米国債と株式の相関が崩れた理由と投資家の実践戦略

市場解説

「株が下がると債券が上がる」――この常識が崩れると、分散投資の前提が一気に揺らぎます。特に米国債(国債)と米国株の同時下落は、初心者ほどダメージが大きく、心理的にも「もう分散は意味がないのでは」と感じやすい局面です。

結論から言うと、相関が崩れるのは“例外”ではなく、マクロ環境が特定の領域に入ったときに構造的に起きる現象です。重要なのは、なぜ起きたかを理解し、同じ環境が来たときに被害を最小化する運用ルールを持つことです。

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  1. まず押さえる:相関とは何で、なぜ重要か
  2. 歴史的に株と米国債が逆相関になりやすかった理由
  3. 相関が崩れる(株も債券も下がる)本当の理由:核心は“インフレと利上げ”
  4. もう一段深掘り:相関を押し上げる5つのメカニズム
    1. 1) 金融政策のレジーム転換(FRBの反応関数が変わる)
    2. 2) “実質金利”の上昇が株にも債券にも効く
    3. 3) デュレーション(期間リスク)の集中:長期債と成長株は“同じリスク”になり得る
    4. 4) 量的緩和(QE)から量的引き締め(QT)へ:流動性の潮目
    5. 5) ポジション解消の連鎖:レバレッジとVaRショック
  5. 「相関が崩れた」と感じる人がハマる誤解
  6. 個人投資家の実践戦略:相関崩壊に強いポートフォリオ設計
    1. ステップ1:自分のポートフォリオを“リスク要因”で棚卸しする
    2. ステップ2:債券は「短期+中期」を主軸にし、長期は目的限定にする
    3. ステップ3:インフレ耐性の“中核”を1つ持つ
    4. ステップ4:ヘッジは“コスト管理”がすべて。万能ヘッジを探さない
  7. 具体例:よくある3つの個人ポートフォリオと改善案
    1. 例1:S&P500+長期米国債ETF(いわゆる攻守)
    2. 例2:全世界株+国内債券(円建て)
    3. 例3:高配当株+REIT+社債(インカム志向)
  8. 相関崩壊局面での売買判断:初心者向けのチェックリスト
  9. よくある質問:結局、株と債券の相関は今後どうなるのか
  10. まとめ:分散の鍵は“資産クラス”ではなく“リスク要因”

まず押さえる:相関とは何で、なぜ重要か

相関は「同じ方向に動く度合い」です。株と債券の相関がマイナスなら、株が下がったとき債券が上がりやすく、ポートフォリオ全体のブレ(ボラティリティ)を抑えられます。

ただし相関は固定値ではありません。景気・インフレ・金融政策・市場参加者のポジションによって、“変動する状態変数”です。長期平均ではマイナスでも、短期・中期ではプラスに転じます。

分散投資の失敗は、資産の種類を増やしたのにリスクが減らないケースです。その原因の多くは「相関が上がる局面を想定していない」「同じリスク要因を別の形で重複保有している」ことにあります。

歴史的に株と米国債が逆相関になりやすかった理由

株と米国債が逆相関になりやすい典型環境は、「需要ショック(景気後退リスク)」が中心の局面です。景気が悪化しそうになると、企業利益の期待が下がり株は売られます。一方で中央銀行は景気下支えのため利下げに向かいやすく、国債利回りは低下(価格は上昇)しやすい。

このとき債券は「保険」として機能します。特に米国債は流動性が極めて高く、リスク回避の資金が集まりやすい。これが長年、60/40(株60%・債券40%)のような古典的分散が機能した背景です。

相関が崩れる(株も債券も下がる)本当の理由:核心は“インフレと利上げ”

株と債券が同時に下がる局面は、主に「インフレ・ショック(供給制約)」が中心の局面で起きます。インフレが上がると、中央銀行は引き締め(利上げ、量的引き締め)を強めます。利回りが上がると国債価格は下がります(債券は金利に負ける)。

同時に、株は二段構えで痛みます。

① 割引率の上昇でPERが縮む(バリュエーションの圧縮)
株価は「将来利益の現在価値」です。金利(割引率)が上がると、将来の利益の価値が目減りします。特に遠い将来の成長を織り込む成長株ほど打撃が大きい。

② 企業利益そのものが圧迫される(利益面の悪化)
金利上昇は資金調達コストを上げ、需要も冷やします。賃金・原材料・物流などのコスト増も同時に来ると、マージンが削られます。結果として株も売られやすい。

つまり、インフレ局面では「債券が保険にならず、株も金利上昇で弱い」ため、相関がプラスに寄ります。

もう一段深掘り:相関を押し上げる5つのメカニズム

1) 金融政策のレジーム転換(FRBの反応関数が変わる)

平時の市場は「景気が悪くなる→利下げ期待→債券高」を織り込みます。しかしインフレが高すぎると、景気が悪くても簡単に利下げできません。中央銀行の優先順位が“雇用”から“物価”へ移ると、株安でも債券が上がりにくくなります。

2) “実質金利”の上昇が株にも債券にも効く

名目金利だけでなく、実質金利(名目金利−期待インフレ)が上がる局面は、資産価格に広くマイナスです。実質金利が上がると、無リスク利回りの魅力が増し、リスク資産の相対魅力が下がります。

3) デュレーション(期間リスク)の集中:長期債と成長株は“同じリスク”になり得る

初心者が見落としやすいポイントです。長期国債はデュレーションが長く、金利変化に敏感です。成長株も「将来のキャッシュフロー比率が高い」ため、割引率の変化に敏感です。両者を同時に持つと、金利上昇という単一要因に対してリスクが集中することがあります。

4) 量的緩和(QE)から量的引き締め(QT)へ:流動性の潮目

QEは国債を買って利回りを押し下げ、同時に市場のリスク許容度を押し上げました。QTはその逆です。国債需給が悪化し、利回りが上がりやすくなるだけでなく、資産全般のリスクプレミアムが上がりやすい。

5) ポジション解消の連鎖:レバレッジとVaRショック

大口投資家はレバレッジやリスク管理(VaR)で運用しています。ボラが上がるとリスク枠が縮み、株も債券も同時に売る必要が生じます。これが短期の相関上昇を加速させます。

「相関が崩れた」と感じる人がハマる誤解

誤解1:もう債券は役に立たない
債券が役に立たないのではなく、“どの債券を、どの期間で、何の目的で持つか”が重要です。短期国債・中期・長期、インフレ連動債、社債などは挙動が異なります。

誤解2:分散は無意味
分散は「常に損失を防ぐ魔法」ではなく、「損失の確率分布を変える技術」です。相関が上がる局面を想定し、そのとき効く分散(リスク要因の分散)に変える必要があります。

誤解3:株と債券が同時に下がったら“現金だけ”が正解
現金比率を上げる判断が正しい局面はありますが、常に正解ではありません。現金はインフレに弱い。重要なのは、「何がリスク要因か」を見極めて、現金・短期債・実物資産・ヘッジを使い分けることです。

個人投資家の実践戦略:相関崩壊に強いポートフォリオ設計

ステップ1:自分のポートフォリオを“リスク要因”で棚卸しする

資産クラスで見ていると「株と債券で分散している」と錯覚しがちです。まずは次の3つのリスク要因で棚卸ししてください。

・金利リスク(デュレーション):長期債、長期成長株、長期キャッシュフロー型の資産。
・景気リスク(利益・信用):株式、ハイイールド債、景気敏感株。
・インフレリスク(購買力):現金・固定利付債に不利、実物資産・インフレ連動に有利。

相関崩壊の局面では、金利とインフレが同時に効くことが多い。ここを分散できていないと、資産クラスを増やしても意味がありません。

ステップ2:債券は「短期+中期」を主軸にし、長期は目的限定にする

金利上昇局面で最も傷つくのは長期債です。初心者が分散目的で長期債を厚くすると、株安と同時に債券も大きく下がりやすい。ここでの実務的な解はシンプルです。

・生活防衛や待機資金:短期国債/短期債ETF
金利変動の影響が小さく、利回りも政策金利に追随しやすい。

・景気後退ヘッジ:中期国債(例:5〜7年程度)
長期ほど金利リスクを背負わず、利下げ局面ではクッションになりやすい。

・長期国債:明確な目的(強いデフレ/景気後退の保険)に限定
「なんとなく安全そう」で持つと、局面次第で裏切られます。

ステップ3:インフレ耐性の“中核”を1つ持つ

相関が崩れる局面の多くはインフレが絡みます。インフレに相対的に強い資産を“中核”として一つ選び、比率を決めてルール化します。

候補は次の通りです(どれが正解というより、相性と運用ルールが重要です)。

・インフレ連動債(TIPSなど):直接的。インフレが主因なら最も整合的。
・コモディティ(広く分散された商品指数):供給ショックに強いが、長期の期待リターンは株ほど安定しない。
・エネルギー/資源株:価格転嫁力と資源価格の追い風。ただし株なので景気悪化の影響も受ける。
・不動産(REIT):物件収益の物価連動が効く一方、金利上昇に弱い局面もあるため万能ではない。

ステップ4:ヘッジは“コスト管理”がすべて。万能ヘッジを探さない

個人が使いやすいヘッジは「現金比率」「短期債」「分散された商品」「ボラティリティ関連」などですが、どれもコストやタイミング問題があります。重要なのは、ヘッジを“常時フル”にせず、条件発動で使うことです。

例として、次のような条件ルールは実務的です。

・長期金利が急騰し、株のバリュエーションが高い局面:長期債比率を落とし、短期債比率を上げる。
・インフレ指標が高止まりし、中央銀行が引き締め継続:インフレ耐性資産の比率を事前に固定しておく(後追いで増やさない)。

具体例:よくある3つの個人ポートフォリオと改善案

例1:S&P500+長期米国債ETF(いわゆる攻守)

一見バランス良さそうですが、金利上昇局面では両方が下がり得ます。改善は、長期債の一部を短期債へ移し、インフレ耐性の中核(TIPSや商品など)を少量でも入れることです。これだけで「金利上昇に対する一撃死」を避けやすくなります。

例2:全世界株+国内債券(円建て)

為替が絡み、相関はさらに複雑です。円建て債券は為替リスクが低い一方、国内金利が上がる局面では債券が下がります。改善は「国内債券の期間を短くする」「為替リスクを取っている部分(外株)と金利リスクの重なりを点検する」ことです。

例3:高配当株+REIT+社債(インカム志向)

インカム志向は心理的に持ちやすいですが、金利上昇局面では配当株・REIT・社債が同時に弱くなりやすい。実質的には“金利に弱い資産の集合体”になり得ます。改善は「信用リスク(社債)を減らす」「REIT比率を上げ過ぎない」「短期債や現金でクッションを作る」ことです。

相関崩壊局面での売買判断:初心者向けのチェックリスト

相関が崩れている最中は、情報量が増え、判断が乱れがちです。以下の順で点検してください。

1) 下落の主因は“景気”か“インフレ”か
景気主因なら債券が保険になりやすい。インフレ主因なら債券は保険になりにくい。

2) 自分の債券は何年のリスクを持っているか(デュレーション)
長期なら金利上昇に弱い。短期は比較的耐えます。

3) “保険”として持っている資産が、本当にその局面で機能する設計か
「なんとなく債券」では機能しない局面があります。目的と商品が一致しているかが核心です。

4) リバランスは“定量ルール”でやる
感情でやると高値掴み・底値売りになります。たとえば「資産比率が目標から±5%ずれたら調整」など、単純で守れるルールが勝ちです。

よくある質問:結局、株と債券の相関は今後どうなるのか

相関は景気と物価のどちらが支配的かで変わります。インフレが沈静化し、中央銀行が景気悪化に反応して利下げできる環境に戻れば、逆相関は復活しやすい。一方、供給制約や地政学でインフレ圧力が残るなら、プラス相関の局面が増えます。

重要なのは予言ではありません。「相関が変わることを前提に、ポートフォリオを“構造的に”強くする」ことです。

まとめ:分散の鍵は“資産クラス”ではなく“リスク要因”

米国債と株式の相関が崩れるのは、インフレと金融引き締めが支配的になり、金利上昇が債券価格と株のバリュエーションを同時に圧迫するからです。さらに流動性縮小やポジション解消が短期の同時下落を増幅します。

対策は、(1)リスク要因で棚卸しし、(2)債券の期間構成を最適化し、(3)インフレ耐性の中核を持ち、(4)定量ルールでリバランスすること。この4点を押さえるだけで、相関崩壊局面の“想定外”は減らせます。

市場は常に環境が変わります。変わる前提で設計した投資家が、長期で生き残ります。

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