量

まず、現在のスマホの「利用データ量」を3か月分ほど確認します。多くの人は「なんとなく20GB必要」と思っていますが、実際には月5〜10GB程度しか使っていないケースが少なくありません。自宅や職場でWi-Fiを使っている場合、モバイルデータは思ったより少なくて済みます。

② 通話スタイル(通話時間・頻度)

最近はLINEや各種アプリ通話が中心で、電話番号を使った音声通話はほとんどしない人も増えています。その場合、「かけ放題」は不要で、従量課金や短時間かけ放題で十分なケースが多いです。逆に、仕事で電話を多用する場合は、通話オプションを付けたほうがトータルで安くなることもあります。

③ 通信エリアと品質

格安SIMは、大手キャリアの回線を使っていても、混雑時間帯に速度が落ちやすいことがあります。通勤・通学ルートや自宅周辺で問題なく使えるかどうか、事前にレビューや公式情報を確認しておくと安心です。

④ 支払い方法・家族割・セット割の影響

現在、大手キャリアの家族割や光回線とのセット割を利用している場合、それらが解消されると一部回線の料金が上がることがあります。「自分が解約したら、家族の料金はどう変わるか」を事前にシミュレーションしておきましょう。

⑤ MNP手数料・違約金・端末分割残債

乗り換え時のコストとして、MNP手数料や契約解除料、端末代の残債があります。最近は違約金が軽くなってきていますが、古い契約の場合はまだ高額な場合もあります。一時的にコストがかかっても、数か月でペイできるなら乗り換えを検討する価値があります。

初心者向けステップバイステップ格安SIM乗り換え手順

ここからは、具体的な乗り換えの流れをステップごとに整理します。初めての方でも、この順番に沿って進めれば大きなトラブルを避けやすくなります。

ステップ1:乗り換え先のプランを選ぶ

まずは、自分のデータ使用量と通話スタイルに合ったプランを絞り込みます。月3〜5GBで足りるのか、10〜20GB必要なのか、オンライン会議をよく行うのかなどを考慮し、過不足の少ない容量を選ぶことがポイントです。

ステップ2:現在の契約状況を確認する

マイページや店頭で、以下の点を確認します。

  • 契約更新月かどうか
  • 解約金の有無・金額
  • 端末代分割の残債
  • キャリアメール(@〜)を継続利用したいかどうか

キャリアメールに依存しているサービス(会員登録や銀行・証券口座など)があれば、事前にフリーメールアドレスへの変更を進めておきます。

ステップ3:MNP予約番号を取得する

現在の電話番号をそのまま使いたい場合、MNP予約番号を取得します。多くの場合、Webや電話、店頭で手続きが可能です。有効期限があるので、乗り換え先への申し込みは期限内に行います。

ステップ4:乗り換え先に申し込む

乗り換え先のWebサイトから申し込みを行います。本人確認書類のアップロード、支払い方法の登録、MNP予約番号の入力などを行い、SIMカードや端末の到着を待ちます。

ステップ5:SIMの受け取り・開通手続き

SIMカードが届いたら、同梱のマニュアルに従って開通手続きを行います。多くの場合、マイページで開通ボタンを押すだけで完了します。その後、スマホにSIMカードを挿入し、APN設定(通信設定)を行えばネット接続ができるようになります。

ステップ6:旧回線の解約を確認する

MNPで乗り換えた場合、開通手続きが完了すると旧キャリアの回線は自動的に解約されるのが一般的です。念のため、旧キャリアのマイページや請求を確認し、重複課金がないかチェックしておきましょう。

デュアル回線・eSIMを使った「安全な」乗り換え戦略

通信に不安がある人は、デュアル回線やeSIMを活用した「段階的な乗り換え」も有効です。

① デュアルSIMで試してから本格移行

デュアルSIM対応のスマホであれば、大手キャリアの回線を残したまま、格安SIMをサブ回線として追加し、一定期間テスト利用できます。問題がなければ、メイン回線のデータ容量を下げる、あるいは解約することで通信費を段階的に削減できます。

② eSIMで即日切り替え・併用

eSIM対応のプランを選べば、物理SIMカードの到着を待たずに即日開通が可能なこともあります。旅行や出張時だけ一時的に安価なデータプランを追加するなど、柔軟な運用もできます。

通信費削減を投資リターンに変える発想

通信費の削減は、それ自体が「確実なリターン」です。さらに、その浮いたお金をインフレに強い資産への積立に回すことで、長期的な資産形成にもつなげられます。

例えば、通信費を見直して毎月1万円を浮かせ、その1万円を年3%で20年間運用できたとします。この場合の将来価値はおよそ320万円になります。これは、何も意識せずに通信費を払い続けていた場合と比べて、大きな差になります。

ポイントは、「削った固定費はそのまま生活水準の引き上げに使うのではなく、将来の自分への投資に振り向ける」というルールを決めることです。こうすることで、通信費削減が単なる節約で終わらず、インフレに強い家計・資産構造づくりへとつながっていきます。

通信費見直しの落とし穴とリスク管理

一方で、「安さだけ」を追い求めると、ストレスやリスクが増えることがあります。いくつか代表的な落とし穴を挙げておきます。

① 通信速度・品質の不満

格安SIMは、混雑時間帯に速度が落ちやすい場合があります。通勤時間帯に動画をよく見る、日中にオンライン会議が多い、といったライフスタイルの場合、速度の評判に注意が必要です。必要なら、多少料金が高くても安定したプランを選ぶほうが、トータルの満足度は高くなります。

② サポート体制・トラブル時の対応

店舗サポートがない、あるいは少ない格安SIMでは、トラブル時の対応がオンラインのみとなることがあります。スマホに不慣れな家族がいる場合は、サポートが手厚い事業者を選ぶなど、料金以外の要素も考慮しましょう。

③ SMS認証・二段階認証の問題

銀行や証券会社、各種サービスの二段階認証にSMSが使われていることが多く、電話番号を変更すると再設定が必要になります。乗り換え前に、どのサービスで電話番号を登録しているかを洗い出し、必要な変更手順を確認しておきます。

④ 緊急速報や災害情報

一部の格安SIMでは、災害時の緊急速報が受信できるかどうか、事業者や端末によって取り扱いが異なる場合があります。万一のときの情報入手手段として、どのような方法を用意しておくかも考えておきましょう。

実例ストーリー:通信費見直しで月1万円を生み出したケース

最後に、イメージをつかみやすいよう、架空のケーススタディを紹介します。

Aさん(40代・会社員・配偶者と子ども1人)は、長年大手キャリアのスマホと自宅光回線を利用していました。家計簿をつけ始めたことをきっかけに通信費を見直したところ、スマホ2台で月15,000円、自宅回線で月5,000円、合計20,000円の通信費を支払っていることがわかりました。

そこでAさんは、以下のステップで見直しを行いました。

  • 自分たちのデータ使用量が月5〜8GB程度であることを確認
  • サポートが比較的手厚い格安SIMに2回線まとめて乗り換え(2台で月6,000円程度)
  • 自宅での利用は主に動画視聴とリモート会議程度だったため、光回線は一旦解約し、必要であれば後から再契約する方針に変更

結果として、通信費は月20,000円から月9,000円程度に下がり、毎月約1万円の余裕資金が生まれました。Aさんはこの1万円をインデックス投資の積立に回し、「インフレで物価が上がっても、資産の成長で将来の生活を守る」という方針をとるようになりました。

まとめ:通信費見直しは最も取り組みやすいインフレ対策

インフレが続く環境では、「収入を増やす」「投資で増やす」だけでなく、「固定費の構造を変える」ことが重要です。その中でも、通信費は以下の理由から、最優先で見直す価値があります。

  • 金額が大きく、家計インパクトが大きい
  • 一度見直せば自動的に効果が続く
  • 生活の満足度をあまり落とさずに削減しやすい

まずは、現在の通信費を正確に把握し、自分のデータ使用量と通話スタイルに合ったプランを選ぶことから始めてください。そのうえで、格安SIMやプラン変更、デュアルSIM・eSIMの活用など、自分に合った方法で段階的に通信費を下げていきます。

通信費の見直しで生まれた余裕資金を、将来に向けた投資や貯蓄に振り向けることができれば、インフレに負けない家計・資産構造に一歩近づくことができます。今日が、固定費と向き合い、お金の流れを自分でコントロールし始めるスタート地点です。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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