「野村Webローン」と「楽天銀行 証券担保ローン」は、どちらも保有している株式などの有価証券を担保にお金を借りられるローンです。証券を売却せずに資金を調達できる便利な仕組みですが、金利や担保評価のルール、リスクの出方には意外と大きな違いがあります。
この記事では、2025年11月時点の公開情報をもとに、野村vs楽天の証券担保ローンを初めての人にも分かりやすく徹底比較します。いくら借りられるのか、金利水準はどう違うのか、どんな人に向いているのかを具体的な数字やシミュレーションを使って解説します。
1. 野村Webローンと楽天証券担保ローンの基本スペック比較
まずは両者のスペックをざっくり一覧で整理します。
| 項目 | 野村Webローン (野村信託銀行) |
楽天銀行 証券担保ローン (楽天銀行×楽天証券) |
|---|---|---|
| 貸し手 | 野村信託銀行(野村證券が銀行代理業) | 楽天銀行(楽天証券が銀行代理業) |
| 必要な口座 | 野村證券口座+野村信託銀行バンキング口座 | 楽天証券口座+楽天銀行口座 |
| 金利(2025年時点) | 年1.90%(変動)※一律 | 年1.875〜3.875%(変動) 残高に応じた3段階制 |
| 借入可能額 | 10万円〜5億円(1万円単位) | 原則1万円〜1億円(1万円単位) ※審査で最大5億・10億も可 |
| 限度額の決まり方 | 担保有価証券の時価に「担保掛目(50〜80%)」を掛けた評価額の範囲内(50万円〜5億円) | 担保にした有価証券の時価の60%が限度額 |
| 担保にできる資産 | 野村證券口座内の国内株式、投資信託、円建て・外貨建て債券など(野村信託銀行が定める適格銘柄) | 楽天証券の国内株式・一部投資信託など(東京・名古屋上場銘柄中心/NISA口座等は対象外) |
| 資金使途 | 原則自由(事業性資金、野村の新発商品購入資金など一部禁止) | 原則自由(事業性資金、募集・売出し有価証券の購入資金等は不可) |
| 担保割れ時の対応 | 担保評価額が借入残高の70%を下回るなどの場合、追加担保または返済要請。それでも改善しないと担保売却。 | 担保融資比率60%超で新規借入停止・担保解除停止、85%超で原則として担保の強制売却。 |
| 契約期間 | 1年ごとの更新型(実務上は長期継続利用も可能) | 6か月ごとの自動更新(残高があれば更新) |
どちらも「保有している有価証券を担保に、必要なときだけ借りて、余裕ができたらいつでも返せる」という点では共通しています。ただし、金利の決まり方・担保にできる商品・担保割れ時のルールがかなり違うため、使い方や向いている人も変わってきます。
2. 金利水準の比較:小口なら野村、大口なら楽天が有利になりやすい
金利はローンコストを左右する重要なポイントです。2025年11月時点の公開情報ベースで比較すると、次のようなイメージになります。
2-1. 野村Webローンの金利
野村Webローンの適用金利は、2025年9月1日現在で年1.90%の変動金利です。借入残高の大きさによる段階制はなく、個人向け証券担保ローンとしてはかなり低めの水準です。
金利は短期金利の動向などに応じて見直されるため、将来も1.90%のままとは限りませんが、「シンプルに一律1本」というのは分かりやすく、計画を立てやすい特徴があります。
2-2. 楽天銀行 証券担保ローンの金利
楽天銀行 証券担保ローンの金利は、毎月末の借入残高によって翌月の金利が決まる3段階制です(2025年4月現在)。
- 借入残高 1,000万円超:年1.875%
- 100万円超〜1,000万円以下:年2.875%
- 100万円以下:年3.875%
ベースとなる短期プライムレート(2025年3月3日現在 年1.875%)に対して、小口は+2%、中口は+1%、大口は+0%というイメージです。借入が大きくなるほど金利が下がり、1,000万円超の部分は野村Webローン(年1.90%)よりわずかに低い水準になります。
2-3. 具体的な利息負担のイメージ
ざっくりと1年間借りっぱなしにした場合の利息のイメージを比較してみます(税金・諸費用は無視し、単純計算)。
- 100万円借入
・野村:年1.90% → 利息約1.9万円
・楽天:年3.875% → 利息約3.9万円 - 500万円借入
・野村:年1.90% → 利息約9.5万円
・楽天:年2.875% → 利息約14.4万円 - 1,500万円借入
・野村:年1.90% → 利息約28.5万円
・楽天:年1.875% → 利息約28.1万円
小口〜中口(数百万円程度)では野村Webローンの方が負担が軽く、大口(1,000万円超)になると楽天銀行の最優遇金利がわずかに有利という構図です。
実際には借入期間が1年未満であったり、金利自体が変動するため、上記はあくまで目安です。それでも「100万〜数百万円程度までなら野村の方が分かりやすく安い」「1,000万円を大きく超える規模で借りるなら楽天の最優遇金利が視野に入る」という方向性は押さえておくと判断しやすくなります。
3. いくら借りられる?担保評価と限度額の違い
次に、「どのくらいの資産を持っていれば、どのくらい借りられるのか」という点を比較します。
3-1. 野村Webローン:資産の種類ごとに掛目が変わる
野村Webローンでは、担保にする有価証券の種類ごとに「担保掛目」が決まっており、時価×掛目の合計が「担保評価額」になります。この範囲内で、50万円〜5億円の極度額を設定できます。
代表的には、次のようなイメージです。
- 国内上場株式:時価の50%程度(担保掛目50%)
- 投資信託や社債など:株式よりやや高めの掛目(60%前後)
- 日本国債など信用度の高い債券:時価の80%程度
たとえば、野村證券口座に以下の資産を持っているケースを考えます。
- 国内株式:時価1,000万円(掛目50%と仮定)
- 日本国債:時価1,000万円(掛目80%と仮定)
この場合の担保評価額は、
1,000万円×50%+1,000万円×80%=500万円+800万円=1,300万円
となり、理論上は1,300万円まで極度額を設定できます(実際には審査・商品性による上限があります)。株式だけよりも、債券の比率が高いほど評価額が伸びるイメージです。
3-2. 楽天銀行 証券担保ローン:一律60%でシンプル
楽天銀行 証券担保ローンでは、担保にした有価証券の時価に一律60%の掛目を掛けた金額が限度額になります。
たとえば、楽天証券口座に国内株式を時価2,000万円分持っている場合、
2,000万円×60%=1,200万円
が借入限度額です。
担保時価総額が17万円以上あり、評価額が10万円を超えれば、1万円から1万円単位で借入できます。計算が非常にシンプルで、自分で「だいたいこのくらいまで借りられるな」とイメージしやすいのが特徴です。
3-3. 「何をどれだけ持っているか」で有利な側が変わる
同じ2,000万円の資産を持っている場合でも、資産の中身によって有利な金融機関は変わります。
- 国内株式中心(債券ほぼなし)
・野村:株式掛目50% → 評価額約1,000万円
・楽天:一律60% → 評価額約1,200万円
→ 国内株式メインなら、評価額の面では楽天の方が有利になりやすい。 - 債券・投資信託の比率が高いポートフォリオ
・野村:債券・投信は60〜80%の掛目 → 評価額が膨らみやすい
・楽天:担保対象は国内株式中心で、債券は対象外
→ 債券・投信を厚く持っているなら、野村の方が評価を引き出しやすい。
つまり、「国内株ガチガチ+楽天証券メイン」の個人投資家なら楽天が有利になりやすく、「株だけでなく債券や投信も厚く持っていて、野村で資産管理している富裕層」なら野村の方が借入余力を大きく取りやすい構造です。
4. 担保割れとロスカットルールの違い
証券担保ローンで最も注意すべきなのは、相場下落で担保の評価額が減り、「担保割れ」になったときのリスクです。ここも両者でルールが異なります。
4-1. 野村Webローンの担保割れルール
野村Webローンでは、担保としている有価証券の評価額が下がり、担保評価額が借入残高の70%を下回った場合などには、野村信託銀行が担保の有価証券を売却し、その代金で返済に充てることがあります。
また、評価額の下落状況によっては、追加担保の差し入れや一部返済を求められることもあります。株式の掛目がそもそも50%と低めに設定されているため、「借入上限ギリギリまで使わない」ことが重要になります。
4-2. 楽天銀行 証券担保ローンの担保融資比率
楽天銀行では、「担保融資比率」という指標を使ってリスク管理を行っています。
- 担保融資比率 =(借入残高+利息等)÷ 担保時価総額
担保融資比率が
- 60%超〜85%以下:新規借入と担保解除が停止される
- 85%超:原則として翌営業日以降に担保を強制売却
という運用ルールです。株価が急落して担保時価総額が大きく減ると、一気に85%を超えて強制売却が走るリスクがあります。
4-3. どちらが「安全」かは使い方次第
一般論としては、
- 野村Webローン:
・株式の掛目が50%と低めに抑えられているぶん、同じ株価変動でも担保評価のクッションがやや厚い。
・一方で、債券や投信の掛目を高く取ることもできるため、評価額をフルに使うとレバレッジ感はそれなりに強くなる。 - 楽天銀行 証券担保ローン:
・一律60%評価でシンプルだが、株だけを担保にしている投資家が多いため、株式市場の急落時には担保融資比率が一気に85%に近づきやすい。
・特に高ボラティリティ銘柄に集中していると、ロスカット発動リスクは想像以上に高い。
どちらが「安全」かは、借入額とポートフォリオ構成、そして価格変動への許容度によって変わります。「借りられる上限いっぱいまで使わない」「余裕を持った担保比率に抑える」という姿勢が、どちらのローンでも共通して重要です。
5. 手続き・使い勝手・返済の違い
5-1. 手続きとスピード感
どちらもインターネット完結で利用申込ができ、証券口座と銀行口座の連携が前提になっています。
- 野村Webローン
・野村證券のオンラインサービスから申込。
・野村信託銀行の審査を経て極度額が設定され、その範囲内で必要なときに借入・返済が可能。
・融資実行までの具体的なスピードは個々の案件によりますが、担保設定済みであれば比較的スムーズに資金を動かせます。 - 楽天銀行 証券担保ローン
・楽天証券のサイトから申込し、楽天銀行のローンとして契約。
・担保設定が完了すると、楽天銀行普通預金にいつでも1万円単位で借入可能。
・返済も楽天銀行口座から即時で行えるため、日々の資金繰りで使い回しやすい構造です。
5-2. 返済方法と期間
両者とも「自由返済型」に近い設計で、定期返済の縛りは緩めです。
- 野村Webローン
・契約は1年ごとの更新ですが、80歳以降も借り続けることが可能な設計です。
・利息は日割り計算で発生し、借入残高に上乗せされていきます。
・余裕があるときにまとめて返済するスタイルを取りやすい一方で、「なんとなく借りっぱなし」になりやすい点には注意が必要です。 - 楽天銀行 証券担保ローン
・契約期間は6か月で、残高がある限り自動更新されます。
・利息は日割り計算で、毎月約定返済日に楽天銀行口座から引き落とし。
・元本はいつでも任意のタイミングで返済できますが、毎月の利息支払いが発生することで、野村よりも「借りっぱなしになりにくい」構造とも言えます。
6. どちらを選ぶべきか:タイプ別おすすめイメージ
最後に、「どんな投資家ならどちらが向きやすいか」をタイプ別に整理します。あくまで一般的な傾向であり、最終的な判断は個々の資産状況・リスク許容度・借入目的によって変わります。
6-1. 野村Webローンが向きやすい人
- 野村證券をメイン口座として、株・投信・債券などをトータルで保有している人
- 債券や投信の比率が高く、証券担保ローンでの評価額を大きく取りたい人
- 借入額は100万〜数千万円規模までを想定しており、シンプルに低金利で借りたい人
- 納税資金や不動産購入時のつなぎ資金など、比較的まとまった資金ニーズがある人
- 長期の資産設計の中で、「資産は売らずに一時的に流動性を確保したい」という考え方を重視する人
一律1.90%の金利と、幅広い担保対象(特に債券)が野村Webローンの強みです。いわゆる「富裕層の流動性確保ツール」として位置づけられており、まとまった資産と長期的な運用スタンスがある人ほど使い勝手が良くなります。
6-2. 楽天銀行 証券担保ローンが向きやすい人
- 楽天証券+楽天銀行を日常的に使っていて、国内株式・ETF・REIT保有が中心の人
- 1万円単位でこまめに借り入れ・返済をしたい人
- 数十万〜数百万円の短期的な資金ニーズがあるものの、将来的には1,000万円超の大口借入も視野に入る人
- 日々の資金繰りや、短期的な投資チャンス・優待クロスなどで証券担保ローンを活用したい人
小口では金利がやや高いものの、楽天銀行口座に直結して1万円単位で借りられる機動性は大きな魅力です。楽天経済圏をフル活用している個人投資家にとっては、日常のキャッシュマネジメントの一部として組み込みやすい商品と言えます。
7. 証券担保ローンを使う前に押さえておきたい注意点
最後に、野村・楽天どちらを選ぶにせよ、証券担保ローン共通の注意点をまとめます。
- 借入はレバレッジと同じ効果を持つ
→ 保有資産が下落すると、資産と負債のダブルパンチになり得ます。 - 「借りられる額」と「借りてよい額」は違う
→ 限度額いっぱいまで使わず、担保評価の余裕(バッファ)を必ず残すことが重要です。 - 生活費・投資資金・事業資金を混ぜない
→ 何のために借りるのかを事前に明確にし、返済計画を数字で確認してから利用するべきです。 - 金利は変動しうる
→ 日銀の金融政策などに応じて金利水準が変わり、将来の利息負担が増える可能性があります。 - 最新条件の確認は必須
→ 本記事は2025年時点の情報を元にしています。実際に申し込む際は、必ず公式サイトの最新の金利・条件・商品概要説明書を確認してください。
まとめ
証券担保ローンは、うまく使えば「投資資産を残したまま資金を確保する」ための強力なツールになります。一方で、価格変動リスクと金利負担を伴う金融商品であることに変わりはありません。「どちらが得か」だけでなく、「自分のリスク許容度に合っているか」「借入後のシナリオを具体的に描けているか」を確認したうえで、野村Webローンと楽天銀行 証券担保ローンのどちらを使うか検討していくことが大切です。


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