- この戦略で狙う“おいしい瞬間”はどこか
- PTS急落が起きる理由:本市場と“別物”として扱う
- 「投げ一巡」を定義する:主観ではなく“観測”で判断する
- PTSで見るべき3つの痕跡
- 翌朝の寄り付き前で見るべき4つの条件
- エントリーの型:3段階で“衝動買い”を排除する
- ステップ1:銘柄フィルタ(触っていい銘柄だけに絞る)
- ステップ2:価格帯の設計(買う場所を先に決める)
- ステップ3:トリガー(“買って良い瞬間”を一つに絞る)
- 損切りと利確:この戦略は“浅く切って回数で勝つ”
- 損切りの置き方(優先順位つき)
- 利確の設計(“戻りやすい壁”を使う)
- 具体例:数字でイメージする(架空ケース)
- この戦略が機能しやすい相場環境/機能しにくい相場環境
- “板薄”の罠:滑りと約定拒否を前提に設計する
- 監視リストの作り方:夜間にやることは“準備だけ”
- 当日の実行手順:寄り前〜寄り後15分だけで完結させる
- よくある失敗と対策
- 最小構成のチェックリスト(これだけ守れば事故が減る)
- 練習方法:いきなり実弾ではなく“検証→小ロット”が最短
- まとめ:勝つための核心は「底当て」ではなく「反転確認」
この戦略で狙う“おいしい瞬間”はどこか
本記事は、PTS(夜間取引)で急落した銘柄について「板が薄い=少ない成行で大きく動いた」ことを逆手に取り、翌朝の寄り付き前後で“投げ売り(パニック)”が一巡したタイミングを拾う短期逆張り戦略を解説します。狙いは長期の割安ではありません。狙うのは、夜間に生じた需給の歪みが、翌朝の現物市場(本市場)の流動性で修正される“修正局面”です。
ポイントは一つです。PTSの急落そのものを買うのではなく、「投げが一巡した痕跡」と「翌朝に戻りやすい構造」を揃えた上で、寄り付き周辺の“損切りの最終波”を吸収すること。これにより、初心者でも再現性を作りやすく、損切りも明確に置けます。
PTS急落が起きる理由:本市場と“別物”として扱う
PTSは本市場に比べて参加者が少なく、板(気配値)の厚みが薄いことが多いです。すると、同じ売りでも価格に与えるインパクトが大きくなります。例えば、日中なら吸収されるロットが、夜間は一気に数%の値幅として表面化します。ここで重要なのは「価格が下がった=悪い銘柄」と短絡しないことです。夜間の値動きは、必ずしも企業価値の変化ではなく、流動性の欠如や注文の偏りで生じることが多いからです。
典型例は次の3パターンです。
(1)ニュースや材料がないのに、薄い板に成行売りが当たり続けて急落する
(2)引け後に市場全体が荒れ(先物急落・米株先物下落など)、リスク回避の投げが集中する
(3)決算やIRなどで一時的に悲観が強まり、夜間の売りが過剰反応になる
(2)(3)は“理由がある下げ”なので慎重さが必要です。一方(1)は“理由のない下げ”になりやすく、翌朝に修正されやすい。したがって、この戦略は(1)を中心に、(2)(3)は条件を厳しくして限定的に扱うのが安全です。
「投げ一巡」を定義する:主観ではなく“観測”で判断する
逆張りで一番危険なのは「もう下がらないはず」という願望で買うことです。これを避けるには、“投げが一巡した”状態を、目で見える現象として定義します。ここではPTSと翌朝気配の両方で確認できる、実務的な観測ポイントを提示します。
PTSで見るべき3つの痕跡
① 下げの速度が鈍化する(値幅はまだあるが“刻み”が変わる)
急落局面では、約定が連続しながらティック単位でズルズル落ちます。投げが一巡すると、約定の間隔が空き、同じ価格帯での往復が増えます。「落ち方」が変わるのが最初のサインです。
② 直近安値を割りに行っても、割れた後に戻される
板が薄い銘柄ほど“安値更新”は簡単に見えます。しかし、投げが一巡した後は、安値を割る動きが出てもフォローが続かず、下に抜けた瞬間に買い戻されやすい。これは「売りが枯れ、買いの待機が増えた」状態です。
③ 出来高(約定代金)が急落の最中にピークを付け、その後は価格が動いても出来高が増えない
パニックは出来高を伴います。ピーク後に同程度の下げが起きても出来高が増えないなら、投げの弾が減っています。目安として、急落の最中に“最大の約定の塊”が出て以降、下げ継続でも約定が細るなら一巡の可能性が高まります。
翌朝の寄り付き前で見るべき4つの条件
PTSだけで判断して翌朝突っ込むと、寄り前の気配で再び売りが積み上がり、ギャップダウンが拡大することがあります。翌朝は次の4点をセットで確認します。
① 寄り前気配の売り板が“増えない”
PTSで急落した銘柄でも、翌朝に売りが殺到するなら需給はまだ悪いです。逆に、寄り前の売り板が薄いままなら、夜間で売りが出尽くした可能性があります。
② 気配が切り上がる(同値・下げ気配から上げ気配へ)
板が薄い銘柄では、買いが少し入るだけで気配が切り上がります。寄り前に“下げ幅が縮む”現象は、短期の買い戻しと新規買いが入っているシンプルなサインです。
③ 前日終値からの下げ幅が大きいのに、ストップ安気配に張り付いていない
下げ幅が大きいのにストップ安に張り付かない場合、売りの“決定打”が足りていません。これも一巡の候補です。逆にストップ安気配で売りが厚いなら、拾う局面ではありません。
④ 寄り直後に“最初の売り”が吸収される(1〜3分で下げ止まりの兆候)
寄り直後は、夜間の情報を見て焦った投資家の売り、ロスカット、アルゴの価格追随が重なります。ここで最初の成行売りが吸収され、安値更新が続かないなら“投げの最終波”が終わった可能性があります。
エントリーの型:3段階で“衝動買い”を排除する
この戦略を初心者が扱える形に落とすには、エントリーを型にして、判断を機械化するのが最短です。以下は現場で使いやすい3段階の型です。
ステップ1:銘柄フィルタ(触っていい銘柄だけに絞る)
板が薄い銘柄は値幅が出る一方で、損切りが滑りやすい。したがって「板が薄い=何でもOK」ではなく、最低限の安全装置を入れます。
・日中出来高が極端に少ない銘柄は避ける(寄り付き後も板が回復しないため)
・出来れば東証プライム/スタンダードで、寄り後に板が戻りやすい銘柄を優先
・材料が“致命的”なタイプ(破綻、上場廃止、監理、重大な不祥事など)の疑いがあるものは除外
このフィルタはシンプルで構いません。目的は「夜間の歪みが翌朝の流動性で修正される」銘柄に限定することです。
ステップ2:価格帯の設計(買う場所を先に決める)
寄り付きで慌てて買うと、単なる落ちナイフを掴みます。買う場所は“価格帯”で設計し、寄り付き後の動きがその帯に入った時だけ反応します。実務的には次の3ゾーンが使いやすいです。
ゾーンA:PTS終値(またはPTSの急落後の戻り高値)付近
ここは「夜間で投げた人の平均的な投げ値」に近く、戻りの抵抗にもなりやすい。寄り後の反発が本物かどうかを測る境界線になります。
ゾーンB:前日終値からの下げ幅が拡大した“過剰ゾーン”
例えば前日終値比で−5%〜−10%など、銘柄の普段の値動きより大きい下げが出た場所。ここはロスカットが出やすい反面、売りが尽きた時の反発も速いゾーンです。
ゾーンC:寄り直後の最安値圏(いわゆる“最初の投げ”の底)
ここは最もリスクが高い一方、リスクリワードが最も良くなります。初心者はゾーンCに飛びつかず、ゾーンB→Aへの回復を確認してから入る方が成功率が上がります。
ステップ3:トリガー(“買って良い瞬間”を一つに絞る)
トリガーは多いほど迷います。ここでは最も再現性が出やすい一つを推奨します。
推奨トリガー:寄り後に一度下げたが、5分足で安値を更新できず、VWAP(出来高加重平均)を上回って5分足が確定する
理由は明快です。①安値更新失敗=売りの勢い低下、②VWAP上抜け=平均コストより上で買いが成立し始めた、という“需給の反転”を同時に確認できるからです。
VWAPが見られない環境なら「寄り後の戻り高値(直近の反発高値)を1ティックでも更新してから入る」でも代用できます。重要なのは、反転を“確認してから”入ることです。
損切りと利確:この戦略は“浅く切って回数で勝つ”
PTS急落銘柄の翌朝逆張りは、当たれば速い反面、外れると速い。よって損切りは固定し、利確は分割が向きます。
損切りの置き方(優先順位つき)
第一優先:寄り後の直近安値割れ
トリガーを「安値更新失敗→VWAP回復」に置いたなら、安値割れはシナリオ否定です。迷わず撤退します。
第二優先:エントリー価格からの固定%(例:−0.8%〜−1.5%)
板が薄いと安値割れを待つと滑ることがあります。そういう銘柄は固定%で切る。固定幅は銘柄の値動きとスプレッドに合わせます。
第三優先:時間切れ(例:入ってから10〜15分で伸びない)
反発が速いのがこの戦略の旨味です。伸びないなら需給が弱い。時間切れで撤退し、次に備える方がトータルの損失が減ります。
利確の設計(“戻りやすい壁”を使う)
利確は「次に売りが出やすい価格」を目標にします。代表的な壁は次の通りです。
・前日終値(心理的節目)
・寄り付き価格(戻り売りが出やすい)
・PTSの急落開始点(“落ちた場所”は戻りの抵抗になりやすい)
・VWAPからの乖離が縮小した地点(過剰修正の収束)
実務では、例えば「半分を寄り値付近で利確、残りは前日終値付近まで伸ばす」など、2段階にするとメンタルが安定します。
具体例:数字でイメージする(架空ケース)
例として、前日終値1,000円の銘柄が、日中は出来高も普通だったとします。引け後、材料なしでPTSが薄い板のまま成行売りが続き、900円まで急落。その後、880〜910円で往復して引けた(投げが一巡し、戻りも出た)とします。
翌朝、寄り前気配は920円→930円と切り上がり、売り板が増えない。9:00に寄り付き925円。寄り直後に一度910円まで売られるが、1分で915円、3分で920円へ戻し、5分足で安値更新できずにVWAPを上回って確定。
この場合の型はこうです。
・エントリー:5分足確定で922〜928円(反転確認後)
・損切り:寄り後安値910円割れ、もしくは−1.2%程度(板次第)
・利確1:寄り付き価格925円〜前日終値1,000円の手前(戻り売りが出る)
・利確2:前日終値付近で残りを処分
大事なのは「910円を拾いにいく」のではなく、「910円を割れない反転を確認してから入る」点です。これだけで、失敗の多くが減ります。
この戦略が機能しやすい相場環境/機能しにくい相場環境
機能しやすい
・市場全体が落ち着いており、個別の需給だけが歪んだケース(材料なしのPTS急落)
・寄り前から買い気配が戻り、下げ幅が縮むケース
・寄り後の出来高が回復し、板が“本市場らしく”厚くなるケース
機能しにくい
・市場全体がリスクオフで、寄り付きから売りが継続する日(指数主導の下げ)
・悪材料の確度が高く、売りの継続性があるケース(需給修正ではなく価値の再評価)
・ストップ安張り付きで売りが溜まるケース(吸収できる流動性が足りない)
初心者が勝率を上げるには「機能しやすい環境だけを選ぶ」ことが最重要です。取引回数は減りますが、資金を守れます。
“板薄”の罠:滑りと約定拒否を前提に設計する
板が薄い銘柄は、逆張り成功時の反発が速い一方、損切り時の滑りが致命傷になりがちです。これを前提に、ルール側で吸収します。
・ロットは通常の半分から始める(最初からフルサイズは危険)
・成行は避け、基本は指値(ただし反転確認のトリガーは守る)
・損切りは「価格」だけでなく「時間」も併用する(粘らない)
・エントリー前に“逃げ道”(売り板の厚みと値飛び)を確認する
特に「買った瞬間に板が消える」タイプは、買いも売りも滑ります。そういう銘柄は最初から対象外にした方が良いです。
監視リストの作り方:夜間にやることは“準備だけ”
この戦略は、夜間にトレードする必要はありません。夜間は「候補を絞り、翌朝のプランを作る」だけで十分です。手順は次の通りです。
(1)PTSで急落している銘柄を発見(値幅・速度で目立つもの)
(2)材料の有無を確認し、致命的材料の疑いがあれば除外
(3)PTSの最安値、戻り高値、終値をメモ(翌朝のゾーン設計に使う)
(4)前日終値・当日高安・出来高を確認し、極端な薄商いなら除外
(5)翌朝の“観測ポイント”(売り板増加の有無、気配の切り上がり)を決める
ここまで準備すると、翌朝は“見るだけで判断できる”状態になります。
当日の実行手順:寄り前〜寄り後15分だけで完結させる
初心者が迷わないために、当日のルーチンを時間帯で固定します。
8:50〜8:59:気配を観測。売り板が増えていないか、気配が切り上がるかを確認。条件が悪ければ“見送り”を決定する。
9:00〜9:05:寄り直後の最初の投げを観測。安値更新が続くなら触らない。
9:05〜9:10:5分足確定で反転確認。VWAP回復・安値更新失敗が揃ったらエントリー。
9:10〜9:15:伸びなければ時間切れ撤退。伸びるなら利確1を実行し、残りは目標まで。
この戦略は「寄り付き直後が勝負」です。ダラダラ監視して中途半端に入ると、勝ち筋が薄れます。
よくある失敗と対策
失敗1:PTSで下がったから翌朝も下がると思い込み、寄りで空売り→急反発を踏む
対策:PTSは流動性が違う。翌朝の気配と寄り後の吸収を見てから判断する。
失敗2:PTS最安値を当てに行って刺さらず、焦って高値で買う
対策:底当てを捨て、反転確認後の“中段”で入る。再現性は中段の方が高い。
失敗3:戻りが弱いのに粘って、再崩落で大きく負ける
対策:時間切れ撤退をルール化。伸びない反発は“弱い反発”。
失敗4:板が薄すぎて損切りが飛ぶ
対策:対象銘柄のフィルタを厳しくし、ロットを落とす。滑りが構造的なら戦わない。
最小構成のチェックリスト(これだけ守れば事故が減る)
・PTS急落が“材料なし”または軽微で、流動性要因の可能性が高い
・PTSで投げ一巡の痕跡(速度鈍化、安値割れ戻し、出来高ピークアウト)がある
・翌朝、寄り前の売り板が増えず、気配が切り上がる
・寄り後、最初の投げで安値更新が続かない
・5分足で安値更新失敗+VWAP回復を確認してから入る
・損切り(安値割れ/固定%/時間切れ)を事前に決める
練習方法:いきなり実弾ではなく“検証→小ロット”が最短
この戦略は、過去チャートでの検証がやりやすい部類です。夜間のPTSデータが手元に残りにくい場合でも、翌朝のギャップと寄り後の値動きから“PTSで何が起きたか”を推定できます。
・まずは1か月分、寄り付き前後で大きくGDした銘柄を抽出し、寄り後15分の動きを観察する
・「安値更新失敗→VWAP回復」の型が機能した回数と、損切りになった回数を数える
・勝ちパターンが見えたら、小ロットで実行し、滑りやすい銘柄を除外していく
勝率よりも大切なのは、負けの大きさを小さく固定することです。これができると、反発を取り逃してもメンタルが崩れません。
まとめ:勝つための核心は「底当て」ではなく「反転確認」
PTS急落後の翌朝逆張りは、夜間の薄い板で生じた需給の歪みが、翌朝の流動性で修正される局面を狙う戦略です。成功の鍵は、PTSの急落を“買う”のではなく、投げ一巡の痕跡を観測し、翌朝の寄り付きで反転を確認してから入ることにあります。
この型を守れば、初心者でも「やっていい局面/やってはいけない局面」の切り分けができ、損切りも明確になります。派手な一発を狙わず、浅い損切りと素早い利確で、回数を積み上げる設計にしてください。


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