債券投資は「安全」ではない:金利リスクを味方にする個人投資家の設計図

投資戦略

「債券=安全」と思って買ったのに、評価損が増えて不安になる。これは珍しい話ではありません。債券は株より値動きが小さい局面も多い一方で、金利の上昇が起きると価格が下がり、短期間でもはっきり損益が出ます。つまり債券の本質は「安全」ではなく、金利リスクをどのように管理するかにあります。

本記事では、個人投資家が債券を「儲けるためのヒント」に変えるために、次の3点を軸に徹底解説します。

  • 債券のリターンは「利回り」だけでなく「価格変動」も含む
  • 金利リスクはデュレーション(期間感応度)で測れる
  • ラダー(満期分散)と再投資ルールで、金利サイクルに耐える

結論から言うと、債券で失敗しやすいのは「利回りだけ見て、期間(満期)を意識しない」ことです。逆に、期間設計と再投資の仕組みを持てば、債券はポートフォリオの安定剤であり、株式の暴落局面でも意思決定を支える武器になります。

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  1. 1. まず押さえる:債券リターンは「利息+価格変動+再投資」
    1. 「満期まで持てば安全」は半分だけ正しい
  2. 2. 金利が上がると債券価格が下がる理由を、式なしで理解する
    1. 具体例:同じ100万円でも、金利が違うと価値が変わる
  3. 3. 債券の「値動きの大きさ」はデュレーションで測る
    1. ざっくり計算:金利が1%上がると何%下がる?
  4. 4. 初心者の失敗パターン:高利回り長期債の“一点張り”
    1. 失敗例:30年債ETFを“定期預金の代わり”にした
  5. 5. 債券ラダー:金利サイクルに耐える“仕組み”を作る
    1. 具体例:500万円の「5年ラダー」
    2. ラダーの弱点:利回りの取りこぼし
  6. 6. 「短期債・中期債・長期債」どれを持つべきか:目的別の設計
    1. ① 生活防衛・待機資金:超短期(数か月~2年)
    2. ② 近い将来の資金需要(例:3~7年後の教育資金):短中期(2~7年)
    3. ③ インフレや景気後退に備えた“株の相棒”:中期(5~10年)中心+一部長期
  7. 7. 為替リスク:円建てで考えているのにドル債で揺さぶられる
    1. 為替ヘッジは“コスト”ではなく“性格の違う商品”
    2. 判断軸:お金を使う通貨に合わせる
  8. 8. 実践:個人投資家向け“債券ポートフォリオ3パターン”
    1. パターンA:守りを固める(現金代替の最適化)
    2. パターンB:金利サイクルを利用する(ラダー+一部中期)
    3. パターンC:株式のヘッジとして使う(中期厚め+長期少し)
  9. 9. インフレに弱い問題:債券だけでは守れない
  10. 10. 個人投資家の武器:リバランスと“利回りの固定化”
    1. ① 金利が上がったら買い増す(ただし期間は固定)
    2. ② 株が急落したら、短期資金から株へ移す(定量ルール)
  11. 11. 商品選び:個別債かETF/投信か(初心者の現実解)
    1. 信用リスクは“狙って取る”もので、勝手に取らない
  12. 12. 運用手順:これだけは決めてから買う(チェックリスト)
  13. 13. よくある疑問:いま金利が高い(低い)けど、どう動く?
    1. Q1. 金利が高いなら長期債を一気に買っていい?
    2. Q2. 金利が低いなら債券は不要?
  14. 14. まとめ:債券は“金利リスクの設計”で勝負が決まる

1. まず押さえる:債券リターンは「利息+価格変動+再投資」

債券のリターンは単純な利息収入(クーポン)だけではありません。実務的には次の3要素の合計です。

  • 利息(クーポン):保有している間に受け取る利息
  • 価格変動:市場金利が動くと債券価格も上下する
  • 再投資:受け取った利息や満期資金を、どの金利で再投資できるか

「満期まで持てば安全」は半分だけ正しい

満期まで保有すれば、発行体がデフォルトしない限り額面で償還されます。ここだけ見ると安全に見えます。ただし、個人投資家は次の理由で「満期まで持つ前提」が崩れやすいです。

  • 生活資金・教育資金・住宅など、途中で資金が必要になる
  • 株式が急落したときにリバランスしたくなる
  • 別の投資機会(例:高金利局面のMMFや短期国債)に乗り換えたくなる

つまり、「売る可能性がある」なら、債券価格の変動=金利リスクは現実の損益になります。債券投資の設計は、満期ではなく、自分の資金が必要になるタイミングに合わせるのがコアです。

2. 金利が上がると債券価格が下がる理由を、式なしで理解する

債券は「未来のお金(利息+償還金)」を今の価値に割り引いたものです。市場金利が上がると割引率が上がり、未来のキャッシュフローの現在価値が下がるため、債券価格が下がります。

具体例:同じ100万円でも、金利が違うと価値が変わる

1年後に100万円がもらえる約束があるとします。市場金利が年1%なら、今の価値はおおむね99万円台です。市場金利が年5%なら、今の価値は95万円台になります。金利が上がるほど「今すぐもらえるお金」の価値が相対的に高くなるので、債券価格は下がるのです。

3. 債券の「値動きの大きさ」はデュレーションで測る

デュレーションは、金利が動いたときに債券価格がどれくらい動くかを示す指標です。厳密には複数種類(マコーレー、修正デュレーション等)がありますが、個人投資家の運用設計では次の理解で十分です。

デュレーションが長いほど、金利上昇に弱い(価格が下がりやすい)。

ざっくり計算:金利が1%上がると何%下がる?

修正デュレーションが7年なら、金利が1%上がったとき価格は概ね7%下がるイメージです(実際は利回り水準や凸性でズレますが、設計にはこの近似が役立ちます)。

  • デュレーション2年:金利+1%で価格-2%程度
  • デュレーション7年:金利+1%で価格-7%程度
  • デュレーション15年:金利+1%で価格-15%程度

ここで重要なのは、「利回りが少し高い」よりも「期間が長い」ほうが価格変動を増幅しやすい点です。高利回りに惹かれて長期債へ偏ると、金利上昇局面で精神的に耐えられなくなることがあります。

4. 初心者の失敗パターン:高利回り長期債の“一点張り”

初心者がやりがちなのが、「利回りが高いから」と20年・30年の長期債(または長期国債ETF)を大きく買うことです。長期債は金利低下局面では強い反面、金利上昇局面では損失が出やすく、含み損が長く残る傾向があります。

失敗例:30年債ETFを“定期預金の代わり”にした

金利が上がると、価格は下がります。30年債に近いデュレーションのETFは、金利が2%上がれば価格が20%~30%近く動くこともあり得ます。債券が「安全」だと思っていた人ほど、下落率を見て投げやすい。結果として「債券で損した」という学習だけが残ります。

対策は明確で、目的と期間を先に決めて、満期分散(ラダー)で組むことです。次章で具体的にやります。

5. 債券ラダー:金利サイクルに耐える“仕組み”を作る

ラダーとは、満期が異なる債券を階段状に保有する設計です。例えば1年、2年、3年、4年、5年に満期が来るように分散して持ちます。メリットは次の通りです。

  • 金利上昇時:満期が来た資金を高金利で再投資できる
  • 金利低下時:過去に買った高利回り債券が残っている
  • 資金需要:毎年(または定期的)に償還があり、キャッシュが生まれる

具体例:500万円の「5年ラダー」

現金500万円を債券で運用したいが、途中で使う可能性もある。こういう人は、最初から「5年で完全に固定」ではなく、5年ラダーにすると事故が減ります。

  • 1年:100万円
  • 2年:100万円
  • 3年:100万円
  • 4年:100万円
  • 5年:100万円

1年後に1年債が満期になったら、その100万円で「新しい5年債」を買い足します。こうして常に1~5年の階段を維持します。これにより、金利が上がる局面では、毎年の満期資金を高金利へ乗せ換えられます。

ラダーの弱点:利回りの取りこぼし

ラダーは安全側の設計なので、金利が急低下して長期債が急騰する局面では、長期債一点張りほどのリターンは出ません。これは「保険料」です。個人投資家の目的は、当てに行くことではなく、意思決定の質を落とさない運用です。ラダーはそのための構造です。

6. 「短期債・中期債・長期債」どれを持つべきか:目的別の設計

債券の期間は、投資目的から逆算します。初心者が迷わないために、目的別に基準を示します。

① 生活防衛・待機資金:超短期(数か月~2年)

相場が荒れたときに心を守る資金です。ここは「利回り最大化」よりも「価格が動きにくい」を優先します。選択肢は、短期国債、短期債ETF、MMF、短期定期など。為替リスクを取りたくないなら円建て中心、ドル資産が必要ならドル短期で統一します。

② 近い将来の資金需要(例:3~7年後の教育資金):短中期(2~7年)

将来使うお金は、株式の下落耐性を持たせるのが重要です。ここで長期債を持つと、金利上昇で価格が下がり、使いたい時期に評価損が残る可能性があります。期間は「使う年」に寄せるのが基本です。

③ インフレや景気後退に備えた“株の相棒”:中期(5~10年)中心+一部長期

株式と相関が低い(または局面で逆相関になり得る)資産として債券を持つなら、金利低下局面で効きやすい中期~長期が候補になります。ただし長期はブレが大きいので、全額を長期にせず、中期を厚めにし、長期はスパイス程度に抑える発想が現実的です。

7. 為替リスク:円建てで考えているのにドル債で揺さぶられる

日本の個人投資家が米国債やドル建て債券ETFを買うと、金利リスクに加えて為替リスクが乗ります。債券価格が上がっても円高で相殺される、債券価格が下がっても円安で助かる、など、損益の要因が二重になります。

為替ヘッジは“コスト”ではなく“性格の違う商品”

為替ヘッジ付き債券は、円ベースの値動きを安定させやすい一方で、ヘッジコスト(短期金利差を中心としたコスト)で利回りが削られる局面があります。逆に、ヘッジなしは利回りが見かけ上高く見えることがあっても、円高局面で一気に損益が悪化します。

判断軸:お金を使う通貨に合わせる

最もシンプルな判断は、「将来使う通貨」に合わせることです。生活費が円なら、生活防衛資金や近い将来の支出は円建て中心が合理的です。一方、海外旅行・留学・海外資産の購入など、ドルが必要な目的が明確ならドル建てを持つ意味があります。

8. 実践:個人投資家向け“債券ポートフォリオ3パターン”

パターンA:守りを固める(現金代替の最適化)

狙い:株が荒れても売らないための心理的バッファを作る。

  • 円短期:生活防衛(数か月~1年分)
  • 円短中期ラダー:1~5年
  • 株式:積立継続(比率は自分の許容度)

債券側は大きく値動きさせない設計にし、株式側の長期リターンを取りに行く。初心者が最初に作るべき“事故りにくい”形です。

パターンB:金利サイクルを利用する(ラダー+一部中期)

狙い:金利上昇でも損益を崩さず、上がった金利を取りに行く。

  • 円またはドル短期:待機資金
  • 2~7年ラダー:中核
  • 7~10年:相場局面により薄く保有(“足し算”ではなく“調整枠”)

ポイントは、長期債を常に持ち続けるのではなく、金利水準と自分の目的に応じて調整することです。市場を完璧に当てる必要はありません。ルールを先に決めておくことで、感情で動く確率を下げられます。

パターンC:株式のヘッジとして使う(中期厚め+長期少し)

狙い:リスクオフで株が下がる局面に、債券の上昇でクッションを作る。

  • 中期国債(5~10年):主力
  • 長期国債(10~20年以上):少量(値動き増幅のため)
  • 現金・短期:リバランス用の弾

この構成は「景気後退で金利が下がる」シナリオに強い一方で、インフレ再燃で金利が上がると傷つきます。したがって、長期債を主力にしないことが肝です。

9. インフレに弱い問題:債券だけでは守れない

債券は一般にインフレが上がると不利になりやすいです。なぜなら、将来もらうお金の実質価値が下がるからです。ここを補う発想として、次の選択肢があります。

  • 物価連動債(インフレ連動)
  • 短期債中心で再投資回転を上げる(インフレに追随しやすい)
  • 株式・実物資産(ゴールド、REIT等)と併用してリスク分散

「債券でインフレも完璧に守る」のは難しいため、債券に求める役割を明確にして、他資産と組み合わせるのが現実的です。

10. 個人投資家の武器:リバランスと“利回りの固定化”

債券の魅力は、株と違って「将来の期待値が金利として見えやすい」点です。購入時の利回りが高いほど、長期の期待リターンは上がりやすい。ここから導ける戦略が2つあります。

① 金利が上がったら買い増す(ただし期間は固定)

金利上昇局面では、既存債券は評価損になりやすいですが、新規で買う債券の利回りは上がります。ここで“売って逃げる”のではなく、期間を伸ばさずに(デュレーションを増やさず)買い増すと、将来の利息収入が増え、回復が早まります。ラダーと相性が良い動きです。

② 株が急落したら、短期資金から株へ移す(定量ルール)

債券や短期資産は、株の下落局面で買い向かう「弾」になります。ここで重要なのは、感情ではなくルールで動くことです。例えば次のようなルールが考えられます。

  • 株式比率が目標から-5%乖離したら、短期資産から株へリバランス
  • 株価が直近高値から-15%なら1回、-25%ならもう1回、段階的に移す
  • ただし生活防衛資金だけは絶対に手を付けない

この“弾”があると、暴落時にパニック売りをしにくくなります。債券の真価は、利回り以上に、行動を安定させることにあります。

11. 商品選び:個別債かETF/投信か(初心者の現実解)

初心者は、個別債の銘柄分析・売買コスト・流動性まで含めると難易度が上がります。現実的には、次の順で考えるのが安全です。

  • 短期資金:MRF/MMF/短期債投信(値動き小)
  • ラダー的な役割:満期が近い債券投信や短中期債ETF
  • 中期・長期:国債中心のETF/投信(信用リスクを取りすぎない)

信用リスクは“狙って取る”もので、勝手に取らない

社債やハイイールド債は利回りが高い一方、景気悪化でスプレッドが拡大すると価格が下がり、株式と同時に下落することがあります。債券に求める役割が「守り」なら、信用リスクは薄めるべきです。どうしても取りたいなら、ポートフォリオの一部に限定し、最悪ケースを想定してサイズを決めます。

12. 運用手順:これだけは決めてから買う(チェックリスト)

  • この資金は「いつ」「何のために」使う可能性があるか
  • その目的に対して許容できる評価損は何%か(数値で)
  • 債券の期間(デュレーション)の上限を決めたか
  • ラダーを組むなら、満期間隔(毎年/半年)と再投資ルールは決めたか
  • 為替リスクを取るなら、ヘッジ有無の方針は明確か
  • 株式が下がったときのリバランス条件(何%で何回)を決めたか

この6つを決めずに債券を買うと、相場が動いたときに「どうするべきか」が分からず、SNSやニュースで判断がぶれます。逆に、先にルールがあれば、迷いが減ります。

13. よくある疑問:いま金利が高い(低い)けど、どう動く?

Q1. 金利が高いなら長期債を一気に買っていい?

「高い」の定義が難しいため、一気に決め打ちするのは危険です。現実解は、ラダーで時間分散して、金利がさらに上がっても“次の買い場が来る”状態にすることです。長期債は少量から始め、段階的に増やすほうが失敗しにくいです。

Q2. 金利が低いなら債券は不要?

利回りが低いと魅力が薄く見えますが、債券の役割は「利回り」だけではありません。株式の急落で資産全体が揺れる局面では、短期資産や中期債が“行動を安定させる”ことがあります。利回りが低い局面ほど、サイズを抑えつつ、役割ベースで保有する発想が有効です。

14. まとめ:債券は“金利リスクの設計”で勝負が決まる

債券投資で成果を出す鍵は、銘柄当てではありません。自分の目的に合わせて期間を設計し、ラダーと再投資ルールで金利サイクルに耐えることです。

  • 債券の損益は「利息+価格変動+再投資」
  • 金利上昇に弱いのはデュレーションが長い債券
  • 初心者は“利回り一点”ではなく、満期分散(ラダー)で事故を減らす
  • 為替リスクは「使う通貨」に合わせて方針を固定する
  • 債券の真価は、暴落時に行動を安定させること

最後に一言。債券は、株のように派手な成功談が出にくい資産です。しかし、派手さがないからこそ、運用ルールを守る人の味方になります。自分の資金の役割と時間軸を整理し、期間設計から始めてください。

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