「良い材料が出ているのに株価が伸びない」「押し目で買ったつもりが、さらにズルズル下げる」——日本株の短期売買でありがちな失敗の多くは、需給の“目に見えない売り圧力”を読み切れていないことが原因です。
その代表例が信用買い残です。信用買いは期限(一般に6か月)があるため、期限が近づくと損益に関係なく強制的に手仕舞い(返済売り)が発生しやすく、これが「材料があるのに上がらない」「押し目が深くなる」現象を作ります。
逆に言うと、期日明け(期日到来後)を境に、この売り圧力が軽くなる銘柄があります。そこを狙うのが本記事のテーマです。単なるチャートの形ではなく、需給が軽くなる“理由”を作ってから入る。これが初心者でも再現性を上げる近道です。
- 1. 「期日明け」とは何か:なぜ株価が動きやすくなるのか
- 2. 期日明け狙いが機能しやすい銘柄・機能しにくい銘柄
- 3. 必要なデータ:初心者でも手に入る「需給の見える化」
- 4. 期日明けを読むコア発想:チャートではなく「建玉の痛み」を想像する
- 5. 実戦プロセス:スクリーニング→監視→エントリー→撤退まで
- 6. 具体例で理解する:よくある“期日明け反発”のシナリオ
- 7. 勝率を上げるためのチェックリスト(入る前に必ず見る)
- 8. よくある失敗パターンと対策
- 9. ルール化の雛形:あなた用にカスタムして運用する
- 10. まとめ:期日明けは「需給の節目」。節目で勝負し、節目で降りる
- 11. 「期日」を実務で推定する:完璧を捨てて確率を上げる
- 12. もう一段精度を上げる:信用評価損益率と“我慢の限界”
- 13. 地合いを無視しない:指数とセクターの“追い風確認”
- 14. トレード前の準備:板と歩み値で“売り在庫の残量”を見る
- 15. 最低限の運用ルール:記録して“自分の勝ちパターン”を抽出する
1. 「期日明け」とは何か:なぜ株価が動きやすくなるのか
信用取引の買い建てには期限があります(制度信用は原則6か月)。期限が来ると、投資家は現引き(現物化)か反対売買(返済売り)で決済する必要があります。多くの個人は資金効率の観点から現引きを選びづらく、結果として返済売りが集中しやすい。これが「期日」という需給イベントです。
ここで重要なのは、期日が市場全体のカレンダーに一律で載るイベントではなく、“その銘柄で信用買いが積み上がった日から6か月後”に分散して来る点です。つまり、同じ銘柄でも建玉が増えた局面が明確なら、6か月後に返済売りが増える確率が上がります。
2. 期日明け狙いが機能しやすい銘柄・機能しにくい銘柄
万能な戦略はありません。期日明けが効きやすいのは、以下の条件が揃うときです。
- 信用買い残が明確に膨らんでいる(信用倍率が上がった/買い残が増えた)
- 株価が一度上昇してから調整している(上で掴んだ買い方が多い)
- 出来高が細りながら下げる(投げ売りではなく“ジリ下げ”=返済売りの疑い)
- 材料・テーマが完全には死んでいない(決算、受注、政策、指数、セクターなど)
逆に機能しにくいのは、①決算で致命的に悪化、②不祥事・上場維持懸念、③超低流動性でスプレッドが広い、④信用買いが少なく“期日要因”が薄い、のようなケースです。期日明けは需給の追い風ですが、ファンダの崩壊を打ち消す魔法ではありません。
3. 必要なデータ:初心者でも手に入る「需給の見える化」
期日明けを狙うには、最低限次の3点を追います。
- 信用買い残・信用売り残・信用倍率:週次で更新されることが多い。買い残が増え続けているか、減り始めたかを見る。
- 株価の上昇局面の起点:いつから信用が積み上がったかの“仮説”を立てる(急騰開始日、ブレイク日など)。
- 出来高と値動きの整合:下げ局面で出来高が膨らむなら投げ・悪材料、細るなら需給の整理の可能性。
「期日が正確にいつか」を完璧に当てにいく必要はありません。むしろ重要なのは、“返済売りが終盤に近い”ことを複数の証拠で確認することです。
4. 期日明けを読むコア発想:チャートではなく「建玉の痛み」を想像する
信用買いは“負けていると売らされる”ポジションです。買い方が含み損を抱えると、損切り・追証・期日が同じ方向(売り)に働きます。したがって、期日明け狙いの本質は、
「含み損の買い方が一巡し、これ以上売りが出にくい価格帯を特定して、そこからの反発を取る」
です。ここで役に立つのが、過去の急騰起点(買いが増えた場所)と、直近の出来高の減衰です。買い方が苦しい局面ほど、板は重くなり、上値で戻り売りが出ます。しかし、その戻り売りが鈍り、押しても下がらない状況が出れば、需給は変化し始めています。
5. 実戦プロセス:スクリーニング→監視→エントリー→撤退まで
5-1. スクリーニング(候補抽出)
まずは「期日明けの旨味が出やすい候補」を絞ります。具体的には次の順番です。
- (A)直近3〜6か月のどこかで急騰・ブレイクがあった銘柄
- (B)その後、高値から10〜25%程度の調整で止まりそうな形(下落トレンド継続ではない)
- (C)信用買い残が増えていた、または高水準で張り付いていた
- (D)出来高が調整局面で細っている(売りが枯れ始めている)
(A)(C)は“期日要因が存在する”根拠、(B)(D)は“反発余地がある”根拠です。両方揃わない銘柄は触りません。
5-2. 監視(需給の変化点を待つ)
候補に入れたら、次のサインを待ちます。
- 安値更新しても出来高が増えない(売りの主体が弱い)
- 下ヒゲが増える(下で買い戻し・拾いが入る)
- VWAP近辺での攻防が強い(機関/大口が平均価格を意識している)
- 売り板が薄くなる瞬間がある(戻り売りの在庫が減っている)
ここで初心者がやりがちなのは「安いと思ったらすぐ買う」ことです。期日絡みは、下げの“時間”が長くなりやすい。安値圏での横ばい(売り枯れ)を確認してからが本番です。
5-3. エントリー(押し目買いの型を固定する)
エントリーは、次の2パターンに固定するとブレにくいです。
型①:反発初動(底打ち確認のブレイク)
- 前日高値、または直近数日の戻り高値を上抜く
- 上抜いた瞬間に出来高が乗る
- 押し戻されても、上抜き水準を割りにくい
この型は「底を当てる」のではなく「底打ちした後に乗る」ので、損切りが明確です。損切りラインは上抜き水準の少し下、または直近安値割れ。
型②:再押し(反発→押し→拾い直し)
- 一度反発して短期移動平均線まで戻す
- その後の押しで出来高が減り、安値を切り下げない
- VWAP/移動平均線を再び回復する
この型は「買いが入った事実」を見てから入るため、心理的に楽です。損切りは直近の押し安値割れ。
5-4. 利確(期日明けの“戻り売りゾーン”を利益に変える)
期日明け狙いは「上がり続ける青天井」を取りにいくより、戻り売りが出やすい価格帯までの反発を取るほうが安定します。具体的には次の価格帯が候補です。
- 調整前の出来高が多かった価格帯(上で掴んだ人が戻ってくる)
- 25日線、75日線など中期線(戻りの目安)
- 直近高値の手前(ブレイク失敗の売りが出やすい)
初心者は「もっと上がるかも」で利確を先延ばしにしがちですが、期日絡みは“戻したら売られる”ことも多い。利確ルールを先に決め、分割で抜けるほうが資金曲線が安定します。
5-5. 撤退(負け方を規格化する)
期日明け狙いで最悪なのは「需給が軽くなるはず」という思い込みで、下落トレンドに付き合うことです。撤退条件はシンプルにします。
- エントリー根拠にした安値(押し安値・反発起点)を終値で割ったら撤退
- 出来高を伴って安値更新したら撤退(投げの発生)
- 想定材料が否定されたら撤退(決算でガイダンス急悪化など)
撤退は「正しいかどうか」ではなく「損失を限定するかどうか」です。損切りが小さいほど、次の良い局面でサイズを張れます。
6. 具体例で理解する:よくある“期日明け反発”のシナリオ
ここでは架空の銘柄A(東証プライムの中型)を例に、時系列で考えます。
6-1. 0日目:材料でブレイク、信用買いが一気に増える
銘柄Aは新規大型受注を発表し、出来高急増で上方ブレイク。短期勢が一斉に飛び乗り、信用買いが増えます。ここが「6か月後に返済売りが来る起点」になりやすい。
6-2. 1〜2か月:高値圏で揉み合い、買い方が“降りにくい”状態
高値圏でヨコヨコが続くと、買い方は「そのうちもう一段」と期待して建玉を維持しがちです。ここで信用買い残が積み上がると、後の下落局面で売りが長引きます。
6-3. 3〜5か月:テーマが一服し、ジリ下げが始まる
材料が出尽くし、株価は下落。ポイントは、悪材料がなくても下げることです。ここで出来高が細りながら下げるなら、売りの主体は「返済売り」や「含み損整理」の可能性が高い。
6-4. 6か月付近:安値圏で下ヒゲが増え、売りが枯れ始める
安値圏で下ヒゲが増え、引けで戻す日が出てきます。これは、下で拾う資金(現物の長期資金、短期の逆張り)が入り始めたサインです。ここで焦って買うのではなく、戻り高値の上抜けを待つのが型①です。
6-5. 期日明け後:戻り売りをこなしながら、反発が継続
上抜け後に押しても割れなくなれば、需給が軽くなっています。利確は25日線付近、出来高の多い価格帯、直近高値手前など、事前に“売られやすい場所”で分割して行う。これで「取れるところを取り切る」動きになります。
7. 勝率を上げるためのチェックリスト(入る前に必ず見る)
- 信用買い残は高いか/増えていたか(期日要因があるか)
- 調整が“悪材料由来”ではないか(需給整理なのか)
- 下げ局面で出来高が枯れているか(投げが残っていないか)
- 安値圏での値動きが改善しているか(下ヒゲ、切り返し)
- 損切りラインが明確か(根拠が崩れたら即撤退できるか)
- 利確場所を事前に決めているか(戻り売りゾーンで迷わないか)
このチェックが揃っていれば、たとえ負けても損失は限定され、次に繋がります。逆に揃っていないのに入ると、ただの“安いから買った”になりがちです。
8. よくある失敗パターンと対策
8-1. 「期日明けだから上がる」と決めつける
期日明けは“売り圧力が減る可能性”であって、“買いが湧く保証”ではありません。買いが入る理由(材料、セクター、地合い)がない銘柄は、ただ横ばいで終わることもあります。対策は、ブレイクやVWAP回復など、買いが入った事実で入ることです。
8-2. ナンピンで期日まで耐える
初心者が最も資金を失いやすいパターンです。期日は“延命”の理由ではなく、“需給が変化するかもしれない観測点”です。損切りをせずに耐えると、地合い悪化や悪材料で一気に崩れたときに逃げられません。対策は、損切りラインを先に固定し、割ったら撤退です。
8-3. 低流動性銘柄でスリッページを食らう
期日明け狙いは短期反発を取る場面が多いため、約定コストが成績に直撃します。出来高が極端に少ない銘柄は、正しい読みでも勝てません。対策は、平均出来高と板の厚みを最低条件にすることです。
9. ルール化の雛形:あなた用にカスタムして運用する
最後に、初心者でもそのまま運用しやすい“雛形”を提示します。数値はあなたの銘柄レンジに合わせて微調整してください。
- 候補条件:3〜6か月以内に高値更新 or 明確なブレイクがあり、その後10〜25%調整
- 需給条件:信用買い残が増加していた/高水準(週次で確認)
- 価格条件:安値圏で3〜7日横ばい、下げの出来高が枯れる
- エントリー:直近戻り高値を上抜け+出来高増(型①) or 反発後の再押しでVWAP回復(型②)
- 損切り:押し安値割れ(終値)または出来高を伴う安値更新
- 利確:25日線・出来高帯・直近高値手前で分割利確
- 資金配分:1トレードの許容損失を資金の0.5〜1.0%以内に固定
この雛形は“当て物”ではなく、需給の変化を確認してから取りに行く設計です。期日明けは、チャートに表れにくい需給が整理される局面だからこそ、ルール化の効果が出ます。
10. まとめ:期日明けは「需給の節目」。節目で勝負し、節目で降りる
信用買い残の期日明け決済は、株価の裏側で起きる“売りの在庫処分”です。この在庫が減れば、同じ材料でも株価は上がりやすくなります。だからこそ、押し目買いをするときは「値ごろ」ではなく「需給」を軸に判断する。
最後にもう一度だけ強調します。期日明けは“理由”であり、エントリーは“事実”です。事実(ブレイク、出来高、VWAP回復)が揃ったときだけ入る。これを徹底すれば、初心者でも無理な逆張りを減らし、勝ちやすい局面に集中できます。
投資には元本割れのリスクがあります。必ずご自身のルールと資金管理の範囲で取引してください。
11. 「期日」を実務で推定する:完璧を捨てて確率を上げる
期日は「この日に返済が出る」とピンポイントで分かるものではありません。なぜなら、同じ日に建てた建玉でも、途中で返済されたり、別日に追加されたりして、実際の“期日圧力”は分散するからです。そこで実戦では、次のように確率で推定します。
- 起点日を1つ決める:急騰開始日、出来高が急増したブレイク日、ニュース発生日など。
- 約6か月後を“警戒ゾーン”にする:ピンポイントではなく、前後2〜3週間をまとめて警戒。
- 週次の信用残で「減り方」を観察:買い残が減り始めたら、期日圧力が出ている可能性。
この推定で十分です。大切なのは「期日を当てる」ことではなく、期日由来の売りが弱まり、買いが優勢になった局面だけを取ることです。
12. もう一段精度を上げる:信用評価損益率と“我慢の限界”
信用買い方がどれだけ苦しいかを測る指標として、証券会社や情報サイトで公開される信用評価損益率(買い方の含み損益の目安)が役に立ちます。一般に、評価損が深いほど投げが出やすく、逆に言えば投げが出た後は反発余地が生まれます。
期日明け狙いでは、次の組み合わせが強いです。
- 買い残が高水準(売り在庫が多い)
- 評価損が拡大(我慢の限界が近い)
- しかし出来高は枯れ始める(投げが一巡)
この3つが揃うと、「売りたい人はすでに売った」状態になりやすく、少しの買いで株価が動きます。ここで型①(ブレイク)に乗せると、リスクを抑えたまま反発を取れます。
13. 地合いを無視しない:指数とセクターの“追い風確認”
個別の需給が良くても、指数が崩れていると反発が続きません。特に期日明け反発は、短期資金が入ってもすぐ利確されやすいので、地合いの追い風があるほうが伸びます。初心者は最低限、次を確認してください。
- 日経平均/ TOPIXが5日線の上か下か(上なら追い風、下なら利確優先)
- 同セクターの先導銘柄が崩れていないか(セクター資金が抜けていないか)
- 米国先物・ドル円の急変(寄り付きのボラが増える要因)
地合いが逆風なら、エントリーしても「戻ったらすぐ売る」前提で、利確を浅くし、ポジションサイズも落とす。これだけで致命傷を避けられます。
14. トレード前の準備:板と歩み値で“売り在庫の残量”を見る
期日明け狙いは、板と歩み値の観察が刺さります。見たいのはテクニックではなく売り在庫の残量感です。
- 上値に厚い売り板が出ても、約定で薄くなる:戻り売りが消化されている。
- 売り板が急に引っ込む:売り手が減った、または買いが強くなった。
- 小さな買いが連続しても値が崩れない:下の売りが枯れている。
逆に、戻り局面で売り板が増え続け、約定してもすぐ補充されるなら、上で掴んだ買い方の戻り売りがまだ厚い。そういう局面は、利確を急ぐか、次の押しまで待ちます。
15. 最低限の運用ルール:記録して“自分の勝ちパターン”を抽出する
期日明け狙いは、銘柄・地合いで当たり外れが出ます。だからこそ、簡単でいいので記録し、勝ったときの共通点を集めるのが最短です。おすすめは次の5項目です。
- (1)急騰起点日(仮説)
- (2)エントリーの型(①ブレイク/②再押し)
- (3)下げ局面の出来高(増えた/枯れた)
- (4)利確した場所(25日線、出来高帯、直近高値手前など)
- (5)損切り理由(安値割れ、出来高急増、材料否定など)
10回分も溜まれば、「自分はブレイク型が得意」「地合い逆風だと負けやすい」などの癖が見えます。癖が分かれば、勝ちやすい局面に絞れます。


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