- 結論:利回りではなく「キャッシュフロー耐性」で買うか決める
- 不動産投資で儲けが消える4つの穴(ここを織り込まないと必ず負ける)
- 判断フレーム:キャッシュフロー耐性を数値化する
- 3つの具体例:数字で「買う/買わない」を決める
- あなたが使うべき3つの指標:表面利回りを捨てる
- 物件タイプ別の「勝ち筋」と「避ける罠」
- 購入前チェックリスト:ここが甘いと「買った瞬間に詰む」
- 運用で差がつく:キャッシュフローを強くする具体策
- よくある誤解:不動産は「節税商品」ではなく「キャッシュフロー商品」
- 最低限の行動プラン:今日からの進め方
- まとめ:勝てる不動産投資は「死なない設計」から始まる
- 融資の現実:銀行は「物件」より「あなた」を見ている
- 購入価格の交渉:利回りは“作る”もの
- 出口戦略:売れない物件は「買った時点で負け」
- “買ってはいけないサイン”を明文化する(迷いを消す)
- ミニQ&A:よくある疑問にストレートに答える
結論:利回りではなく「キャッシュフロー耐性」で買うか決める
不動産投資で一番ありがちな失敗は、表面利回りが高い物件を「お得」と誤認して買うことです。表面利回りは、家賃収入(満室想定)を購入価格で割っただけの“広告指標”に過ぎません。現実の不動産は、空室が出ます。家賃も下がります。設備は壊れます。管理費も上がります。さらに金利が上がれば返済額が増えます。
だから判断軸を変えます。あなたが見るべきは「この物件は悪いシナリオでも生き残るか」です。具体的には、家賃・空室・金利・修繕が悪化しても、なお手残りがプラスで残るか(キャッシュフロー耐性)を数式でチェックし、耐性が弱い物件は候補から落とします。
不動産投資で儲けが消える4つの穴(ここを織り込まないと必ず負ける)
1)空室:満室想定は幻想
賃貸は「毎月確実に家賃が入る」ものではありません。退去は必ず起きます。募集期間も発生します。地方・築古・駅遠はこの影響が大きいです。空室率は「0%ではなく、保守的に見積もる」のが鉄則です。
2)家賃下落:インフレでも家賃が上がるとは限らない
家賃は物価のように連続的に上がりません。築年数の経過、競合供給、エリアの需要変化で下がります。特にワンルームは供給過多になりやすく、家賃が下がりやすい傾向があります。将来家賃は「現状維持」ではなく「下落」をベースに置くのが安全です。
3)修繕:壊れた瞬間に年間利益が飛ぶ
給湯器、エアコン、配管、屋上防水、外壁など、壊れたら一撃で数十万円〜数百万円が飛びます。これを「その時考える」で運用すると、キャッシュが枯渇して詰みます。最初から修繕積立(見込み)を月次コストに入れるのが合理的です。
4)金利:固定費の増加はレバレッジ投資の致命傷
不動産は融資でレバレッジを掛ける投資です。金利上昇は返済額の増加となり、キャッシュフローを直撃します。金利が1%上がるだけで、ローン残高が大きいほど破壊力が出ます。「金利が上がる」ケースで耐えられるかを最初から計算します。
判断フレーム:キャッシュフロー耐性を数値化する
ここからが本題です。難しい数学は不要です。以下の順で、手元の電卓で判定できます。
ステップ1:実質の年間手取り(NOI)を出す
まず、家賃収入から運営コストを引いた「純営業利益(NOI)」を作ります。ざっくりでもいいので、想定が甘くならない順に入れてください。
- 年間家賃収入(満室ではなく、空室率を引いた現実ベース)
- 管理費・共用部費用(区分なら管理費+修繕積立金、1棟なら管理委託費など)
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険(地震保険は必要性を別途判断)
- 募集費・広告費(退去・募集の平均化)
- 修繕積立(1棟なら積立、区分でも設備更新に備える)
NOI = (家賃収入×(1−空室率)) − 運営コスト
ステップ2:返済(元利)を引いて年間キャッシュフローを出す
年間キャッシュフロー = NOI − 年間ローン返済額(元利)
ここで重要なのは、会計上の利益ではなく「現金の出入り」を見ることです。減価償却は税務上は効きますが、銀行への返済は減価償却で減りません。
ステップ3:「ストレステスト」を掛ける(これが耐性の本体)
以下のストレス条件を同時に掛けて、年間キャッシュフローがプラスか(最低でもトントンか)をチェックします。目安の一例はこうです。
- 空室率:+5〜10%(エリアと物件タイプで調整)
- 家賃:−5〜10%(更新・再募集時の下落)
- 金利:+1〜2%(変動の上振れ)
- 修繕:年数十万円の上振れ(築古ほど厚め)
このストレス条件でキャッシュフローがマイナスに沈む物件は、「通常時は良く見えるが、悪化した瞬間に詰む」タイプです。投資としては不利です。
3つの具体例:数字で「買う/買わない」を決める
例1:表面利回り8%の地方ワンルーム(見た目は強いが、耐性が弱い)
想定:購入900万円、家賃6万円/月(年72万円)。表面利回り8%に近い見栄えです。
- 空室率:通常5%、ストレス15%
- 運営コスト:管理費・税・保険・募集費・修繕見込みで年25万円
- ローン:借入800万円、金利2.0%(ストレス3.5%)、期間20年
通常:家賃72万×0.95=68.4万。NOI=68.4万−25万=43.4万。返済(概算)=年49万程度→CF=−5.6万。
ストレス:家賃72万×0.85×0.9(家賃−10%)=55.1万。NOI=55.1万−(25万+修繕上振れ10万)=20.1万。返済(上振れ)=年56万程度→CF=−35.9万。
結論:見た目の利回りに反して、キャッシュフロー耐性が弱く、悪化時に一気に持ち出しが増えます。「利回りが高いのにお金が残らない」典型です。
例2:都心近郊のファミリー区分(表面利回りは低いが、耐性が強い)
想定:購入3,800万円、家賃15万円/月(年180万円)。表面利回りは約4.7%で地味です。
- 空室率:通常3%、ストレス8%
- 運営コスト:管理費・税・保険・募集費・修繕見込みで年55万円
- ローン:借入3,400万円、金利1.2%(ストレス2.2%)、期間30年
通常:家賃180万×0.97=174.6万。NOI=174.6万−55万=119.6万。返済(概算)=年136万→CF=−16.4万。
「あれ、マイナスじゃん」と思うはずです。ここで重要な視点は、返済のうち元本返済が資産形成である点です。とはいえ、現金がマイナスなら運用は苦しい。そこで、次の工夫が必要です。
- 頭金を厚めにして返済額を下げる
- 家賃の維持力が高いエリア・間取りで「空室ストレス」を小さくする
- 購入価格の交渉で利回りを0.2〜0.4ptでも押し上げる
例えば頭金を400万円増やして借入3,000万円にすると返済は年120万程度まで落ち、CFはほぼトントンになります。ストレス条件でも沈みが浅く、「死ににくい」投資になります。
例3:小規模1棟(運用で勝てるが、管理の粗さが致命傷になる)
想定:購入8,500万円、家賃合計55万円/月(年660万円)。表面利回り約7.8%。
- 空室率:通常7%、ストレス15%
- 運営コスト:管理委託・税・保険・共用部光熱・募集費・修繕積立で年220万円(築年次で調整)
- ローン:借入7,500万円、金利1.5%(ストレス2.7%)、期間30年
通常:家賃660万×0.93=613.8万。NOI=613.8万−220万=393.8万。返済(概算)=年311万→CF=+82.8万。
ストレス:家賃660万×0.85×0.95(家賃−5%)=533.0万。NOI=533.0万−(220万+修繕上振れ50万)=263.0万。返済(上振れ)=年350万→CF=−87万。
この例は、通常時は強いが、ストレスで沈みます。だから取る戦略は明確です。「沈む前提」で、沈みにくくする運用を先に設計します。
- 入居付け力を上げる(写真・募集条件・設備改善の優先順位)
- 退去率の高い層を避ける(間取り・家賃帯・立地)
- 修繕を後回しにしない(特に屋上防水・配管・外壁)
- 金利上昇に備え、返済比率を上げすぎない(DSCRの確保)
あなたが使うべき3つの指標:表面利回りを捨てる
1)実質利回り(運営コスト込み)
表面利回りではなく、空室・コストを入れた実質ベースで見ます。これだけで“見栄え物件”の多くが脱落します。
2)DSCR(返済余裕率)
DSCR = NOI / 年間ローン返済額。1.0を下回ると、返済が運営で賄えない状態です。最低でも1.1〜1.2以上を狙うと、金利上昇や空室に耐えやすくなります。
3)損益分岐入居率(何%埋まれば赤字にならないか)
損益分岐入居率 = (運営コスト+年間返済額) / 満室家賃収入
これが高い(例:90%超)物件は、少しの空室で赤字になります。逆に低い物件は耐性が強いです。買う前に必ず出すべき数字です。
物件タイプ別の「勝ち筋」と「避ける罠」
ワンルーム区分
勝ち筋:駅近・需要が硬いエリア・価格交渉で利回りを確保。避ける罠:地方の高利回り広告、サブリース前提の利回り、修繕積立の上振れを無視。
ファミリー区分
勝ち筋:エリア需要(学区・職住近接)と再募集の強さ。避ける罠:管理状態が悪いマンション、修繕計画が破綻している管理組合。
1棟アパート・小規模マンション
勝ち筋:運用で改善余地がある物件(募集改善・設備投資で家賃維持)。避ける罠:配管・屋根・外壁の更新が近いのに価格へ織り込まれていない物件。
購入前チェックリスト:ここが甘いと「買った瞬間に詰む」
- レントロール:現状家賃・入居期間・滞納の有無。数字の信頼性を確認。
- 修繕履歴:いつ何を直したか。直していないなら“将来あなたが払う”。
- 管理の質:共用部の清掃、掲示物、ゴミ置き場。ここに全てが出ます。
- 家賃相場:同条件の募集家賃を複数サイトで横断し、強気・弱気を把握。
- 出口:売却先は誰か(実需か投資家か)。出口が細い物件は危険。
- 災害リスク:ハザードマップ、浸水想定、崖地。保険で消えるコストも見積もる。
運用で差がつく:キャッシュフローを強くする具体策
1)入居付けの改善は「家賃を下げる」前にやる
募集で最初にやるのは値下げではありません。写真の刷新、照明、クリーニング、内見導線、設備の一点突破(例:無料Wi-Fi、宅配ボックス、独立洗面台)など、費用対効果が高い順で改善します。
2)修繕は「壊れてから」ではなく「壊れる前」
壊れてから直すと、修繕費+空室損が同時に発生します。計画修繕で、キャッシュアウトの山をならしていくのがプロのやり方です。
3)保険と保証の使い方を最適化する
保険は“入る/入らない”ではなく、補償範囲と免責、地震保険の要否を含めた設計です。家賃保証(サブリース)は収益を削りやすいので、契約条件を精査し、利回り表示のカラクリになっていないか確認します。
よくある誤解:不動産は「節税商品」ではなく「キャッシュフロー商品」
節税を前面に出した提案は要注意です。税務上のメリットがあっても、現金が残らない投資は続きません。減価償却の効果は、税率・所得・物件特性で大きく変わります。だから順番は逆です。まずキャッシュフロー耐性→次に税務最適化です。
最低限の行動プラン:今日からの進め方
- 狙う物件タイプを1つに絞る(区分か1棟か、エリアはどこか)
- 家賃相場と空室感を把握する(募集サイトで“実勢”を見る)
- NOI→CF→ストレステストのテンプレを作る(毎回同じ計算)
- 損益分岐入居率とDSCRで一次選別(感情を排除)
- 内見・管理状態・修繕履歴で最終判断(数字と現場の両輪)
まとめ:勝てる不動産投資は「死なない設計」から始まる
不動産投資の本質は、レバレッジを使いながら、空室・家賃・修繕・金利という不確実性を管理して、長期でキャッシュフローを積み上げることです。派手な利回りより、地味でも耐性が強い物件を選ぶ。これが最短で再現性が高い勝ち筋です。あなたは今日から、表面利回りの誘惑を捨て、キャッシュフロー耐性で機械的に選別してください。
融資の現実:銀行は「物件」より「あなた」を見ている
不動産は融資が付くかどうかで期待リターンが変わります。初心者ほど「良い物件なら融資が出る」と思いがちですが、実際は逆です。銀行はまずあなた(属性・勤務先・年収・金融資産・既存借入・信用情報)を見て、次に物件を見ます。ここを理解すると、戦い方が変わります。
自己資金は「頭金」だけではない
自己資金は頭金だけでなく、諸費用(仲介手数料、登記、火災保険、融資手数料、印紙など)と、運用開始後の運転資金(空室・修繕のバッファ)を含みます。最低でも「購入価格の10%前後+運転資金」を現金で確保できないなら、無理に買う局面ではありません。レバレッジは“効かせる”ものですが、バッファが薄いレバレッジはただの自爆装置です。
返済比率(返済負担率)で詰む人が多い
毎月返済が手取りに対して過大だと、1回の修繕で資金繰りが破綻します。目安として、生活費を除いた可処分の中で、投資ローン返済は「余裕資金の範囲」に収めるのが安全です。「家賃が入るから返せる」は、空室で崩れます。
固定金利・変動金利の考え方
結論から言うと、どちらが正解という話ではありません。重要なのは、あなたのキャッシュフローが金利変動に耐えられる設計かです。変動金利を選ぶなら「上がった時の代替策」を用意します(繰上返済、家賃改善、コスト削減、売却の意思決定基準)。固定金利を選ぶなら「金利コストを払ってでも確実性を買う」設計になります。どちらにせよストレステストは必須です。
購入価格の交渉:利回りは“作る”もの
初心者が見落とす最大のレバーは、購入後の運用ではなく購入時の価格です。100万円の値引きは、あなたが毎月数千円節約する努力を何年も積み上げたのと同じインパクトになります。
交渉材料は「感情」ではなく「合理」
- 周辺相場と比較して割高な根拠(直近の成約事例、募集家賃の実勢)
- 修繕が必要な箇所(給湯器の年式、外壁の劣化、屋上防水など)
- 空室や賃料乖離(現状のレントロールの弱さ)
これらを“数字”で提示し、値引きの代わりに設備交換や原状回復を売主負担にするなど、落とし所を作ります。
出口戦略:売れない物件は「買った時点で負け」
不動産は流動性が低い資産です。だから買う前に出口を決めます。出口がない物件は、どんなに利回りが良く見えても危険です。
出口の3分類
- 実需:住む人が買う(立地・広さ・学区・生活利便性が重要)
- 投資家:利回りで買う(数字が悪化すると買い手が消える)
- 業者:再販で買う(仕入れ価格が厳しく、値引き要求が強い)
あなたの物件がどの出口に向いているかで、買う価格も運用方針も変わります。例えばワンルームは投資家出口に依存しやすく、金利上昇局面では買い手が細ります。ファミリーは実需も狙えるため、出口が太くなりやすい、という具合です。
“買ってはいけないサイン”を明文化する(迷いを消す)
判断に迷うのは、ルールがないからです。以下のいずれかに該当したら、原則見送りにします。
- ストレステストで年間CFが大きくマイナス(あなたの許容損失を超える)
- 損益分岐入居率が高すぎる(目安90%超)
- 修繕履歴が不明・虚偽っぽい、管理状態が明確に悪い
- レントロールの整合性が取れない(数字が怪しい)
- 周辺供給が増えているのに家賃前提が強気(将来下落が濃厚)
- ハザードが重いのに保険でカバーできない(洪水常襲など)
ミニQ&A:よくある疑問にストレートに答える
Q:築古はダメ?
A:ダメではありません。ただし築古は「修繕が早く来る」前提で、積立を厚くし、配管・防水・外壁など高額領域の状態確認が必須です。築古で勝つ人は、物件を見る目というより、修繕計画と資金繰りを先に作っています。
Q:区分と1棟、どっちが良い?
A:再現性なら区分、伸び代なら1棟です。区分は管理が比較的楽で、初心者の事故率が下がります。一方1棟は運用で改善できる領域が広いですが、修繕と空室のインパクトも大きい。あなたの性格と時間、資金余力で決めるべきです。
Q:不動産はインフレに強い?
A:一部は強いが万能ではありません。建築費上昇で新築は上がりやすい一方、賃貸需要が弱いエリアは家賃が付いてこない。インフレより需要の強さが勝敗を決めます。
Q:結局、最初の1件は何を狙う?
A:あなたの目的次第ですが、再現性を最優先するなら「需要が硬いエリアの、管理が良い区分(ファミリー寄り)」が無難です。派手な利回りより、最初は“死なない”ことが最大のリターンです。


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