なぜ撤退ルールが投資成績の大半を決めるのか
投資の世界では「何を買うか」に注目が集まりがちですが、長期的な成績を左右する本質は「いつ、どの条件で手放すか」です。理由は単純で、利益は限定的でも損失は無制限になり得るからです。撤退ルールを持たない投資は、期待値がプラスであっても資金曲線が破綻します。多くの個人投資家が市場から退場するのは、銘柄選定の失敗ではなく、撤退判断の欠如が原因です。
人間は撤退に致命的に弱い
人間の意思決定は合理的ではありません。行動経済学で知られる損失回避性により、含み損は確定したくなく、含み益は早く確定したくなります。この非対称性が、損小利大の原則を破壊します。撤退ルールを事前に数値化し、感情を介在させない仕組みを作らない限り、同じ失敗を繰り返します。
撤退ルールは3種類に分解できる
撤退ルールは「価格ベース」「時間ベース」「環境ベース」に分けられます。価格ベースは損切り・利確の水準を事前に決める方法で、最も基本的です。時間ベースは想定した期間内にシナリオが実現しなければ撤退します。環境ベースは金利、流動性、ボラティリティなど外部条件の変化に応じて撤退する方法です。
価格ベース撤退ルールの具体例
例えば株式投資であれば、購入価格からマイナス10%で機械的に撤退するルールを設定します。重要なのは、その数値に根拠があることです。過去のボラティリティ、指数全体の変動幅、自身の許容損失率を基に設定します。利確も同様で、+20%で半分を利確し、残りはトレーリングストップで追随させるなど、事前に手順を決めます。
時間ベース撤退がもたらす規律
テーマ投資や材料株では、時間ベース撤退が極めて有効です。例えば「決算2回以内に業績改善が見られなければ撤退」と決めておくことで、塩漬けを防げます。時間は機会費用です。資金が停滞すること自体がリスクであると認識する必要があります。
環境ベース撤退は中上級者向けだが効果は大きい
金融市場は流動性で動きます。中央銀行の金融政策、実質金利、信用スプレッドの変化は資産価格に先行します。例えば実質金利が急上昇局面に入った場合、グロース株の保有比率を落とすといった撤退ルールです。これは個別銘柄の善し悪しとは無関係に機能します。
撤退ルールを数値で固定する方法
撤退ルールは文章ではなく数値で管理します。最大許容損失を資産全体の2%以内に制限する、1トレードあたりの損失を固定額で定義するなどです。これにより、連敗が続いても致命傷になりません。プロが生き残る理由は、勝率ではなく資金管理にあります。
暴落時に機能する撤退ルールの考え方
暴落時には通常の価格ベース撤退が滑ります。そのため、指数レベルでの撤退ルールが必要です。例えば主要指数が200日移動平均を明確に割り込んだ場合は、個別判断を停止して一律縮小します。感情が最も不安定になる局面で、判断を単純化することが重要です。
撤退ルールを破ると何が起きるか
一度でもルールを破ると、次も破ります。これは例外処理が常態化するためです。結果として、撤退ルールは存在しないのと同じになります。撤退ルールは守るために存在します。市場が間違っているのではなく、ルールを破った自分が間違っていると認識できるかが分かれ目です。
長期投資における撤退の誤解
長期投資は撤退不要という誤解があります。実際には、前提条件が崩れた時点で撤退が必要です。産業構造、競争優位、財務体質が変化した場合、長期という言葉は免罪符になりません。長期投資と塩漬けは全く別物です。
撤退ルールを実装するための現実的手順
まず過去の取引を全て振り返り、最大損失と最大利益を把握します。次に、精神的に耐えられる損失幅を数値化します。その範囲内でルールを設計し、必ず注文時に逆指値を入れます。裁量での後付け判断は排除します。
撤退ルールを持つ投資家が最後に残る
市場で生き残る条件は、予測力ではありません。撤退力です。撤退ルールは利益を最大化するためではなく、退場しないために存在します。これを理解した投資家から、成績は安定し始めます。


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