2025/12/10(水)からSBI新生銀行が実施している「目指せ1兆円!SBIハイパー預金 金利最大10倍キャンペーン」は、うまく使うと短期の待機資金に対してかなり魅力的な利回りを狙える設計になっています。ただし、仕組みを正しく理解していないと「思っていたほど増えなかった」ということにもなりかねません。
ここでは公式ページの条件を整理しつつ、投資家目線でメリット・デメリット・具体的な活用シナリオまで踏み込み、初心者でも理解できるように徹底解説します。銀行預金でありながら「実質キャンペーン利回り」を取りに行く商品としてどう評価するか、という観点で見ていきます。
1. SBIハイパー預金とは何か ― 商品の土台を押さえる
まずキャンペーン以前に、ベースとなる「SBIハイパー預金」自体の性質を整理しておきます。
SBIハイパー預金は、SBI新生銀行が提供する円普通預金で、元本保証・預金保険の対象となる商品です。住信SBIネット銀行の「SBIハイブリッド預金」と同様に、SBI証券と連携して証券口座の買付余力としても使える預金という位置づけになっています。
- 円建ての普通預金(元本保証・預金保険対象)
- SBI証券との連携により、株式等の買付余力として自動で利用される
- 通常金利は毎日見直しの変動金利(2025年12月10日時点では年0.42%税引前を例示)
つまり「証券の待機資金を比較的高めの普通預金金利で運用しつつ、すぐに投資に回せるようにしておく」という用途に向いた口座だと理解すると分かりやすいと思います。
2. キャンペーンの概要 ― 1兆円達成で金利最大10倍
今回のキャンペーンの正式名称は、「目指せ1兆円!SBIハイパー預金 金利最大10倍キャンペーン」です。
公式ページの要点は次のとおりです。
- キャンペーン期間:2025年12月10日(水)~2026年3月31日(火)
- 期間中の「SBIハイパー預金の総残高」に応じて、特別金利の倍率が段階的にアップ
- 総残高が1兆円に達した場合、通常金利の10倍となる年4.2%(税引前)相当の特別金利を適用する想定
- 対象となるのはエントリーした顧客で、その人がキャンペーン期間中に保有した1日ごとの残高(上限100万円)に対して上乗せ金利を日割り計算
- 上乗せ分はキャンペーン終了後に現金でプレゼント(2026年5月末までに入金予定)
ポイントは「総残高が増えれば増えるほど、全参加者の金利がレベルアップしていく『みんなで達成型』の設計になっている点です。個人の残高だけでなく、他の参加者の動きも最終的な金利に影響します。
3. 金利の仕組みを具体的に分解する
3-1. 通常金利と特別金利、上乗せ金利
キャンペーンページでは、2025年12月10日時点の通常金利を年0.42%(税引前)とした前提で、以下のような表が掲載されています。
- 通常金利:年0.42%
- 総残高5,000億円:倍率1.5倍 → 特別金利0.63%(上乗せ0.21%)
- 総残高6,000億円:倍率2倍 → 特別金利0.84%(上乗せ0.42%)
- 総残高7,000億円:倍率3倍 → 特別金利1.26%(上乗せ0.84%)
- 総残高8,000億円:倍率4倍 → 特別金利1.68%(上乗せ1.26%)
- 総残高9,000億円:倍率5倍 → 特別金利2.10%(上乗せ1.68%)
- 総残高1兆円:倍率10倍 → 特別金利4.20%(上乗せ3.78%)
ここで重要なのは、キャンペーンでプレゼントされるのは「特別金利」そのものではなく、『特別金利 − 通常金利』の差分(上乗せ金利分)であるという点です。
通常の預金利息は、日々の残高に対して通常金利で計算され、利払い日に口座へ入金されます。一方、キャンペーンではその「上乗せ分」だけを別計算し、その合計を現金プレゼントとして後日まとめて入金します。
3-2. 「遡って」適用されるという仕組み
このキャンペーンが少しユニークなのが、「総残高が目標を達成すると、それまでの期間にさかのぼって倍率が適用される」という設計です。
例えば、キャンペーン期間の途中までは総残高が6,000億円しかなく倍率2倍(特別金利0.84%)相当だったとしても、期間中に1兆円を達成すれば、キャンペーン期間の全期間について、最終的な倍率10倍に基づく上乗せ金利で再計算されます。
そのため、
- なるべく早く預けておくほど日数が増える → 上乗せ金利を受ける日数が最大化される
- 最終的な倍率(1.5倍〜10倍)はキャンペーン終了時点まで分からない
という特徴があります。
4. 具体的な利息シミュレーション
4-1. 代表例(1兆円達成時)
キャンペーンページには、総残高が1兆円に達し、開始日から100万円以上の残高を維持したケースの例が掲載されています。
前提は以下のとおりです。
- 元本:100万円
- 上乗せ金利:年3.78%(特別金利4.20% − 通常金利0.42%)
- 対象日数:112日(約3.5か月分としての例)
計算式のイメージは次のようになります。
100万円 × 3.78% ÷ 365日 × 112日 ≒ 11,536円(税引前)
ここから税金(国税15.315%、地方税5%)が引かれ、約9,296円(税引後)という例示になっています(実際には1円単位の端数処理も含めて計算されます)。
通常金利0.42%だけであれば、同じ100万円を112日置いても得られる利息はごくわずかですから、上乗せ3.78%分のインパクトはかなり大きいと言えます。
4-2. 1兆円に届かなかった場合のざっくり感覚
総残高の達成水準によって、上乗せ金利は段階的に下がります。たとえば、同じく100万円を期間中ずっと預けた場合の「税引後の上乗せ分」のおおよそのイメージは、以下のような水準になります(112日・税率20.315%前後を前提とした概算です)。
- 総残高5,000億円(倍率1.5倍・上乗せ0.21%) → 税引後およそ500円前後
- 総残高6,000億円(倍率2倍・上乗せ0.42%) → 税引後およそ1,000円前後
- 総残高7,000億円(倍率3倍・上乗せ0.84%) → 税引後およそ2,000円前後
- 総残高1兆円(倍率10倍・上乗せ3.78%) → 税引後およそ9,000円台
このように、1兆円を達成できるかどうかで、最終的な「おいしさ」の差がかなり大きくなる点は、投資家として押さえておくべきポイントです。
5. 実際の計算上の注意点
5-1. 対象残高は「毎日の最終残高(上限100万円)」
キャンペーンの特典計算に使われるのは、「キャンペーン期間中の毎日のSBIハイパー預金の最終残高(上限100万円)」です。
つまり、
- 100万円を超えて預けても、キャンペーン上乗せの対象は100万円までである
- 日々の途中で出し入れしても、その日の最後にいくら残っているかが重要である
というルールになっています。SBI証券の自動精算(翌営業日付の資金振替)も反映した残高が使われることが明記されています。
5-2. 特別金利は「キャンペーン終了時点の通常金利」を基準に決まる
特別金利は、2026年3月31日時点の通常金利に、各倍率(1.5倍〜10倍)を掛けたものとされています。
したがって、
- キャンペーン期間中に通常金利が上昇すれば、特別金利もその分引き上げとなる
- 逆に通常金利が下がれば、特別金利も下がる
という構造です。「0.42%をベースに必ず4.2%になる」という保証はなく、あくまで終了時点の通常金利 × 倍率で決まります。
5-3. キャッシュプレゼントの受け取りタイミング
上乗せ金利分の現金プレゼントは、2026年5月末までに顧客名義の総合口座パワーフレックス円普通預金に入金される予定とされています。
また、入金日までに総合口座を解約しているとプレゼント対象外になる旨も注意事項に記載されています。
このため、投資家目線では「キャンペーンの実際の利回りは、2026年春〜初夏に確定する」という時間軸で考えることになります。
6. 参加条件と実務上のフロー
キャンペーンに参加するには、次のようなステップが必要です。
- SBI新生銀行の口座を保有していること
- SBI証券口座を保有していること
- ウェブサイトからキャンペーンへのエントリーを完了すること
- SBIハイパー預金に実際にお金を預けること
特に重要なのが、「エントリーしないと対象外」である点です。また、SBIハイパー預金の総残高が1兆円に達した時点で新規エントリーは締め切りとなることが明記されています。
すでにSBI証券とSBI新生銀行の両方の口座を保有している人は、そのままSBIハイパー預金を申し込み、キャンペーンページからエントリーする流れになります。口座を持っていない人向けには、両口座とハイパー預金をまとめて開設できる導線も用意されています。
7. 投資家目線で見たメリット
7-1. 「待機資金」の利回りを底上げできる
株式・投信・ETF・債券などの投資を行う際、どうしても一時的に現金の待機資金が発生します。この待機資金を普通預金に置いておくと、金利はほとんどつきませんが、SBIハイパー預金+キャンペーンを使えば、
- 通常時でも比較的高めの普通預金金利
- キャンペーン期間中は追加で上乗せ金利
を狙うことができます。特に100万円以内の待機資金が頻繁に発生する個人投資家にとっては、「ほぼノーリスクで期待値を少し押し上げる」感覚の施策に位置づけられます。
7-2. すぐに投資へ振り向けられる流動性
SBIハイパー預金は、SBI証券と連携しており、自動で買付余力として利用できるため、必要なときにすぐ投資に回せます。
通常の定期預金やキャンペーン定期と違って、
- ロック期間がない(普通預金)
- 必要になったら即座に出金・投資に回せる
という流動性の高さが、そのまま利便性につながっています。利回りと流動性のバランスが良い点は、短期資金運用として評価できます。
8. 投資家目線での注意点・リスク
8-1. 最大金利は「達成条件付き」で確定していない
最も重要な注意点は、年4.2%の特別金利は「1兆円達成」が条件であり、現時点では確約されていないことです。
総残高がどこまで伸びるかは、自分一人ではコントロールできません。そのため、
- 5,000億円〜7,000億円あたりで止まり、上乗せは0.21〜0.84%程度に留まる可能性
- 1兆円近くまでいっても、キャンペーン期間中の市中金利の動き次第で最終金利が変動する可能性
などを織り込んだうえで、「期待値」としてどう捉えるかを判断する必要があります。
8-2. 対象は100万円まで ― 大口資金向けではない
キャンペーン対象となる残高は1日あたり上限100万円です。
したがって、例えば数百万円〜数千万円単位の現金を持っている人が「全部を高金利で回そう」と考えても、このキャンペーンだけでそれを実現することはできません。あくまで100万円までの待機資金の利回り底上げ用と割り切るのが現実的です。
8-3. キャンペーン自体が中止・変更される可能性
注意事項には、「市場動向等により、内容・条件を変更または中止する場合がある」旨が明記されています。
銀行側が一方的に不利な変更をすることは考えにくいものの、金融機関のキャンペーンでは一般的な文言です。制度そのものに依存しすぎず、いつでも代替案を考えておく姿勢は重要です。
9. どんな人に向いているか ― 活用シナリオ
9-1. 「証券口座の待機資金」が頻繁に発生する人
もっとも相性が良いのは、
- 株やETF、投信の売買を定期的に行う人
- 売却代金が一時的に待機資金として滞留しやすい人
- IPO、公募増資、短期トレードなどでキャッシュポジションを機動的に動かす人
といったタイプの投資家です。
こうした人は、どうせ証券口座の近くに現金を置いておく必要があるため、「SBIハイパー預金+キャンペーン」で待機資金の期待利回りを底上げするのは合理的な選択肢になります。
9-2. 安全資産の一部として短期的に置いておきたい人
リスク資産ではなく元本保証の預金であり、預金保険制度の対象でもあるため、「大きな値動きは取りたくないが、少しでも利回りを上げたい」という層にもマッチします。
ただし、あくまで普通預金であり、インフレ率を大きく上回るようなリターンを恒常的に狙えるわけではありません。あくまで短期資金の置き場の一つとして、他の資産(株式・債券・投信など)と組み合わせて考える必要があります。
10. よくある疑問への簡潔なQ&A
Q1. 途中で出金したらどうなる?
A. キャンペーンの上乗せ金利は、1日ごとの最終残高に基づいて計算されます。したがって、途中で出金すると、その出金をした日以降の残高が減るため、その分だけ上乗せ金利の対象となる金額・日数も減ります。
Q2. キャンペーン途中から預けても意味はある?
A. 当然ながら預けた日数分だけ上乗せ金利の対象になります。できるだけ早く預けておくほど日数が増えますが、キャンペーン期間の途中から参加しても、その時点以降の残高に応じて特典を受けられます。
Q3. 税金はどう扱われる?
A. 円預金の利息同様、源泉分離課税(国税15.315%、地方税5%)で課税されます。キャンペーンの現金プレゼントも、税引後ベースで計算されて入金される形です。個々の税務状況によって扱いが異なる可能性もあるため、詳細が気になる場合は税務署や税理士等の専門家に確認することをおすすめします。
11. まとめ ― 「待機資金×キャンペーン」で効率アップを狙う選択肢
SBIハイパー預金の「金利最大10倍キャンペーン」は、
- 元本保証・預金保険付きの円普通預金であること
- SBI証券との連携により、投資用の待機資金として使いやすいこと
- 総残高次第では、短期間ながら年4%台相当の利回りを狙える設計であること
といった点から、短期の待機資金の置き場としてはかなり魅力的な候補になり得ます。一方で、
- 特別金利は総残高と終了時点の通常金利に依存し、確定したリターンではない
- 対象残高は100万円までであり、大口資金の運用先としては限定的
- キャンペーン条件が変更・中止される可能性も、注意事項として明記されている
といった制約も存在します。
投資家目線では、「どうせ証券の近くに置いておく100万円までのキャッシュ」を、少しでも高い期待利回りで運用するためのキャンペーン、と捉えるとバランスが良いと思います。自分の資金規模・投資スタイル・流動性ニーズを踏まえたうえで、他の預金商品や短期債・MMFなどとも比較しつつ、活用するかどうかを判断するとよいでしょう。


コメント