- この記事で扱う戦略の前提
- この戦略が効きやすい“相場の型”
- コア条件:5日線乖離+20%は何を意味するか
- エントリー設計:急落“初動”をどう定義するか
- トリガー(推奨)A:高値更新失敗+出来高ピークアウト
- トリガー(推奨)B:ストップ高剥がれ→買い板の買い厚消失
- トリガー(推奨)C:VWAP割れ→戻りでVWAPを超えられず再下落
- 具体例(仮想例)でのシナリオ
- 損切り設計:ショートは“条件否定で即撤退”
- 利確設計:目標は「VWAP回帰」か「5MA回帰の途中」
- 銘柄選別:仕掛け回数を減らすほど勝ちやすい
- 板・歩み値の読み方:初動を早く掴むための観察ポイント
- 時間帯別のクセ:寄り付きと後場で何が違うか
- ルールを数値化する:チェックリスト(文章で運用できる形)
- ポジションサイズ:初心者ほど“固定損失額”で設計する
- よくある失敗パターンと対策
- 検証のやり方:過去チャートから“崩れの型”を抽出する
- (参考)TradingView/Pine Scriptで乖離+20%を可視化する
- (参考)MT4/MQL4で“乖離フィルター”を作る発想
- まとめ:勝ち筋は“過熱”ではなく“崩れの初動”にある
この記事で扱う戦略の前提
今回のテーマは「AIテーマ株で過熱が極端になった局面(5日移動平均線からの乖離が+20%以上)で、最初の急落初動をショートで取りにいく」という短期戦略です。対象は主に日本株(現物・信用)ですが、CFDや先物・オプション、海外株でも同型のロジックが成立します。
この手法は“上がり続ける銘柄を当てる”発想ではなく、「需給が壊れた瞬間の値動きのクセ」を取る発想です。上昇相場の終盤では、買い手の主体が“追随の個人・短期資金”へ偏り、厚い買い板は見せかけになり、急落は一気に進みます。そこを“初動だけ”狙います。
ただし、ショートは損失の膨張が速い取引です。勝率よりも「損切りの速さ」「ルールの再現性」「仕掛け回数を減らす選別」が収益を左右します。
この戦略が効きやすい“相場の型”
AIテーマはニュース・材料が連鎖しやすく、上昇が自己強化しやすい一方、過熱の反転も急です。特に次の条件が重なると“崩れ”が起きやすいです。
1) 連続陽線やGUを繰り返し、短期移動平均からの乖離が極端(+20%以上)
2) 出来高は増えているが、上昇率に対して伸びが鈍り「高値圏での出来高ピーク」を作りやすい
3) SNS・掲示板・ニュースで“AI”が連日言及され、周辺銘柄も同時に上がる(テーマ資金の一斉流入)
4) 板が薄く、ストップ高張り付きや剥がれを伴う(流動性が不安定)
この型では、上昇の終盤に「上ヒゲ」「寄り天」「引けピン後の翌日失速」などが混ざり、ある瞬間から“買いの勢い”が途切れます。その瞬間に、成行売り・追証回避・利確の雪崩が起きます。
コア条件:5日線乖離+20%は何を意味するか
5日移動平均線(5MA)は短期勢の平均コストに近く、ここからの乖離が大きいほど「遅れて買った人ほど含み損になりやすい構造」ができます。乖離+20%は“極端”の目安です。
例:株価が2,000円、5MAが1,600円なら乖離は (2000/1600 – 1) = 25% です。ここまで離れると、押し目が浅いまま上がり続けた状態で、買い手の平均コストが下にあります。崩れた瞬間、押し目買いが機能しにくく、VWAPや5MAまで一気に回帰することが多いです。
重要なのは「乖離が大きい=すぐ売る」ではなく、「乖離が大きい局面で、崩れの初動サインが出たら売る」です。乖離は“環境認識(フィルター)”、エントリーは“トリガー”で分けます。
エントリー設計:急落“初動”をどう定義するか
この戦略の肝は、天井当てではなく“初動だけ”を抜き取ることです。初動が出たらエントリー、初動が否定されたら即撤退。これでショートの危険を管理します。
トリガー(推奨)A:高値更新失敗+出来高ピークアウト
5MA乖離が+20%以上の状態で、当日または直近で高値を更新できず、上ヒゲが出る。さらに、直前まで膨らんでいた出来高が「同じ値幅なのに減る」または「高値圏の出来高が最大になった後に伸びなくなる」状態を確認します。
具体的には、5分足で高値を付けた足が大陽線ではなく上ヒゲ、次の足が陰線で安値を切る、という形が典型です。歩み値で“同サイズの成行買い連続”が止まり、成行売りの連続が混ざり始めます。
トリガー(推奨)B:ストップ高剥がれ→買い板の買い厚消失
AIテーマではストップ高張り付きが“演出”になることがあります。剥がれた直後に買い板の厚みが急に消える(見せ板が引っ込む)と、需給が一気に悪化します。剥がれ後の最初の戻り(リバ)で出来高が付かないなら、ショートの好機です。
ここでは「剥がれた瞬間に飛び乗る」のではなく、いったん剥がれ→戻りを試す→戻れない、を待つのが安全です。
トリガー(推奨)C:VWAP割れ→戻りでVWAPを超えられず再下落
過熱の終盤は、VWAP(出来高加重平均)を割れると“当日買った人が含み損”になり、戻り売りが強くなります。5MA乖離+20%の銘柄がVWAPを割れ、戻りでVWAPを回復できずに再下落したら、初動としてはかなり強いサインです。
具体例(仮想例)でのシナリオ
銘柄A:AI関連の材料で3日連続GU、前日終値1,800円→当日寄り2,050円。5MAは1,600円で乖離+28%。寄り直後は2,120円まで伸びるが、その後は2,120円を更新できず、5分足で上ヒゲ連発。出来高は寄り直後がピークで、その後の上試しは出来高が鈍い。歩み値の成行買い連続が止まり、成行売りが混ざり始める。
このとき、エントリー候補は「2,080円割れ(直近押し安値)でショート」「VWAP割れでショート」「戻りでVWAPにタッチして失速したところでショート」などになります。狙いは“2,080→1,980(VWAP付近)”の100円、さらに崩れれば5MA方向へ伸びますが、基本は初動の一部で十分です。
損切り設計:ショートは“条件否定で即撤退”
この戦略で一番重要なのは損切りです。ショートは、逆行すると一気に踏まれます。そこで「値幅での損切り」より「条件否定の損切り」を優先します。
おすすめは次のどれか(複数可)です。
・直近高値(または当日高値)を更新したら撤退:上値が再点火したサイン
・VWAPを明確に回復し、5分足終値で上に定着したら撤退:当日の需給が戻ったサイン
・出来高が再加速し、成行買い連続が復活したら撤退:踏み上げの前兆
損切り幅の目安を作るなら、ATR(真の値幅)や直近5分足の平均値幅の1〜1.5倍程度を目安にしても良いですが、最終的には“サインの否定”が基準です。
利確設計:目標は「VWAP回帰」か「5MA回帰の途中」
利確は、欲張るほど取り逃しが増えます。過熱の反転は値幅が出ますが、リバも急です。そこで利確は階段式が現実的です。
・第一利確:VWAP到達(当日参加者の平均コスト)
・第二利確:前日終値付近、または節目(ラウンドナンバー)
・第三利確:5MA方向へ向かう途中(ただし、反発サインが出たら即離脱)
例えば、エントリーからVWAPまでで半分利確し、残りはトレーリング(直近5分足高値を上抜けたらクローズ)にする、といった運用が再現性が高いです。
銘柄選別:仕掛け回数を減らすほど勝ちやすい
この手法は“どの銘柄でも”ではなく、“崩れやすい銘柄だけ”で効きます。選別の観点を具体化します。
・テーマ純度:AIという材料が株価を動かしている(直近の材料・思惑が集中)
・流動性:板が薄すぎると踏まれやすいが、厚すぎると崩れが遅い。中程度が扱いやすい
・値動きの形:GUやストップ高剥がれなど、短期資金が入りやすい形
・信用需給:短期資金が多そう(出来高が急増、上昇が急、個人注目度が高い)
“売りたい銘柄”ではなく“崩れやすい銘柄”を選ぶのがポイントです。
板・歩み値の読み方:初動を早く掴むための観察ポイント
短期の崩れは、ローソク足より先に板・歩み値に出ることがあります。次の観察は有効です。
・買い板の厚みが「段階的に」薄くなる:サポートが弱体化
・特定価格での買い支えが消える:見せ板の撤退
・同サイズの成行買い連続が止まり、成行売りが連続し始める:攻守交代
・上値側で約定が増えないのに下値の約定が増える:買いが逃げ、売りが主導
これらが出たら、ローソク足が崩れる前に“警戒モード”に入れます。
時間帯別のクセ:寄り付きと後場で何が違うか
寄り付きは参加者が一斉に入り、初動が出やすい反面、逆行も激しいです。後場は板が薄くなり、崩れが加速しやすい一方、逆張り勢のリバも鋭いです。
・寄り:高値更新失敗→1回目の崩れが最重要。戻りで入る方が安全なことが多い
・前場後半:材料が薄れ、利確が出やすい。出来高が落ちるなら崩れやすい
・後場:PTSや昼休みの需給で流れが変わる。薄板で急落→急反発の往復が増える
ショートは“最初の崩れ”が一番取りやすく、その後は難度が上がります。
ルールを数値化する:チェックリスト(文章で運用できる形)
実際に使えるよう、ルールを文章ベースで固定します。これだけで、迷いが大幅に減ります。
【環境認識】
・5日移動平均からの乖離が+20%以上である
・直近3日以内にGUまたは急騰がある(テーマ資金が入りやすい形)
・高値圏で出来高ピークの兆候がある(寄り直後が最大、または上試しで伸びない)
【トリガー】(どれか1つで可)
・高値更新失敗→直近押し安値を割る
・ストップ高剥がれ→戻りが弱い(出来高が伴わない)
・VWAP割れ→戻りでVWAPを超えられず再下落
【撤退(損切り)】
・当日高値更新、またはVWAP回復が定着したら即撤退
【利確】
・第一利確:VWAP到達
・第二利確:前日終値、節目、または反発サイン
ポジションサイズ:初心者ほど“固定損失額”で設計する
初心者が勝てない最大の理由は、エントリーの巧拙より「サイズがブレる」ことです。ショートは特に、逆行時の損失が大きくなりがちです。
おすすめは、1回のトレードで許容する損失額(例:口座の0.2%〜0.5%)を先に決め、損切り幅(円)で割って株数を決める方法です。
例:口座100万円、許容損失0.3%=3,000円。損切り幅が15円なら、3,000/15=200株(端数調整)です。ルールが守れるサイズで始めることが最優先です。
よくある失敗パターンと対策
失敗1:乖離+20%を見て“いきなり空売り”して踏まれる
対策:乖離はフィルター。トリガー(崩れの初動)を待つ。待てないならやらない。
失敗2:下げたのを見て追いかけ売りし、リバで刈られる
対策:追いかけるなら“戻り売り”に限定。VWAPや直近戻り高値まで戻って失速を待つ。
失敗3:利確が遅く、急反発で利益が消える
対策:VWAPで半分利確。残りはトレーリング。これで取りこぼしを許容する。
失敗4:ニュースで心が揺れ、ルール外の持ち越しをする
対策:この戦略はデイトレ前提。持ち越しは別戦略。混ぜない。
検証のやり方:過去チャートから“崩れの型”を抽出する
検証は、難しい統計モデルより「型の収集」が効きます。おすすめは、過去1〜2年のAIテーマ相場で急騰銘柄を集め、次の順でチェックする方法です。
1) 5MA乖離+20%以上になった日の候補を抽出
2) その日の“崩れの始点”を特定(高値更新失敗、VWAP割れ、剥がれ)
3) 崩れ始点からVWAPまでの平均値幅、到達率、到達時間を記録
4) 逆行(踏まれ)の最大幅と、どの否定条件で回避できたかを記録
これを20〜50サンプル作ると、「どのトリガーが自分に合うか」「損切り条件が妥当か」が見えてきます。
(参考)TradingView/Pine Scriptで乖離+20%を可視化する
チャート上で条件を見落とさないための簡単なスクリプト例です。銘柄選別に使うだけで、エントリーは裁量で行う想定です。
//@version=5
indicator("5MA Divergence %", overlay=false)
ma5 = ta.sma(close, 5)
div = (close / ma5 - 1) * 100
plot(div)
hline(20)
(参考)MT4/MQL4で“乖離フィルター”を作る発想
日本株の板・歩み値はMT4では扱いにくいですが、CFDやFXで類似ロジックを試す際の“フィルター”例です。乖離が一定以上のときだけ、戻り売りシグナルを有効にする、という考え方です。
// 乖離フィルター(例示) double ma5 = iMA(NULL, 0, 5, 0, MODE_SMA, PRICE_CLOSE, 0); double div = (Close[0] / ma5 - 1.0) * 100.0; bool overheat = (div >= 20.0);
まとめ:勝ち筋は“過熱”ではなく“崩れの初動”にある
AIテーマ株の急騰は魅力的ですが、終盤は買いが薄く、崩れは速い。ここでショートを狙うなら、乖離+20%は環境認識に徹し、崩れの初動(高値更新失敗、VWAP割れ、剥がれ)をトリガーにすることが重要です。
そして、ショートの優位性は「当てる力」より「撤退の速さ」と「利確の型」にあります。まずは小さいサイズで、VWAPまでの初動だけを淡々と取る。これがこの戦略の現実的な勝ち方です。


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