再生可能エネルギー株の収益構造を分解する:FIT・FIP・PPA時代の見抜き方

株式投資

再生可能エネルギー(以下、再エネ)関連株は、世の中の追い風(脱炭素・電力価格の変動・政策支援)とセットで語られがちです。しかし投資で重要なのは「社会的に必要か」ではなく、企業がどの経路でキャッシュを生み、どこで毀損しうるかです。再エネ企業のビジネスは一枚岩ではありません。発電所を持つ会社、設備を作って売る会社、運転・保守で稼ぐ会社、電力の売買で稼ぐ会社、系統や蓄電で稼ぐ会社。ここを混同すると、同じ“再エネ株”でも値動きのロジックを外します。

この記事では、再エネ株の収益構造を「発電(アセット型)」「建設・機器(EPC/メーカー型)」「運転保守(O&M/サービス型)」「電力取引・小売(トレーディング型)」「周辺(蓄電・系統・証書)」に分解し、初心者でも決算書と開示から見抜けるチェックポイントを具体化します。最後に、銘柄比較のための指標と、避けたい落とし穴もまとめます。

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  1. 再エネ株は「何で儲ける会社か」で別物になる
  2. 発電(アセット型)の収益:FIT/FIP/PPAで“値段”が変わる
    1. 売電単価が固定か、変動か
    2. 発電量のブレ:日射・風況だけではない
    3. コスト構造:減価償却と金利が“表の利益”を歪める
  3. EPC/開発(プロジェクト型)の収益:一発勝負の利益と“受注残”
    1. 利益の出方:原価管理と工期遅延が全て
    2. 開発権益の“売却益”は再現性があるのか
  4. メーカー型の収益:需要の波より「価格競争」と「歩留まり」
    1. 見るべきは“数量”より“単価”と“原価”
  5. O&M/サービス型の収益:ストック化できる会社は強い
    1. O&Mが強い会社の特徴
  6. 電力取引・小売(トレーディング型):最も“難易度が高い再エネ”
    1. 利益源泉は「スプレッド」と「ヘッジ」
  7. 周辺ビジネス:蓄電池・環境価値・系統は“制度”が利益を決める
    1. 蓄電池の収益は“複数の収益源”の組み合わせ
  8. 初心者でもできる「決算・開示」からの見抜き方
    1. ステップ1:セグメント別に“稼ぎ頭”を特定する
    2. ステップ2:アセット型なら「借入と返済余力」を見る
    3. ステップ3:プロジェクト型なら「受注残」と「粗利率」を見る
    4. ステップ4:トレーディング型なら「売上ではなく粗利」を見る
  9. 再エネ株のバリュエーション:同じ指標で比べない
  10. 具体例:同じ「再エネ株」でも見立てが変わる3パターン
    1. 例1:発電所を大量保有するA社
    2. 例2:EPC中心のB社
    3. 例3:O&Mと監視SaaSを持つC社
  11. 落とし穴:再エネ株でよくある誤解と失敗
  12. 投資判断チェックリスト:最低限ここだけは確認する

再エネ株は「何で儲ける会社か」で別物になる

まず大枠の分類を押さえます。再エネ銘柄と一口に言っても、利益率・必要資本・景気耐性・金利感応度がまるで違います。

  • 発電(アセット型):太陽光・風力などの発電所を保有し、売電収入で回収する。インフラに近く、レバレッジを使うことが多い。
  • EPC/開発(プロジェクト型):発電所の開発、設計、調達、建設(Engineering/Procurement/Construction)で工事利益を取る。案件の波が大きい。
  • メーカー型:パネル、風車部品、パワコン、架台などを売って稼ぐ。需給と価格競争が直撃する。
  • O&M/サービス型:発電所の運転監視、点検、修繕で長期の保守契約を取る。ストック収益化しやすい。
  • 電力取引・小売(トレーディング型):発電・需要の変動を売買で裁く。電力価格・調達コスト・ヘッジの巧拙が成否を分ける。
  • 周辺(蓄電・系統・環境価値):蓄電池、需給調整、非化石証書やJクレジット等の価値を扱う。制度変更の影響が大きい。

投資家が最初にやるべきは、「この会社の営業利益は、どの箱から出ているのか」を特定することです。開示のセグメント情報、売上内訳、受注残、発電容量(MW)、保守契約数、電力取引のヘッジ方針などを拾って、収益ドライバーを把握します。

発電(アセット型)の収益:FIT/FIP/PPAで“値段”が変わる

売電単価が固定か、変動か

発電事業の基本はシンプルで、売電収入=発電量(kWh)×単価です。しかし単価の決まり方が重要です。

  • FIT(固定価格買取制度):一定期間、固定単価で買い取られる。キャッシュフローが読みやすい反面、案件の新規性は薄れやすい。
  • FIP(フィードインプレミアム):市場価格にプレミアムを上乗せする形。市場価格変動の影響を受けるため、ヘッジと需給管理が利益に直結する。
  • コーポレートPPA:企業と長期契約で電力を売る。契約設計(固定/変動、最低購入量、インデックス連動、解約条項)が肝。

FITは「国が買ってくれる」ため、金融機関が融資を出しやすく、プロジェクトファイナンスの前提になりやすい。FIP/PPAは市場や相手先信用に左右され、単純に“再エネは成長”だけでは語れません。投資では、単価が固定の比率単価変動のリスク管理を切り分けて見ます。

発電量のブレ:日射・風況だけではない

発電量は天候だけで決まりません。実務上のブレ要因は多いです。

  • 出力抑制(カーテイルメント):需給や系統制約で発電を止められる。再エネ比率が上がるほど問題化しやすい。
  • 系統接続制約:送電網の空き、増強工事の遅れ、接続ルールの変更で稼働時期がずれる。
  • 設備劣化:太陽光のパネル出力低下、風車の稼働率低下。保守の品質が長期IRRを左右する。
  • 故障・自然災害:台風、豪雨、積雪、落雷。保険の有無と免責条件が重要。

決算で見るなら、発電容量(MW)の増減だけでなく、設備利用率(稼働率)発電量(kWh)の推移、出力抑制の影響(開示があれば)を確認します。設備が増えたのに売電が伸びない場合、抑制・故障・単価低下のどれかが疑わしい。

コスト構造:減価償却と金利が“表の利益”を歪める

発電は初期投資(CAPEX)が大きく、運転費(OPEX)は相対的に小さい一方、会計上は減価償却が毎期乗ります。さらに多くの企業は借入で建設するため、金利負担が重い。ここで見るべきは「損益」よりキャッシュフローです。

  • 営業利益が薄く見える:減価償却が大きいと、営業利益率は低下する。
  • フリーキャッシュフローが読みにくい:増設期は投資CFが膨らみ、見かけ上マイナスになりやすい。
  • 金利上昇が効く:借入比率が高いと、利息やリファイナンス条件が収益を直撃する。

初心者がよくやるミスは、PERや営業利益率だけで優劣を決めることです。発電はインフラに近いので、EBITDA(減価償却前利益)有利子負債/EBITDADSCR(債務返済余裕)平均調達金利などの“返せるか指標”が重要になります。IR資料に指標がなくても、開示された数値から近似できます。

EPC/開発(プロジェクト型)の収益:一発勝負の利益と“受注残”

EPCや開発は、案件を取って建てて引き渡すまでが勝負です。収益は工事利益と、開発権益の売却益、場合によっては運転開始後のO&M契約へつなげることで生まれます。

利益の出方:原価管理と工期遅延が全て

工事は、資材高・人件費高・物流遅延・許認可遅延が起きると、粗利が簡単に飛びます。決算で見るべきは次です。

  • 売上総利益率の推移:高い年と低い年の差が大きい場合、案件の質が不安定。
  • 受注残高/受注高:将来の売上の見通し。受注残が細ると翌年以降が空洞化する。
  • 工事損失引当金:赤字案件の兆候。増加していれば警戒。

プロジェクト型は成長ストーリーが華やかでも、足元の原価で崩れます。特に風力・大型太陽光は、系統接続や環境アセスの遅れで工期が伸びやすい。遅延が起きると、違約金や追加コストが出るだけでなく、売上計上時期がズレて株価が荒れます。

開発権益の“売却益”は再現性があるのか

開発会社は、案件を完成させずに権益を売却して利益を出すことがあります。これは不動産開発に近く、タイミングと相場で利益が大きく振れます。ここでのチェックは、

  • パイプライン(開発中案件)の量と質:MWだけでなく、接続枠・許認可の進捗が重要。
  • 売却先の多様性:買い手が限定的だと、相場が悪い時に売れない。
  • 案件ごとの収益の開示:開示が薄い場合、利益の源泉が見えにくい。

“権益売却で儲かった”という過去実績は、次の案件で同じことが起きる保証にはなりません。相場環境が変わると、評価額が下がり、売却益が消えます。株価が高PERで買われている局面ほど、このリスクは大きくなります。

メーカー型の収益:需要の波より「価格競争」と「歩留まり」

再エネ関連のメーカー(パネル、部材、パワコン、ケーブル等)は、「再エネが伸びる=メーカーが儲かる」と短絡しがちです。現実は、需要が伸びると競争も激化し、価格が下がり、利益率が潰れることがあります。

見るべきは“数量”より“単価”と“原価”

メーカー型は、売上が伸びても利益が伸びないケースが多い。理由は、

  • 新規参入や海外勢で、製品価格が下がる
  • 原材料(シリコン、銅、アルミ等)で原価が上がる
  • 品質問題で保証費用・リコールが発生する

決算では、売上高の増減に対して、売上総利益がどれだけ付いてくるかを見ます。粗利率が下がり続ける会社は、成長しても株主価値が増えない可能性がある。逆に粗利率が安定している会社は、技術優位・ブランド・スイッチングコストがあるかもしれません。

O&M/サービス型の収益:ストック化できる会社は強い

発電所は作って終わりではなく、20年単位で運転し続けます。点検、草刈り、監視、故障対応、部品交換。ここを担うO&Mは、うまく設計するとストック収益になります。

O&Mが強い会社の特徴

  • 契約期間が長い:複数年契約、更新率が高い。
  • 監視システムの内製:遠隔監視で運用効率が高い。
  • 修繕提案ができる:単なる点検ではなく、改善工事で追加利益を取れる。

投資家としては、O&M比率が高い会社は景気変動に相対的に強い一方、急成長はしづらい、という特徴を理解すると判断がブレません。評価指標も、PERではなく、契約残(ARRに近いもの)や顧客継続率などが重要になります。

電力取引・小売(トレーディング型):最も“難易度が高い再エネ”

電力小売や需給調整は、再エネ比率が上がるほど重要になります。なぜなら再エネは発電が天候でブレるため、需要と供給のズレを調整する必要があるからです。ここに儲けの機会はありますが、同時に損失の地雷もあります。

利益源泉は「スプレッド」と「ヘッジ」

トレーディング型の基本は、安く仕入れて高く売る差益です。しかし電力は保存できず、需要が急変する。ヘッジが弱いと、調達コスト高騰で一撃で赤字になります。チェックポイントは、

  • 調達手段:自社電源比率、長期契約、スポット依存度。
  • 価格転嫁:小売価格の改定ルール、顧客への転嫁スピード。
  • 与信管理:大口顧客の未回収リスク。
  • ヘッジ方針:先物・相対契約・分散でどこまで抑えるか。

電力小売は、売上が大きく見えても利益率が薄いことが多い。売上高だけで“規模が大きい”と評価すると、危険です。むしろ、粗利とリスク管理の説明がしっかりしている企業ほど信頼できます。

周辺ビジネス:蓄電池・環境価値・系統は“制度”が利益を決める

再エネの周辺では、蓄電池や需給調整、非化石証書、Jクレジットなど「環境価値」が注目されます。ただしここは制度設計の影響が極めて大きい領域です。制度が変わると、採算が一変する可能性があるため、過去の採算だけで安心しないことが重要です。

蓄電池の収益は“複数の収益源”の組み合わせ

蓄電池は、単純に電気を貯めて売るだけではありません。時間帯差(アービトラージ)、需給調整(調整力)、系統混雑の緩和、非常用電源など、複数の価値を積み上げて採算を作ります。投資家は、会社がどの市場・制度に依存しているかを確認します。

初心者でもできる「決算・開示」からの見抜き方

ここからは、銘柄を具体的に比較するための手順です。難しいモデルを作らなくても、資料を読む順番を固定すれば精度が上がります。

ステップ1:セグメント別に“稼ぎ頭”を特定する

決算短信・有価証券報告書のセグメント情報で、売上と利益の内訳を確認します。再エネ企業は「売上の大きい部門」と「利益を生む部門」がズレることがあります。例えば電力小売で売上は大きいが、利益は発電所の持分から出ている、などです。

ステップ2:アセット型なら「借入と返済余力」を見る

発電所保有型は、有利子負債金利条件、そして返済余力が肝です。数字が取れれば、次のように点検します。

  • 有利子負債/EBITDAが上がり続けていないか
  • 固定金利比率が低すぎないか(急な金利上昇に弱くないか)
  • 短期借入比率が高くないか(借り換えリスクが大きくないか)

ステップ3:プロジェクト型なら「受注残」と「粗利率」を見る

EPCや開発は、受注残が命綱です。受注残が減る局面では、先行投資だけ残って利益が出ないことがある。粗利率が急落した年があれば、何が起きたか(資材高、工期遅延、赤字案件)を注記で確認します。

ステップ4:トレーディング型なら「売上ではなく粗利」を見る

電力小売は売上が膨らみやすい。見るべきは粗利と、その安定性です。粗利がブレている会社ほど、ヘッジが弱いか、スポット依存度が高い可能性があります。

再エネ株のバリュエーション:同じ指標で比べない

再エネ株に“万能の指標”はありません。稼ぎ方が違うからです。最低限、次のように使い分けます。

  • 発電(アセット型):EV/EBITDA、P/CF、負債指標(有利子負債/EBITDA)、金利感応度
  • EPC/開発(プロジェクト型):受注残倍率、粗利率、運転資本の増減、ROIC
  • メーカー型:粗利率のトレンド、在庫回転、研究開発比率、価格転嫁力
  • O&M(サービス型):契約残、継続率、営業利益率の安定性
  • 小売・取引:粗利率、ヘッジ方針、顧客構成、信用リスク

特にアセット型をPERだけで比較すると、減価償却と金利の違いで誤判定しがちです。逆にサービス型をEV/EBITDAだけで見ると、成長投資の費用化で見え方が歪むことがある。指標は“会社の稼ぎ方”に合わせて選びます。

具体例:同じ「再エネ株」でも見立てが変わる3パターン

例1:発電所を大量保有するA社

A社は発電容量が大きく、長期契約比率も高い。一方で有利子負債が厚く、調達金利が上がる局面では利益が圧迫される可能性がある。見るべきは、固定金利比率、借り換えスケジュール、出力抑制の影響。株価が“金利株”のように動く場合がある。

例2:EPC中心のB社

B社は受注残が積み上がると株価が上がりやすいが、資材高や工期遅延で粗利が落ちると急落する。短期の決算のブレが大きいので、受注残の質(誰向けの案件か、採算はどうか)を注記から拾い、一本足打法になっていないか確認する。

例3:O&Mと監視SaaSを持つC社

C社は売上成長が派手でなくても、契約が積み上がり利益率が安定するなら、景気後退局面で相対的に強い。評価はPERでもよいが、解約率や顧客集中度など“ストックの質”を併せて見る。

落とし穴:再エネ株でよくある誤解と失敗

  • 「再エネは国策だから安全」:制度は支援にも改悪にもなりうる。依存度が高いほど政策リスクが大きい。
  • 「売上が伸びているから良い」:粗利やキャッシュが伴わない成長は危険。特に小売・取引は売上が膨らみやすい。
  • 「設備容量(MW)が増えたから儲かる」:出力抑制、単価低下、稼働率低下で利益が伸びないことがある。
  • 「ESGだから割高でもOK」:投資は価格が全て。キャッシュフローの質と負債を無視した割高は脆い。

投資判断チェックリスト:最低限ここだけは確認する

最後に、初心者でも再現できるチェックリストを置きます。銘柄を買う前に、次の問いに答えられる状態にしてください。

  • この会社の利益は「発電」「EPC」「O&M」「小売」のどこから来ているか?(比率は?)
  • 売電単価は固定(FIT/PPA)か変動(FIP/市場)か?固定比率は?
  • 出力抑制・系統制約・稼働率低下のリスクはどの程度か?開示はあるか?
  • 有利子負債と金利条件は?固定金利比率と借り換え時期は?
  • プロジェクト型なら受注残は増えているか?粗利率は安定しているか?
  • 小売・取引ならヘッジ方針は明確か?粗利は安定しているか?
  • 制度変更が起きた場合、採算が崩れるポイントはどこか?

再エネ株は、テーマで買うより、収益構造で買うほうが勝率が上がります。社会の追い風が同じでも、企業ごとに「儲けのエンジン」と「壊れるポイント」は違う。決算と開示を分解し、あなたの投資スタイル(長期保有か、イベントドリブンか)に合う箱を選ぶことが、最短の実力アップです。

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