自社株買い(自己株式取得)の発表は、短期の需給を一気に変えます。特に「翌日」に強い値動きが出るケースが多い一方で、発表当日の上げ下げに振り回される人も多いです。そこで本記事では、翌日に限定し、さらに出来高が前日比2倍以上で寄り高値を更新した瞬間だけを狙う順張り戦略を、再現可能な形で徹底的に解剖します。
ポイントは「自社株買い=必ず上がる」という雑な話ではなく、翌日に需給が“継続”しているかを、板・歩み値・5分足・VWAPで機械的に判定して入ることです。初心者でも判断できるよう、条件を明確にしつつ、現場で起きる例外パターンも最初から織り込んで設計します。
- この戦略の狙い:材料ではなく「翌日の需給継続」を取る
- 対象銘柄の条件:翌日トレードに向く「自社株買い」のタイプ
- コア条件(エントリーの前提):翌日・出来高2倍・寄り高更新
- なぜ「寄り高更新」が効くのか:短期の売りを吸収した証拠
- 板・歩み値でのフィルター:ダマシを減らす3チェック
- エントリー手順:5分足で「ブレイク確定」を待つか、瞬間で叩くか
- 損切り設計:寄り高更新戦略の「負け方」を先に決める
- 利確設計:伸びるときは伸ばし、伸びないときは早く降りる
- 具体例:3つの典型パターンと、やること・やらないこと
- 銘柄選別:初心者が事故りやすい銘柄を避ける基準
- 当日のチェックリスト:寄り前〜寄り後15分でやることを固定する
- 検証方法:初心者でもできる“翌日限定”のバックテスト設計
- 失敗パターンと改善策:よくある3つのミス
- 運用のコツ:同日に複数銘柄が出たときの優先順位
- まとめ:翌日の“本物の買い”だけを狙う
この戦略の狙い:材料ではなく「翌日の需給継続」を取る
自社株買いは企業が市場で株式を買い付ける(または買い付け枠を設定する)イベントです。市場参加者は「需給が改善する」「EPS/ROEの改善期待」「経営の株価意識」などを理由に買いを入れます。ただし短期トレードで重要なのは理由ではなく、買いが継続しているかです。
発表当日はニュースで買われ、利確も出やすく、値動きが荒れます。翌日は「本当に買い手が残っているか」「ただの一過性だったか」がはっきり出やすい。ここに絞り込むことで、初心者が苦手な“ニュース解釈”から離れて、価格と出来高で判断できます。
対象銘柄の条件:翌日トレードに向く「自社株買い」のタイプ
自社株買いにもいろいろあります。翌日トレードで効きやすいのは、短期参加者が「需給インパクトが大きい」と受け取りやすい発表です。具体的には次のような特徴が重なります。
まず、取得枠が時価総額に対して相対的に大きいこと。次に、期間が短い・開始が早いなど「買う意思が強い」印象があること。さらに、直近で株価が弱かった銘柄だと、需給改善が価格に反映されやすい場合があります。一方、すでに上昇トレンドが強い銘柄だと、翌日は利確が先行しやすいので注意が必要です。
ただし、これらは“加点要素”であり、最終判断はあくまで翌日の寄り付きの出来高と高値更新で行います。材料の良し悪しを考えすぎると、判断が遅れてチャンスを逃します。
コア条件(エントリーの前提):翌日・出来高2倍・寄り高更新
本戦略の核は3つです。
(1)自社株買い発表の翌日であること。当日は見送り、翌日に限定します。翌日は寄り付きの攻防が最も情報量が多く、短期の資金が入りやすい時間帯です。
(2)出来高が前日比2倍以上。ここでいう「前日比」は、前日の日中出来高(終値まで)を基準にします。朝の時点では当日出来高は積み上がり途中なので、判断は「寄り付き〜最初の5分」など、一定の時間を区切って比較します。実務的には、最初の5分出来高が前日同時間帯の2倍以上、もしくは寄り付き15分で前日終日出来高の20%に到達など、基準を固定すると再現性が上がります。
(3)寄り高値(寄り付き後の高値)を更新した瞬間。寄った直後の高値を抜けるのは、「売りを飲み込んだ」サインになりやすい。ここで追随します。
なぜ「寄り高更新」が効くのか:短期の売りを吸収した証拠
自社株買い翌日は、前日(発表当日)に買った短期勢の利確売りが必ず出ます。さらに、ギャップアップして始まると、寄り付きで利益確定が集中しやすい。寄り後の最初の高値は、いわば「売り圧の壁」です。
その壁を出来高を伴って抜けるということは、売りを上回る買いが現れたことを意味します。ここで入ると、上昇が続いた場合は“順張りの王道”で伸ばしやすい。一方、抜けないなら見送る。初心者がやりがちな「寄りからなんとなく買う」を排除できます。
板・歩み値でのフィルター:ダマシを減らす3チェック
寄り高更新だけでも戦えますが、ダマシを減らすために板と歩み値を使います。難しく見えますが、見るポイントを固定すれば初心者でも実用になります。
チェック1:寄り高更新直前に“同じ価格帯で約定が積み上がる”か。抜ける前に、特定の価格で約定が増える場合、売り板を吸収している可能性があります。逆に、薄い板を一瞬で飛ばして抜けた場合は、後続がいないことが多く、抜けた直後に失速しやすい。
チェック2:成行買いの連続(歩み値)。寄り高を抜く瞬間に、成行買いが連続しているかを見ます。指値でチマチマ抜けるより、成行が連続するほうが短期の勢いが強い。とはいえ、成行が強すぎてスプレッドが広がる銘柄は滑りやすいので、銘柄選別で避けるのが無難です。
チェック3:更新後に板が“即座に薄くならない”。抜けた直後に買い板が消える(いわゆる買い厚が消える)と、吊り上げだけで終わるケースがあります。更新後の1〜2ティック下に買い板が残っているか、歩み値の買いが継続するかを確認します。確認できないなら、入らないという判断が最も強いリスク管理です。
エントリー手順:5分足で「ブレイク確定」を待つか、瞬間で叩くか
エントリーは大きく2種類です。性格と銘柄の値動きで使い分けます。
パターンA:瞬間成行(攻め)。寄り高値を1ティックでも上抜いた瞬間に成行で入ります。勢いがある銘柄でリターンが大きい反面、ダマシも食らいやすいので、上記の板・歩み値フィルターを強めに適用します。
パターンB:5分足確定(守り)。寄り高を抜いた後、5分足の終値が寄り高の上で確定したら入ります。利益は少し削れますが、ダマシ回避力が上がり、初心者向きです。特に大型株や板が厚い銘柄では、確定待ちでも十分間に合うことが多い。
おすすめは、まずパターンBで練習し、慣れたらパターンAを限定的に使うことです。いきなり瞬間成行だけで回すと、滑りと損切りの連鎖でメンタルが削れます。
損切り設計:寄り高更新戦略の「負け方」を先に決める
短期トレードは勝ち方より負け方が重要です。寄り高更新戦略の損切りは、シンプルに「ブレイクが失敗した」場所に置きます。
損切りの基本は次のいずれかです。
1つ目は、抜けた起点(寄り高)を終値で割ったら撤退。パターンB(5分足確定)と相性が良いです。2つ目は、更新後の押しでVWAPを割ったら撤退。VWAPは当日の平均取得価格の目安であり、順張りが失敗するとVWAPを割りやすい。3つ目は、更新直後の最初の押し安値を割ったら撤退。スキャル寄りの設計です。
ここで重要なのは、損切り幅を「気分」で決めないこと。ブレイク戦略は、損切り幅が一定になりやすいというメリットがあります。損切り幅が決まれば、ロット(株数)も計算できます。
利確設計:伸びるときは伸ばし、伸びないときは早く降りる
利確は2段構えが現実的です。まず、ブレイク直後の伸びで部分利確し、残りを伸ばす。これにより、初心者が苦手な“利確の迷い”を減らせます。
利確の目安としては、(A)直近高値やキリ番、(B)VWAPからの乖離が過大になった地点、(C)5分足で陰線が連続し始めたタイミング、が使えます。特におすすめは、5分足で高値更新が止まった後の初めての大陰線を利確サインとする方法です。勢いがある銘柄は、陰線が出てもすぐ戻りますが、勢いが終わると陰線の戻りが弱くなります。
逆に、エントリー後に伸びない場合は、時間損(ヨコヨコ)で撤退します。たとえば「エントリー後15分で高値更新が1回もないなら撤退」など、時間基準を入れると機械的に切れます。短期では“伸びない=失敗”の確率が高いからです。
具体例:3つの典型パターンと、やること・やらないこと
例1:理想形(強い継続需給)。発表当日は小幅高で終了。翌日寄り付きは小ギャップアップ。最初の5分で出来高が跳ね、寄り高を試して一度押すが、押しが浅く、歩み値に成行買いが続く。寄り高更新後も板が残り、VWAP上で推移。こういう形は、押し目が少なく、順張りが素直に機能します。対応は「5分足確定→押し安値割れで撤退→伸びたら部分利確」です。
例2:ダマシ(薄板での見せ上げ)。寄り付き直後に薄い板を飛ばして寄り高を更新するが、歩み値の買いが続かず、更新直後に買い板が消える。5分足は上ヒゲが長く、終値で寄り高を割る。これは“更新した事実”だけに反応すると食らいます。対応は「板・歩み値フィルターで入らない」か、「入ったなら寄り高割れで即撤退」です。
例3:一段上げ後の失速(利確優勢)。更新後に一気に上げるが、VWAP乖離が急拡大し、出来高がピークアウト。5分足で陰線が増え、押しが深くなる。これは“伸び切った後”の局面です。対応は「部分利確を早めに入れる」「VWAP割れで残りを手仕舞い」など、逃げ足を速くします。
銘柄選別:初心者が事故りやすい銘柄を避ける基準
この戦略は「勢いが出る銘柄」を狙う一方で、事故る銘柄もあります。初心者が避けるべき特徴を明確にします。
まず、出来高が少なすぎる銘柄。寄り高更新が一瞬で起き、滑って損切りになるリスクが高い。次に、値幅制限に近い銘柄。急変動で約定が飛び、損切りが機能しにくい。さらに、気配が荒く寄りが遅い銘柄は、寄り付き後のルールが崩れやすいので、慣れるまでは避けます。
逆に、最初は中型以上で板が比較的厚い銘柄のほうが練習向きです。値動きはマイルドでも、ルール通りに入り、ルール通りに出る練習ができます。
当日のチェックリスト:寄り前〜寄り後15分でやることを固定する
判断を速くするには、手順を固定します。次の流れで十分です。
寄り前は、前日に自社株買いを発表した銘柄をリスト化し、当日寄り付きの気配と出来高の伸びを観察します。寄り後は、最初の5分で出来高が跳ねているか、寄り高を更新する動きがあるかを確認します。更新が近づいたら板・歩み値の3チェックを行い、条件を満たせばエントリー。満たさなければ見送り。見送った銘柄は追いかけません。ここを徹底すると、無駄なトレードが減ります。
検証方法:初心者でもできる“翌日限定”のバックテスト設計
戦略を自分のものにするには検証が必須です。ただし難しい統計は不要です。最小限の検証フレームを示します。
まず、過去3〜6か月で「自社株買い発表」を抽出します(適時開示やニュース検索で拾えます)。次に、翌日の寄り付き〜前場だけを対象にし、(1)ギャップ率、(2)最初の5分出来高、(3)寄り高更新の有無、(4)更新後の最大上昇幅、(5)寄り高割れまでの時間、を記録します。これだけで「どの条件だと伸びるか」「ダマシはどんな形か」が見えてきます。
さらに実戦寄りにするなら、板・歩み値のフィルターを“チェックしたことにする”のではなく、動画や気配値ログなどで再現し、主観が入りにくい形で基準化します。たとえば「更新直前に同価格で約定が増えたら○」「更新後に1ティック下の買い板が一定量残れば○」のように、Yes/Noで判断できる表現に落とします。
失敗パターンと改善策:よくある3つのミス
ミス1:出来高条件を曖昧にする。出来高2倍を「なんとなく多い」で判断すると、弱い銘柄を掴みます。改善策は、時間を区切った基準(最初の5分、15分)で固定することです。
ミス2:寄り高更新の“後”に飛びつく。更新してから大きく上がったのを見て入ると、すでに利確局面のことがあります。改善策は、更新の瞬間(または5分足確定)という“入口”を固定することです。
ミス3:損切りが遅れる。ブレイク失敗は早めに切るほど期待値が上がります。改善策は、寄り高割れ・VWAP割れ・押し安値割れのどれで切るかを事前に決め、迷わないことです。
運用のコツ:同日に複数銘柄が出たときの優先順位
自社株買い翌日銘柄が複数あると迷います。優先順位は「出来高の伸び」「板の厚さ」「寄り高更新の形の綺麗さ」で決めます。材料の派手さより、値動きの素直さが重要です。
また、同じ日に相場全体が弱い場合(指数が大きく下げているなど)は、個別の順張りが伸びにくくなります。この戦略は個別需給に強いとはいえ、指数の地合いには影響されます。地合いが悪い日は、利確を浅くし、時間損撤退を早めるなど、攻め方を調整します。
まとめ:翌日の“本物の買い”だけを狙う
自社株買いは材料として強い一方で、短期ではダマシも多いです。本記事の戦略は、翌日に限定し、出来高2倍と寄り高更新という客観条件で「本物の買い」を選別します。さらに板・歩み値・5分足・VWAPでフィルターと撤退条件を固定することで、初心者でも再現性を持って運用できます。
最後に強調します。条件を満たさない日は、何もしないのが正解です。勝つトレードより、負けない見送りを増やすことが、短期で最も効きます。


コメント