- この戦略は何を狙うのか(前日高値は“損切りが溜まる価格帯”)
- 向いている相場・向いていない相場(やる日を選ぶのが成績の半分)
- 銘柄選定:前日高値が“意味を持つ”条件を揃える
- 観察ポイント1:ローソク足だけでなく“試した回数”を見る
- 観察ポイント2:板と歩み値で“買いの勢いが途切れた瞬間”を特定する
- エントリー設計:3つの型(安全型・標準型・攻め型)
- 損切り設計:この手法は“浅い損切り”が生命線
- 利確設計:目標は“VWAP・直近サポート・節目”の3点
- 具体例:寄り前から利確までの思考プロセス(架空ケース)
- “ダマシ”を避けるフィルター:3つだけ徹底する
- 執行のコツ:スプレッドと板の厚みで“売り方”を変える
- リスクシナリオ:踏み上げと急材料にどう対応するか
- 検証方法:自分専用の“失敗パターン辞書”を作る
- チェックリスト:エントリー前に30秒で確認する項目
この戦略は何を狙うのか(前日高値は“損切りが溜まる価格帯”)
前日高値は、チャート上で最もわかりやすい水平ラインの一つです。テクニカルが得意でない人でも「昨日の高値を超えた/超えられない」は判断しやすく、注文が集中しやすい水準になります。ここで重要なのは、前日高値が“抵抗線”として機能する局面では、買い方の心理が非常に単純になることです。
買い方は「高値を超えれば上に走る」と期待してブレイク狙いで入ります。しかし、実際には①高値手前で失速、②高値タッチで跳ね返される、③一瞬抜けたように見えてすぐ戻る(フェイクブレイク)といった形で失敗することが多い。この失敗局面では、ブレイク買い勢の損切りが連鎖し、さらに“押し目買い”のつもりで入った人も含み損になりやすく、売り圧力が急に厚くなります。
この戦略は、その「ブレイク失敗が確定した瞬間」に限定してショート(売り)を仕掛け、短期の下落を取りに行きます。狙いは大波ではなく、反落の初動〜VWAP付近、もしくは直近サポートまでの“取りやすい区間”です。大事なのは、前日高値そのものを当てることではなく、「超えられなかったことが市場で共有されたタイミング」を板と足で見極める点です。
向いている相場・向いていない相場(やる日を選ぶのが成績の半分)
この手法は万能ではありません。むしろ、やる日を選ばないと簡単に焼かれます。前日高値が抵抗として機能しやすいのは、次のような環境です。
まず、指数が方向感に乏しい日。日経平均やTOPIXがヨコヨコで、セクターが入れ替わりながら動く日は、個別が「節目で反転→戻り売りが利く」形になりやすい。次に、材料が弱い(もしくは出尽くし)で、買い上がる理由が薄い銘柄。さらに、寄り天・高値圏失速が起きやすい“短期資金のゲーム”になっている銘柄です。
逆に向かないのは、強いトレンド日です。例えば、指数先物が一方向に走っている、米国市場の大きな追い風がある、明確な好材料で機関が買い上げている、といった局面では前日高値が簡単に貫通され、失敗に見えた動きがすぐ再上昇します。ブレイク失敗を売った瞬間に踏まれる典型です。
もう一つの地雷は、出来高が薄い銘柄です。薄い板では、たまたまの成行で上下に飛び、前日高値を“超えたように見せて戻す”動きが多発します。これはパターンに見えても再現性が低い。基本は「板が厚く、参加者が多い銘柄」を選びます。
銘柄選定:前日高値が“意味を持つ”条件を揃える
前日高値が意識されるには、前日自体の出来高と値幅が必要です。前日が閑散で、ろくに売買されていない高値をラインとして引いても、誰も見ていません。ここは初心者が最も落とし穴にハマるポイントです。
選定の基準は、①前日出来高が十分(少なくとも普段より増えている)、②前日に上昇して注目を集めた、もしくは大きく動いて“ストーリー”がある、③当日の寄り前気配でギャップがあり、前日高値が近い位置にある、の3点です。特に③が重要で、当日の株価が前日高値から遠いと、到達までに時間がかかり、その間に別の要因でチャートが崩れます。
具体的には「寄り付き〜前場で前日高値を試しに行きそうな距離感」を狙います。前日高値まで0.5〜2.0%程度の範囲が扱いやすい。近すぎると寄り付き直後に乱高下して形が崩れ、遠すぎると途中で材料が変わるからです。
観察ポイント1:ローソク足だけでなく“試した回数”を見る
前日高値ブレイク失敗の精度は、「何回試して失敗したか」で大きく変わります。1回目のタッチは勢いで抜けることも多い。一方、2回目・3回目と試して抜けないと、買いが疲弊し、売りが優勢になりやすい。これは、買い方が“同じ場所で何度も含み損になる”ことで、損切りの閾値が下がるためです。
そこで、5分足で見たときに、前日高値付近で上ヒゲが連発しているか、同値付近で揉んだ後に出来高が落ちているかを観察します。揉むほど良いわけではありませんが、「抜けないのに時間だけが過ぎる」状態は、反落の期待値が上がります。
ただし、揉みながら出来高が増えている場合は危険です。増えているのに抜けないのは売りが強い可能性もありますが、同時に“吸収して上に行く”準備にもなり得ます。このケースは板と歩み値で、売りが優勢かどうかを確認します。
観察ポイント2:板と歩み値で“買いの勢いが途切れた瞬間”を特定する
この戦略のコアは、チャートの形ではなく「執行フローの変化」を見ることです。前日高値付近では、成行買いが連発し、売り板が食われていきます。勢いがあるときは、食われたあともすぐ次の売り板に成行が当たり、約定が途切れません。
ところが、ブレイクに失敗する瞬間にはサインが出ます。典型は、成行買いが一瞬止まり、売り板が残る/厚く見える状態になることです。もう一つは、買い板の厚みが減り、下の価格に買いが“逃げる”こと。歩み値で同サイズの成行買いが消え、逆に成行売りが増えてくる。これが「買いのエンジンが止まった」タイミングです。
ここで初心者がやりがちなのが、前日高値をタッチした瞬間に反射で売ることです。タッチはただの通過点で、まだ買いが継続しているなら踏まれます。売るべきは、買いが継続できないことが確認できた瞬間です。板と歩み値の情報を使う理由は、ローソク足の確定を待つと遅れるからです。
エントリー設計:3つの型(安全型・標準型・攻め型)
同じ“ブレイク失敗”でも、エントリーのタイミングは3つに分けられます。目的は、自分の性格と執行能力に合わせて最適化することです。
安全型は「前日高値付近で失敗→下方向の最初の戻りを待ってから売る」型です。たとえば、前日高値に届かず反落して一度下げ、そこから小さく戻したところでショートします。戻りで売るので、損切り幅を小さくしやすく、踏み上げに巻き込まれにくい。欠点は、動きが速いと乗れないことです。
標準型は「前日高値タッチ後、買いの勢いが切れた瞬間(歩み値の買い連続が止まる)で売る」型です。反落初動を取れるのでリスクリワードが良くなりやすい。欠点は、板の読み違いでダマシに遭いやすいことです。
攻め型は「フェイクブレイク(抜けたように見えて戻る)を逆手に取る」型です。前日高値を一瞬上抜けしてから、すぐ下に戻った瞬間に売ります。ここは踏み上げの反対側で、損切りが連鎖しやすい。最も美味しい局面ですが、見極めが難しく、慣れないうちは避けた方が良いです。
損切り設計:この手法は“浅い損切り”が生命線
戻り売りは、間違えると上に飛ばされます。だから損切りは必ず浅くします。基本ルールは「前日高値の上に明確に居座ったら撤退」です。具体的には、エントリー直後に前日高値を再度上抜けし、買いが再加速したら即撤退。粘ってはいけません。
損切りの置き方は2つです。ひとつは価格ベースで、前日高値+数ティック(銘柄の値幅と板の厚みに合わせる)。もうひとつは時間ベースで、売った後に下がらず前日高値付近で再び揉み始めたら撤退。後者は初心者に特に有効です。値動きが出ないのは、あなたの読みが間違っているか、市場がまだ結論を出していない状態だからです。
そしてロット管理。ここを軽視すると、正しい損切りができません。損切り幅が例えば0.4%なら、1回のトレードで口座の0.2〜0.5%程度の損失に収まるように株数を決めます。勝率が高くても、1回のミスで数日分の利益を飛ばす構造にすると、最終的にメンタルが崩れて手法が崩壊します。
利確設計:目標は“VWAP・直近サポート・節目”の3点
この手法の利確は、欲張らない方が成績が安定します。なぜなら、前日高値失敗の反落は「初動が速く、途中から鈍る」ことが多いからです。ブレイク勢の損切りが出尽くすと、売り圧力が一旦落ち着き、リバウンドが入ります。
利確目標の第一候補はVWAPです。前日高値を試した後に反落する局面では、VWAPが“日中の平均コスト”として意識され、反発ポイントになりやすい。第二候補は、直近の押し安値(直前の小さなサポート)です。第三候補は、ラウンドナンバー(00、50など)や前日終値などの節目です。
おすすめは分割利確です。たとえば、最初の下げで半分を利確し、残りはVWAPや次のサポートまで伸ばす。こうすると、取り逃しへのストレスが減り、同時に“大きく取れる日”も拾えます。分割は手数が増えるように見えますが、短期では意思決定の質が上がります。
具体例:寄り前から利確までの思考プロセス(架空ケース)
例として、前日出来高が急増して上昇したA銘柄を想定します。前日高値は1,000円。翌日、寄り前気配は990〜995円で推移し、前日高値まで0.5〜1.0%の距離。前場で試しに行きそうな形です。
寄り付き直後、買いが入り995円→998円→999円まで上昇。板を見ると、1,000円の売り板が厚い。ここで成行買いが連発して1,000円に当たるが、約定の勢いが弱く、売り板があまり減らない。歩み値の成行買いの連続が途切れ、逆に999円で成行売りが増え始めた。これが「買いのエンジンが止まった」サインです。
標準型なら、この時点で999円〜998円でショート。損切りは1,001円〜1,002円(数ティック上)に置く。エントリー後、998円→995円へ下落。最初の利確を995円で半分。残りはVWAPが994円付近ならそこまで引っ張る。VWAP到達で残りも利確。もし995円付近で下げ渋り、再び998円に戻すなら、時間ベースで撤退してもよい。大事なのは、反落の初動を取って終わることです。
“ダマシ”を避けるフィルター:3つだけ徹底する
勝率を大きく左右するのは、入らない判断です。フィルターは複雑にすると守れないので、3つだけ徹底します。
1つ目は、前日高値を試す前の上昇が「出来高を伴っているか」。出来高が細る上昇は、単なる板薄の吊り上げで、上にも下にも飛びます。2つ目は、前日高値付近で「成行買いが継続しているか」。継続しているなら売らない。3つ目は、指数や同セクターの地合いです。指数が上に走る局面で逆張りショートをすると、個別の抵抗は簡単に破られます。
この3つを守るだけで、無駄なエントリーが減り、結果的に“必要な場面だけ”仕掛けられるようになります。
執行のコツ:スプレッドと板の厚みで“売り方”を変える
短期売買では、執行コストがそのまま成績に出ます。板が厚くスプレッドが狭い大型〜中型なら、成行で叩いてもズレが小さい。逆に、スプレッドが広い銘柄では成行は危険で、指値で待つ方が良いです。
標準型のエントリーは、勢いが切れた瞬間に入るので、成行が有利な場合があります。ただし、板が薄いと滑って高値掴み(高値売り損ね)になり、損切り幅が拡大します。そこで、「板が薄いなら安全型に切り替える」「入れなければ見送る」というルールが重要になります。見送る判断は、勝つための技術です。
リスクシナリオ:踏み上げと急材料にどう対応するか
この手法の最大リスクは踏み上げです。特に、前日高値を一瞬抜けた後に、ニュースや指数の急騰で一気に走ると、ショートは逃げ場を失います。だからこそ「前日高値の上に居座ったら撤退」という単純ルールが効きます。躊躇すると、損失が指数関数的に増えます。
もう一つは、個別材料の突然の再燃です。板が急に買いで埋まり、歩み値が成行買い一色になる。こうなったら理由を考えるより先に撤退です。短期の世界では、理由は後からニュースで知れば良い。先に資金を守る。これは徹底してください。
検証方法:自分専用の“失敗パターン辞書”を作る
初心者が伸びる最短ルートは、成功例より失敗例の整理です。前日高値失敗の売りは、負けるときの形が似ています。たとえば、①指数が強いのに逆張りした、②出来高が増えながら高値で揉んでいた、③売った直後に高値を再トライして抜けた、④板が薄くて滑った、などです。
トレード後に、スクリーンショットとともに「なぜ入ったか」「入る前に何が見えていたか」「負けたなら何が間違いだったか」を短い文章で残します。ポイントは、抽象化しすぎないことです。“地合いが悪かった”ではなく、“指数が上方向に加速していたのに、個別だけを見てショートした”のように具体化します。これが溜まると、同じ負けを減らせます。
チェックリスト:エントリー前に30秒で確認する項目
最後に、実行前の確認を文章でまとめます。前日高値が意味を持つだけの注目があるか。前日高値までの距離は近すぎず遠すぎないか。高値付近で成行買いが鈍り、売り優勢に変化したか。指数・セクターが追い風ではないか。損切り位置が明確で、ロットがそれに合っているか。利確目標(VWAPや押し安値)が見えるか。これらが揃って初めて仕掛けます。
この手法は、“当てる”手法ではありません。“失敗を小さくし、優位な形だけを拾う”手法です。前日高値という誰でも見えるラインを使うからこそ、ルールを守る人が勝ち、感覚で売買する人が負けます。淡々と、浅い損切りと現実的な利確を積み上げてください。

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