ペアトレード:同業種内の強弱ロングショートを設計する

株式

本記事は、テーマ「ペアトレード:同業種内の強弱ロングショートを設計する」を、初心者が再現できるように“手順化”して解説します。狙うのは一発当てではなく、同じ型で何度も条件を満たしたときだけ仕掛ける運用です。特にオプションやボラティリティは「難しい=危険」になりがちですが、仕組みを分解すれば、何が利益の源泉で、何が損失の原因かが見えるようになります。

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ボラティリティ・アービトラージとは何か:まずは日本語に翻訳する

ボラティリティ・アービトラージ(以下ボラアーブ)は、乱暴に言えば「市場が付けた将来の値動き見込み(インプライド・ボラティリティ:IV)と、実際に起きた値動き(実現ボラ:RV)の差」を収益機会として扱う考え方です。ここで重要なのは、株価そのものの上げ下げではなく、“値動きの大きさ”を売買対象にしている点です。

たとえば、相場が急落して恐怖が高まると、オプションのIVは跳ねやすいです。ところが恐怖が落ち着けば、IVは下がりやすい(平均回帰しやすい)。この「IVが上がり過ぎる・下がり過ぎる」癖を、統計と構造で捉えるのがボラアーブです。

個人投資家がやって良い範囲と、やらない方が良い範囲

いきなり結論から言うと、個人が安全に近づけるのは「小さく始める」「損失の形が見える」領域だけです。具体的には、裸のショートガンマ(短期オプション売り)や、証拠金が跳ねる無制限リスクの構造は避けるのが合理的です。一方で、次のような範囲は個人でも設計可能です。

(1)限定損失の建て方:クレジットスプレッド、デビットスプレッド、アイアンコンドルのように最大損失が事前に読める構造
(2)ヘッジ前提のボラ売買:デルタを小さく保ち、方向性で死なない運用
(3)統計の優位性を“条件付き”で使う:常に勝てる前提を捨て、特定局面だけに絞る

ボラアーブの利益源泉は3つしかない

ボラアーブの収益は、突き詰めると次の3要素の組み合わせです。

①IVとRVの差(IV-RVスプレッド):市場が将来の値動きを過大評価している(IVが高すぎる)なら、ボラを売る側に期待値が生まれます。逆にIVが安すぎるなら買う側に期待値が生まれます。
②ボラの平均回帰:ボラは永遠に上昇し続けにくく、極端な状態から戻りやすい性質があります。ただし“極端”の定義が曖昧だと、ただの逆張りになります。
③歪み(スマイル・スキュー・ターム構造):同じ満期でも行使価格ごとにIVが違う、満期が違えばIVが違う。ここに過剰な保険需要(プット偏重)などの構造要因が埋まっています。

初心者が最初に理解すべき:デルタ・ガンマ・ベガの役割

オプションは、価格が“株価”だけで決まりません。最低限、次の3つを理解してから触るべきです。

デルタ(Δ):株価が1動いたとき、オプション価格がどれだけ動くか。デルタが大きいほど、方向性に賭けている。
ガンマ(Γ):デルタの変化量。短期オプションはガンマが大きく、急変に弱い。
ベガ(V):IVが1動いたとき、オプション価格がどれだけ動くか。ボラアーブの本体はベガです。

ボラアーブの理想は「デルタの影響を小さくして、ベガの収益を取りに行く」状態です。つまり、上がっても下がっても良いから、IVが狙った方向に動けば勝てる設計を目指します。

まず作るべき“自分の指標”:RVとIVを比較する簡易スコア

市場のIVが高いか安いかを判断するには、比較対象が必要です。初心者が最初に作るべきは、次の2つです。

(A)実現ボラ(RV):過去N日(例:20日)の終値リターンの標準偏差を年率換算したもの。
(B)IV:オプション市場が示す将来ボラ。米国ならVIXが代表ですが、銘柄オプションにもIVがあります。

ここから、ざっくりの判断軸として「IV/RV比」を作ります。例えばIVが40、RVが20なら比は2.0。恐怖で保険が割高になっている可能性が高い。逆にIVが15、RVが25なら比は0.6で、保険が安すぎる可能性があります。

実践①:IVが跳ねた時だけ狙う“条件付きボラ売り”

個人が取りやすいのは、パニックでIVが跳ねた瞬間に、限定損失の構造で“保険料”を売るやり方です。ポイントは、平常時にボラ売りをしないこと。平常時はプレミアムが薄く、急変で踏み抜かれやすいからです。

条件例
・指数が急落し、短期IVが平常比で大きく上昇(例:IV/RVが一定以上)
・同時に出来高が急増し、投げが出ている(投資家の強制決済が疑われる)
・ニュースが“悪材料の出尽くし”に近い(追加のサプライズ余地が縮む)

建て方の例
・指数(ETF等)のプット・クレジットスプレッド:深めのプットを売り、さらに下のプットを買って最大損失を固定する。
この形にすると、最悪でも損失は限定され、急落局面でも口座が吹き飛びにくい。

実践②:IVが安すぎる局面の“保険買い”は、コスト管理が本体

逆に、IVが安すぎる局面で“ボラ買い”をするのは、発想としては正しいことがあります。相場が静かすぎるとき、人はリスクを過小評価しがちです。ただし、ボラ買いは時間とともに減価(タイムディケイ)するため、適当に買うと負けが積み上がります。

ここでのコツは、「買うなら、いつ・何が起きたら外すか」を先に決めることです。例えば、重要イベント(決算・政策金利・雇用統計)前に限定的に買い、イベント通過で売る、といった“期間限定の保険”に落とすと、無限にコストを垂れ流さずに済みます。

IVの歪みを使う:スキュー(プット高)を“構造”として理解する

多くの市場では、アウト・オブ・ザ・マネーのプットのIVが高い(プットが高い)傾向があります。これは、下落保険の需要が恒常的に強いからです。初心者がここでやりがちな誤解は、「プットが高い=常に売れば勝てる」と考えることです。

実際には、プットが高いのは“理由がある”からで、暴落時にはその保険が本当に必要になります。したがって、プットを売るなら、限定損失・サイズ管理・撤退ルールが必須です。逆に言えば、スキューの存在は「保険を売る側にはプレミアムがある」ことも示しており、条件を絞れば期待値に変えられます。

ターム構造(満期ごとのIV)で“いつ怖がっているか”を読む

IVは満期によって違います。短期のIVだけが急騰しているなら「目先のイベント(またはパニック)にだけ恐怖が集中している」状態です。長期までIVが上がっているなら「構造的な不安(景気後退、金融不安など)が市場に織り込まれている」可能性が高い。

初心者が扱いやすいのは、短期IVの急騰です。なぜなら、恐怖が落ち着くと短期IVは戻りやすいからです。一方、長期IVの上昇は、戻りが遅いことがあり、早まったボラ売りが長期戦になりがちです。

具体例:同じ“急落”でも勝ちやすい急落、負けやすい急落がある

急落はすべて同じではありません。たとえば、(1)流動性の薄い時間帯の誤発注や、(2)短期勢の投げ、(3)機械的なロスカット連鎖、のような“需給由来”の急落は、恐怖のピークが短く、IVが過大になりやすいことがあります。こういう時はボラ売りが機能しやすい。

一方で、金融システム不安や、政策ミス、戦争拡大のような“構造悪化”の急落は、恐怖が長期化し、IVが高止まりしやすい。ここでボラ売りを仕掛けるなら、期間と損失を想定した設計が必要です。初心者はまず前者(需給由来)に絞るのが無難です。

損失のパターンを先に知る:ボラ売りが負ける典型

ボラ売りの負け方には、典型が3つあります。

(1)“静かな急変”:IVが上がり切る前に下落が進み、売った瞬間にさらに下へ。
(2)“二段階ショック”:最初の悪材料でIV上昇→少し落ち着く→追加の悪材料で再ショック。
(3)“長期化”:IVが高いまま、相場が荒い状態が続く。スプレッドでも損がじわじわ。

対策は同じです。サイズを小さくする、最大損失が限定される建て方にする、撤退条件を数値化する。これだけで致命傷はかなり減ります。

エントリーより大事:ポジションサイズを“ルール”にする

初心者が勝ち負けを分けるのは、ほとんどがサイズです。優位性があっても、サイズが過大なら一回の事故で退場します。最低限、次のように決めてください。

・1回のトレードで失ってよい金額(口座の1〜2%など)を固定
・最大損失が見える建て方だけを採用
・連敗が続いたら、サイズを半分に落とす(“勝つため”ではなく“残るため”)

“勝率”より“期待値”:ボラアーブは勝率が低くても成立する

ボラ買いは特に、勝率が低くなりがちです(小さな負けを積み上げ、たまに大きく勝つ)。逆にボラ売りは勝率が高くなりがちですが、たまに大きく負ける。ここで大事なのは、自分がどちらの性格・資金に向いているかを理解し、戦略を固定することです。

初心者は「高勝率=安全」と誤解しがちですが、ボラ売りは高勝率でも尾のリスク(テールリスク)が大きい。だからこそ、限定損失・分散・ルールが必要になります。

実装の最短ルート:まずは“疑似ボラアーブ”から始める

いきなり複雑なデルタヘッジをする必要はありません。初心者の実装ステップは次の順が現実的です。

ステップ1:IVが高い/安いを、IV/RV比で毎日チェック(見るだけで良い)
ステップ2:大きなイベント前後でIVがどう動くかを観察(記録する)
ステップ3:限定損失のスプレッドで、小さく試す(最大損失が許容内か確認)
ステップ4:同じ条件だけを繰り返す(条件を増やさない)

例:初心者向けのチェックリスト(これを満たした時だけ検討)

(1)IVが直近の通常水準から大きく乖離している
(2)相場の急変要因が“需給”寄りで、長期化しにくい
(3)最大損失が口座の許容範囲に収まる建て方になっている
(4)損切り・撤退条件が数字で書ける(価格/時間/IVなど)
(5)1回で勝とうとせず、同型を積み上げる前提になっている

最後に:このテーマで“儲ける人”がやっていること

ボラアーブで継続的に結果を出す人は、派手な予想をしません。代わりに「条件」「損失」「サイズ」「撤退」を最初に固定し、同じことを反復します。ボラは恐怖と欲望で歪みます。だからこそ、感情で触る人が多い。そこを、手順で上書きできた人だけが、ボラの歪みを利益に変えられます。

次にやることは単純です。今日から、IV/RV比を毎日1回だけ見て、極端な日をメモしてください。その“極端”が何回に一回出るかが分かると、無理にトレードしなくても、チャンスが来るまで待てるようになります。待てる人が勝ちます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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