本記事は「VIXが1日で+20%以上上昇した翌日の寄り付き逆張り」という、いわゆるボラティリティ・ショック後の“翌日寄り”に出やすい需給の歪みを狙う短期戦略を、初心者でも実行できるレベルまで分解して解説します。結論から言うと、VIXが急騰する日は市場の恐怖が一気に増幅し、機械的なヘッジ(先物売り・ETF売り・デルタヘッジ・リスクパリティのリスク落とし等)が連鎖します。その反動として翌日寄り付きに「投げの残り」と「ヘッジ解消/買い戻し」が同時に出やすく、短時間の平均回帰(リバウンド)が起こりやすい局面が生まれます。
ただし、これは“何でも翌日買えば勝てる”類ではありません。急落が継続する局面では逆張りが最も危険です。だからこそ、事前条件(VIX急騰の定義、前日の下落幅、翌日寄り前の先物・金利・為替の状態、寄り付きの値動きの形)を具体的にルール化し、損切りと撤退条件を固定し、狙う時間帯を限定して統計的に優位な瞬間だけを抜き取ります。
- VIX急騰が示すもの:なぜ翌日寄りに歪みが出るのか
- 戦略の全体像:狙うのは“翌日寄りの15〜60分”だけ
- エントリー条件(事前フィルター):ここを外すとただの危険な逆張り
- エントリー条件(当日シグナル):寄り付きの“形”で入る
- 利確と損切り:この戦略は“浅く取って深く切らない”が基本
- 銘柄・商品選定:個別株より、まずは指数連動が取り組みやすい
- 具体例:翌日寄りのシナリオを3パターンで想定しておく
- 検証のやり方:あなたの市場・時間軸で“統計”を取る
- リスク管理:逆張りの事故を防ぐ実務ルール
- 発展編:個別株でやるなら「指数寄与度×板×VWAP」に落とし込む
- よくある失敗と対策
- まとめ:勝ち筋は「翌日寄りの歪みだけを抜く」こと
VIX急騰が示すもの:なぜ翌日寄りに歪みが出るのか
VIXはS&P500オプションのインプライド・ボラティリティ(将来の変動見込み)を反映する代表的な指数です。VIXが1日で+20%以上上昇する日は、単なる下落ではなく「不確実性が跳ねた日」です。下落の“速さ”と“恐怖の増幅”がセットになりやすく、以下のような機械的フローが同時に走ります。
まず、リスク量(VaR)やボラ目標に基づく運用(リスクパリティ、ボラターゲット型ファンド)は、ボラが上がると機械的にエクスポージャーを落とします。次に、オプション市場ではデルタヘッジのために先物が売られやすく、下落が下落を呼ぶ構造が一時的に強まります。さらに、個人・機関のロスカット、信用の追証、ETFのリバランス等が重なり、終盤に向けて“売りが売りを呼ぶ”状態になりがちです。
この状態が一晩経つと、翌朝は「昨日売り切れなかった投げ(残り)」と「過剰ヘッジの巻き戻し」が寄り付き近辺に集中しやすくなります。寄りは流動性が最大になる時間帯で、売りも買い戻しも一斉にぶつかります。結果として、寄り後に“瞬間的な行き過ぎ”が出やすく、そこを短時間で逆張りする、という発想です。
戦略の全体像:狙うのは“翌日寄りの15〜60分”だけ
この戦略で狙うべき時間帯は、基本的に「翌日寄り付き〜前場序盤」です。理由は単純で、需給の歪みが集中しやすいのが寄りだからです。前場後半〜後場まで引っ張ると、材料(米金利、為替、指数先物、海外ヘッドライン)が追加され、優位性が薄れます。
時間帯の目安としては、寄り直後の最初の5分はノイズも多くスプレッドも広がりやすいので、初心者は“寄ってから5分〜”の形(下ヒゲ、切り返し、VWAP回復など)を確認して入るのが現実的です。上級者は寄り付きの気配と板で“投げの残り”を先に推定して入りに行きますが、再現性を優先するなら後追いで十分です。
エントリー条件(事前フィルター):ここを外すとただの危険な逆張り
まず前日(VIXが+20%以上上昇した日)の条件を定義します。VIXの「+20%」は目安ですが、重要なのは“恐怖の急増”を定量化することです。株式側の条件も併用します。例えばS&P500やNASDAQ100が前日終値ベースで-2%〜-4%程度以上下げ、かつ終盤に下げが加速したような日が典型です。日本時間で狙う場合は、米株の急落とVIX急騰が確認できた翌営業日の「日経先物(夜間)」「TOPIX先物」「ドル円」「米10年金利」の状態を必ず見るべきです。
翌朝の寄り前チェックとして、最低限見るものを固定します。①米株先物(S&P先物)が寄り前にさらに大きく下げ続けていないか、②米10年金利が“急騰”していないか(株に逆風になりやすい)、③ドル円が急激な円高に走っていないか(日本株の寄りを追加で押しやすい)、④前日の下落要因が“継続ニュース”か“単発ショック”か、です。単発ショックのほうが翌日リバの確率が上がりやすい一方、構造的な悪化(信用不安、金融システム懸念、戦争拡大など)は継続しやすく逆張りが機能しにくい、という整理です。
事前フィルターの実務的な基準例を挙げます。前日VIX+20%以上、かつ前日指数が大陰線(終値が安値圏)で、翌朝の先物が「前日終値からの下げ幅を縮めている」または「下げ止まりの兆し(下げ幅の収束)」を示している場合に限り、翌日寄り逆張りを検討します。逆に、先物が寄り前にさらに下げ幅を拡大している、あるいは大きな悪材料が追加された場合は“そもそもやらない”が正解です。
エントリー条件(当日シグナル):寄り付きの“形”で入る
当日のエントリーは、寄り付き直後の値動きの「形」をルール化します。初心者がやりがちなのは、寄った瞬間に成行で買って捕まるパターンです。狙うべきは“投げが一巡した合図”です。例えば次のような形が実戦的です。
一つ目は「寄り付き後の最初の5分足で安値更新に失敗し、下ヒゲを付ける」形です。寄り直後にもう一段の投げが出ても、安値を更新できないなら売り圧力が枯れた可能性が高い。二つ目は「寄り直後に急落→出来高ピーク→価格は下げ止まり→VWAPへ戻り始める」形で、出来高のピークアウトを確認してから入ります。三つ目は「指数は弱いが、寄り直後から指数寄与度の高い大型株が先に下げ止まり、板が厚くなる」形です。これは“機関の買い戻し”が早い銘柄に資金が入る典型で、指数連動の巻き戻しが起こるときに出やすい挙動です。
具体的なルール例として、日経225先物やTOPIX先物であれば、寄り後5分の最安値を明確に割らず、5分足の終値がその足の高値寄り、かつ次の足で前足高値を更新したらエントリー、といった「二段階確認」にすると誤爆が減ります。個別株でやるなら、指数より先に“値幅が戻りやすい銘柄”を選び、同様に5分足の安値更新失敗+出来高減少の組み合わせを待ちます。
利確と損切り:この戦略は“浅く取って深く切らない”が基本
寄り逆張りは、当たると早い一方で、外すと一瞬でやられます。だから、利確と損切りはエントリーより重要です。基本設計は「損切りは明確に固定」「利確は段階的」です。
損切りは、最も分かりやすいのが「当日寄り後の直近安値(エントリー根拠となった安値)を割れたら撤退」です。これは“投げ一巡”という前提が崩れたことを意味します。指数先物なら、寄り付きの安値割れ、あるいは最初の5分安値割れを撤退ラインにするのがシンプルです。個別株なら、VWAP下に再び沈む、あるいは出来高を伴って安値更新したら即撤退、といった条件が現実的です。
利確は、①まず戻りの第一ターゲットを「VWAP」または「寄り付き価格」に置きます。寄りで下に振れた反動を狙うので、VWAP到達は十分なリターンになりやすい。②次に、前日終値や前日安値(レジスタンスに転じやすい)に近づくにつれ、伸びが鈍ります。そこは半分以上を利確し、残りはトレーリング(直近安値を切ったら手仕舞い)で対応します。③“欲張って後場まで持つ”のは、この戦略の設計思想とズレます。寄りの歪みが消えたら撤退です。
銘柄・商品選定:個別株より、まずは指数連動が取り組みやすい
初心者が最初に扱うなら、個別株より指数(先物・ETF)が適しています。理由は、VIX急騰という現象が「市場全体のヘッジと巻き戻し」に由来するため、指数のほうがフローの影響をダイレクトに受けるからです。個別株は材料や需給の癖が強く、同じ“市場ショック”でも値動きがバラけます。
日本株で実行するなら、日経225先物(ミニ/マイクロ)やTOPIX先物、指数連動ETFが候補です。個別株でやる場合は、指数寄与度が高い大型株、もしくは市場ショック時に“最初に売られやすいが戻りも速い”高流動性銘柄に絞ります。具体的には、出来高が日常的に十分あり、寄り付きのスプレッドが狭く、板が厚い銘柄が前提です。薄い銘柄で逆張りすると、反発しない上に逃げられません。
具体例:翌日寄りのシナリオを3パターンで想定しておく
実戦では、寄り付き前に「こうなったら入る/やめる」を3パターン用意すると迷いが減ります。
パターンA:寄り前先物が下げ止まり、寄りでギャップダウンするが、最初の投げで安値更新できず下ヒゲ→反発。このときは、5分足の安値更新失敗を見てから入り、VWAPまでを第一利確にします。パターンB:寄り前先物は弱いが、寄り直後の投げが短時間で終わり、出来高がピークアウトして反発。この場合は、出来高の“山”を見てから入り、反発が鈍いなら早めに利確します。パターンC:寄り前先物が弱く、寄り後も安値更新が止まらない。この場合は逆張りはしません。条件を満たしていないので撤退です。
このように、戦略は「入る」より「入らない」を決めることで期待値が上がります。逆張りは特に、やらない日を増やすほど成績が安定しやすいです。
検証のやり方:あなたの市場・時間軸で“統計”を取る
この戦略の肝は、VIX急騰という外部シグナルに対して、あなたがトレードする市場(日本株、米株、先物、ETF)の“翌日寄り”で本当に優位性が出るかを確認することです。最低限やるべき検証は、①VIX前日比+20%以上の日を抽出、②翌営業日の寄りから30分・60分の指数リターンを集計、③前日下落幅や当日寄り前先物の状態で条件分岐、④最大逆行(DD)と平均リターンをセットで見る、です。
初心者でも、TradingViewや無料データで簡易検証は可能です。重要なのは「平均がプラスでも、DDが致命的なら戦略として不適格」という視点です。寄り逆張りは“勝率”より“損失の管理”で成否が決まります。
リスク管理:逆張りの事故を防ぐ実務ルール
事故を防ぐルールは、抽象論ではなく数値と手順で固定します。例えば、1トレードの最大許容損失を口座の0.5%〜1%に制限し、損切り幅(先物なら何円、ETFなら何%)から逆算してロットを決めます。損切りは“気分”で伸ばしません。寄り後に想定外のニュースが出た場合は、テクニカル以前に撤退します。
また、同日に複数回の逆張りを繰り返すと、最も危険な“落ちるナイフ”に刺さりやすくなります。原則は1回勝負、良くても2回まで。連敗したらその日は終了です。さらに、信用取引やレバレッジは、最初は低めに抑えます。反発は早いですが、外したときのスピードも早いからです。
発展編:個別株でやるなら「指数寄与度×板×VWAP」に落とし込む
個別株で翌日寄り逆張りをやる場合、単に“下がったから買う”では再現性がありません。指数が反発する局面では、指数寄与度の高い銘柄(またはETFに組み込まれている比率が大きい銘柄)に、機械的な買い戻しが入りやすいという仮説を立てます。そのうえで、寄り直後に「板の買い厚が戻る」「歩み値で売りの連続が止まる」「VWAPを回復する」などの具体シグナルを待ちます。
さらに実務的には、寄り前気配で極端に売り気配が強い銘柄でも、板が厚く流動性があるものを優先します。薄い銘柄は、反発してもスプレッドで取られ、反発しなければ逃げられません。指数と一緒に“戻りやすい器”を選ぶ、という発想です。
よくある失敗と対策
失敗例の代表は3つです。①VIX急騰の翌日なら何でも買う(事前フィルター不足)。②寄った瞬間に飛びつく(当日シグナル不足)。③損切りを先送りして耐える(リスク管理崩壊)。対策はそれぞれ、①「先物が下げ止まりの兆しを示す日だけ」②「5分足の安値更新失敗+切り返し確認」③「直近安値割れ即撤退+ロット固定」です。
もう一つ重要なのが、相場環境です。トレンドが強い下落局面(金融不安、信用収縮、政策ショックなど)では、VIX急騰の翌日でも反発が弱いか、反発してもすぐ叩かれます。環境が悪いと判断したら“この戦略自体を休む”のが上級者のリスク管理です。
まとめ:勝ち筋は「翌日寄りの歪みだけを抜く」こと
VIXが1日で+20%以上上昇する日は、市場に恐怖が走り、機械的フローが増幅しやすい日です。その翌日寄り付きには、投げの残りとヘッジ解消がぶつかり、短時間の平均回帰が起こりやすい瞬間があります。狙うのは“翌日寄りの15〜60分”に限定し、事前フィルター(先物・金利・為替・ニュース)と当日シグナル(安値更新失敗、出来高ピークアウト、VWAP回復)で条件を絞り、損切りを固定して浅く利確する。これが、この戦略の核です。
最後に、やるべきことは2つだけです。あなたが取引する商品で統計を取り、優位性がある条件だけを残すこと。そして、損切りとロットを固定して、事故を構造的に防ぐこと。逆張りは才能ではなく、設計で勝率と生存率を上げるゲームです。


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