本記事は、SBI証券で米国株に機動的に出動するための米ドル待機資金の完全設計をまとめます。外貨預り金は金利ゼロで価値が目減りします。そこで、当日中に余力化できる米ドルMMFを中核に、翌日で十分な枠は短期債ETF、当面使わない超余裕枠は米国短期国債(T-Bill)に配分する三層構造が合理的です。
要点(エグゼクティブサマリー)
- 最速発射:米ドル預り金(即時)。ただし無利息です。
- 実務コア:米ドルMMF(売却当日中に米ドル買付余力へ反映)。価格変動は極小で実質キャッシュ同等です。
- 効率の上積み:短期債ETF(CLIP/SHV など)。受渡はT+1で翌営業日に余力化します。
- 超余裕枠:米国短期国債(T-Bill)。途中売却はT+1〜T+2で価格変動リスクが伴います。
余力反映が早い順(SBI証券前提)
| 順位 | 手段 | 余力反映 | 用途 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 米ドル預り金 | 即時 | 秒で撃つ | 金利ゼロ。最小限で十分です。 |
| 2 | 米ドルMMF売却 | 当日中(即日) | 待機の基軸 | 実務上は現金同等の機動性です。 |
| 3 | 短期債ETF売却(CLIP/SHV 等) | T+1(翌営業日) | 一泊で十分な枠 | 市場受渡後に余力化します。 |
| 4 | 米国短期国債(T-Bill)途中売却 | T+1〜T+2 | 超余裕枠 | 途中売却は価格変動リスクがあります。 |
MMFと短期債ETFの価格挙動(金利上昇時)
- MMF:金利上昇でも基準価額はほぼ動かず、利回りが素早く更新されます。含み損は理論上ゼロではありませんが、実務上は“ほぼ無視できるレベル”です。
- 短期債ETF:市場価格が常時動くため、金利上昇でわずかに下落し、小さな含み損が発生する可能性があります(ただしドローダウンは通常ごく小さいです)。
SBIで使える短期債ETF(実務候補)
SGOV(iShares 0-3 Month Treasury ETF)はSBIで見つかりません。一方、以下はSBIでの実務候補です。
- CLIP:Global X 米国 T-Bill 1-3カ月 ETF(1〜3ヶ月の米国T-Bill)。待機資金のサブ枠に適します。
- SHV:iShares Short Treasury Bond ETF(1年未満の米国短期国債)。やや利回りを追いたい場合に使います。
補足:BIL(SPDR 1-3 Month T-Bill)はSBIサイトでヒットしづらいことがあります。待機資金の用途ではCLIP/SHVで実務上代替可能です。
MMFの銘柄が複数ある理由と選び方
SBIの米ドルMMFは運用会社ごとに複数あります。違いは運用会社・投資対象の配分(国債/CP等)・コスト・金利反映速度です。安全性はいずれも高いですが、実務では以下の方針が使いやすいです。
- 第一選択:ブラックロック米ドルMMF(規模・コスト・運用実績で安定)。
- 分散先:ゴールドマン・サックス米ドルMMF(短期金利反映が比較的早い傾向)。
過度な分散は不要ですが、ブラックロック+GSを1:1のように分けるのも一般的です。
配分モデル(機動性最優先)
| 資産 | 比率目安 | 役割 |
|---|---|---|
| 米ドルMMF | 70〜90% | 当日余力化のコア待機。無利息放置の回避。 |
| 短期債ETF(CLIP/SHV) | 10〜30% | 翌日で十分な枠の利回り底上げ。 |
| 米ドル預り金 | 0〜10% | 秒で撃つ最小限の弾。 |
| T-Bill(3〜6ヶ月) | 0〜20% | 当面使わない超余裕枠。原則満期保有。 |
イベント前後のフォーメーション
- FOMC・雇用統計・CPI前:MMF比率を一時的に引き上げ、即応性を最大化します。
- 急落待機:MMFを常時30%程度キープし、初動をMMFで撃ち、必要なら翌日CLIP/SHVを売って追随します。
- 利下げ転換:短期債利回りは低下します。待機の即応性は維持しつつ、余力の一部で中期債(例:SHY/VGSH)へシフトを検討します。
実務フロー(SBIでの操作イメージ)
- 外貨預り金の米ドルを米ドルMMFへ振替(買付)します。
- 買付機会が来たら、MMFを売却します(当日中に米ドル買付余力へ反映)。
- 翌日で十分な枠はCLIP/SHVを保有し、必要に応じて売却(T+1)で余力化します。
- 当面使わない超余裕枠はT-Billに配分し、原則満期保有します。
FAQ(要点のみ)
Q. MMFは金利上昇で含み損が出ますか?
A. 理論上ゼロではありませんが、実務上はほぼ無視できるレベルです。利回りの更新が速く、価格は安定的です。
Q. ETFは含み損が出ますか?
A. 金利上昇局面ではわずかに下落し、微小な含み損が出る可能性があります。ただし超短期ETFのドローダウンは一般に小さいです。
Q. SGOVがSBIで見つかりません。
A. 現状SBIでは見当たりません。実務上はCLIP/SHVで代替可能です。
チェックリスト
- 外貨預り金に長期滞留していませんか。
- イベント前にMMF比率を引き上げていますか。
- 翌日で十分な枠をCLIP/SHVで効率化していますか。
- T-Billは当面使わない枠に限定していますか。
まとめ
待機資金は機動力が命です。SBIでは、MMFをコアにして当日余力化を確保し、CLIP/SHVで翌日枠の効率を上げ、T-Billで超余裕枠を最適化する設計が合理的です。無利息放置をやめ、機動性を維持しながら利回りを取りにいきましょう。


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