モメンタム投資徹底解説:上昇トレンドに素直に乗るシンプル戦略

投資手法

本記事では、近年あらためて注目されている「モメンタム投資」について、投資初心者の方にも分かりやすいように基礎から丁寧に解説します。特定の銘柄や売買を推奨するものではなく、あくまで一般的な考え方や手法の一例としてご覧ください。

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  1. モメンタム投資とは何か
  2. なぜモメンタムは生まれるのか
    1. 行動ファイナンス的な要因
    2. ファンダメンタルズの反映の遅れ
    3. 機関投資家の運用スタイル
  3. モメンタム投資の基本的な考え方
    1. 1. 時間軸を決める
    2. 2. 「相対的な強さ」を見る
    3. 3. トレンドに逆らわない
  4. モメンタム銘柄の具体的な探し方
    1. ステップ1:対象ユニバースを決める
    2. ステップ2:一定期間の騰落率でランキング
    3. ステップ3:出来高や流動性も確認する
    4. ステップ4:チャートでトレンドを確認する
  5. 時間軸別モメンタム戦略のイメージ
    1. 1. 数日〜数週間の短期モメンタム
    2. 2. 数週間〜数か月のスイングモメンタム
    3. 3. 半年〜1年以上の中長期モメンタム
  6. テクニカル指標を使ったモメンタム活用
    1. 移動平均線
    2. RSIなどのオシレーター系指標
    3. 出来高の増加
  7. シンプルなモメンタム戦略の例
    1. ルール例:中期モメンタム株のポートフォリオ
  8. モメンタム投資のリスクと注意点
    1. 急落局面でのドローダウン
    2. 高値掴みとその後の反転
    3. 売買回転が増えやすい
  9. ファンダメンタルズとの組み合わせ
  10. 初心者が陥りやすい失敗パターン
    1. 1. ルールを決めずに感覚で追いかける
    2. 2. 損切りができず、モメンタム戦略が「塩漬け戦略」に変わる
    3. 3. ポートフォリオが特定のテーマ・セクターに偏りすぎる
  11. モメンタム投資を始めるためのステップ
  12. まとめ

モメンタム投資とは何か

モメンタム投資とは、「最近上昇している銘柄は、しばらく上昇し続けやすい」「最近下落している銘柄は、しばらく下落し続けやすい」という傾向を利用する投資手法です。物理学の運動量(モメンタム)と同じように、一度動き始めたトレンドはすぐには止まりにくい、という発想に基づいています。

もう少し噛み砕くと、「強い株を買って、弱い株を買わない(あるいは避ける)」という非常にシンプルな考え方です。具体的には、一定期間で株価の上昇率が高い銘柄をスクリーニングし、それらをポートフォリオに組み入れていきます。

なぜモメンタムは生まれるのか

モメンタムが生じる背景には、人間の心理や市場の構造があります。代表的な要因をいくつか見ていきます。

行動ファイナンス的な要因

投資家の心理には「追随行動」や「群集心理」があります。株価が上がり始めると、ニュースやSNSで話題になり、後から参入する投資家が増えることで、さらに上昇が継続しやすくなります。逆に下がり始めた銘柄は、悪いニュースが取り上げられ、売りが売りを呼ぶ展開になりがちです。

ファンダメンタルズの反映の遅れ

企業業績の改善や新製品の成功など、ファンダメンタルズの変化は一度に株価へ完全反映されるとは限りません。最初は一部の投資家だけが気付き、その後に機関投資家や個人投資家が徐々に追随することで、トレンドがある程度の期間続くことがあります。

機関投資家の運用スタイル

機関投資家は、相対評価でパフォーマンスを測られることが多く、「指数や他ファンドより劣後したくない」というインセンティブがあります。そのため、既に上昇している人気銘柄に資金が流入し続け、結果としてモメンタムが強化される場合があります。

モメンタム投資の基本的な考え方

モメンタム投資は、一見シンプルですが、ルールを決めずに感覚で行うと「高値掴みで損をする」結果になりかねません。基本となる考え方を整理します。

1. 時間軸を決める

モメンタムは、どの期間の値動きを見るかで性質が変わります。例えば:

  • 短期モメンタム:過去1週間〜1か月の上昇率に注目
  • 中期モメンタム:過去3か月〜6か月の上昇率に注目
  • 長期モメンタム:過去12か月前後の上昇率に注目

一般的な個人投資家のスイング〜ポジショントレードであれば、3か月〜12か月程度の中〜長期モメンタムを見るケースが多いです。

2. 「相対的な強さ」を見る

モメンタム投資では、絶対的な株価水準よりも「他の銘柄と比べてどれだけ強いか」を重視します。市場全体が上がっている局面では、多くの銘柄が上昇しますが、その中でも特に上昇率の高い銘柄を選ぶことがポイントです。

3. トレンドに逆らわない

モメンタム投資は、トレンドフォロー(順張り)の一種です。下落トレンドの銘柄に「そろそろ反発するだろう」と逆張りするのではなく、上昇トレンドに素直に乗るという発想が重要です。

モメンタム銘柄の具体的な探し方

ここからは、少し具体的な手順をイメージしていきます。実際の銘柄コードではなく、仮想の銘柄A〜Dを用いて説明します。

ステップ1:対象ユニバースを決める

まずは、どの市場・どの銘柄群から候補を探すかを決めます。例えば:

  • 東証プライムの個別株だけを対象にする
  • 日米の大型株ETFだけを対象にする
  • 暗号資産の主要銘柄(BTC、ETHなど)に絞る

対象を絞ることで、スクリーニングや管理がしやすくなります。

ステップ2:一定期間の騰落率でランキング

次に、例えば「過去6か月の騰落率」で全銘柄を並べ、上位20銘柄を抽出する、といった形でランキングを作ります。仮に、銘柄A〜Dの6か月騰落率が次のようだとします。

  • 銘柄A:+60%
  • 銘柄B:+40%
  • 銘柄C:+15%
  • 銘柄D:-10%

この場合、モメンタムが強いのはAとBであり、Cは中立、Dは弱い銘柄と考えられます。

ステップ3:出来高や流動性も確認する

いくら上昇率が高くても、出来高が極端に少ない銘柄は、実際に売買しづらく、スプレッドも広くなりがちです。モメンタム戦略では、一定以上の出来高・売買代金がある銘柄を条件に加えるのが現実的です。

ステップ4:チャートでトレンドを確認する

スクリーニングで候補を絞ったら、チャートを開き、移動平均線などでトレンドを確認します。例えば、株価が25日移動平均線と75日移動平均線の両方より上に位置し、かつ右肩上がりになっていれば、モメンタムが継続していると判断しやすくなります。

時間軸別モメンタム戦略のイメージ

モメンタム投資は、時間軸によって運用イメージがかなり変わります。代表的な3パターンを整理します。

1. 数日〜数週間の短期モメンタム

決算発表や材料ニュースの後で急騰した銘柄に、数日〜数週間だけ乗るイメージです。値動きが激しいため、損切りルールを厳格に決めておく必要があります。短期チャートでは、5日移動平均線や出来高の急増などを参考にします。

2. 数週間〜数か月のスイングモメンタム

中期トレンドに乗るスタイルで、個人投資家にとって現実的な選択肢です。例えば、過去3か月騰落率の上位銘柄を毎月見直し、トレンドが続く限り保有し、崩れたら入れ替える、といった運用が考えられます。

3. 半年〜1年以上の中長期モメンタム

テーマ性のある成長分野や、業績が継続的に伸びている企業に中長期で乗るスタイルです。ファンダメンタルズ分析と組み合わせることで、「業績も良く、株価トレンドも強い」銘柄に集中投資することも可能です。

テクニカル指標を使ったモメンタム活用

モメンタム投資は、単純な騰落率だけでなく、テクニカル指標と組み合わせることで、エントリーとエグジットのタイミングを整理しやすくなります。

移動平均線

代表的なのが移動平均線です。例えば、次のようなルールが考えられます。

  • 株価が25日移動平均線と75日移動平均線の両方より上にある銘柄だけを候補にする
  • 25日移動平均線が75日移動平均線を上抜ける「ゴールデンクロス」をエントリーのサインとする
  • 株価が25日移動平均線を明確に割り込んだら、一旦利益確定や損切りを検討する

RSIなどのオシレーター系指標

RSIのようなオシレーターは、買われ過ぎ・売られ過ぎを測るための指標ですが、モメンタム戦略でも活用できます。例えば「強い銘柄の押し目」を狙う際、RSIが一時的に下がったタイミングをエントリーポイントとする、といった使い方があります。

出来高の増加

価格の上昇と同時に出来高が増えている場合、モメンタムが本物である可能性が高まります。逆に、出来高を伴わない上昇は、一時的な値動きに過ぎない可能性もあり、警戒が必要です。

シンプルなモメンタム戦略の例

ここでは、あくまで一例として、個人投資家がイメージしやすいシンプルなルールを紹介します。

ルール例:中期モメンタム株のポートフォリオ

  • 対象:東証プライムのうち、一定以上の売買代金がある銘柄
  • 月に1回、過去6か月の騰落率で全銘柄をランキング
  • 上位20銘柄のうち、チャートが上昇トレンド(25日線と75日線の両方より株価が上)にある銘柄だけを選ぶ
  • 選ばれた銘柄を均等比率で保有する
  • 翌月の見直し時に、条件を満たさなくなった銘柄は売却し、新たに条件を満たした銘柄を組み入れる

このようなルールベースの運用にすることで、「なんとなく強そうだから買う」「ニュースで話題だから買う」といった感覚的な判断を減らすことができます。

モメンタム投資のリスクと注意点

モメンタム投資には、他の手法とは異なるリスクも存在します。代表的な注意点を整理します。

急落局面でのドローダウン

モメンタム銘柄は「上がっている銘柄」に集中するため、相場全体が急落する局面では、ポートフォリオ全体が大きく下落する可能性があります。市場全体のリスクを抑えるために、現金ポジションを一定割合残したり、複数の資産クラスに分散したりする工夫が必要です。

高値掴みとその後の反転

モメンタムに乗るということは、ある程度「高くなってから買う」ことを意味します。そのため、トレンドが終わったタイミングで反転に巻き込まれるリスクがあります。移動平均線割れやトレンドライン割れなど、自分なりの「撤退基準」を事前に決めておくことが大切です。

売買回転が増えやすい

モメンタム戦略は、銘柄の入れ替え頻度が高くなりがちです。その結果、売買手数料やスプレッドコスト、税金など、取引コストの影響を受けやすくなります。取引コストが比較的低い証券会社や商品を選ぶことも重要なポイントです。

ファンダメンタルズとの組み合わせ

モメンタム投資はテクニカル寄りの手法ですが、ファンダメンタルズを全く無視する必要はありません。むしろ、両方を組み合わせることで、極端なリスクを避けやすくなります。

  • 業績が黒字で、売上や利益が増加傾向にある銘柄の中から、株価モメンタムの強い銘柄を選ぶ
  • 財務体質(自己資本比率や借入金の水準など)が極端に悪い銘柄は除外する
  • 一時的な思惑だけで急騰している銘柄は、候補から外す

このようにフィルターを組み合わせることで、「地合い次第ですぐに崩れてしまう脆いモメンタム銘柄」を避けることが期待できます。

初心者が陥りやすい失敗パターン

モメンタム投資はシンプルな概念ですが、実際にやってみると心理的なハードルが多く存在します。よくある失敗パターンを整理します。

1. ルールを決めずに感覚で追いかける

「連日ストップ高だから」「SNSで話題だから」という理由だけで飛びつくと、高値掴みになりやすく、急落に耐えられず大きな損失につながることがあります。必ず、エントリーとエグジットのルールを事前に決めておくことが重要です。

2. 損切りができず、モメンタム戦略が「塩漬け戦略」に変わる

モメンタム戦略はトレンドフォローである以上、「トレンドが崩れたら手仕舞う」のが基本です。しかし、損失を認めたくない心理から、下落している銘柄を持ち続けてしまうと、結果的にモメンタム戦略とは異なるリスクを抱えることになります。

3. ポートフォリオが特定のテーマ・セクターに偏りすぎる

強いモメンタムが出ているのが、たまたま同じ業種やテーマ株ばかり、ということもあります。そのまま集中投資すると、そのセクター固有のリスクに晒されるため、セクター分散を意識した銘柄選定も検討すべきです。

モメンタム投資を始めるためのステップ

最後に、これからモメンタム投資を取り入れてみたい初心者の方に向けて、実際のステップを整理します。

  • ① 自分の時間軸(短期〜中長期)と、どの市場を対象にするかを決める
  • ② 過去の騰落率や移動平均線など、モメンタムを測る指標を1〜2個に絞る
  • ③ シンプルなルール(例:毎月1回見直し、上位◯銘柄を均等保有など)を書き出す
  • ④ 少額でテスト運用し、感情に流されずルール通りに動けるか確認する
  • ⑤ 実際の結果を記録し、ルールを見直しながら徐々にブラッシュアップする

いきなり大きな資金で始めるのではなく、小さく試しながら、自分の性格やリスク許容度に合ったモメンタム戦略に調整していくことが大切です。

まとめ

モメンタム投資は、「強いトレンドに素直に乗る」というシンプルな発想に基づいた手法です。人間の心理や市場構造の歪みが背景にあるため、学術研究でも一定の効果が報告されてきました。ただし、急落局面でのドローダウンや高値掴みのリスクもあるため、損切りルールや分散投資などのリスク管理は欠かせません。

まずは、自分なりのルールを紙に書き出し、少額からテストしながら、相性の良いモメンタム戦略を見つけていくことが重要です。本記事の内容が、その第一歩を踏み出す際のヒントになれば幸いです。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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