スキャルピングは「速く売買する」ことが目的ではありません。目的は、短期の価格が“行き過ぎ”た直後に起きやすい平均回帰(いったん元に戻る)を、小さく・高確度で抜くことです。本記事では、初心者でも再現しやすい材料として5分足の移動平均線(MA)と、その乖離(かいり)=離れ具合を使い、修正安(下げ過ぎの戻り)を狙う実戦手順を、板と歩み値の読み方まで踏み込みます。
- この手法が刺さる局面:どんな「下げ過ぎ」を狙うのか
- 準備:5分足MAは何を使うか(初心者向けの設定)
- 乖離を数値化する:%乖離と“何ティック戻るか”の現実
- 核となる発想:戻りは「角度」「速度」「板の吸収」で決まる
- エントリー手順:初心者でも迷わない4ステップ
- ステップ1:銘柄を選ぶ(触っていい銘柄の条件)
- ステップ2:「行き過ぎゾーン」を決める(乖離+節目)
- ステップ3:板・歩み値で“売り一巡”を確認する(ここが最重要)
- ステップ4:エントリー(買い)と利確目標を同時に決める
- 損切り設計:勝ちより先に「死なない」を作る
- 具体例1:寄り直後の下げ過ぎ→20MA手前で逃げる(典型スキャル)
- 具体例2:指数急落の巻き込まれ→“戻りの速さ”だけ抜く
- よくある失敗と対策:初心者が負ける5パターン
- 上達のための練習方法:リアルトレード前にやるべきこと
- 運用ルール:毎日同じ判断をするためのチェックリスト
- まとめ:5分足MA乖離スキャルの本質は「場所」ではなく「吸収」
この手法が刺さる局面:どんな「下げ過ぎ」を狙うのか
5分足MA乖離スキャルは、次のような局面で機能しやすいです。
- 材料の大小に関係なく、短期資金が一気に売り浴びせた直後(寄り直後、後場寄り、指数急落の巻き込まれなど)
- 下げの途中で売りが枯れ、“投げ”が一巡しやすい薄い瞬間が出る
- 板がスカスカでも、逆に厚くても、「戻りの余地」が短時間で生まれる
逆に、下げが“本格トレンド”に変わった局面(悪材料で連続安、出来高を伴って安値更新が続く等)では、平均回帰が起きにくく危険です。そこで、まずは「狙ってよい下げ」と「触ってはいけない下げ」を判別する設計が重要になります。
準備:5分足MAは何を使うか(初心者向けの設定)
移動平均線は無数に設定できますが、初心者は増やさない方が勝てます。本記事では次の2本で十分です。
- 5分足20MA:短期の“平均価格”の中心(体感として一番使いやすい)
- 5分足60MA:短期トレンドの“地ならし”役(トレンド判定に使う)
なぜこの組み合わせか。20MAはスキャルの「戻り先の目標」になりやすく、60MAは「戻りが単なる反発で終わるか、戻りが伸びるか」の境界になりやすいからです。いきなり複数MAやボリンジャーを重ねると、判断が散らばってルールが壊れます。
乖離を数値化する:%乖離と“何ティック戻るか”の現実
乖離は感覚で見ても良いのですが、初心者ほどブレます。そこで、最低限の数値化をします。
乖離率(%)=(現在値 − 5分足20MA)÷ 5分足20MA × 100
これを使う理由は、株価が500円でも5000円でも同じ基準で「行き過ぎ」を比較できるからです。目安としては次のとおりです(銘柄のボラで調整)。
- −0.6%~−1.0%:軽い行き過ぎ。戻りは小さめ(スキャル向き)
- −1.0%~−1.8%:狙い目。売り一巡が出れば戻りが出やすい
- −1.8%以下:危険領域。投げの後に戻ることもあるが、崩壊相場だと即死しやすい
重要なのは「乖離が大きいほど儲かる」ではなく、乖離が大きいほど“損切り幅も広がる”という現実です。狙うのは“戻りが出る確率”と“損切りが近い形”が両立する地点です。
核となる発想:戻りは「角度」「速度」「板の吸収」で決まる
5分足MAからの乖離だけでは勝てません。勝てる人は、次の3つを同時に見ています。
- 角度:下げの傾きが急すぎると“売りの勢い”が強く、戻りが出ても弱い
- 速度:下げが加速した直後は、アルゴの成行が止まると一瞬で反転する
- 吸収:安値圏で売りが出ても、同値付近で“食われて”価格が割れない
この「吸収」が見えた瞬間が、スキャルの勝負所です。テクニカルは“場所”を示すだけで、エントリーの引き金は板・歩み値にあります。
エントリー手順:初心者でも迷わない4ステップ
ステップ1:銘柄を選ぶ(触っていい銘柄の条件)
同じ乖離でも、銘柄で難易度が激変します。初心者向けの条件はシンプルです。
- 出来高がある(目安:東証の個別なら寄り後に数十万株以上、板が薄すぎない)
- 値幅がある(1ティックが細かい銘柄はスキャル向きだが、値動きが鈍いと手数料負け)
- ストップ安/極端な悪材料ではない(“底なし”を避ける)
ステップ2:「行き過ぎゾーン」を決める(乖離+節目)
乖離率が−1.0%前後以上になり、かつ節目が近いときが候補です。節目は次の優先順位で見ます。
- 当日安値(更新するか止まるかで心理が変わる)
- 前日終値(ギャップを埋めに行く流れが出る)
- ラウンドナンバー(1000円、1500円など)
初心者がよくやる失敗は「乖離があるから買う」。正しくは「乖離+節目で、売りが止まりやすい場所を待つ」です。
ステップ3:板・歩み値で“売り一巡”を確認する(ここが最重要)
確認ポイントは3つだけに絞ります。
- 安値付近で成行売りが連発しても、同値で吸収されて下に抜けない
- 買い板の厚みが“自然に”増える(急に巨大板が出てすぐ消えるのは罠もある)
- 歩み値の売買が「売り→同値→買い」の順に変化する(特に同値が続くのが強い)
ここでのコツは、チャートだけ見ないことです。“割れそうで割れない”時間が数十秒~数分続いたら、戻りの芽が出ます。
ステップ4:エントリー(買い)と利確目標を同時に決める
買い方は2種類。初心者は①から始めると事故が減ります。
①反転確認型:安値圏で一度上に跳ね、押したところで買う(遅いが安全)
②吸収先回り型:割れないのを確認し、同値~1ティック上で買う(速いが難しい)
利確目標は欲張らず、次のどちらかに固定します。
- 5分足20MA手前(届かなくても利確する。平均回帰の“手前”が一番取りやすい)
- 直前の小さな戻り高値(板が重いならここで逃げる)
損切り設計:勝ちより先に「死なない」を作る
スキャルで一番大事なのは損切りの置き方です。初心者は「逆行したら切る」という曖昧ルールで破産します。損切りは“価格”で決めます。
- 基本は当日安値の下に置く(割れたらシナリオ崩壊)
- 幅が広すぎるなら、そもそも触らない(これが最強のリスク管理)
さらに、ロットは「損切り幅×株数=許容損失額」から逆算します。例えば1回の損失許容が5000円で、損切り幅が5円なら、株数は1000株までです。これを守らないと、どれだけ勝率が高くても一撃で崩れます。
具体例1:寄り直後の下げ過ぎ→20MA手前で逃げる(典型スキャル)
想定シナリオです(数字は例)。
- 寄り付き:1000円。直後に成行売りで985円まで急落
- 5分足20MA:995円。乖離率は約−1.0%
- 985円付近で売りが連発するが、歩み値が同値で止まり始める
- 板の985円買いが徐々に厚くなり、984円を割れない
ここで、反転確認型なら「987円まで戻ってから986円押しで買い」。損切りは984円割れ。利確は993~994円(20MA手前)です。ポイントは、20MAタッチまで粘らないこと。初心者は「MAに触れたら売る」と決めがちですが、実際は触れる直前で失速しやすく、そこで利確できる人が残ります。
具体例2:指数急落の巻き込まれ→“戻りの速さ”だけ抜く
日経先物が急落した瞬間、大型株も一斉に売られます。このときの戻りは「理由なき売り」が止まっただけなので、戻りも速いが、再下落も速いです。
この局面のコツは、利確をさらに浅くします。
- 利確は「直前の小戻り高値」までで十分
- 歩み値が鈍ったら即撤退(“戻りの速度”が落ちたら終了)
指数連動の売りが落ち着くと、板の下側が急に消えてスッと戻る瞬間があります。その瞬間だけを狙い、欲張らず撤退します。ここで伸ばそうとすると、次の先物売りで狩られます。
よくある失敗と対策:初心者が負ける5パターン
この手法で負ける人の典型を、対策とセットで整理します。
- 乖離だけで飛びつく:吸収確認がない。対策=「割れそうで割れない」を待つ
- 損切り幅が広いのにロットが大きい:一発退場。対策=許容損失から株数逆算
- 利確を欲張って20MA超えを狙う:逆流で削られる。対策=手前利確を固定
- 悪材料の底なしを触る:平均回帰しない。対策=“理由ある下げ”は避ける
- 同じ銘柄で何度も取り返そうとする:判断が劣化。対策=1銘柄の試行回数を上限化
上達のための練習方法:リアルトレード前にやるべきこと
いきなり資金を入れて学ぶと高い授業料になります。初心者は次の順番が堅いです。
- まずは過去チャートのリプレイで「乖離→吸収→戻り」を100回見る
- 次に板・歩み値の記録を取り、「割れない時間」と「戻り幅」をメモする
- 最後に少額で、利確と損切りだけを機械的に実行する
ここでの狙いは、テクニカル理解ではなく撤退の反射神経です。スキャルは判断の速さより、撤退の速さで差がつきます。
運用ルール:毎日同じ判断をするためのチェックリスト
迷いを減らすため、当日の監視とエントリー前の確認項目を固定します。
- 5分足20MAからの乖離率が−1.0%前後以上か
- 当日安値・前日終値・ラウンドナンバーなど節目が近いか
- 安値付近で売りが出ても割れない“吸収”が見えたか
- 損切り幅が狭い(または許容損失内にロット調整できる)か
- 利確目標(20MA手前 or 小戻り高値)が明確か
この5つが揃わないなら見送ります。見送りは機会損失ではなく、負けを避ける行為です。
まとめ:5分足MA乖離スキャルの本質は「場所」ではなく「吸収」
5分足MA乖離は、下げ過ぎの“場所”を教えてくれます。しかし利益になるのは、安値圏で売りが吸収され、価格が割れない瞬間だけです。初心者が勝ちやすい形は、乖離が大きい銘柄ではなく、損切りが近く、戻りが素直な銘柄です。
まずは「乖離率−1.0%前後」「節目」「吸収確認」「手前利確」「価格損切り」を徹底し、少額で同じ型を反復してください。スキャルはセンスより、ルールの固定で成績が決まります。


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