暴落時の積立増額ルール:機械的に安値を拾うための設計図

投資戦略

相場が暴落すると、多くの人は「いま買うべきか、それとも逃げるべきか」で思考停止します。ここで勝敗を分けるのは、相場観ではなく、ルールの有無です。積立投資は「続けるだけで勝てる」と誤解されがちですが、実際には“暴落局面でどう振る舞うか”で成果が大きく変わります。

本記事では、暴落時に積立額を増やして機械的に安値を拾うための「積立増額ルール」を、初心者でも運用できる形に落とし込みます。感情やニュースに左右されないように、指標・閾値・資金管理・運用フローまで具体的に設計します。

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  1. なぜ「暴落時の増額ルール」が必要なのか
  2. 最初に決めるべき前提:増額は「生活防衛」とセット
  3. 暴落を“定義”しないと、ルールは機能しない
  4. 暴落定義①:直近高値からの下落率(ドローダウン)
  5. 暴落定義②:移動平均線からの乖離率
  6. 暴落定義③:ボラティリティ(恐怖)の上昇
  7. 初心者向けの結論:まずは「ドローダウン型」が最も堅牢
  8. 積立増額ルールの設計:3つの基本型
  9. 基本型A:段階増額(ステップアップ)
  10. 基本型B:追加一括(トリガー・バイ)
  11. 基本型C:下落加速型(ドルコスト+加速度)
  12. おすすめの実装:段階増額+小さな一括を組み合わせる
  13. 具体的なルール設計(テンプレ):指数ETFを想定
  14. ステップ1:通常積立額を決める(平時のベース)
  15. ステップ2:参照する“直近高値”の定義を固定する
  16. ステップ3:増額の階段を3段にする(シンプルさ優先)
  17. ステップ4:待機資金の上限を決め、枯渇を防ぐ
  18. ステップ5:“底を当てない”ための一括ルールは小さく
  19. ステップ6:回復局面の取り扱い(増額をいつ戻すか)
  20. このルールが“効く”局面と、効きにくい局面
  21. 効く局面:急落→反発(V字、W字の回復)
  22. 効きにくい局面:長期の停滞・緩やかな下落(じり安)
  23. 資産クラス別の“増額ルールの癖”
  24. 株式(指数):最もルール化しやすい
  25. 債券:暴落より“金利上昇局面”の設計が重要
  26. FX:増額は“レバレッジ”とセットで危険化する
  27. 暗号資産:閾値を深く、投入速度を遅く
  28. “積立増額ルール”を破壊する3つの地雷
  29. 地雷1:待機資金の“目的外流用”
  30. 地雷2:増額ルールを“裁量で止める”
  31. 地雷3:対象資産の選定ミス(個別株での事故)
  32. 運用を自動化する:月1回の“判定日”だけで回す
  33. 具体例:-28%の暴落が来たとき、どう動くか
  34. 増額ルールを「新NISA」でどう使うか
  35. 増額ルールの“成績”を自分で検証する方法(簡易版)
  36. ルールを“あなた専用”に調整するためのチェックリスト
  37. まとめ:勝ち筋は「暴落に備えた“仕組み”」で作る

なぜ「暴落時の増額ルール」が必要なのか

積立投資の本質は、時間分散による平均取得単価の平準化です。しかし、暴落局面では価格の変動幅が大きく、通常時と同じ金額で積み立てると「安値の恩恵」を取りこぼします。逆に、暴落時に買い増しできれば平均取得単価が大きく下がり、回復局面でのリターンが加速します。

ただし、暴落時の買い増しは“気合い”でやると失敗します。理由は単純で、暴落中は恐怖が最大化し、意思決定の質が下がるからです。だからこそ「事前に決めた条件で、淡々と増額する」設計が必要になります。

最初に決めるべき前提:増額は「生活防衛」とセット

暴落時の増額ルールは、余剰資金の範囲でしか成立しません。ここを間違えると、相場がさらに下げたときに生活費や固定費を削る羽目になり、最悪のタイミングで売却を強いられます。

最低限の前提は次の2つです。

(1)生活防衛資金:最低でも生活費6か月分(可能なら12か月分)を現金で確保
(2)増額用の「待機資金」を別枠で管理(生活防衛資金と混ぜない)

増額ルールは「待機資金」を市場に段階投入するための装置です。生活防衛資金まで投入する設計は、投資ではなくギャンブルに近づきます。

暴落を“定義”しないと、ルールは機能しない

「暴落」といっても、人によって感覚が違います。5%下落で不安になる人もいれば、20%下落しても平常心の人もいます。ルールを作るなら、暴落を数値で定義します。

初心者が使いやすい定義は次の3系統です。

暴落定義①:直近高値からの下落率(ドローダウン)

最も直感的で、チャートを見れば分かります。例えば「S&P500が直近高値から10%下落したら増額開始、20%でさらに増額」などです。個別株よりも指数・ETFに向いています。

ドローダウンの利点は、ニュースや経済指標の解釈が不要なことです。欠点は、上昇トレンドの途中の調整(いわゆる押し目)でもトリガーが引かれる可能性がある点です。これを許容する設計にしておくのがコツです。

暴落定義②:移動平均線からの乖離率

例えば「200日移動平均線から-10%乖離したら増額」など、トレンドの中で割高・割安を簡易判定します。特に指数は長期では200日線が“地合い”の目安として機能しやすい傾向があります。

欠点は、移動平均線は遅行指標なので、急落の初動ではトリガーが遅れます。逆に、急落後の戻り局面でまだ乖離が大きい状態が続きやすく、分割投入を続けやすいというメリットにもなります。

暴落定義③:ボラティリティ(恐怖)の上昇

株式ならVIX、FXならオプションのインプライドボラティリティなど、“保険料”の高騰を暴落の定義に使えます。これは中級者向けですが、恐怖が増す局面を数値化できます。

初心者が採用するなら「VIXが一定水準を超えたら増額」という単純化が現実的です。ただし、VIXは米国株中心の指標であり、日本株や他資産に完全には一致しません。

初心者向けの結論:まずは「ドローダウン型」が最も堅牢

運用のしやすさ、再現性、判断の単純さの観点で、初心者にはドローダウン型を推奨します。本記事はドローダウン型を軸に、必要に応じて移動平均線を“補助フィルター”として組み合わせます。

積立増額ルールの設計:3つの基本型

暴落時の増額は、大きく3つの型に分けられます。どれも正解になり得ますが、資金量とメンタル耐性で適性が変わります。

基本型A:段階増額(ステップアップ)

下落率に応じて積立額を段階的に引き上げる方法です。例として次のような設計ができます。

-10%:通常積立の1.5倍
-20%:通常積立の2.5倍
-30%:通常積立の4倍

この型の強みは「増額が自動化しやすい」ことです。弱みは、下落が浅いまま反発すると、増額の恩恵が限定的になる点です。ただ、浅い下落はそもそもリスクが小さいので、これは欠点というより設計思想の違いです。

基本型B:追加一括(トリガー・バイ)

特定の下落率に達したら、待機資金の一定割合を一括投入します。例:

-15%到達で待機資金の25%を一括
-25%到達でさらに25%
-35%到達でさらに25%
残り25%は回復確認後に投入

この型は「暴落の初期~中盤でしっかり買える」一方、連続下落で心理的負担が大きくなります。特に-15%の時点で入れると、その後-30%まで落ちたときに後悔が出やすいので、最初から“まだ下がる前提”で分割設計します。

基本型C:下落加速型(ドルコスト+加速度)

下落が深くなるほど投入速度を上げる方法です。例えば「下落率の二乗に比例して増額」など、数学的に加速度をつけます。ただし複雑になるので、初心者には“段階増額”を拡張する形で表現するのが現実的です。

おすすめの実装:段階増額+小さな一括を組み合わせる

初心者にとって最もバランスが良いのは、毎月(または毎週)の自動積立を段階増額しつつ、大きな下落でだけ小さな一括を追加するハイブリッドです。理由は、暴落初期の「底を当てたい欲」を抑えつつ、深い局面で取得単価をしっかり下げられるからです。

具体的なルール設計(テンプレ):指数ETFを想定

ここからは、実際にそのまま使えるテンプレを提示します。対象は「全世界株式・米国株式などのインデックスファンド/ETF」を想定します。個別株は固有リスクが大きく、同じルールだと事故りやすいので、まずは指数で作ります。

ステップ1:通常積立額を決める(平時のベース)

例として、毎月5万円の積立をベースとします。この金額は「相場がどうであれ継続できる額」にします。ここがブレると、ルールは崩壊します。

ステップ2:参照する“直近高値”の定義を固定する

ドローダウン型で最大の落とし穴は「高値の取り方が人によって変わる」ことです。ここは機械的にします。

初心者向けの定義例:

直近高値=過去12か月の最高値

これなら、月に1回だけ更新しても十分運用できます。日々の細かい高値更新に振り回されません。

ステップ3:増額の階段を3段にする(シンプルさ優先)

階段を増やすほど最適化できそうに見えますが、運用は難しくなります。まずは3段です。

ルール例(毎月積立)
・ドローダウン0%〜-9%:5万円(通常)
・-10%〜-19%:7.5万円(1.5倍)
・-20%〜-29%:12.5万円(2.5倍)
・-30%以下:20万円(4倍)

ポイントは、最大でも“4倍”程度に抑えることです。10倍などの極端な増額は、下落が長期化した場合に資金が先に尽きます。

ステップ4:待機資金の上限を決め、枯渇を防ぐ

増額ルールは、待機資金が尽きた瞬間に機能停止します。そこで「この暴落局面で使ってよい増額予算」を先に決めます。

例:待機資金は120万円。これは「通常積立(5万円/月)とは別枠」です。
増額で追加される分は、例えば-10%で+2.5万円、-20%で+7.5万円、-30%で+15万円です。
-30%が6か月続くと増額分だけで90万円消費します。こういう計算をざっくりでもしておくと、設計が破綻しません。

ステップ5:“底を当てない”ための一括ルールは小さく

一括投入は気持ち良い反面、外すと痛いです。そこで「当てにいかない」設計にします。

一括ルール例
・ドローダウンが-25%に初めて到達した週:待機資金の10%を一括(12万円)
・-35%に初めて到達した週:さらに10%を一括(12万円)

“初めて到達したときだけ”にするのがポイントです。何度も同じ水準で出し入れしないので、迷いが減ります。

ステップ6:回復局面の取り扱い(増額をいつ戻すか)

暴落が終わったあと、増額を続けるべきか問題が出ます。ここもルール化します。

初心者向けには次のどちらかが扱いやすいです。

(案1)ドローダウンが-10%より上に戻ったら通常積立に戻す
(案2)価格が200日移動平均線を上回ったら通常積立に戻す

案1は単純、案2は「回復確認」を入れられます。どちらでも良いですが、迷うなら案1で十分です。

このルールが“効く”局面と、効きにくい局面

万能なルールはありません。効く局面・効きにくい局面を理解しておくと、途中で捨てずに済みます。

効く局面:急落→反発(V字、W字の回復)

買い増しした分が平均取得単価を大きく引き下げ、回復でリターンが上振れします。特に指数は、危機後に政策対応が入りやすく、結果として回復しやすい傾向があります(もちろん未来を保証するものではありません)。

効きにくい局面:長期の停滞・緩やかな下落(じり安)

下落がだらだら続くと、増額が長期化して待機資金が減りやすいです。この局面に耐えるには、最大増額倍率を抑える、階段を広めに取る(-10/-25/-40など)など、設計側で防御します。

資産クラス別の“増額ルールの癖”

同じルールでも、株式・債券・FX・暗号資産で癖が違います。初心者はまず「指数株式」で型を作り、それを他に展開するのが安全です。

株式(指数):最もルール化しやすい

指数は分散が効き、ゼロになる確率が低いので、ドローダウン型の増額が機能しやすいです。つみたてNISAや新NISAの積立枠とも相性が良いです。注意点は、為替ヘッジ有無や投資地域でボラが変わることです。

債券:暴落より“金利上昇局面”の設計が重要

債券は株式ほど急落しない代わりに、金利上昇でじわじわ下げることがあります。ドローダウンの閾値を株式と同じにするとトリガーが引かれないので、-3%/-6%/-10%など小さめに設定します。

FX:増額は“レバレッジ”とセットで危険化する

FXでの増額は、実質的にナンピンに近づきます。レバレッジが絡むと破綻しやすいので、初心者はFXで増額ルールを作らない方が良いです。どうしてもやるなら、現物相当(実質レバ1倍)での外貨積立に限定し、ロスカットが発生しない設計にします。

暗号資産:閾値を深く、投入速度を遅く

暗号資産は株式よりドローダウンが深くなりやすく、-50%が日常茶飯事です。株式の-10/-20/-30をそのまま当てはめると、常に最大増額になって待機資金が枯渇します。暗号資産なら-30/-50/-70など、閾値を深く設定し、投入は分割を徹底します。

“積立増額ルール”を破壊する3つの地雷

ここは重要です。多くの人はルールを作っても、次の地雷で吹き飛びます。

地雷1:待機資金の“目的外流用”

相場が上がっているときに「機会損失が怖い」と感じ、待機資金を平時に投入してしまうケースです。すると本当に暴落が来たときに弾がありません。待機資金は、暴落時のための保険です。保険を解約して安心は得られません。

地雷2:増額ルールを“裁量で止める”

暴落中は「まだ下がる」と感じます。そこで増額を止めると、平均取得単価を下げる機会を捨てます。逆に、反発してから「底だった」と気づき、慌てて買うと高値掴みになります。裁量を入れるなら、最初から裁量枠を作ります。例えば「増額の上限を超えない範囲で、追加はしない」と決める方が強いです。

地雷3:対象資産の選定ミス(個別株での事故)

個別株は“戻らない暴落”があり得ます。事業構造の崩壊、規制、粉飾、希薄化などです。指数で機能したルールを個別株に適用すると、「割安に見えるナンピン地獄」になりかねません。初心者はまず指数で完成させ、その後に個別株へ展開する場合も、倒産確率やビジネスの耐久度を別途チェックする必要があります。

運用を自動化する:月1回の“判定日”だけで回す

毎日チャートを見ると、ルールは揺らぎます。初心者は「判定日」を固定して、月1回だけ条件チェックするのが強いです。たとえば毎月25日に、過去12か月高値と現在値を比較し、ドローダウンを計算して翌月の積立額を決めます。

この“低頻度化”のメリットは、ノイズを避けて継続しやすいことです。暴落時でも、月1回なら十分に増額の効果が出ます(むしろ頻繁に判定すると、同じ水準で増額しすぎることがあります)。

具体例:-28%の暴落が来たとき、どう動くか

ここでは、先ほどのテンプレ(通常5万円、-10%で7.5万円、-20%で12.5万円、-30%で20万円)で、実際の心理と行動をシミュレーションします。

あなたが普段どおり5万円積み立てているとします。相場が急落し、ニュースは悲観一色です。

・ドローダウンが-12%に到達:翌月の積立は7.5万円に変更。ここで怖くても、変更は“数字に従うだけ”です。
・さらに下げて-22%:翌月は12.5万円。恐怖は増えますが、ルールに従うと平均取得単価が下がり始めます。
・-28%で止まって反発:最大増額(20万円)まで行かずに済みます。それでも、通常より多く買えているので、回復時の効きが出ます。

ここで重要なのは、反発したときに「もっと買えばよかった」と思っても、追いかけないことです。増額は“恐怖のときだけ”という設計思想を守ります。

増額ルールを「新NISA」でどう使うか

新NISAは枠管理が必要です。増額ルールをそのまま積立設定に入れると、年間投資枠を早く使い切る可能性があります。ここでの考え方は次の通りです。

(1)つみたて枠は“平時のベース”として固定し、増額は成長投資枠で行う
(2)増額は枠を使い切らない範囲で、上限を決める

例えば、つみたて枠で毎月一定額を積立し、暴落時の一括投入は成長投資枠でETFを買う、という分業がシンプルです。こうすると、平時の自動化と暴落時の機械的投入が両立します。

増額ルールの“成績”を自分で検証する方法(簡易版)

ルールは作って終わりではありません。あなたの収入・生活コスト・リスク許容度に合うかを、簡易に検証します。

初心者がやるべき検証は、精密なバックテストよりも「資金繰りの破綻が起きないか」です。具体的には、過去の大きな下落を想定し、増額が何か月続いたら待機資金が尽きるかを計算します。相場は未来に同じ形では来ませんが、資金枯渇という失敗パターンは普遍です。

ルールを“あなた専用”に調整するためのチェックリスト

最後に、調整ポイントを整理します。ここを触るだけで、あなたに合うルールになります。

1)通常積立額:暴落でも継続できるか。
2)直近高値の期間:6か月/12か月/24か月で感度が変わる。
3)閾値:-10/-20/-30を基準に、対象資産の値動きで調整。
4)最大倍率:資金枯渇を防ぐ。初心者は4倍以内。
5)待機資金の規模:増額が半年〜1年続いても耐える設計。
6)回復判定:-10%回復か、200日線回復か。シンプル優先。
7)一括投入の扱い:当てにいかず、10%ずつなど小さく。

まとめ:勝ち筋は「暴落に備えた“仕組み”」で作る

暴落は怖いですが、投資家にとっては“価格が割れる時間帯”でもあります。そこで成果を出す人は、相場観が鋭い人ではなく、暴落でも止まらない仕組みを持っている人です。

本記事のテンプレは、あなたが今日から実行できる形に落とし込んであります。まずは指数で、月1回判定のシンプル運用から始めてください。ルールは、守れる形で作ったときにだけ、あなたの武器になります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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