名目年率5%を無理なく狙う現実的な積立設計を、日本の家計事情(円安・物価上昇・賃上げの不確実性)を前提に、誰でも今日から回し始められる運用オペレーションとしてまとめます。
このガイドの狙い
本稿は「当たりを引く」ではなく「外しても致命傷を避けながら複利を積む」ための設計図です。
想定ゴールは名目年率5%。市場環境に左右されるため確約はできませんが、
期待値・分散・タイムホライズン・為替の4点をコントロールすることで、
現実的に目指せるレンジを作るのが目的です。
ゴール設定と「5%」の現実
名目と実質の違い
インフレ率が2%のとき、名目5%は実質3%前後です。生活コストの上昇を考えるなら、
実質で資産を増やすことを意識しましょう。
到達確率を上げる4つのレバー
- コア資産の期待リターン:広く分散された世界株式を中核に据える。
- ボラティリティの低減:債券・金・現金クッションで下落耐性を持たせる。
- 時間の分散:毎月同額で買い続けるドル・円コスト平均法。
- 為替設計:円安・円高のどちらでも続けられるヘッジ比率。
キャッシュフローから積立額を決める
まずは生活防衛資金(3〜12か月分)を確保し、次に固定比率で積立額を設定します。
一つの目安は、手取り収入の10〜20%を毎月の積立に回すことです。
例:手取り30万円なら毎月3〜6万円を積立。可処分所得が増えたら自動的に割合を維持して増額します。
コア・サテライトによる設計
コア(70%)
- 全世界株式インデックス(40〜50%)
- 先進国債券(ヘッジ有/無を併用、10〜20%)
- インフレ連動債 or 物価連動型要素(5〜10%)
- ゴールド(5〜10%)
サテライト(30%)
- 高配当株・高配当ETF
- REIT(国内外を状況に応じて)
- テーマ or クオリティ因子の追加(過度集中は避ける)
ポイントは、コアだけで目標の大半を稼ぐこと。サテライトは過度なリスクの源ではなく、
補助エンジンに留めます。
為替・インフレへの備え
円安が続く局面では外貨資産が評価益を押し上げ、円高では逆に押し下げます。
ヘッジ有・無を半々〜7:3で組み合わせ、為替のトレンドに依存しない土台を作ります。
インフレには、世界株・インフレ連動債・金の3点セットが機能しやすい設計です。
積立オペレーション(実務)
- 自動積立を設定(入金→自動買付の一気通貫)。
- 買付日は月中で固定し、給与日や月末偏重を避ける。
- 「下落時の追加ルール」を簡潔に:基準価額が直近高値から-10%で1か月分追加、-20%でさらに1か月分(最大2か月分まで)。
- 配当・分配金は原則自動再投資(キャッシュフローが必要な時だけ受取へ変更)。
リバランス設計
年2回の定期点検+5/25ルール(目標比率±5ptまたは相対±25%乖離で調整)。
売却課税を避けるため、できる限り新規買付で比率を戻します。
つみたてシミュレーション
以下は毎月積立と運用年数ごとの将来価値(税・手数料等控除前の概算)です。
| 毎月積立 | 年数 | 年率3% | 年率5% | 年率7% |
|---|---|---|---|---|
| 30,000円 | 15年 | 6,809,181円 | 8,018,668円 | 9,508,869円 |
| 30,000円 | 20年 | 9,849,060円 | 12,331,010円 | 15,627,800円 |
| 30,000円 | 30年 | 17,482,107円 | 24,967,759円 | 36,599,130円 |
| 50,000円 | 15年 | 11,348,634円 | 13,364,447円 | 15,848,115円 |
| 50,000円 | 20年 | 16,415,100円 | 20,551,683円 | 26,046,333円 |
| 50,000円 | 30年 | 29,136,844円 | 41,612,932円 | 60,998,550円 |
| 100,000円 | 15年 | 22,697,269円 | 26,728,894円 | 31,696,230円 |
| 100,000円 | 20年 | 32,830,200円 | 41,103,367円 | 52,092,666円 |
| 100,000円 | 30年 | 58,273,688円 | 83,225,864円 | 121,997,100円 |
ゴール逆算:20年で2000百万円を作るには、年率5%前提で毎月およそ48,700円の積立が必要です。
同様に、30年で3000百万円なら、毎月およそ36,100円が目安です。
ドローダウンを想定した耐性づくり
世界株の大きな下落(-30〜-50%)は繰り返し起こります。
現金クッション(6〜12か月),債券・金の比率,追加投資ルールの三点で、売らされない構造にしておきます。
出口戦略(取り崩し/利益確定)
- 定率取り崩し:年3〜4%を四半期ごとに取り崩し。相場が弱い時は債券・現金側から。
- 目標パス:必要資金の5〜7年分は債券+現金で確保し、残りを成長資産で運用。
- イベント駆動の利益確定:比率上振れ(+5pt)時にコアへ戻す。
よくある失敗と回避策
- 相場ニュースで比率を大きく動かす → ポリシーを紙に明文化し、逸脱を防ぐ。
- 配当狙いの過度集中 → 地域・セクター分散を優先し、利回りは二次的評価。
- 為替を短期に当てにする → ヘッジ有無の併用で方向性依存を下げる。
- 現金ゼロで満額積立 → 生活防衛資金を先に満たす。
実行チェックリスト
- 生活防衛資金:◯か月分確保済み
- 毎月積立:手取りの◯%に自動設定
- リバランス:年2回+5/25ルール
- 追加投資:-10%/-20%の段階追加
- 出口:定率取り崩しと5〜7年分の安全資産
まとめ
年率5%は“背伸びせず、仕組みで近づく”ゴールです。
コアで稼ぎ、サテライトで上振れを狙い、時間分散と為替設計でブレを抑える。
あとは自動化と点検。今日決めたルールを、2025-11-09から回し始めましょう。


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