リスク許容度とポートフォリオ設計:自分に合った資産配分の考え方

投資の基礎知識

同じ株価の動きでも、「まだ余裕」と感じる人もいれば、「もう耐えられない」と感じる人もいます。この違いを生み出しているのがリスク許容度です。リスク許容度を無視してポートフォリオを組むと、相場が荒れたときに不安で耐えきれず、安値で売却してしまうことになりがちです。

この記事では、リスク許容度とは何か、自分のリスク許容度をどう測り、それに合わせてポートフォリオ(資産配分)をどう設計すればよいかを、初めて投資を検討する方にもわかりやすく丁寧に解説します。最後には、年代別の具体的なポートフォリオ例も紹介します。

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  1. リスク許容度とは何か
    1. 金銭的なリスク許容度
    2. 心理的なリスク許容度
    3. 時間軸と経験・知識
  2. 簡易チェックで自分のリスク許容度をざっくり把握する
    1. 質問1:運用期間
    2. 質問2:収入と貯蓄の安定性
    3. 質問3:価格変動への感情的な耐性
    4. 質問4:投資経験
    5. 合計点数から見るリスク許容度タイプ
  3. リスク許容度と目標リターンの関係
  4. リスク許容度別 ポートフォリオ配分の基本形
    1. 守り型:価格の安定を最優先
    2. バランス型:増やすことと守ることの両立
    3. 攻め型:長期の成長を重視
  5. ドローダウンで考える「夜ぐっすり眠れる比率」
  6. ライフイベントと時間軸で変わるリスク許容度
    1. 20〜30代:資産形成の初期
    2. 40〜50代:教育費・住宅ローンと並行する時期
    3. 60代以降:生活資金としての役割が大きくなる時期
  7. 実践ステップ:リスク許容度に合ったポートフォリオを組む手順
    1. ステップ1:現状の資産と負債を把握する
    2. ステップ2:目的と期限を整理する
    3. ステップ3:簡易チェックでリスク許容度タイプを確認する
    4. ステップ4:資産クラスごとの配分比率を決める
    5. ステップ5:具体的な商品を選ぶ
    6. ステップ6:定期的にリバランスする
  8. よくある失敗パターンと回避策
    1. SNSや他人の成績に振り回される
    2. 下落局面でパニック売りしてしまう
    3. レバレッジ商品の比率が高すぎる
  9. 年代別のケーススタディでイメージを固める
    1. ケース1:30歳・独身・資産形成重視
    2. ケース2:45歳・共働き・子ども2人・住宅ローンあり
    3. ケース3:60歳・退職金の運用を検討
  10. まとめ:リスク許容度を軸にすればブレない

リスク許容度とは何か

リスク許容度とは、「資産価格の変動による損失に、どこまで耐えられるか」という度合いを指します。ここで重要なのは、単に「性格の問題」ではなく、お金の状況時間軸経験や知識性格が組み合わさった総合的な度合いだという点です。

例えば、貯金がほとんどなく収入も不安定な人と、十分な貯蓄と安定した収入がある人では、同じ金額の損失でも感じる重さがまったく違います。また、老後直前の人と、20代で資産運用を始めたばかりの人でも、取れるリスクの大きさは当然異なります。

金銭的なリスク許容度

金銭的なリスク許容度は、「もし資産が一時的に減っても、生活や将来の計画に致命的な影響が出ないか」という観点で決まります。貯蓄額、収入の安定性、家族構成、住宅ローンや教育費などの将来支出を踏まえて判断します。

例えば、生活費の半年〜1年分の現金を確保したうえで、それ以外の余裕資金を投資に回していれば、一時的な含み損が出ても生活に直結しにくく、リスク許容度は高まりやすくなります。

心理的なリスク許容度

心理的なリスク許容度は、「数字上は問題なくても、感情的に耐えられるかどうか」という観点です。画面上で資産が20%減っているのを見て平然としていられる人もいれば、5%の下落で眠れなくなる人もいます。

数字としては許容範囲でも、感情的に耐えられずに安値で売ってしまうなら、それは実質的にリスク許容度を超えています。自分の性格を冷静に見つめることも重要です。

時間軸と経験・知識

運用期間が長ければ長いほど、一時的な下落から回復する時間があるため、理論上はより大きなリスクも取りやすくなります。また、投資の経験や知識が増えるほど、下落局面でも落ち着いて判断しやすくなり、心理的なリスク許容度も少しずつ上がっていきます。

簡易チェックで自分のリスク許容度をざっくり把握する

厳密な診断ツールもありますが、ここでは自分のリスク許容度をざっくり把握するための簡易チェックを紹介します。紙とペン、もしくはメモアプリを用意して、次の質問に答えてみてください。

質問1:運用期間

「このお金は、いつまで使う予定がないか」を考えます。

・5年以上使う予定がない → 3点
・3〜5年程度 → 2点
・1〜3年程度 → 1点
・1年以内に使う可能性が高い → 0点

質問2:収入と貯蓄の安定性

現在の収入の安定性と、貯蓄の厚みを合わせて考えます。

・安定した収入があり、生活費1年以上の貯蓄がある → 3点
・安定した収入があり、生活費半年分程度の貯蓄がある → 2点
・収入がやや不安定、または貯蓄が生活費3〜6か月分 → 1点
・収入が不安定で貯蓄も少ない → 0点

質問3:価格変動への感情的な耐性

投資資産が一時的に30%下落したと想像してみます。

・「想定内。まだホールドしてもよい」と思える → 3点
・「不安だが、まだ様子を見る」と思える → 2点
・「かなり不安で、売るかどうか悩む」と感じる → 1点
・「耐えられず、すぐ売りたい」と感じる → 0点

質問4:投資経験

これまでの投資経験を振り返ります。

・株式や投資信託などの運用経験が5年以上ある → 3点
・運用経験はあるが5年未満 → 2点
・少額で試したことがある程度 → 1点
・ほとんど経験がない → 0点

合計点数から見るリスク許容度タイプ

4つの質問の合計点を計算します。

・0〜4点:守り型(低リスク中心)
・5〜8点:バランス型(中程度のリスク)
・9〜12点:攻め型(高リスクもある程度許容)

これはあくまで簡易的な目安ですが、自分がどのタイプに近いかをイメージするだけでも、ポートフォリオ設計の土台になります。

リスク許容度と目標リターンの関係

リスク許容度が高いほど、価格変動の大きい資産に多く配分でき、その分、長期的に期待リターンも高くなりやすくなります。一方、リスク許容度が低い場合は、価格変動の小さい資産を中心にし、期待リターンも控えめに設定することになります。

大まかなイメージとして、世界株式インデックスファンドの長期リターンは年率数%台程度を目安に考えられますが、実際の値動きは年によって大きくプラスにもマイナスにも振れます。債券や預金はリターンは低いものの、価格変動は比較的小さくなります。

重要なのは、「どれくらい増える可能性があるか」だけでなく、「どれくらい減る可能性があるか」も同時にイメージし、その両方に自分が納得できるかどうかです。

リスク許容度別 ポートフォリオ配分の基本形

ここからは、先ほどの3タイプごとに、イメージしやすいポートフォリオ配分の例を示します。あくまで一例であり、正解が一つに決まっているわけではありませんが、考え方の土台として参考になります。

守り型:価格の安定を最優先

守り型の方は、「資産が大きく減るのは避けたい」「多少の増加よりも減らさないことが大事」という考え方が強いタイプです。価格変動の大きい株式の比率は控えめにし、現金や債券などの安定資産を厚めにします。

例として、次のような配分イメージが考えられます。

・現金・預金:40%
・債券関連ファンド:40%
・株式インデックスファンド:20%

株式の比率が20%程度であれば、株式市場が大きく下落しても、ポートフォリオ全体の下落はある程度緩和されます。「減るときは少ししか減らないが、大きく増えることも期待しすぎない」というバランスです。

バランス型:増やすことと守ることの両立

バランス型の方は、「増やしたいが、暴落で半分になるような事態は避けたい」というイメージです。株式と債券、現金をバランス良く組み合わせることで、リターンと安定性の両立を図ります。

例として、次のような配分が考えられます。

・株式インデックスファンド:50%
・債券関連ファンド:30%
・現金・預金:20%

株式比率が50%程度であれば、長期的にはインフレに負けない成長を狙いつつ、全額株式よりも下落時のダメージを軽減できます。値動きはそれなりにありますが、守り型よりもリターンを追求しやすい配分です。

攻め型:長期の成長を重視

攻め型の方は、「短期的な値動きにはある程度耐えられるので、長期的なリターンを重視したい」というタイプです。資産形成の初期段階で、運用期間が十分に長く取れる人に多い考え方です。

例として、次のような配分が考えられます。

・株式インデックスファンド:80%
・債券関連ファンド:10%
・現金・預金:10%

株式比率が高いため、相場が好調なときには大きく資産が増える可能性がありますが、逆に大きく下落する年もあります。「数年単位の含み損は覚悟したうえで、それでも長期で成長を狙う」という姿勢が必要です。

ドローダウンで考える「夜ぐっすり眠れる比率」

リスク許容度を考えるうえで、ドローダウン(ピークからの下落率)という考え方は非常に役立ちます。「最大でどれくらいの下落までなら許容できるか」を具体的な数字で考えてみると、自分に合った株式比率が見えやすくなります。

例えば、株式100%のポートフォリオでは、大きな金融危機のときに一時的に30〜50%程度の下落が起こり得ます。株式比率を50%にしていれば、同じような局面でも、ポートフォリオ全体の下落はざっくり半分程度に圧縮されます。

「最大で▲20%ならギリギリ耐えられる」という人は、その範囲に収まるように株式比率を抑え、「▲40%までは覚悟する」という人は、株式比率を高める、といった考え方ができます。

ライフイベントと時間軸で変わるリスク許容度

リスク許容度は一生固定ではなく、ライフイベントや年齢によって変化します。20代独身のときと、子育て中の40代、退職後の60代では、取れるリスクの大きさが違うのは自然なことです。

20〜30代:資産形成の初期

運用期間を長く取れるため、理論上は高めのリスクを取ることができます。収入が安定していて、生活防衛資金を確保できているなら、株式比率を高めに設定することも選択肢になります。ただし、ローンや家族構成なども加味して、無理のない範囲を見極めることが大切です。

40〜50代:教育費・住宅ローンと並行する時期

この時期は、教育費や住宅ローン返済など大きな支出が重なりやすくなります。全体としては、若い頃よりも株式比率をやや下げ、中長期の成長と安定性のバランスを意識した配分を検討することが多くなります。

60代以降:生活資金としての役割が大きくなる時期

退職後の資産は、「増やすこと」以上に「長く持たせること」「急激に減らさないこと」が重要になります。現金や債券の比率を高め、株式比率を抑えることで、大きな下落に巻き込まれたときのダメージを軽減します。

実践ステップ:リスク許容度に合ったポートフォリオを組む手順

ここからは、実際にポートフォリオを組むまでの手順を、具体的なステップに分けて整理します。

ステップ1:現状の資産と負債を把握する

まずは、銀行口座の残高、証券口座の資産、保険、住宅ローンやその他の借入など、現在の資産・負債を一覧にします。ここで重要なのは、「余裕資金はいくらか」を明確にすることです。

ステップ2:目的と期限を整理する

次に、そのお金を何のために、いつまで運用するかを整理します。老後資金、子どもの教育費、マイホームの頭金など、目的ごとに期限と必要金額のイメージを持つと、取れるリスクの範囲がはっきりしてきます。

ステップ3:簡易チェックでリスク許容度タイプを確認する

先ほどの簡易チェックを使って、自分が守り型・バランス型・攻め型のどれに近いかを把握します。完璧に当てはまらなくても構いません。「感覚的にはバランス型寄りだが、重要な資金なので少し守り寄りに調整する」といった微調整も現実的です。

ステップ4:資産クラスごとの配分比率を決める

リスク許容度タイプに応じて、株式・債券・現金などの大きな配分比率を決めます。最初から完璧な比率を求める必要はありません。目安の比率を決めてスタートし、運用しながら自分の感覚に合わせて調整していくイメージが現実的です。

ステップ5:具体的な商品を選ぶ

資産クラスの比率が決まったら、具体的な投資信託やETFなどの商品を選びます。銘柄選びでは、手数料水準、分散の広さ、運用実績などを確認します。最初は、世界株式や先進国株式など、広く分散されたインデックス型の商品を中心に検討するのがシンプルです。

ステップ6:定期的にリバランスする

相場の変動によって、時間が経つと株式と債券の比率が当初の配分からズレていきます。年に1回程度、比率が大きく崩れていないか確認し、必要に応じて売買や積み立て金額の調整を行うことで、リスク許容度に見合った配分を維持しやすくなります。

よくある失敗パターンと回避策

リスク許容度を無視した運用は、相場が荒れたときに破綻しやすくなります。ここでは、よくある失敗パターンと、その回避策を整理します。

SNSや他人の成績に振り回される

インターネット上には、短期間で大きな利益を上げた成功談が多数投稿されています。それを見て、自分のリスク許容度を超える大胆な運用に踏み出してしまうと、相場が逆に動いたときに精神的な負担が一気に高まります。

他人のポートフォリオは、その人のリスク許容度や状況を反映したものです。自分のリスク許容度と目的を軸に、自分専用のポートフォリオを組む意識が重要です。

下落局面でパニック売りしてしまう

「これ以上下がったら困る」と感じるラインを事前に考えずに運用を始めると、急落時に冷静な判断ができなくなり、底に近いところで売却してしまいやすくなります。

運用前に、「最大でどの程度の下落までなら許容できるか」「その場合でも追加投資するのか、ホールドするのか」といった方針を考えておくことで、パニック売りを減らす助けになります。

レバレッジ商品の比率が高すぎる

レバレッジ型の投資商品は、うまくいけば短期間で大きな利益を狙えますが、逆方向に動いたときの損失も大きくなります。リスク許容度を冷静に見極めず、レバレッジ商品をポートフォリオの大部分に入れてしまうと、予想以上の値動きに耐えられなくなる可能性があります。

レバレッジ商品を利用する場合は、全体の一部にとどめる、運用期間を限定するなど、自分のリスク許容度の範囲に収める工夫が重要です。

年代別のケーススタディでイメージを固める

最後に、年代や状況ごとの具体例を3つ挙げて、リスク許容度とポートフォリオ設計の関係をイメージしやすくしてみます。ここでは、あくまで一例としてのイメージです。

ケース1:30歳・独身・資産形成重視

・生活防衛資金として、生活費1年分の現金をすでに確保済み。
・運用期間は20年以上を想定。
・収入は安定しており、毎月一定額を積み立て可能。

このケースでは、金銭的・時間的なリスク許容度は比較的高いと考えられます。心理的にも含み損にある程度耐えられるのであれば、株式インデックスファンド中心の配分が選択肢になります。

例として、株式インデックスファンド70〜80%、債券・現金20〜30%といった配分が検討できます。相場が下落したときにも、「長期では成長を期待して保有し続ける」という方針を持てるかがポイントです。

ケース2:45歳・共働き・子ども2人・住宅ローンあり

・教育費と住宅ローンの支出が重なる時期。
・老後資金の準備も本格的に意識し始める年代。
・運用期間は15〜20年程度を想定。

このケースでは、資産を増やす必要性は高い一方で、大きな下落で教育資金や生活が脅かされることは避ける必要があります。リスク許容度は「中程度」と考え、バランス型の配分が現実的です。

例えば、株式インデックスファンド50〜60%、債券関連30〜40%、現金10〜20%といった配分がイメージしやすいでしょう。下落局面でも、「長期の計画全体では許容範囲か」を冷静に確認しながら運用を続けていく姿勢が大切です。

ケース3:60歳・退職金の運用を検討

・今後の生活費の一部を運用資産から賄うことを想定。
・運用期間は10〜20年程度を想定しつつも、大きな下落は避けたい。
・心理的にも大きな含み損には耐えにくい。

このケースでは、守り型のポートフォリオが選択肢になります。現金や債券を厚めにし、株式比率を抑えることで、大きな下落リスクを軽減します。

例として、現金・預金30〜40%、債券関連40〜50%、株式インデックスファンド10〜30%といった配分が考えられます。株式比率を抑えつつ、インフレへの備えとして一定の成長資産も残しておくイメージです。

まとめ:リスク許容度を軸にすればブレない

リスク許容度は、投資の「ゴール設定」と同じくらい重要な概念です。自分のリスク許容度を理解せずに運用を始めると、相場の上下に振り回され、結果的に「高いところで買って、安いところで売る」という逆効果な行動になりがちです。

運用期間、収入と貯蓄の状況、家族構成、性格、将来の目標。これらを一つ一つ整理し、自分のリスク許容度を言葉と数字でイメージできるようになると、ポートフォリオ設計の軸が明確になります。

大事なのは、「自分にとってちょうどよいリスク」を選ぶことです。他人のポートフォリオをそのまま真似するのではなく、自分のリスク許容度に合わせて資産配分を設計し、必要に応じて少しずつ調整していく。この積み重ねが、長く続けられる資産運用につながっていきます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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