連続陰線が続いた銘柄は、見た目ほど「売りが終わっていない」こともあれば、逆に“もう売れる人がいない”状態に近づいていることもあります。ここで役に立つのが十字線(寄り付きと引けがほぼ同値)です。十字線は「買いと売りが拮抗した」サインですが、単体では弱い。重要なのは、連続陰線という“疲労”の文脈の中で出現した十字線を、翌日の値動き・出来高・板の反応とセットで評価することです。
本稿は、初心者でも実行可能な粒度で、連続陰線→十字線→反転を「再現性のある手順」に落とし込みます。派手なテクニックではなく、負けを小さく、勝ちを伸ばすための設計に寄せています。
- 1. パターンの正体:十字線は“底”ではなく“転換候補”
- 2. 前提条件:連続陰線の意味を分解する
- 3. スクリーニング:初心者向けの“機械的な候補作り”
- 4. エントリー設計:十字線の“高値・安値”を使って分岐点を取る
- 5. 利確設計:どこで“売りが湧くか”を先に決める
- 6. 失敗パターン:十字線が出ても負ける典型例
- 7. ケーススタディ(架空例):連続6陰線→十字線→反転の手順
- 8. 実務で効く“上位足×下位足”の合わせ技
- 9. ルール化テンプレ:翌朝やることを固定する
- 10. まとめ:十字線は“境界線”、勝敗は設計で決まる
- 11. ロット管理:勝率より“破綻しない”設計が先
- 12. 検証のコツ:チャートを眺めるだけでは精度が上がらない
- 13. 併用フィルター:指数・セクターの地合いで“成功率”は変わる
- 14. オーバーナイト運用の注意:反転狙いは“持ち越しリスク”が増える
- 15. 執行の実務:成行で飛びつかない
1. パターンの正体:十字線は“底”ではなく“転換候補”
十字線は、当日の値幅はそれなりにあるのに、最終的に始値付近へ戻る形になりやすいのが特徴です。連続陰線の途中で出ると、次の2パターンに分かれます。
(A)売りが枯れて拮抗→反転へ移行:投げ売りの最終局面。翌日に高値更新(十字線の高値を上抜く)で上方向に走りやすい。
(B)単なる踊り場→下落継続:下げ途中の小休止。翌日に安値更新(十字線の安値を割る)で下方向に加速しやすい。
つまり、十字線は「底を当てる道具」ではありません。分岐点を作る道具です。勝ちやすいのは、分岐点を“ルールで踏む”側です。
2. 前提条件:連続陰線の意味を分解する
「連続陰線」と言っても中身は違います。ここを誤ると、十字線が出てもリバウンドしません。
2-1. 悪い連続陰線(触ると危険)
・材料の悪化が継続(業績下方修正の追加、行政処分、会計問題など)で“売りの理由”が残っている
・出来高が増えながら下落し続ける(下げのたびに売りが湧く)
・日足で下値支持が見当たらない(過去の窓、出来高帯、節目が遠い)
このタイプは、十字線が出ても単なる“途中の息継ぎ”になりやすい。
2-2. 良い連続陰線(狙う価値がある)
・下落理由が需給要因(指数リバランス、決算前のポジション調整、信用の投げ、イベント通過など)
・下落の後半で出来高が伸びなくなる(売りが細る)
・下ヒゲが増える、日中に買い戻しが入る
狙うのはこのタイプです。十字線=均衡が「売り枯れ」の上に乗ると、反転の確率が上がります。
3. スクリーニング:初心者向けの“機械的な候補作り”
銘柄選びで9割決まります。まずは条件を固定します。
3-1. まずは形の条件(チャート)
・日足で3〜7本の連続陰線(短期で売られた状態)
・直近の陰線の実体が徐々に小さくなる、または下ヒゲが増える(勢いの減衰)
・当日(十字線の日)に寄り付きと引けが近い(実体が小さい)
・十字線の安値が、過去に意識されやすい価格帯(例:直近安値、出来高帯、窓、ラウンドナンバー)と重なる
3-2. 次に中身の条件(出来高)
出来高は“売りの体力”を見ます。理想は次のどちらかです。
(理想1)クライマックス型:連続陰線の終盤で一度だけ出来高が突出し、十字線で落ち着く。投げ売りの最終波。
(理想2)枯れ型:下落が続くのに出来高が伸びない。売り手が尽き始める。
逆に、十字線の日も出来高が膨らみ続ける場合は「まだ揉めている」可能性が高く、反転は遅れます。
3-3. 需給の補助線(信用・貸借)
初心者が見落としがちなのが需給です。日足の形が良くても、需給が逆だと反転しません。
・信用買い残が急増しているのに下げている:含み損の買いが積み上がり、戻り売りが重くなる
・貸借で売り長(貸借倍率が低い)になりつつある:踏み上げ余地が生まれ、反転時の加速要因になりやすい
・逆日歩が付き始める:売り方コストが上がり、買い戻しが早まることがある
ただし、需給は万能ではありません。チャートで方向が示された後に、加速材料として使うのが安全です。
4. エントリー設計:十字線の“高値・安値”を使って分岐点を取る
初心者が負けやすいのは、「底っぽいから買う」と曖昧に入ることです。十字線は分岐点なので、境界線を決めてから入るのが本筋です。
4-1. 王道:翌日に“十字線高値ブレイク”で買う
ルールはシンプルです。
・前日:連続陰線の後に十字線が出現
・当日:寄り後に前日十字線の高値を上抜く(できれば5分足で陽線確定)
・エントリー:高値更新のタイミングで小さく入る(成行より指値・逆指値を推奨)
この方法の強みは、“反転したことを確認してから入る”点です。底を当てに行かないので、勝率が上がります。
4-2. 逆張り寄り付きは“条件付き”でのみ
寄り付きから買うのは難易度が上がります。やるなら条件を絞ります。
・寄りが前日終値付近か、ギャップダウンしてもすぐ戻す(寄り天ではない)
・寄り後に出来高が急増しないのに下げない(売りが出ない)
・板で下に厚い買いが出て、約定が下に走らない
これを満たさないなら、素直にブレイク待ちが安全です。
4-3. 損切りは“十字線安値”に置く(ただし幅を許容)
損切りは、十字線の安値が論理的です。そこを割ったら(B)下落継続のシナリオに移るからです。
ただし、板が薄い銘柄やボラが高い銘柄は、安値を一瞬割って戻す“ヒゲ狩り”が起きます。そこで、次の工夫が有効です。
・損切りを安値−α(例:0.3〜0.8%程度)に置く
・もしくは、十字線安値割れの5分足終値で撤退(瞬間的な割れに反応しない)
5. 利確設計:どこで“売りが湧くか”を先に決める
反転を狙うトレードは「どこまで戻るか」を現実的に見る必要があります。青天井ではありません。連続陰線の下落を、短期で全戻しするケースは少数です。
5-1. まずは“最初の戻り売り帯”を狙う
目標は次のどれかになります。
・直近の陰線群の最初の大きな陰線の実体下限(戻り売りが出やすい)
・日足の5日線/10日線付近(短期勢が利確しやすい)
・出来高帯の上限(過去に売買が集中した価格)
ここで半分利確し、残りはトレーリング(高値更新ごとに逆指値を上げる)にすると、初心者でも運用しやすいです。
5-2. “売り方の買い戻し”が乗ると伸びる
貸借で売り長、あるいは短期の空売りが増えていると、反転局面で踏み上げが起きやすい。こうなると、目標は一段上(例:25日線、直近の窓埋め)まで狙えます。
6. 失敗パターン:十字線が出ても負ける典型例
ここが一番重要です。勝ちパターンより、負けパターンを避けたほうが期待値が上がります。
6-1. “悪材料の連続”に逆張りしている
ニュースが連続して悪化する局面は、テクニカルが機能しにくい。十字線が出ても、次の悪材料で簡単に割れます。
6-2. 出来高が増え続ける下落(売りの勢いが残る)
売りがまだ元気です。十字線は単なる踊り場になり、翌日ギャップダウンから安値更新しやすい。
6-3. “銘柄の格”とボラを無視している
低位株・超小型・材料株は、十字線が出ても翌日にストップ安/高のような動きがあり得ます。初心者はまず、流動性(出来高)と板の厚みを優先してください。
7. ケーススタディ(架空例):連続6陰線→十字線→反転の手順
ここでは、典型的な流れを数値で追います(架空の株価です)。
・6日連続陰線で 1,200円 → 980円まで下落(−18%)
・7日目:寄り 975円、安値 960円、高値 995円、引け 978円(十字線に近い)
・出来高:下落初期は増えたが、6日目以降は減少。7日目は平均並みに落ち着く
7-1. 翌日のシナリオ分岐
・上方向の条件:995円(十字線高値)を上抜く
・下方向の条件:960円(十字線安値)を割る
7-2. エントリーとリスク
・寄り後、5分足で 995円を上抜いて陽線確定 → 998円でエントリー
・損切り:960円−α(例えば955円)に逆指値(リスク約−4.3%)
この時点で、「リスクが大きい」と感じるなら、ロットを落とすのが正解です。初心者は、リスクを固定してロットで調整する癖を付けたほうが生存率が上がります。
7-3. 利確の段取り
・第一利確:1,030円(直近の大陰線実体下限)で半分利確
・残り:高値更新ごとに逆指値を切り上げ、1,060円付近(5日線近辺)で回収
結果的に、勝った理由は「十字線だから」ではなく、分岐点を跨いだ方向にだけ乗り、反対方向は即撤退できたことです。
8. 実務で効く“上位足×下位足”の合わせ技
日足だけで判断すると、翌日の寄りで振り回されます。そこで、下位足(5分足・15分足)で“機関の参加”を確認します。
8-1. 反転が本物のときの5分足
・押しても下がらず、安値が切り上がる
・出来高が入る局面で上に進み、出来高が減る局面で横ばい(買いが優勢)
・VWAP(5分足VWAPでも可)を上抜いた後、下に戻っても支えられる
8-2. 反転が偽物のときの5分足
・十字線高値を上抜くが、すぐ戻されてVWAPの下に沈む
・上で出来高が出るのに上値が伸びない(売りが待っている)
この場合、ブレイク買いでも早めに撤退した方が良い。“伸びないブレイク”は損失の種です。
9. ルール化テンプレ:翌朝やることを固定する
初心者は裁量で迷うほど負けます。朝の手順をテンプレ化してください。
(前日夜)候補選定:連続陰線3〜7本+十字線(実体小)+支持帯が近い+出来高が枯れる/クライマックス
(当日寄り)監視:寄りが極端に高い/安い場合は見送り。寄り直後の出来高とVWAP位置を確認
(エントリー):十字線高値ブレイクで小さく。ロットは損切り幅から逆算
(撤退):十字線安値割れ、またはVWAP割れで値動きが弱いなら切る
(利確):戻り売り帯で半分、残りはトレーリング
10. まとめ:十字線は“境界線”、勝敗は設計で決まる
連続陰線の十字線は、底打ちの雰囲気が出るため、つい飛びつきたくなります。しかし勝ちやすいのは、雰囲気ではなく境界線(高値・安値)を使って分岐点を踏むやり方です。
最後に、再現性の核だけ残します。
・十字線は単体で信じない。連続陰線の“疲労”とセットで評価する
・エントリーは十字線高値ブレイクが基本(確認してから乗る)
・撤退は十字線安値(割れたらシナリオが崩れる)
・利確は“戻り売り帯”で段階的に。欲張りすぎない
この型を一度身につけると、同じ発想で「連続陽線の天井」「窓埋め」「ランキング監視」などにも展開できます。まずは、毎日1〜2銘柄でよいので、検証→改善→再検証のサイクルを回してください。
11. ロット管理:勝率より“破綻しない”設計が先
短期逆張りで多い失敗は、当たったときの快感でロットが膨らみ、外した日に一撃で取り返せなくなることです。ここは数学で割り切ってください。
基本式:許容損失額 ÷ 損切り幅 = 建玉金額
例:1回のトレードで許容できる損失を「資金の0.5%」に固定し、資金が100万円なら許容損失は5,000円。損切り幅が4%なら、建玉金額は 5,000円 ÷ 0.04 = 125,000円(12.5万円)です。株価が1,000円なら125株。単元株なら100株でOK、という具合に落とし込みます。
このやり方の利点は、銘柄ごとのボラに関係なく“同じ痛さ”で負けられる点です。初心者が最短で上達するのは、手法より先に損失を一定化することです。
12. 検証のコツ:チャートを眺めるだけでは精度が上がらない
この手法は、感覚でやるとブレます。最低限、次の4項目だけ記録すると改善が速い。
・連続陰線の本数(3/4/5/6/7)
・十字線の位置(支持帯に近いか、下ヒゲの有無)
・出来高タイプ(クライマックス/枯れ/増え続け)
・翌日の判定(高値ブレイク成功/失敗、安値割れ)
これを20〜50件ほど溜めると、「自分が勝てる条件」と「触ると負ける条件」が見えるようになります。例えば、枯れ型は伸びは小さいが勝率が高い、クライマックス型は勝率は普通でも伸びが大きい、などです。手法は一枚岩ではなく、サブタイプの期待値で運用します。
13. 併用フィルター:指数・セクターの地合いで“成功率”は変わる
個別が底打ちしても、指数が崩れていると反転が伸びません。特に大型株主導の下落局面では、個別の反転が“薄い戻り”で終わりやすい。
・日経平均やTOPIXが前日安値を割っている、先物が弱い:利確は浅め、ブレイク後の伸びを過信しない
・セクター全体が売られている:個別の反転は“ショートカバー止まり”になりやすい
・指数が横ばい〜強い:反転が素直に伸びることが多い
初心者がやりやすいのは、「地合いが悪い日は、ブレイク買いだけに限定し、寄り付き逆張りは封印する」など、相場環境でルールを切り替えることです。
14. オーバーナイト運用の注意:反転狙いは“持ち越しリスク”が増える
十字線→反転は、翌日にギャップアップで始まることもあります。デイトレで完結するなら問題は小さいですが、スイングで持ち越す場合はリスクが跳ね上がります。
・悪材料の追撃(夜間のニュース、海外市場の急変)
・決算・適時開示・行政発表など、想定外のイベント
・PTSでの薄い板による価格の飛び(見た目の気配が当てにならない)
持ち越すなら、(A)建玉を半分に落とす、(B)想定ギャップ分の損失も許容できるロットにする、(C)翌朝の寄りで“逃げる手順”を決めておく、のいずれかが必須です。逆張りで致命傷を負うのは、ほぼ例外なく持ち越しの事故です。
15. 執行の実務:成行で飛びつかない
ブレイク買いでも、成行で入るとスリッページで期待値が崩れます。特に板が薄い銘柄は、ブレイク瞬間に上へ吸い上げられ、直後に押し戻されることが多い。
・逆指値(ストップ)を十字線高値+ティック数枚に置き、約定後はすぐに損切り位置を入れる
・約定が遅れて滑ったら、その分だけロットを落とす(同じ許容損失に戻す)
・ブレイク直後に伸びないなら、VWAP割れなどの条件で“早逃げ”する
「約定が悪い=ルール違反」ではありませんが、約定の悪さを放置すると、勝てる型でも負けます。執行は地味ですが、短期売買では最重要の一つです。


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