この戦略は「寄り付き直後にギャップアップ(GU)した銘柄が、過熱してVWAPから上に乖離したあと、出来高が細り始めたタイミングで“VWAPへ戻る力”を取りに行く」逆張り(リバーション)型の超短期売り手法です。単なる“高いから売る”ではなく、(1)VWAP乖離の定量条件と(2)出来高の減衰、そして(3)板・歩み値の勢い低下を揃えてから仕掛けるのが肝です。狙う値幅は大きくありませんが、ルールを固めれば、銘柄選別と損切りを機械化しやすく、再現性を出しやすいのが特徴です。
- まず押さえる前提:VWAPとは何か、なぜ「戻り」が起きるのか
- 戦略の核心:エントリー条件を“3層”に分けて誤差を減らす
- 層1:対象銘柄の前提条件(GUの質を見極める)
- 層2:定量条件(VWAP乖離+3%の意味を“相場の速さ”に合わせる)
- 層3:トリガー(出来高減少を“買いの燃料切れ”として扱う)
- 具体的なエントリー手順(寄り付き〜前場中盤)
- エントリーの型:2つの入り方(戻り売り型とブレイク失敗型)
- 利確と損切り:勝率より“損失を一定化”して成績を作る
- 出来高減少の具体判定:数字に落とすと再現性が上がる
- ありがちな負けパターンと回避策
- 具体例:寄り付きでの典型的な値動き(イメージを文章化)
- 日本株での運用上の注意:値幅制限、特買い・特売り、寄り付きの歪み
- FX・暗号資産への応用:VWAPの代わりに“当日加重平均”を作る
- 検証の考え方:勝率より“期待値”と“最大損失”を先に見る
- まとめ:この戦略を“使える武器”にするための最短ルート
まず押さえる前提:VWAPとは何か、なぜ「戻り」が起きるのか
VWAP(Volume Weighted Average Price)は、当日始値からその時点までの「出来高加重平均価格」です。簡単に言えば、その日の“市場参加者の平均取得単価”に近い基準線です。機関投資家の執行やアルゴがVWAPを参照することが多く、短期の需給が荒れても、価格はVWAP周辺を“基準”として揺れやすい傾向があります。
GU銘柄は寄り付き直後に短期資金が集中し、値が飛びやすい一方で、上方向に走った直後に買いが続かないと、利益確定や逆張りの売りが一気に入って、VWAPへ向けて戻る動きが出やすいです。ただし、これはいつも起きるわけではありません。重要なのは「戻りが起きやすい条件」を揃えることです。そこで使うのがVWAP乖離+出来高減少です。
戦略の核心:エントリー条件を“3層”に分けて誤差を減らす
この戦略は、条件を一つだけにすると簡単に踏まれます。たとえば「VWAP乖離が大きいから売る」だけだと、強いトレンドの日に焼かれます。そこで、条件を3層に分けて、不要なトレードを削ります。
層1:対象銘柄の前提条件(GUの質を見極める)
狙うのは“寄り付きで注目を集めたが、買いが持続するかは怪しい”銘柄です。具体的には、前日比でしっかりGUし、寄り付き直後に出来高が膨らんだ銘柄が対象になります。逆に、薄商いの小型で板が極端に薄い銘柄は、VWAPが機能しにくくスリッページも大きくなるため、原則避けます。
GUの要因も重要です。決算などで本当に評価が変わった銘柄は、VWAPを無視して上に走り続けることがあります。一方、テーマ思惑やSNS拡散、前日ストップ高の続伸などは、寄り天になりやすい一方で、乱高下も多いです。あなたの得意な銘柄群に合わせて、GU要因の“勝率が高いパターン”と“危険なパターン”を分類しておくと、同じルールでも成績が安定します。
層2:定量条件(VWAP乖離+3%の意味を“相場の速さ”に合わせる)
本テーマの骨格は「VWAP乖離+3%以上」です。ここで言う乖離は、(現在値 − VWAP)÷ VWAP で計算します。ポイントは“3%という数字の固定”ではなく、その銘柄の当日ボラと時間帯に対して過熱と言えるかです。寄り直後はボラが高いので、単純に3%だけで判断すると、強い銘柄を早売りして踏まれます。そこで、実運用では次の発想が有効です。
寄りから10〜30分は「VWAP乖離+3%」を最低条件にしつつ、直近の高値更新速度が鈍ったことを同時に要求します。たとえば、直近5分足で高値更新が止まり、上ヒゲが増えてきた、または歩み値の成行買いが途切れてきた、というような“勢いの鈍化”を条件に足します。こうすると、ただの強い上昇の途中で売ってしまうミスを減らせます。
層3:トリガー(出来高減少を“買いの燃料切れ”として扱う)
この戦略の最重要ポイントは、VWAP乖離ではなく、出来高の減少を確認してから入ることです。上昇は燃料(出来高)が必要です。上に乖離した状態で出来高が減ってきたなら、「上を買い上げる主体が弱っている」可能性が高まります。具体的には、1分足または5分足で、直前の上昇局面より出来高が明確に落ち、値幅が縮小してくる形です。
ここでありがちな失敗は、“出来高が減った=即売り”と短絡することです。出来高が減っても、板が薄いだけで上に飛ぶことがあります。したがって、出来高減少に加えて上値に重さ(買い板の後退、売り板の厚み、歩み値の停滞)を確認し、トリガーを作ります。例えば、上値更新に失敗し、戻りの局面で売り板が吸収されずに残る、成行買いが連続しなくなる、などです。
具体的なエントリー手順(寄り付き〜前場中盤)
実際の手順を、寄り付きからの流れで描写します。ここでは日本株の寄り付き(9:00)を想定しますが、米株や暗号資産でも基本構造は同じです。
まず寄り付き前にGU候補を数本に絞ります。条件は、前日比で大きくGUしており、寄り前気配が強いこと、出来高が寄りで出そうなこと、そしてストップ高の近接や値幅制限など“特殊条件で板が歪みやすい銘柄”は別枠で扱うことです。寄ったらすぐに売るのではなく、最初の数分は観察します。
観察するのは3点です。第一に、寄り直後の上昇が“連続成行”で一気に進むのか、それともジリ高なのか。第二に、VWAPからの乖離が+3%を超えるか。第三に、その乖離状態で出来高がピークアウトするかです。理想形は「寄り直後にドンと上がり、VWAPから+3〜+5%程度に乗ったが、そこから上値更新が鈍り、出来高が落ち始める」パターンです。
エントリーの型:2つの入り方(戻り売り型とブレイク失敗型)
エントリーの型は大きく2つに分けると整理できます。
1つ目は戻り売り型です。上に乖離したあと、1〜3分程度の押しが入り、そこから戻すが高値更新できない、という場面で売ります。戻しの局面で出来高が細く、歩み値が弱い(買いが続かない)のを確認できれば、売りの期待値が上がります。ここでの損切りは直近高値少し上、利確はVWAP手前〜VWAPタッチの一部です。VWAPは“吸い寄せられる”一方で“反発点”にもなるので、VWAPタッチで全利確すると取りこぼしもありますが、再現性は高いです。
2つ目はブレイク失敗型です。高値圏で何度か上を試すが抜けない、いわゆる“天井固め”からの失速を売ります。ここでは板の変化が重要で、買い板が薄くなり、売り板が厚く残る、もしくは同じ価格帯で売りが何度も出て跳ね返される状態を確認します。出来高は大きくても構いませんが、重要なのは「上方向の約定が伸びない」ことです。ブレイク失敗は崩れが速く、VWAPまでの回帰が一気に進むことがあります。
利確と損切り:勝率より“損失を一定化”して成績を作る
この手法は、勝率を上げるより、損失を一定にしてトータルをプラスにする設計が向いています。理由は、踏まれるときは“踏み上げの速度”が速く、損を引き伸ばすと一発で崩れるからです。
損切りの基本は「直近高値の少し上」です。直近高値を明確に上抜けたなら、回帰期待は薄れます。よくある失敗は「VWAPから乖離しているから、そのうち戻る」と損切りを遅らせることです。戻らない日もあります。戻らない日を引いたときに、ルールで逃げられるかが成績を決めます。
利確は「VWAP手前で段階的に」が現実的です。VWAPまで綺麗に戻るとは限らず、VWAPの手前で反発して再上昇することもあります。たとえば、VWAPの0.5%手前で一部利確し、VWAPタッチで残りを落とす、といった形が扱いやすいです。ここで重要なのは、利確ルールを“見た目”で変えないことです。見た目で変えると検証できなくなります。
出来高減少の具体判定:数字に落とすと再現性が上がる
「出来高が減った」を目視だけでやると、日によって判断がブレます。再現性を上げるなら、簡単でもいいので数字に落とします。例えば1分足で、上昇ピークの1分出来高を100としたとき、次の2〜3本が60以下、さらに値幅が縮小している、というような定義です。5分足なら、直近2本の平均出来高が、その前の2本平均より明確に減っている、などが使えます。
さらに精度を上げるなら「出来高が減っているのに、上値更新できない」という条件を重ねます。出来高が減っても上値更新するなら、買いが少なくても上に行ける状態で、売りは危険です。出来高が減って上に行けない、ここが“燃料切れ”のサインです。
ありがちな負けパターンと回避策
負けパターンは大きく3つあります。
第一に、本物の上昇トレンドの日に逆張りして踏まれるケースです。決算の大幅上方修正や、需給を一変させる材料がある日は、VWAP乖離が拡大し続けることがあります。こういう日は、出来高減少が起きにくく、起きてもすぐ戻って再加速します。回避策は、材料の強さを事前に分類し、強材料の日はこの手法を使わない、または乖離条件を引き上げることです。
第二に、板が薄すぎて、VWAPが“線として機能しない”ケースです。板が薄い銘柄は、少額の成行で価格が飛び、VWAPもギザギザになります。回帰する前提が崩れます。回避策は、最低出来高や最低売買代金のフィルターを入れることです。
第三に、戻りの途中で“第二波の買い”が入るケースです。寄りの急騰のあとに一度押しても、再度テーマ買いが入り、V字で戻ることがあります。これを避けるには、利確を早めに入れる、あるいはVWAP近辺まで戻ったら一旦撤退し、再度乖離が出たら入り直す、といった運用が現実的です。
具体例:寄り付きでの典型的な値動き(イメージを文章化)
例として、前日終値1000円の銘柄が、材料でGUして1100円近辺で寄ったとします。寄り直後に成行買いが入り、1120、1140と上がり、VWAPが1105円のときに現在値は1160円、乖離は約+5%です。この時点で「乖離は十分」です。ただし、出来高がまだ増え続けているなら売りません。
その後、1160〜1170で上値が重くなり、1170を何度も試すが抜けない。1分足出来高が、ピーク時の半分以下に落ち、ローソク足が小さくなってきた。歩み値も成行買いが続かず、約定が細くなる。ここで“買いの燃料切れ”を仮説として立てます。次に、1165から1155へ押し、1158まで戻したが高値更新できず、戻しの出来高も細い。この戻しで売ります。
損切りは1172(直近高値の少し上)。利確はまずVWAP手前の1110〜1120で一部、残りをVWAPタッチで落とします。もしVWAP手前で反発してしまったら、段階利確が効いて損益が安定します。もしVWAPを割って崩れるなら、残りを伸ばすことで利益を厚くできます。ここは好みですが、検証して固定するのが重要です。
日本株での運用上の注意:値幅制限、特買い・特売り、寄り付きの歪み
日本株の寄り付きは、特買い・特売りや値幅制限、寄り付きの価格決定プロセスがあるため、米株より歪みが出やすいです。特買いで寄った銘柄は、寄りの時点で需給が偏っており、寄ってすぐのVWAPはあてになりにくいことがあります。寄ってから少し時間が経ち、出来高が積み上がったあとにVWAPが安定してからの方が、回帰の基準として使いやすいです。
また、値幅制限が近いと、売りの逃げ場がなくなることがあります。ストップ高近辺では、VWAP乖離が大きくても回帰しない“張り付き相場”になり得ます。値幅制限の距離は、回避フィルターとして必須です。
FX・暗号資産への応用:VWAPの代わりに“当日加重平均”を作る
FXや暗号資産は出来高が正確に見えない(取引所分散、ブローカー差)ことがあります。その場合でも、価格の“基準線”を作れば同じ発想で運用できます。例えば、当日開始からの加重平均を、ティックボリュームや出来高に近い指標で代替します。暗号資産なら、主要取引所の出来高が参照できる環境でVWAPを使い、乖離と出来高減少で回帰を狙います。
ただし、暗号資産は24時間取引で、寄り付きの歪みが小さい一方、ニュースで一方向に走り続ける場面も多いです。したがって、時間帯(欧米勢が入る時間)とボラ拡大局面を意識し、損切りを機械的に置く設計が重要です。
検証の考え方:勝率より“期待値”と“最大損失”を先に見る
この手法は「小さく取って小さく負ける」設計にしやすい反面、踏まれがあると一発で崩れます。検証では勝率より、1回当たりの平均損益(期待値)と、最大損失(ワーストケース)を重視してください。具体的には、損切り幅を固定して、利確をVWAP手前固定にしたときに、手数料込みでプラスになるかを見ます。
検証の単位は「銘柄」「GU要因」「時間帯」で分けると有効です。たとえば、決算GUは回帰しにくいが、テーマGUは回帰しやすい、という差が出るかもしれません。ここを分けずに混ぜると、平均で見えてしまい、運用時のブレが大きくなります。
まとめ:この戦略を“使える武器”にするための最短ルート
GU後のVWAP回帰売りは、シンプルに見えて、実は「条件の積み上げ」で勝率と安定性が決まります。やるべきことは明確です。まず、VWAP乖離+3%は“最低条件”として使い、出来高減少と勢い低下を必ず確認する。次に、損切りを直近高値上に固定して、踏まれたときに即撤退できる運用にする。最後に、GU要因と銘柄流動性でフィルターを作り、自分が勝てる局面だけを残す。これだけで、同じテーマでも成績は別物になります。
最終的には、あなたの監視リストと相場環境に合わせて、乖離率、出来高減少の定義、利確位置を固定化し、トレードを“判断”ではなく“手順”に落とし込むことが、収益の再現性を上げるコツです。


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